感染症最新の治療2016-2018
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編集 | : 藤田次郎/竹末芳生/舘田一博 |
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ISBN | : 978-4-524-25832-1 |
発行年月 | : 2016年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 364 |
在庫
定価9,900円(本体9,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新情報と治療方針を整理し、簡潔にまとめた「最新の治療」シリーズの感染症版。巻頭トピックスでは、「鳥インフルエンザとパンデミックインフルエンザ」「MERSコロナウイルス」「新規バイオマーカー:プロカルシトニン、プレセプシン」などの注目テーマを取り上げた。診断や管理についての基本的事項、主な臓器別の感染症、多剤耐性菌・院内感染菌への対応など簡潔に解説し、一冊で感染症の“いま”がわかる。
I 巻頭トピックス
1 エボラ出血熱
2 デングウイルス感染症
3 鳥インフルエンザとパンデミックインフルエンザ
4 MERSコロナウイルス
5 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
6 敗血症(sepsis)
(コラム)新しいsepsis,septic shockの定義と臨床的クライテリア
7 カルバペネム耐性(カルバペネマーゼ産生)腸内細菌科細菌感染症
8 新規バイオマーカー:プロカルシトニン,プレセプシン
9 チクングニア熱
10 パラインフルエンザウイルス感染症
11 RSウイルス感染症
12 ヒトメタニューモウイルス感染症
II 感染症の基本的治療方針
1 感染症診療の考え方
2 抗菌薬適正使用
3 エンピリック治療,de−escalation
III 感染症診断の基本
1 不明熱への対応
2 血液培養の考え方
3 迅速検査の使い方
4 グラム染色とその他の染色法
5 特殊培養が必要な微生物と注意点
6 検体提出の注意点
7 薬剤耐性検査の見方
8 ブレイクポイントの考え方
9 胸部画像診断の活用法
IV 医療手技に関連する感染症
1 カテーテル関連血流感染
2 人工呼吸器関連感染症
3 カテーテル関連尿路感染症
4 手術部位感染(SSI)
V 免疫不全患者における感染症
1 糖尿病患者における感染症
2 癌患者における感染症
3 膠原病・リウマチ性疾患患者における感染症
4 HIV患者における感染症
VI 主な臓器別感染症
A 中枢神経感染症
1 髄膜炎
2 脳膿瘍,硬膜外膿瘍
3 急性脳炎
B 眼感染症
1 眼感染症
C 口腔内感染症
1 口腔内感染症
D 耳鼻科咽喉科感染症
1 急性中耳炎
2 副鼻腔炎
3 咽頭・扁桃炎
4 扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍
E 循環器感染症
1 感染性心内膜炎
2 心筋炎,心膜炎
F 呼吸器感染症
1 Lemierre症候群
2 急性喉頭蓋炎
3 市中肺炎
4 院内肺炎
5 医療・介護関連肺炎(NHCAP)
6 誤嚥性肺炎
7 インフルエンザ
8 肺膿瘍,膿胸
9 慢性気道感染症および急性増悪
10 ニューモシスチス肺炎
11 肺真菌症
G 消化器感染症
1 腸管感染症(細菌性,ウイルス性,原虫性)
2 細菌性腹膜炎
3 胆道系感染症
4 重症急性膵炎(膵壊死部感染)
H 皮膚軟部組織感染症
1 Fournier症候群,Fournier壊疽
2 伝染性膿痂疹(とびひ)
3 蜂窩織炎
4 壊死性筋膜炎
5 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
I 骨・関節感染症
1 人工関節周囲感染
2 化膿性脊椎炎
3 糖尿病性足感染症(diabetes foot infection)
J 泌尿器・生殖器感染症
1 膀胱炎
2 腎盂腎炎
3 無症候性細菌尿
4 急性前立腺炎,急性精巣上体炎
K 産科感染症
1 妊娠中,分娩後に認められる感染症
L 婦人科感染症
1 骨盤内炎症性疾患
M 性感染症
1 淋菌感染症
2 性器クラミジア感染症
3 性器ヘルペス
N 母子感染症
1 先天性風疹症候群
2 先天性サイトメガロウイルス感染症
3 新生児ヘルペス
4 B型肝炎ウイルス感染症
5 先天性トキソプラズマ症
O 特殊なウイルス感染症
1 HIV感染症
2 HTLV−1感染症
P 抗酸菌症
1 結核
2 非結核性抗酸菌症
VII 多剤耐性菌・院内感染菌への対応
1 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
2 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)
3 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
4 多剤耐性淋菌(MDRNG)
5 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
6 β−ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)インフルエンザ菌
7 基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)産生菌
8 メタロ−β−ラクタマーゼ(MBL)産生菌
9 多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
10 マクロライド耐性マイコプラズマ
11 Clostridium difficile感染症
12 侵襲性カンジダ症
VIII 感染予防策
A 感染予防策の基本
1 感染予防策の基本
B ワクチン
1 小児用ワクチン
2 成人用ワクチン
IX 新規抗微生物薬のトピックス
1 delamanid
2 favipiravir
3 asunaprevir
4 metronidazole
5 colistin
索引
序文
このたび、『感染症最新の治療2016−2018』を出版することができた。この企画は当初、南江堂より提案いただいたものである。内科系を代表して藤田次郎、外科系を代表して竹末芳生、および基礎系を代表して舘田一博の3名で編集を担当することになった。年10月にこの3名が集まって編集会議を開催し、本書の編集方針を決定した。
「感染症」(infectious disease)は、疾患のカテゴリーを表す言葉であり、本来健常者には存在しないある種の病原体が外来性に侵入、定着し、増殖した結果起こる臨床的な病的状態を指す。一方、「感染」(infection)なる用語は、厳密には、感染症を引き起こす過程を強調した用語である。一例を挙げれば、この地球上の人類の約1/3は結核菌による「感染」を受けているといわれるが、結核菌による感染症の臨床症状や所見を呈し治療が必要な結核症患者数はずっと少ない。つまり、感染症となるプロセスが開始されることが「感染」であり、感染が成立した結果いずれかの時点で何らかの臨床症状を呈したときに「感染症」と呼ぶ。
感染症は、他の疾患と比較して特異な部分が大きい。まず伝染することが特徴であり、いったんアウトブレイクが起こると社会へのインパクトが大きい。2009年のH1N1パンデミックにおいては、全世界にこのウイルスが拡散した。ただし適切にワクチンを使用すれば、予防が可能となるし、天然痘のように感染症そのものを撲滅することも可能である。また感染症の発症は人の社会活動とも関連していることから、防げないことがあるものの、その感染経路を知ることで予防することも可能となる。さらに人獣共通感染症としての視点も重要であり、社会全体で感染症を捉える必要がある。
一方、本来はヒトや動物に感染して増殖する必要がまったくない微生物のなかにも、時としてヒトに重篤な感染を引き起こすものがある。表皮ブドウ球菌は本来ヒトの体表面(皮膚)で一定の菌数を維持している無害な細菌であるが、中心静脈栄養などを施されている患者のカテーテル感染や重篤な敗血症を起こすことがある。また水回りに存在する緑膿菌は、健常者にはまず無害であるが、重症熱傷や悪性腫瘍末期には致命的な敗血症を起こす。この種の感染症を日和見感染症(opportunistic infection)と呼び、易感染性宿主[compromised(immunocompromised)host]に起こる日和見病原体(opportunistic pathogen)による感染症と定義される。
さて本書の目的は、感染症領域の治療に関する情報を整理し最新の動向を示すことにある。まず「巻頭トピックス」では、特に話題性が高いものを取り上げることとし、テーマとして、「エボラ出血熱」「デングウイルス感染症」「鳥インフルエンザ」「MERS コロナウイルス」「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」「敗血症(sepsis)」「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症」「新規バイオマーカー」「チクングニア熱」「パラインフルエンザウイルス感染症」「RSウイルス感染症」、および「ヒトメタニューモウイルス感染症」を選択した。
次いで総論として、感染症の基本的治療方針と診断、さまざまな診断方法、医療手技に関連する感染症、免疫不全患者における感染症を取り上げた。また各論として、「主な臓器別感染症」では、主要な疾患をわかりやすく概説した。さらに多剤耐性菌・院内感染菌への対応と感染予防策にも言及した。
本書が感染症医、一般臨床医、および研修医の先生方に最新の情報を与えることができることを願っている。
2016年3月
編集者一同
3年ごとにupdateされる『感染症最新の治療』が発刊された。本書の特徴は、内科、外科、微生物学の各領域の先生方が編集を務められているところである。その先生方の熱い巻頭言を拝読してみると、感染症の特異性、すなわち「伝染」して社会に大きなインパクトを与えるということ、そして社会全体で感染症を捉える必要があること、が述べられている。感染症はあらゆる人・臓器に起こる疾患であるが、世界規模で新興・再興感染症や薬剤耐性菌が話題になり、一般的なメディアを賑わすことも増えている。それゆえに医療従事者は、専門を問わず医療のプロとして、感染症に関する新鮮で正しい知識を得る「手段」をもっている必要がある。内科だけでなく外科や基礎医学の先生が編集を務められた本書は、その「手段」として利用できるものである。
内容としては、最近話題になっている感染症や耐性菌についての巻頭トピックスに続き、感染症の診断と治療の基本、そして医療ケア関連感染症や免疫不全患者の感染症の診療といった、現代特有の問題について触れられている。臓器別感染症の各論には多くのページが割かれているが、感染症の治療よりも実は重要かもしれない感染対策やワクチンによる予防、そして期待される新規抗菌薬についても触れられている。
執筆陣も錚々たるメンバーだが、いずれの項目も国内・外のデータや重要な論文、ガイドラインを含みながら、各筆者の日常診療の様子が反映される、現実味溢れる内容となっている。処方例に関しては、「個人的にはこの状況にこの薬剤は使用しないな」というものも含まれているが、それは専門家間のバリエーションということなのだろう。
内科医であれば、感染症の患者に遭遇しない人はいないであろう。目の前に現れた感染症の患者に対して何をなすべきか、が明確にされている本書は、感染症を専門としようとする若手内科医や、感染症を専門としない内科医、さらには内科以外の医師においても、クイックリファレンスとして手元に置くと重宝する一冊と考える。
臨床雑誌内科118巻6号(2016年12月号)より転載
評者●順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学/総合診療科准教授 上原由紀