関節リウマチ治療実践バイブル
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 竹内勤 |
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ISBN | : 978-4-524-26862-7 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 290 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
正誤表
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2013年05月21日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
急激な進歩を遂げている関節リウマチの診断と治療の実際を第一線で活躍する医師が詳しく解説。新分類基準と新寛解基準、関節エコー、新薬など、リウマチ診療の“いま”を完全網羅。とくに薬物療法では、アンカードラッグであるmethotrexateや生物学的製剤について、概説から効果的な使い方、副作用対策、実際の症例まで丁寧に解説。リウマチ診療に携わる全医師必読のバイブル。
I 押さえておくべき基本知識
1.診療のパラダイムシフト−関節リウマチの今と昔
2.関節リウマチの定義
3.関節リウマチの概念(疫学、自然経過、予後)
4.関節リウマチの成因と病態
5.関節リウマチの病型
6.関節の構造と機能
7.関節リウマチと骨粗鬆症
II 治療につながる診断力
1.診断のフローチャート
2.関節リウマチの新分類基準の使い方
3.関節リウマチの臨床症状
4.関節リウマチの身体所見のとり方(問診、視診、触診、聴診)
5.関節リウマチの鑑別診断
6.関節リウマチの検査法と評価法
a.一般血液検査
b.尿・便検査
c.生化学検査
d.炎症マーカー
e.免疫・血清学的検査
f.凝固・線溶検査
g.関節液検査
h.病理学的検査
7.関節リウマチの画像診断と評価法
a.各画像診断法の位置付け(画像診断総論)
b.X線
c.CT
d.関節エコー
e.MRI
f.PET・シンチグラフィー
g.関節鏡検査
8.疾患活動性の評価法
9.身体機能の評価法
III 治療薬について知る
1.治療薬総論
2.免疫調節薬
3.免疫抑制薬
4.生物学的製剤
5.補助的治療薬
6.今後臨床導入が見込まれる治療薬
IV 薬物療法の最新指針
1.薬物治療のフローチャート
2.関節リウマチにおけるTreat to Targetとは
3.新寛解基準の使い方
4.methotrexateの効果的な使い方
5.生物学的製剤の使い分けと導入時期
6.免疫抑制薬(methotrexate以外)の効果的な使い方
7.免疫調節薬の効果的な使い方
8.非ステロイド抗炎症薬の効果的な使い方
9.ステロイドの効果的な使い方
10.薬物療法を止めるタイミングとは
V 特殊なケースの薬物療法
1.肺障害がある場合
2.肝障害がある場合
3.腎障害がある場合
4.感染症がある場合
5.骨粗鬆症がある場合
6.妊婦の場合
VI 薬物療法の副作用対策
1.生物学的製剤
2.免疫抑制薬
3.免疫調節薬
4.ステロイド・他の薬剤
VII ケースから学ぶ上手な薬物療法
1.methotrexate最大投与量が効果的であったケース
2.infliximabが効果的であったケース
3.etanerceptが効果的であったケース
ケース1
ケース2
ケース3
4.adalimumabが効果的であったケース
5.tocilizumabが効果的であったケース
生物学的製剤にナイーブな症例にTCZを行った例
TNF阻害薬に効果不十分でTCZに切り替えた症例
TCZ治療を中止後再開した症例
6.abataceptが効果的であったケース
7.golimumabが効果的であったケース
methotrexate非併用例
methotrexate併用例
8.免疫抑制薬(methotrexate以外)が活用できたケース:tacrolimusが奏効した3例
methotrexate不耐性の1例
SASPの効果が減弱した維持透析中の1例
間質性肺炎を合併した全身性硬化症とRAの重複症候群の1例
9.免疫調節薬が活用できたケース
sodium aurothiomalateが活用できたケース
bucillamineが活用できたケース
salazosulfapyridineが活用できたケース
VIII その他の治療法の知識
1.リハビリテーション
2.滑膜切除術・関節形成術
3.人工関節置換術
4.血漿交換療法
5.白血球除去療法
索引
コラム
(1)関節エコーは何故必要か?
(2)関節リウマチのゲノムワイド関連解析とは?
(3)RRR試験のポイント
(4)若年性特発性関節炎での生物学的製剤の使い方
関節リウマチを取り巻く近年の診療環境の変化は、疾患が記載されてからの歴史の中で、最も急激な10年といっても過言ではない。
薬物治療は、メトトレキサートの使用経験が深まり、アンカードラッグとしての位置づけが確固たるものになった。高用量・急速増量によるタイトコントロールなど、5年前とは様変わりした使用法が世界的に用いられている。一方、さまざまな有害事象も課題として挙げられている。まさにリウマチ医にはリスク・ベネフィットを考え、リスクを回避するためのマネジメント能力が求められている。さらに、1998年以降、世界的に導入された生物学的製剤は、関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした。我が国においても、2003年にインフリキシマブが導入されて以降、この10年間で実に7剤もの生物学的製剤が使用可能となった。その臨床的効果、関節破壊抑制効果は、これまでの抗リウマチ薬では考えられなかった劇的なものである。同時に、重症感染症、日和見感染症、生物学的製剤特有の投与時反応/注射部位反応などに対する知識や対策は、欠かすことができなくなった。
新規治療薬の導入に留まらず、関節リウマチ診療の進歩は、分類基準、疾患活動性評価、画像評価、治療リコメンデーション、Treat To Target治療戦略、寛解基準など、診断、評価、治療目標、治療戦略と、極めて広範な領域に及んでいる。
このような変革が激しい関節リウマチ治療の分野において、『目の前にいる関節リウマチ患者さんを、今、どのように治療したらよいか、具体的に指し示してくれる解説書が欲しい』。そのような声が多く聞かれる。本書は、治療を考える上で必要な総論的事項はもちろんのこと、それに引き続いて、具体的ケースを示して各領域のエキスパートが治療の実際を解説するという構成になっている。本書が、最新の関節リウマチ治療を実践する上で、皆様のお役に立てれば幸いである。
2013年3月
竹内 勤
関節リウマチ(RA)の薬物治療は近年大きな進歩を遂げ、生物学的製剤をはじめ多くの薬剤が手に入るようになり、それぞれの薬剤の特徴をもとに患者の症状、病状に応じた使い分けができる時代となった。本書は整形外科医のみならず、内科などの先生方も加わった69名もの執筆者による実践書である。大項目の第I章として「押さえておくべき基本知識」をあげ、その中で診療のパラダイムシフト、病因と病態、さらにはRAと骨粗鬆症を小項目としてあげている。まさにRA患者を診療するうえで欠かせない基本知識をコンパクトに整理し記載している。図表が多用され、見出しをつけてそれぞれのパラグラフが簡潔な文章により記述されており、読んでいて理解しやすい。続いての大項目「治療につながる診断力」の章において、診断、身体所見のとり方、鑑別診断、検査法と評価法、画像診断と評価法、疾患活動性の評価法、身体機能の評価法が個別の小項目として記載されている。患者を目の前にした際にどのように医療面接を行い、どのように診察をすすめ、どのように検査を行っていくかについて、第一線の臨床の場を念頭においてすすめるべき手順を具体的かつ実践的に示している、たいへん役に立つものである。本書のタイトルに「実践バイブル」と付記されている所以であろう。
また評価法を小項目のタイトルであげ、評価についても記載している。診察において所見をとることとその所見をどのように評価するか、検査において検査データをどのように解釈し評価するかは、きわめて重要なことである。医師として診察し、診断(臨床診断推論)し、そしてその診断に基づいた治療方針を決定するための基本手順であるからである。医学科生、研修医にとって学び、習得する基本的なものがまさにこの臨床診断推論である。その点において、本章では評価すべき内容を含めた評価法についてポイントをまとめ、わかりやすく記載している。診察、診断、治療指針を定める臨床診断推論をすすめる手順が本書から学べるのである。
続いて大項目として、「治療薬について知る」、「薬物療法の最新指針」が示されている。具体的な薬物療法を始めるうえでの薬物の特徴と使い方の指針が記載され、薬物をどのように使い分けるのか、効果的な使い方はどのようなものか、薬物療法をやめるタイミングについても言及されており有用である。
さらに大項目として、「特殊なケースの薬物療法」があげられている。RAの患者はいろいろな障害をもっている症例も多いことから、患者に合併している疾患に配慮した薬物療法について記載されていることはたいへん有用である。「薬物療法の副作用対策」についても有用である。薬物の副作用を最小限にするためにはどうすればよいか、また副作用出現に対する対策をどうするかは、実際の臨床の場で必要不可欠なことである。「ケースから学ぶ上手な薬物療法」の項目では、正に上手な方法を学ぶことができる。ケースから学ぶことは実際の症例の経過を学ぶことができるもので、その意義はたいへん大きく、臨床医にとって次の診療に役立てることができる点で有用である。「その他の治療法の知識」についても触れられており、RA患者への対応を学ぶことができる。
このように本書は実践的な内容から構成されており、タイトルにふさわしいもので臨床の場にぜひ備えていただきたい書である。
臨床雑誌内科64巻9号(2013年8月号)より転載
評者●新潟大学整形外科教授 遠藤直人