小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン
編・著 | : 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 |
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ISBN | : 978-4-524-26585-5 |
発行年月 | : 2015年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 328 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
正誤表
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2020年11月27日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会による小児・思春期糖尿病に関するオフィシャルなガイドライン。小児・思春期糖尿病領域において蓄積されつつあるエビデンスを吟味し、小児・思春期糖尿病の診断・治療、患児・家族への支援について明確な指針を示す。小児科医、一般内科医および糖尿病に携わるメディカルスタッフに必携の一冊。
I 総論
1 定義と分類
2 診断基準
3 病因と病態
A 1型糖尿病
B 2型糖尿病
C その他の糖尿病
4 疫学
5 コントロール目標
6 検査法
7 連続皮下ブドウ糖濃度測定(CGM)
8 合併症
9 学校検尿による尿糖スクリーニング
10 小児のメタボリックシンドローム
11 将来の展望
A 移植医療
B 再生医療
C 今後の薬物療法の展望
II 1型糖尿病
1 治療のプランニング
2 糖尿病ケトアシドーシス
3 インスリン療法
4 持続皮下インスリン注入療法(CSII)
5 食事療法
6 低血糖
7 シックデイ・外科手術への注意
A シックデイ対策
B 手術時
III 2型糖尿病
1 治療のプランニング
2 食事療法
3 運動療法
4 薬物療法
5 インスリン療法
6 シックデイ・外科手術への注意
IV 患児・家族の支援
1 生活指導
A 社会・日常生活
B 保育園,幼稚園,学校生活
2 心理的支援
3 家族への教育
4 就職
5 結婚,妊娠,出産
6 糖尿病キャンプ
7 小児医療から成人医療へ
8 知的障害および発達障害を伴う糖尿病の管理
V ケアのシステム化
1 チーム医療
2 病診連携
3 医療制度
4 諸団体
付録
A 日本人の食事摂取基準(2015年版)
B 成長曲線と肥満度
C 食品の糖質量一覧
D 全国の患者会連絡先一覧
E 専門医制度
索引
新たな『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』の刊行にむけて
小児・思春期発症糖尿病をもつ人たちは成人して発症した人たちと比べ、生涯にわたってより長期の療養生活を送ることになります。また、いわゆるライフステージに応じた支援が必要であり、学校生活、進学、就職、結婚さらに壮年期・子育て、老年といった長期的視野をもって、自立した社会人に成長してもらいたいものです。そこで、従来日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会では『小児・思春期糖尿病管理の手びき』を第3版まで発刊してきました(第1版2001年、第2版2007年、第3版2011年刊行)が、医療従事者が管理するというイメージを和らげ、糖尿病をもつ人たちの自立を支援する立場から、第4版とせずに『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』と改名しました。また、通常ガイドラインにつけられる『診療』または『治療』という言葉は省いて、単にコンセンサス・ガイドラインとしました。多少教科書的になりますが、小児・思春期糖尿病に関する基礎知識を含めているからです。
糖尿病の成因についての知見も急速に増え、その成因の解析から病態に適した治療法も明らかにされてきています。また、日常診療における連続皮下ブドウ糖濃度測定(CGM)や、これを自己管理に利用できる持続皮下インスリン注入療法(CSII)も始まり、糖尿病の自己管理の重要性はより明らかになってくると考えられます。一方、より高度な治療法を継続していくための経済的・社会的支援についても、小児・思春期からの糖尿病においてはいまだ多くの課題が残されています。このような課題に関しても、家庭・学校・社会への啓発に本ガイドラインが参考になれば幸いです。
当然、これら療養法は科学的根拠をもつガイドラインの確立が基本となります。小児・思春期からの糖尿病の療養の重要性は米国での1型糖尿病におけるDCCTや2型糖尿病に関するTODAYなどの大規模研究によって、世界的な認識が高まっています。日本でもすでに科学的根拠となりうる検討が進められてきており、これらのエビデンスを本ガイドラインは積極的に織り込みました。また、小児・思春期糖尿病にはまだ十分なエビデンスが得られていない問題が少なからずありますが、執筆者と評価委員の間でコンセンサスとしての妥当性も検討しています。
最後に、本『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』が小児・思春期発症糖尿病の療養に携わっている医療従事者のみならず、広く学校・社会でも活用されることを望んでおります。
2015年5月
日本糖尿病学会小児糖尿病委員会
日本小児内分泌学会糖代謝委員会(旧・糖尿病委員会)
本書は、従来第3版まで発刊されている「小児・思春期糖尿病管理の手引き」の第4版にあたる。作成にあたり、書名を第4版としなかった理由として、医療従事者が「管理」するというイメージを和らげ、糖尿病患者の自立を支援したい、という思いがあると述べられており、筆者らの患者目線の姿勢が感じられた。本書執筆者のメンバーで、私が小児キャンプに同行させていただいた先生の優しい表情が浮かんできた。
書名にある「コンセンサス・ガイドライン」のとおり、小児・思春期糖尿病について、実に網羅的に、コンパクトに情報提供ができている。そして、ガイドラインとしての根拠となる資料・出典元が充実しているため、より詳細に情報を得たいときに参照できる仕組みとなっている。
昨今、糖尿病の成因についての知見が急速に増え、さらに治療については新薬の登場、新しいデバイス(リアルタイムCGMやSAPなど)の発展が目覚ましい。医療者としては、病態に即した治療法を適切に選ぶために、その根拠となる知識・情報を深く理解することは必須であるし、新しい治療や社会的サービスの変化についても随時アップデートする必要がある。本書は、項目ごとに、原理、分類、利点と問題点、活用、それから将来への展望といった形で、流れよく書かれている。知りたい情報を速やかに得ることができる点が貴重である。
実のところ、糖尿病専門医であっても、日常的に小児糖尿病に接する機会は多くはない。私自身に限っていえば、小児・思春期糖尿病について体系的に学んだことがないように思う。
小児科領域は特殊でとりかかりにくいと感じているためか、小児糖尿病は小児科にお任せ、という暗黙の空気がある。しかし実際は、何らかの事情で専門の小児科に通院できない患者も多いはずであるし、患児たちはいずれ成人になり、いわゆる大人の糖尿病外来に通院するわけである。また、本文にもあるように2型の小児糖尿病患者数は着実に増えており、家族を巻き込んで治療機会を逃さないことが重要なのではと感じた。そういう点で、本書は私自身のために大変勉強になった。
本書を一通り読めば、小児糖尿病に限定した内容ばかりでなく、一般臨床医に必要な糖尿病についての知識が得られるようになっている。具体的には、「第I章 総論」では病態やコントロール目標、学校検尿、新しい治療など、「第II章 1型糖尿病」、「第III章 2型糖尿病」、「第IV章 患児・家族の支援」、「第V章 ケアのシステム化」となっており、ケアのシステム化にはチーム医療や病診連携、医療費など実践的な内容が書かれている。また、巻末の付録には最新版となる2015年度版の食事摂取基準から始まり、成長曲線、食品の糖質量一覧、全国の患者会連絡先一覧が載っており、盛り沢山であるが、コンパクトに網羅されている。診療の傍ら参照するのにも丁度よいと感じた。一般臨床医、非専門医にもわかりやすい一冊である。
臨床雑誌内科117巻1号(2016年1月号)より転載
評者●朝日生命成人病研究所附属医院糖尿病代謝科 菊池貴子
