医科細菌学改訂第4版

- 商品説明
- 主要目次
- 序文

1989年発行の初版以来、医学部学生から研究者・臨床医まで多くの読者に支持されてきた細菌学教科書の最新改訂版。旧版の基本方針を踏襲しながらも、学問領域および社会医学的研究の進展にともない、現在の細菌学に要求される目次内容構成に改編、基礎・臨床医学的研究の最新知見を盛り込んだ。今改訂より、新たな編集・執筆体制となり、第一線の研究者がその専門分野を執筆、詳細かつわかりやすい内容となっている。
第1章 細菌とは
1 病原細菌研究の歴史と現状
2 細菌の生物学的位置づけと病原細菌
3 細菌の構造と形態
4 細菌の増殖と培養
5 細菌の分類と同定
第2章 細菌の遺伝と発現調節
1 核酸
2 プラスミド
3 バクテリオファージ
4 遺伝子の移行
5 遺伝子の変化と再構築
6 タンパク質合成
7 代謝の遺伝的調節
8 遺伝子/DNA解析技術
第3章 細菌の生理と生化学
1 細胞壁
2 莢膜(表面多糖体)
3 外膜
4 ペリプラスム
5 細胞質膜
6 代謝
7 タンパク質の分泌
8 べん毛と走化性
9 適応
第4章 細菌の感染と免疫
1 感染と感染症
2 宿主生体防御
第5章 細菌の病原性と生体防御機構の克服
1 総論
2 病原細菌の感染と生体防御の克服
3 細菌毒素
4 エンドトキシンとスーパー抗原によるショック症
5 細菌の免疫回避
6 ビルレンスの発現と調節
第6章 細菌感染症
1 総論
2 各論
第7章 公衆衛生と国際感染症
1 病原体の危険度レベル分類
2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
3 新興・再興感染症
4 輸入感染症
5 院内感染症と市中感染症
6 予防接種
7 感染の疫学
第8章 抗菌薬と薬剤耐性
1 抗菌化学療法
2 抗菌薬の作用メカニズムと抗菌薬の特徴
3 抗菌薬の選択
4 薬剤耐性
5 化学療法剤の副作用
6 話題の耐性菌
7 滅菌と消毒
第9章 医真菌学
1 総論
2 各論
第10章 口腔細菌学
1 口腔の細菌叢と感染症
2 口腔領域の自然免疫と感染抵抗
3 う触、歯周病、歯性菌血症
4 その他
第11章 人獣共通感染症
1 伝播様式
2 わが国における人獣共通感染症
3 人獣共通感染症の宿主
4 わが国における人獣共通感染症に対する対応
第12章 細菌学各論
1 グラム陽性球菌
2 グラム陽性桿菌
3 グラム陰性桿菌
4 グラム陰性球菌
5 グラム陰性らせん状菌
6 マイコバクテリウム(抗酸菌)
7 放線菌関連菌
8 スピロヘータ
9 マイコプラズマ
10 リケッチアとその近縁菌
11 クラミジア
2001年の改訂第3版の出版から早くも7年が経過し、今回本書を全面改訂することにした。この間、炭疽菌によるバイオテロの発生やSARSのような新しい感染症の出現などとともに、地球規模での環境汚染、温暖化、地下資源の枯渇、食料危機等、我々を取り巻く国際社会の状況は混沌としている。国内でも、感染症やバイオテロの脅威、あるいは食の安全に対する社会的関心の高まりに伴い、2006年には感染症法の一部改正により、感染症類型指定の見直しが行われ、病原体等の管理・取扱とその運営基準等も法により定められることとなった。また、この間の生命科学および情報科学の進展は著しく、上述の感染症の脅威とも相まって、病原微生物学の分野も急速な進歩を遂げた。
このような背景から、2005年に本書の全面改訂を開始したが、2006年暮れの改正感染症法の制定、その他諸般の事情により、本書の改訂は当初の計画より大幅に遅れた。しかし一方で、新たな編集者に林哲也教授を迎え、また執筆者も大幅な入れ替えを行い、各章を系統的に理解できるよう組み直し、それに沿って内容も可能な限り刷新した。その結果、基礎細菌学から臨床細菌学まで、基本的な知識とともに最新の知見を取り入れることがでさ、初心者から専門家まで、広くかつ必要に応じて深く学ぶことのできる教科書を作りあげることができたことは幸いであった。さらに、この間、感染症法の改正だけでなく、医学・薬学教育制度の改革や各大学における医歯薬連携も実現した。これらの状況を踏まえて、今回、医真菌学、口腔細菌学、人獣共通感染症を独立した章として加え、抗菌薬と薬剤耐性の章も全面的に改訂した。また、基礎細菌学をいっそう充実させると同時に、感染症の発症あるいはその防御機構を理解するうえで重要な免疫学については、特に近年著しく進展した自然免疫学に関する記述を全面的に改訂した。
一方、国際感染症や臨床細菌学の現状に対する理解を深めるために、細菌感症、公衆衛生と国際感染症、細菌学各論でも、最新の知見を取り入れて大幅な改訂を行った。なかでも、改正感染症法の解説と病原体取り扱い規則に関しては、紙面を惜しまずに詳細かつ平易な解説を行った。
したがって、今回は。これまでの「医科細菌学」で貫かれた初版以来の方針を継承しつつも、新たな時代に即した最新の知識をできるだけ体系づけて理解できるよう努力した。また、新しい試みとして囲い記事を設け、内容的にやや高度と思われる事項や最新のトピックスを紹介することとした。しかし一方で、紙面の都合により、多くの章で内容の一部を割愛あるいは短縮しなければならなかったことは残念であった。
今後も、読者からの批判や要望を取り入れ、本書のさらなる充実に向けて努力してゆきたい。本書の全面改訂に貴重な時間を費やしていただいた執筆者の方々には、この機会に編集者を代表してあらためて深謝する次第である。
最後に、本書の初版を刊行され、また第3版改訂にむけ尽力された故吉川昌之介先生(東京大学名誉教授)に本書を捧げ、ここに謝意を表したい。
2008年6月
編集者を代表して
笹川千尋
(一部改変)
