外科研修マニュアル改訂第2版
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

アドバンスドなマニュアルとして好評を得た、京大外科学講座による研修医マニュアル。今改訂では、記載レベルを維持しつつ、後期研修に必要な知識・技術をさらにコンパクト化することで頁数を大幅にスリム化した。総論部では緩和医療、化学療法、感染対策などの記載を刷新し、各論部では診療ガイドラインや化学放射線併用療法などの解説を加えた。外科専門医までに必要な疾患を網羅し、研修の場で各疾患の診療のポイントを分かりやすく解説した、外科研修医必携の一冊。
外科研修を始めるにあたって
総論1 外科患者の基本的診察法
I 病歴の聴取(medical history、medical interview)
II 診察
総論2 基本的処置法の手技とそのコツ
I 静脈ライン設置
II 中心静脈カテーテル挿入法
III 動脈ライン留置法
IV 腹腔穿刺・胸腔穿刺
V 導尿・膀胱洗浄
VI 浣腸・洗腸
VII ガーゼ・包帯交換・ドレーンの管理
VIII 胃管挿入とその管理
IX 局所麻酔法
総論3 薬剤と処方
I 薬剤の処方の仕方・指示の出し方
II 輸液
III 輸血血液製剤
IV 抗生物質
V ステロイド
VI 鎮痛薬・解熱薬
総論4 院内感染の予防と対策
I 消毒法指針
II 院内感染予防策
III 血中ウイルス感染予防策
IV 血液・体液暴露事故後の対策
V 多剤耐性菌を含めた術後感染症の予防
VI 結核・インフルエンザなどの空気感染・飛沫感染の予防
総論5 緩和医療
I 全人的医療
II 緩和医療の意味
III 症状緩和の実際
IV チーム医療(緩和ケアチーム)
V 在宅緩和ケア
VI 家族のケア
VII 看取りの意味とコミュニケーション
総論6 インフォームド・コンセントと医療安全
I 医療法とインフォームド・コンセント
II 患者への接し方
III 患者・家族との関係
IV 患者・家族のニーズの把握
V 生活指導
VI 病名の告知(癌・急性疾患を中心に)
VII 医療安全と医療メディエーション
総論7 EBMとクリニカルパス
I EBMの考え方
II クリニカルパス
総論8 診療記録
I 診療計画・評価・記録
II 入院診療経過(診療録)の記載
III 診療録(カルテ)の整理
IV 症例の提示・要約
V 退院時要約の作成
VI 診断書・証明書
VII 紹介状・返事
各論1 手術
I 手術器具の種類と使用法の要点
II 手術手技の要点
III 外来小手術のコツ
IV 標準的到達法と適応
各論2 輸液・栄養
I 術後輸液管理
II 静脈栄養
III 経腸栄養
各論3 輸血
I 血液型判定・交差適合試験
II 輸血の適応と副作用
III 血液凝固機序の異常とその対策
各論4 抗腫瘍化学療法
I 抗癌薬の種類と投与法
II 抗癌薬の効果と薬物動態
III 抗癌薬の副作用対策
IV 化学療法と放射線療法の併用
〈サイドメモ〉臨床試験
各論5 救急処置の要点
I ショック
II 腹部救急疾患
III 胸部救急疾患
IV 外傷の処置
V 熱傷の救急処置
VI 人工呼吸管理
各論6 内科疾患患者の周術期管理の要点
I 糖尿病患者
II 腎疾患患者
III 肝疾患患者
IV 慢性肺疾患患者
V 心疾患患者
VI 特殊感染症
各論7 臓器別アプローチ
I 乳腺
II 食道
III 胃・十二指腸
IV 小腸
V 虫垂
VI 結腸・直腸
VII 肛門
VIII 肝臓
IX 脾臓
X 門脈疾患
XI 胆嚢・胆道
XII 膵臓
XIII 腹壁・後腹膜とヘルニア
XIV 腹腔鏡下手術
XV 小児外科
XVI 移植医療
索引
本書は外科診療の現場において、さらに使いやすいマニュアルをめざして、今回の改訂を行いました。教科書にあるような一般的な内容の記述は極力除き、コンパクトなハンドブックとして有効に活用できるものとしました。一方で、本書オリジナルの特色である病態、診断、治療における重要な基本的コンセプトに対しては見やすいようにスペースを配慮していますので、繰り返しこれらを確認しながら、個々の患者さんの診療にあたることができるようにしています。本書を利用して、知らず知らずのうちに外科診療の基本を自分のものにしながら、合理的な応用ができるようになることを期待しております。
外科診療の中には古くから変わらない基本的な考えや手技が存在する一方で、時代とともに変わりゆく領域があります。感染症対策、緩和医療、輸液と栄養、抗腫瘍化学療法などにおいては、最近その考え方が変化しておりますので、最新なものとしました。患者さんに対して最良の外科医療を提供するために、必要とする情報が容易に収集できる環境が発達した現在では、EBMの正しい理解と実践が必要です。また、医療の効率化と標準化、および安全性向上のためにクリニカルパスの導入がすでに多くの領域で盛んに行われていますが、パスの正しい運用のためには正しい理解が必要ですので、これらの事項も追加しました。
各論においては多くの知識を網羅するのではなく、各臓器における外科的疾患の診断と治療において、本質的に必要なことを厳選しコンパクトにまとめ直しました。さらに使いやすく、わかりやすくなっていることと思います。
おわりに、京都大学外科学3講座と京都大学外科交流センター所属の先生方、および京都大学初期診療・救急医学講座の先生方のご協力に感謝いたします。
2009年2月
改訂第2版編集代表
上本伸二
坂井義治
戸井雅和
外科診療はサイエンスとアートであるとよくいわれる。本書を一読して、ここ10〜20年間で医療の質が根本的に変化したと強く感じた。最近、外科診療の現場に導入された大きな柱はevidence-based medicine(EBM)とインフォームド・コンセント(IC)で、サイエンスとアートに加え、「情報公開」や「社会貢献」という医療の社会性が重視されるようになってきた。
本書でもこの点については多くの頁を割いて記載されている。ドレッシング法、予防的抗生物質の使用法、院内感染の考え方、多剤耐性菌、緩和医療、オピオイドを用いた疼痛管理、インシデント・アクシデント、医療安全、クリニカルパス、抗癌薬治療、臨床試験など、ここ数年で臨床現場に導入されたり、考え方が大きく変化した項目に関して、詳細に記載されていることには好感がもてる。それに加えて、従来の病歴聴取、外科診察法、中心静脈カテーテル挿入などの処置、局所麻酔法、外科的手技、疾患別の手術法、術前術後管理などに関しても簡潔に記載されており、この1冊があれば外科研修を受ける最低限の知識が身につく。
現在の臨床研修制度では、外科志望以外の多数のジュニアレジデントが3ヵ月程度の外科研修を受ける。そのような非外科志望のジュニアレジデントに短期間で外科診療の基礎と魅力を伝えるためには、このようなコンパクトなマニュアルが必要であり、時代のニーズに即した1冊といえる。現在の外科診療でもっとも重要なことは、「安全かつ確実な医療」を提供することである。安全かつ確実な医療を提供するためには、本書のような詳細なマニュアルが必要である。しかし、詳細なマニュアルだけでよい外科医が育つわけではない。最近の携帯電話には詳細な分厚いマニュアルがついてくるが、多くのユーザーはまったく読まない。それでも携帯電話は安全に使用できるが、外科診療はそうはいかない。外科を志望するレジデント諸君には、本マニュアルを基礎として自分自身の外科診療におけるサイエンスとアートを築き、そして対人関係である医療の社会性について思索することを期待したい。
評者● 佐田尚宏
臨床雑誌外科71巻7号(2009年7月号)より転載
