書籍

神経筋疾患の超音波検査実践マニュアル(Web動画付)

編集 : 神経筋超音波研究会
ISBN : 978-4-524-25529-0
発行年月 : 2018年6月
判型 : B5
ページ数 : 186

在庫あり

定価8,800円(本体8,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

本領域をリードする神経筋超音波研究会により、神経筋疾患における超音波検査の基礎から各疾患における評価法をわかりやすくまとめた。エコーの原理、機器の使い方、プローブのあて方のコツのほか、疾患ごとのエコー所見の読み方を豊富な画像、Web動画、および詳細な解説で理解できる。末梢神経・筋疾患の標準的な超音波検査方法を学びたい方のための入門書。

末梢神経エコーの正常値一覧
総論
 1 エコーの原理
 2 末梢神経エコーの基礎と正常所見
 3 末梢神経エコーの正常値
 4 筋エコーの基礎と正常所見
 5 エコーとMRI・CTとの比較
各論−疾患におけるエコー所見
 A 末梢神経・運動ニューロン疾患
  1 絞扼性末梢神経障害(上肢)
  2 絞扼性末梢神経障害(下肢)
  3 遺伝性末梢神経障害
  4 炎症性末梢神経障害(CIDP/GBS)・ポリニューロパチー
  5 運動ニューロン疾患(1)
  6 運動ニューロン疾患(2)
 B 筋疾患
  1 炎症性ミオパチー
  2 筋ジストロフィー
 C エコー検査法の進歩と筋電図同時記録
付録 エコーのレポート例
文献一覧
これからの筋電図と神経筋超音波−あとがきにかえて
索引

【Web動画一覧】
総論
 2 末梢神経エコーの基礎と正常所見
  1)正中神経
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  2)尺骨神経
   ・プローブの操作
   ・正常所見(1)
   ・正常所見(2):肘部
  3)橈骨神経〜後骨間神経
   ・プローブの操作
   ・正常所見 橈骨神経:上腕
   ・正常所見 後骨間神経:前腕
  4)総腓骨神経〜脛骨神経〜坐骨神経
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  5)腓腹神経
   ・プローブの操作
  6)頸神経根
   ・プローブの操作
   ・正常所見
 4 筋エコーの基礎と正常所見
  1)胸鎖乳突筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  2)僧帽筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  3)三角筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  4)上腕二頭筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  5)上腕三頭筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  6)総指伸筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  7)尺側手根屈筋,浅指屈筋,深指屈筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  8)第一背側骨間筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  9)大腿直筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  10)外側広筋
   ・正常所見
  11)内側広筋
   ・正常所見
  12)腓腹筋,ヒラメ筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  13)前脛骨筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
  14)腹直筋
   ・正常所見
  15)舌筋
   ・プローブの操作
   ・正常所見
各論−疾患におけるエコー所見
 A 末梢神経・運動ニューロン疾患
  1 絞扼性末梢神経障害(上肢)
   1)手根管症候群
   2)前骨間神経麻痺(1)
   3)前骨間神経麻痺(2)
   4)肘部尺骨神経障害
  4 炎症性末梢神経障害(CIDP/GBS)・ポリニューロパチー
   1)慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
  5 運動ニューロン疾患(1)
   1)筋萎縮性側索硬化症での線維束性収縮(1)
   2)随意収縮
   3)筋萎縮性側索硬化症での線維束性収縮(2)
  6 運動ニューロン疾患(2)
   1)正常な横隔膜
   2)筋萎縮性側索硬化症の横隔膜(1)
   3)筋萎縮性側索硬化症の横隔膜(2)
 B 筋疾患
  1 炎症性ミオパチー
   1)正常な上腕二頭筋
   2)多発性筋炎の上腕二頭筋
 C エコー検査法の進歩と筋電図同時記録
  1)ドプラ法による神経内血流速度の評価:慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
  2)筋エコーと針筋電図の同時記録(筋萎縮性側索硬化症)

巻頭言

 この巻頭言を著している小生は純粋な神経内科医である。神経内科医が超音波検査に関する書物の巻頭に寄稿できる時代になったかと思うと、感慨もひとしおである。
 ひと昔前までは超音波検査といえば循環器病学や消化器病学の独壇場であり、神経内科医が超音波機器を触ることなどは想像に難かった。その後、循環器病学の延長線上で超音波検査が頭頸部から脳の血管へも応用されるに至り、神経内科医のなかでも脳卒中診療を生業とする脳血管内科医が超音波領域へと参入を始めた。しかし、古典的な神経内科医は神経症候学や電気生理学に軸足をおく傾向が強く、また残念なことに、脳卒中を担当しない神経内科医も少なくはない。そのため、神経内科分野で超音波検査が広く流布したとは言い難かった。それでも末梢神経や筋といった神経内科での本丸の一部ともいえる臓器に対して、果敢にも超音波検査を駆使する先達も現れた。末梢神経に対する超音波検査の応用は、1985年のSolbiatiらの報告をもって嚆矢とする。その後の黎明期にあってはFornageらも多くの論文を発表しているが、当時の画像は多くの技術的な課題を抱えており、その頃の論文の図譜からは、観察できる視野は狭く、空間分解能も低かったことが読みとれる。
 当初は超音波画像の質的な限界があり、また技術的困難さもあり、末梢神経や筋に対する超音波の応用は限定的であった。しかし昨今の超音波診断機器の進歩は目覚ましく、高周波数/小型プローブの開発、組織調和エコー法、さらには三次元再構成技術などにも及んでいる。こうした技術躍進は末梢神経や筋の描出能力を飛躍的に向上させ、体表からでも容易に探索することが可能となった。超音波検査は非侵襲的に繰り返し実施可能な検査であり、長い走行の神経や複雑な構造の筋を三次元的に形態把握することが可能である。また可動性のある組織を描出できる点では四次元的な検討も可能な検査ともいえるし、さらには組織内部のエコー輝度の変化なども検出し得る。非侵襲性や簡便性など、多数の特長を有する超音波検査であるので、検査の質的向上さえ担保されれば、末梢神経や筋に関する臨床の場で広まりをみせることは自然な流れであった。昨今では、ひと昔前とは比較にならないほど多くの施設で末梢神経・筋への超音波検査が実施されるようになった。しかし神経内科においての超音波検査は、循環器病や消化器病におけるそれと比較すると、まだまだ一般化したとは言い難く、この分野の技術の確立と啓発が喫緊の課題である。
 本書は、これから初めて超音波で末梢神経・筋を観察してみたいという初学者の方や、すでにそうした観察の経験はあるが、本邦での標準的な観察方法について学びたいという方のために企画された入門書である。実際に超音波を末梢神経や筋の観察や診断に応用している第一線の先生方に執筆をお願いした。本書に接することで一人でも多くの方が超音波の末梢神経・筋への応用に興味をもっていただければ、企画者としては望外の喜びである。

2018年5月
編集責任者を代表して
北里大学医学部神経内科学主任教授
西山和利

 超音波を用いての末梢神経・筋の評価を始めたい、標準的な評価法・観察方法について学びたいという初学者に向けた実践的な入門書である。記述の中心になっておられるのは編集責任者である西山和利先生、幸原伸夫先生、野寺裕之先生の3人の先生方で、編集は「神経筋超音波研究会」とある。この会は脳血管、neuromuscularを含め神経疾患全般に関わる超音波診断を扱う研究会として発足したものと聞き及んでいるが、まず一読して、神経筋疾患の評価について、超音波検査が今なしうることと今後の展望が、その限界も含めて誠実に語られているというのが第一の印象である。共著本にありがちな各著者の意見のバラツキや不統一がほとんど目立たないのも特筆すべき点と思う。これは、「神経筋超音波研究会」という組織が一体となって研鑽しながら、この困難かつpromisingな課題に取り組んでいることを物語る、なりよりの証明であると私は思う。
 私自身もずいぶん以前に、超音波が末梢神経疾患の診断に役に立つかもしれないという発想をもったことがあるが、当時の機器の空間分解能の低さや手技の問題などからほとんどこの世界からは遠ざかっていた。本書に掲載された写真や付録のweb動画をみると、当時とは比べ物にならない鮮明な画像に驚かされる。この数年の間の超音波診断機器の進歩には敬意を表する以外ないが、私自身は末梢神経の病理を専門の一つにしているので、ここで見えるようになった超音波所見の背景にどんな病理像があるのだろうか、ということがとても気になる。末梢神経幹の多くは生検の対象にはならないので、剖検での探索が中心になろうかと思うが、ぜひ、超音波でしっかり検索された患者さんが不幸にしてお亡くなりになった際には、病理形態的にこの超音波所見の背景を明らかにしていただきたいと思う。本書の第2版、第3版刊行の際に、こういう超音波所見は細胞浸潤を反映している、軸索変性のactive phaseを示している、などという記述が加わることを楽しみにしている。超音波所見の背景病理という課題は筋疾患でも同じことが言えるかもしれないが、こちらはもう少し達成が容易かもしれない。筋炎などの炎症の多寡が超音波で簡単に確認できれば、治療法の選択や経過観察に大きく寄与できること請け合いである。
 このほか、末梢神経幹での血流速度の評価などは末梢神経エコーのみが達成できる課題であり、今後の症例の蓄積によっていろいろなことがわかることが期待できる。現在の機器では、神経上膜を長軸方向に走る小動脈の血流スピードの評価に留まるのだろうと思うが、さらなるハードウェアの進歩によって将来的に神経内鞘の血流まで評価できるようになったら、末梢神経疾患、とくにGBS、CIDPなどの炎症性末梢神経疾患の治療法選択やフォローアップに大きく貢献することができるに違いない。
 私は末梢神経の講演の際には臨床、電気生理、病理が末梢神経疾患診断での3本柱であるという話をすることにしている。現時点で末梢神経エコーの位置付けは電気生理と病理の間の橋渡しというところであろうか。いずれの検索方法も長所・短所がある。超音波診断の利点と限界を知りつつ、神経疾患のよりよい臨床をするための手引きとして、広い層の読者に読まれる価値のある入門書と思う。

臨床雑誌内科122巻6号(2018年12月号)より転載
評者●山口大学大学院医学系研究科神経内科学講座教授 神田隆