臨床腎臓病マニュアル

- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

若手腎臓内科医、レジデントを対象に腎臓内科の日常診療において知っておかなければならない、診察、検査、救急処置、主要疾患の病態とその診療法、腎機能低下時の薬剤使用上の注意についてコンパクトに解説。腎代替療法、腎移植、泌尿器科疾患など関連分野も必要最低限知っておきたい知識もまとめ、知りたいことがすぐにわかる便利なマニュアルとなっている。
1 腎臓病の考え方:オーバービュー
A 排泄
B 再吸収
C 内分泌
2 腎臓病の診察
A 病歴聴取のポイント
B 身体所見のポイント
3 腎臓病の検査
1 一般血液検査
2 血液ガスの解釈
A 酸塩基平衡
B 分類と診断
C 血液ガスの読み方の実際
3 尿検査
A 尿定性検査(半定量)
B 尿沈渣
C 生化学(定量検査)
4 免疫学的検査
5 バイオマーカー
A 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
B 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
C トロポニン
D クレアチンキナーゼ(CK)
6 画像診断
A エコー
B computed tomography(CT)
C magnetic resonance imaging(MRI)
D 単純X線写真
E 経静脈的膀胱造影(IVP)
F 腎動脈造影
G 腎静脈造影
H 逆行性腎盂造影(RP)、排泄時膀胱尿道造影(VCG)
I 腎シンチグラフィ
7 腎生検
A 腎生検の適応
B 腎生検の方法
C 腎生検の読み方
D 腎生検所見から臨床へのフィードバック
4 腎臓病の診療の実際
A 蛋白尿の患者
B 血尿の患者
C 浮腫の患者
D 腎機能低下の患者
E 多尿の患者
5 腎臓病患者の救急処置
A 慢性腎臓病患者の高カリウム血症
B 慢性腎不全患者の急性増悪時のアプローチ
C 血液透析患者の血圧管理
D シャント狭窄、閉塞
E 腹膜透析患者における腹膜炎
6 原発性糸球体疾患の病態と治療の実際
A 急性腎炎症候群
B IgA腎症
C ネフローゼ症候群総論
C-1 微小変化型ネフローゼ症候群
C-2 巣状糸球体硬化症
C-3 膜性腎症
C-4 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
D 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
7 続発性糸球体疾患の病態と治療の実際
A 糖尿病性腎症
B 高血圧性腎硬化症
C コレステロール塞栓症
D 膠原病に伴う腎疾患
D-1 ループス腎炎
D-2 強皮症腎
D-3 関節リウマチ
E アミロイドーシス
F 血栓性微小血管症(HUS/TTP)
G 悪性腫瘍に伴う腎障害
8 尿細管間質疾患の病態と治療の実際
A 急性間質性腎炎
B 慢性間質性腎炎
C IgG4関連間質性腎炎
9 嚢胞性腎疾患の病態と治療の実際
A 多発性嚢胞腎
B 腎嚢胞
10 慢性腎臓病(CKD)の病態と治療の実際
A 慢性腎臓病(CKD)
B CKDの診断
C CKDの疫学
D CKDの病態生理
E CKDの検査所見
F CKD治療総論
G 生活指導、食事療法
H 高血圧の管理
I 糖尿病の管理
J 脂質異常症の管理
K 貧血
L CKD-骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
11 水・電解質異常の病態と治療の実際
A ナトリウム代謝異常
B カリウム代謝異常
C カルシウム代謝異常
D 酸塩基平衡異常
12 急性腎障害(AKI)の病態と治療の実際
A 急性腎障害とは(ARFからAKIへ)
B AKIの診断
C AKIの病態
D AKIの鑑別診断
E AKIの治療マネージメント
F AKIに対する血液浄化療法
G AKIからの回復
13 透析
1 血液透析
A 末期腎不全と透析導入
B 腎代替療法の種類と疫学
C バスキュラーアクセス
D 使用される医療機材・薬剤と実際の治療
E 血液透析患者における合併症
F 血液透析中の合併症
G 併存疾患
H 今後の課題
2 腹膜透析
A 治療の全体像
B PDファーストと残存腎機能保持
C PD+HD併用療法
D PD液の生体適合性
E 心機能障害を有する患者のPD
F テンコフカテーテル挿入術
G カテーテル出口部管理
H 感染性腹膜炎の診断と治療
I 腹膜組織・細胞診のみかた
J 硬化性腹膜炎
K tidal PD
L ヘルニア・透析液リーク
3 CRRT
A CRRTとは
B 治療法
C その他の治療法
D CRRTの適応
E CRRTの治療量
F CRRT施行時の注意点
G CRRTの離脱
14 腎移植
A 腎移植とは
B 生体腎移植
C 献腎移植
D 免疫抑制
E 生着率
F 拒絶反応
G 合併症
15 腎不全患者の栄養管理
A 慢性腎臓病における栄養の重要性
B 栄養素とその臨床的意義
C 栄養投与量の推奨値
D 腎臓病と栄養状態
E 透析・合併症対策による栄養状態の改善
F 急性腎不全
G その他トピックス
16 尿路感染症
A 検査
B 疾患別
17 尿路結石
A 定義・概念
B 疫学
C 病態
D 臨床症状
E 診断
F 治療(薬物療法)
G 再発予防
H 経過・予後
18 排尿障害
A 排尿障害の分類
B 排尿障害の診断に必要な質問票
C 排尿障害の治療
19 腎腫瘍
A 疫学
B 病理
C 診断
D 病期分類
E 転移を有する症例での予後因子
F 治療法
20 妊娠と腎臓病
A 妊娠における腎臓への影響
B 妊娠のステージ分類
C 慢性腎臓病患者の妊娠に対する一般的な対応
D 主な各疾患ごとの妊娠許可条件、妊娠後の対応
E 糖尿病性腎症
F 維持透析患者
G 腎移植患者
21 腎機能低下時の薬剤使用上の注意
A 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
B 抗菌薬
C 糖尿病治療薬
D 降圧薬
E 脂質異常症治療薬
F 消化器官用薬
G ステロイドおよび免疫抑制薬
H その他腎不全でよく使用される薬剤
I 抗てんかん薬
J ヨード造影剤
K MRI造影剤
索引
腎機能が低下している患者への対応は、実際の臨床現場では避けて通ることができない。腎臓を専門にしている場合はもちろん、慢性腎臓病(CKD)患者は国民の1割であるとされ、透析患者は全国で30万人に近くなっており、腎臓以外が専門の場合も腎機能低下患者の診療の機会には数多く遭遇する。さらに、電解質異常や酸塩基平衡異常に対処しなければいけない機会も数多い。
本書は、これを片手に直ちに診療ができることを意図として編集・執筆された、主に研修医および専門に入って間もない医師を対象とした実用書である。もちろん、病態生理に関する最新の知見にも触れ、既に経験を積まれた医師の方々にとっても、役に立つような内容にもなっている。また、実際の現場では内科医がよろず相談窓口となる場合が多く、泌尿器科的問題に関しても相談されることを度々経験する。本書では、そのような問題についてもカバーした。このように、本書は幅広い範囲をカバーしているが、腎臓病学は全身を診療する分野であり、これは実際の診療現場の状況を反映したものである。
本書を執筆して下さったのは、実地臨床の最前線で活躍されており、個人で教科書を出されるようなトップリーダーの先生方である。最新のエビデンスとガイドラインを網羅しながら、その診療のエッセンスを記して頂いた。お忙しい中、執筆の労をおとり頂いたことを、紙面を借りて深謝する。
本書が、読者諸兄の実地臨床の現場でお役に立つことを、心より願っている。
2012年4月
南学正臣
腎臓病学は幅広い。
検尿異常などで診断される腎臓病の入り口から、腎代替療法を行ういわば腎臓病の出口まで、そのすべてが腎臓内科医のカバーすべき範囲になる。腎生検組織の病理診断を行い、治療方針を決定するのも腎臓内科医なら、ICU で血液浄化を行うのも腎臓内科医である。
腎臓内科に対するイメージは医師によって、また病院によって大きく異なるのではないだろうか。
腎臓内科医すら、この広範な領域のどこを専門にするか迷う中で、初学者や研修医、他科の先生方がこの領域をわかりにくいと思うのも無理はない。しかしその一方で、慢性腎臓病は成人人口の 13% ともいわれており、もはや国民病といっても過言ではない。他科の医師にとっても慢性腎臓病は、避けては通れない疾患になってきている。
本書はそんな方々にとってお勧めの一冊である。
本書は、白衣のポケットに入るサイズでありながら腎臓病治療に必要な事柄が網羅されており、驚きの情報量である。それでいて情報がうまく整理されており、図表が多用されているので、気づけば読み終わって、知識が増えている、そんな本である。
本書はまず、腎臓病の考え方、オーバービューから入り、診察、検査、そして診療の実際から各論に入っていくが、これは研修医が実際に患者さんを前にしたときに必要とされる知識を順番になぞっており、すばらしい導入である。さらに各論ではそれぞれの病態の概要から診断、治療から予後にいたるまで、非常に要領よく簡潔に情報が網羅されているが、その間には診断基準やガイドラインがさりげなく挿入されており、初学者のみならず、助けられることは間違いない。「〜の実際」というタイトルの章が多いが、その言葉が示す通り、本書は臨床の現場で即役立つ情報が網羅されている。
さらには序文にもあるように、腎臓内科医を窓口として尋ねられがちな泌尿器科疾患、腎不全患者の栄養管理、妊娠と腎臓病、腎機能低下時の薬剤使用上の注意など、腎臓内科で必要な情報が余すところなく網羅されており、臨床の現場を反映している。
本書は腎臓病学の分野の若手リーダーが多数執筆していることも、特徴の一つである。それぞれの専門領域に関する記載には、専門家ならではの切り口があり、大変明快かつ斬新である。分担執筆の教科書には重複がつきものだが、本書は驚くほどに重複が少なく、それぞれの項を通して一貫性があり、通読しやすい。これは編集を担当された南学正臣教授のご尽力の賜物であろうと推察できる。
本書を読めば、とっつきにくかった腎臓病学が身近になることは間違いない。初学者、研修医のみならず、他科の先生方や指導医にもお勧めしたい一冊である。
評者● 柳田素子
内科110巻6号(2012年12月号)より転載
