ナースがおこなう静脈注射
安全に実施するための知識と技術

- 商品説明
- 主要目次
- 序文

「静脈注射実施にあたっての予備知識」から「合併症・副作用の早期発見・対応」まで、ワンショット・点滴・CVLにわたって安全・確実に静脈注射を実施するためのノウハウを解説。聖路加国際病院における院内基準と研修プログラムをベースに、どこの施設においても活用可能なように、すべてをカラー写真で示しマニュアル化、静注テキストの決定版。
第1章 静脈注射実施にあたっての予備知識 佐藤エキ子……1
I 看護業務の法的位置付けと看護業務基準……1
A 看護業務の法的位置付け……1
B 看護業務基準……2
II 静脈注射の行政解釈の変更……3
III 医師の指示と看護師の判断について……4
1 医師の指示と看護師の自律的判断……4
2 倫理的判断……4
IV 静脈注射の実施に関する基準……4
A 日本看護協会「静脈注射の実施に関する指針」……4
B 聖路加国際病院における「看護師の静脈注射実施に関する基準」……6
《コラム》聖路加国際病院 静脈注射ができる看護師のオリジナルバッジ……7
Review Question……7
第2章 静脈注射における感染予防 坂本史衣……8
I 血管留置カテーテル由来血流感染(CR―BSI)の疫学……8
A CR―BSIの定義……8
B CR―BSIの発生頻度……8
C CR―BSIの主な起因菌……9
D CR―BSIの感染経路……9
1 皮膚細菌叢……9
2 カテーテルハブの汚染……9
3 薬液汚染……10
II 血管留置カテーテル由来血流感染(CR―BSI)の予防……10
A 刺入時の清潔操作……10
1 手指衛生と手袋の着用……10
2 刺入部位の選択……12
3 刺入部位の消毒……12
B 刺入部位のケア:被覆材の種類と交換頻度……12
C カテーテルおよび輸液ルートの交換と管理……13
1 交換頻度……13
2 輸液注入ポート……13
3 インラインフィルター……13
D 薬液の作成と管理……13
1 点滴薬剤の混合と投与のタイミング……13
2 多用量バイアルの管理……14
E 職業感染防止……14
Review Question……15
第3章 静脈注射における安全対策 寺井美峰子……16
I 「静脈注射に関する院内基準」と「静脈注射の手順」を守って実施する……16
A 「静脈注射に関する院内基準」と「静脈注射の手順」を守ることが安全につながる……16
B 静脈注射の一般的な手順と確認のポイント……17
1 医師の指示の把握……17
2 医師の指示の変更・中止時のポイント……17
3 薬剤の準備……17
4 投与前に投与する薬剤が指示どおりであることの確認と静脈注射の実施……17
5 実施後の観察……17
6 実施した静脈注射についての記録……17
II 与薬におけるエラー防止対策……17
A 医師の指示と薬剤との照合確認方法……17
1 医師の指示の把握……17
2 照合の第1段階……18
3 照合の第2段階……18
B 患者誤認防止対策……19
1 患者誤認防止対策の原則……19
2 静脈注射における患者誤認の場面と対策……19
C 与薬業務を中断した場合のエラー防止対策……20
1 静脈注射業務中断による影響……20
2 業務中断への安全対策……20
3 業務を中断して引き継ぐ場合の安全対策……21
D タイムプレッシャーによるエラー防止対策……21
1 あせっていても確認手順を省略しない……21
2 静脈注射を他の業務に優先し、集中して行う……21
3 同僚に援助を依頼する……21
E ヒューマンエラー防止対策……22
1 エラー防止に効果のある確認方法:指差し・呼称……22
2 ダブルチェック……22
3 「忘れ」対策……22
F 口頭指示の危険性とエラー防止対策……23
1 口頭指示による危険な落とし穴……23
2 口頭指示によるエラー防止対策……23
G 与薬エラーを誘発しやすい薬剤……24
1 類似によるエラー……24
2 規格違いによるエラー……24
III インシデント・アクシデント発生時の対応……25
1 間違った薬剤、間違った量の投与……25
2 副作用、有害事象の発現……25
3 穿刺時の末梢神経損傷……25
Review Question……26
第4章 知っておくべき薬剤の知識と危険性 後藤一美……27
I 注意すべき薬剤――その分類と注意点……27
A 作用の強さ(危険性)による分類……27
B 薬効・薬理学的な分類……27
II 投与にあたって注意すべき点……29
A 投与経路、用法・用量……29
B 投与速度……29
C 配合変化……31
D 相互作用……31
III 重大な副作用――その初期症状と対応……32
Review Question……33
第5章 静脈注射の実際 ……34
5-1 静脈注射の基本知識 片山正夫……34
I 皮膚および静脈の解剖生理……34
A 皮膚の解剖生理……34
B 静脈の解剖生理……36
II 解剖生理からみた適切な駆血方法……36
III 解剖生理からみた注射部位の選択……37
IV 刺入針やカテーテルの選択……38
V 動脈穿刺の予防と治療……40
VI 血管痛の予防・除去……40
Review Question……41
5-2 実施手順 金井久子、加藤恵子……42
1 必要物品の準備……42
2 手洗い、手袋の着用……42
3 医師の指示の確認と薬剤の準備……42
《コラム》注射針の選択/「ワンショット」と「点滴」……43
4 患者への説明……44
5 穿刺部位の選択……44
6 血管確保……45
《コラム》留置針、翼状針の固定時の注意点/穿刺時の注意点、点滴開始後の注意点……49
7 抜針……50
側管注の場合の実施手順……50
Review Question……52
5-3 静脈注射の管理 中島千春、高屋尚子……53
1 輸液ルートに必要な物品……53
2 輸液ルートの作成……55
3 輸液投与の方法――輸液投与速度の調節のしかた……59
4 輸液ルートからのワンショット(側管静脈注射)の方法……60
5 輸液投与中の観察項目……60
6 記録……62
7 γ(ガンマ)計算について……62
Review Question……63
第6章 合併症・副作用の早期発見と早期対応……65
6-1 血管外漏出 衛藤 光、金児玉青……65
I 血管外漏出による皮膚障害……65
1 静脈炎……65
2 皮下水腫・血腫……66
3 皮膚炎……66
4 皮下脂肪織炎……66
5 皮膚潰瘍……66
6 皮下組織の壊死……67
II 注意を要する薬剤について……68
1 抗がん剤……68
2 蛋白分解酵素製剤……69
3 高浸透圧薬……70
4 強アルカリ性・強酸性薬剤……70
5 血管収縮薬……71
6 電解質補正用製剤……71
7 その他……71
III 漏出時の対処法の基礎理論……72
1 薬剤性の急性細胞障害を最小限にとどめる……72
2 漏れた薬剤を早期に希釈、除去する……72
3 漏れた薬剤を中和する……72
4 遷延する組織障害対策……73
5 壊死組織の除去と再建……73
IV 事故を防ぐために……73
1 薬剤の種類……73
2 漏出時間と漏出量……74
3 部位の選定……74
4 患者の状態……74
V 血管外漏出時の対応と処置法……75
1 ステロイド局所皮下注射……75
2 ステロイド外用剤……76
Review Question……77
6-2 アナフィラキシー 片山正夫……78
1 リスク……78
2 症状と診断……78
3 治療……79
4 予防……80
Review Question……80
付録……81
1 複合電解質輸液製剤……81
2 静脈注射に用いるシリンジ(注射筒)……83
3 輸液ポンプ・シリンジポンプ……84
Review Question 解答と解説……85
資料……88
聖路加国際病院看護師の静脈注射実施に関する基準……88
別添1 静脈注射研修プログラム……90
別添2 静脈注射研修プログラム―技術演習(経験者編)……91
索引
2003(平成15)年に厚生労働省から医療提供体制の改革ビジョンとして、医療機関の機能分化・重点化・効率化が示されました。また、在院日数の短縮化、電子カルテの導入など、医療をとりまく環境は急速に変化しています。
こういった環境の変化に合わせて、看護サービスのありかた、とりわけ看護師の業務の見直しが積極的に行われています。
厚生労働省は、2002(平成14)年5月、「新たな看護のあり方に関する検討会」の中間答申を受け、その年の9月30日付けで各都道府県知事あてに「看護師等による静脈注射の実施について」(医政発第0930002号)の通知を出しています。
厚生労働省は、上記「新たな看護のあり方に関する検討会」の中間まとめを踏まえ、看護師による静脈注射を「診療の補助行為」の範疇と解釈し、看護師による静脈注射の実施を正式に認めることに至りました。
その背景には、多くの調査・研究等からも明らかになったように、すでに看護師が静脈注射を実施している施設が多数に及んでいたという実状が鑑みられたことも否めません。
いずれにしても、看護師が静脈注射を行うことが公に認められたことになりますが、その一方で看護師の担うべき責任はさらに拡大してきます。とくに診療の補助行為においては「医師の指示」をきちんと理解し、的確な判断をすることが不可欠です。
聖路加国際病院は、厚生労働省からの通達を受けとった後、直ちに看護師の静脈注射実施に関する院内基準の作成にとりかかりました。当院の基準では、たとえ熟達した看護師であっても、静脈注射を実施するためには当院で定めた「静脈注射」に関する一連のプログラムを修了しなければならない、という条件を設けました。教育プログラムは麻酔科医師、皮膚科医師、臨床薬剤師など他職種とのコラボレーションのもと、看護師が静脈注射をする上で必要不可欠な事項を網羅した内容で構成しました。
本書は、“静脈注射の実施にあたって必要な予備知識”、“静脈注射における感染予防”、“静脈注射における安全対策”、“合併症”など、当院で実施している「静脈注射に関する教育プログラム」を体系的にまとめています。また各項ごとに“Review Questions”のコーナーを設け、復習できるような工夫をしています。本書が、“看護師による静脈注射”が安全かつ安心して行われるための一助になれば幸いです。
2005年9月
執筆スタッフを代表して
佐藤エキ子
