書籍

ビジュアル臨床血液形態学改訂第3版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

監修 : 平野正美
共著 : 勝田逸郎/岡本昌隆/池本敏行/都築基弘/秋山秀彦/市原慶和/郡司昌治
ISBN : 978-4-524-26417-9
発行年月 : 2012年1月
判型 : B5
ページ数 : 438

在庫なし

定価9,570円(本体8,700円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

血液形態の正常・異常に関する基礎知識と疾患特有にみられる変化について、臨床検査初心者ならびに学生にも理解できるよう、豊富なアトラスと簡潔な解説で示す入門書。今改訂では、新しいWHO分類(第4版)に基づき、「10章 モノクローナル抗体を応用した細胞の解析」、「13章 遺伝子検査」をはじめ、内容を全面的にブラッシュアップ。また、図版・画像の点数も増え、より充実。医学部学生、臨床検査医学学生、臨床検査技師にとって最適な書。

第1章 総論
I 血液の成分
 1 血液の主成分
 2 液性成分
 3 有形成分、血球
II 血液の機能
 1 有形成分
 2 液性成分

第2章 血球の生成
I 造血巣の変遷
 1 胎生期における造血
 2 出生後
 3 髄外造血
II 血球の分化と産生調節因子
III 造血臓器
 1 骨髄
 2 胸腺
 3 リンパ節
 4 脾臓
ATLAS
2-1 軟寒天コロニー培養法による形態

第3章 赤血球系の基礎的知識
I 赤血球系の成熟過程
II 末梢血にみられる赤血球の形態
 1 成熟赤血球の形態
 2 網赤血球
III 赤芽球の形態的特徴
 1 前赤芽球
 2 塩基好性赤芽球
 3 多染性赤芽球
 4 正染性赤芽球
IV 赤血球の形態異常
 1 ひ薄赤血球(扁平赤血球)
 2 輪状赤血球、環状赤血球
 3 標的赤血球
 4 球状赤血球
 5 楕円赤血球
 6 有口赤血球
 7 有核赤血球
 8 半月体
 9 奇形赤血球
 10 赤血球の集合
V 赤血球内の構造異常
 1 ハウエル・ジョリー小体(ジョリー小体)
 2 塩基好性斑点
 3 パッペンハイマー小体
 4 アズール好性斑点
 5 ハインツ小体
 6 ヘモグロビンH封入体
 7 レール辺縁小体
 8 エリトロコント
 9 カボット環
 10 赤血球内寄生体
VI 赤芽球の核形態異常
 1 核の異常
 2 細胞質の異常
 3 巨大前赤芽球
ATLAS
3-1 正常赤芽球の成熟過程とその形態
3-2 巨赤芽球の成熟過程とその形態
3-3 網赤血球の形態とその種類
3-4 赤血球の形の変化
3-5 赤血球の内容の異常
3-6 赤芽球にみられる核形態異常
3-7 各種超生体染色法による染色像
3-8 血液中にみられるその他の虫体

第4章 白血球系の基礎的知識
I 末梢血にみられる白血球の形態
 1 頼粒球
 2 単球
 3 リンパ球
II 白血球の成熟過程
 1 顆粒球系
 2 単球系
 3 リンパ球系
III 白血球系の幼若細胞の形態
 1 顆粒球系
 2 単球系
 3 リンパ球系
IV 白血球の形態学的変化
 1 白血球の形態異常
ATLAS
4-1 好中球系の成熟過程とその形態
4-2 好酸球系の成熟過程とその形態
4-3 末梢血にみられる白血球
4-4 白血球の細胞質異常
4-5 白血球の核にみられる異常
4-6 顆粒球凝集像
4-7 白血球の機能検査法

第5章 血小板および巨核球系の基礎的知識
I 血小板と巨核球系の成熟過程
II 巨核球の形態
 1 巨核芽球
 2 前巨核球(好塩基性巨核球)
 3 成熟巨核球(顆粒性巨核球)
 4 退行変性型
III 血小板の形態
IV 血小板の形態異常
 1 大血小板および巨大血小板
 2 小血小板
 3 灰色血小板
V 巨核球の形態異常
 1 過分葉核巨核球
 2 多分離核巨核球
 3 微小巨核球と小型巨核球
ATLAS
5-1 巨核球系の成熟過程とその形態
5-2 末梢血における正常血小板の形態
5-3 血小板の形態異常
5-4 巨核球の形態異常

第6章 血球の形態学的観察法の基礎的知識
I 血球形態の観察の進め方
II 血球の形態観察法
 1 生細胞の観察
 2 固定細胞(死細胞)の観察
III 末梢血液塗抹標本の作製法
 1 準備する器具
 2 薄層塗抹標本作製法
 3 その他の塗抹標本
 4 血液の濃塗標本
IV 普通染色法(ロマノウスキー染色法)の基礎とその方法
 1 普通染色法の染色原理
 2 普通染色法による染色性
 3 普通染色法の特徴
 4 普通染色法の操作
V 普通染色法による血球形態の観察法
 1 標本の観察手順
 2 細胞形態の一般的表現法
 3 分化・成熟に伴う細胞形態の変化
 4 赤血球の形態学的変化
 5 白血球の形態学的変化
 6 血小板の形態学的変化
 7 血球分類における評価法
VI 超生体染色法
 1 網赤血球とその算定法
 2 ハインツ小体の検出
VII 造血組織、造血細胞の検査
 1 検査の方法とその目的
 2 骨髄穿刺および生検
 3 血球算定
 4 骨髄穿刺液塗抹標本
 5 骨髄像の観察法
 6 組織学的切片標本
 7 リンパ節(組織)生検
VIII 特殊染色法の基礎とその方法
 1 ペルオキシダーゼ染色
 2 ズダンブラックB染色
 3 エステラーゼ染色
 4 好中球アルカリホスファターゼ染色
 5 酸ホスファターゼ染色
 6 β-グルクロニダーゼ染色
 7 PAS染色
 8 鉄染色
ATLAS
6-1 正常血液像
6-2 正常骨髄像
6-3 正常骨髄でまれにみられる細胞
6-4 骨髄にみられる特殊な細胞
6-5 形質細胞の形態
6-6 骨髄組織像
6-7 病的骨髄の模型
6-8 特殊染色

第7章 赤血球系の異常
I 貧血
 1 小球性低色素性貧血
 2 正球性正色素性貧血
 3 大球性貧血
II 赤血球増加症
 1 真性赤血球増加症
 2 二次性赤血球増加症
 3 相対的赤血球増加症
ATLAS
7-1 鉄欠乏性貧血
7-2 サラセミア症候群
7-3 鉄芽球性貧血
7-4 遺伝性球状赤血球症
7-5 自己免疫性溶血性貧血
7-6 不安定ヘモグロビン異常症
7-7 再生不良性貧血
7-8 赤芽球ろう
7-9 発作性夜間血色素尿症
7-10 巨赤芽球性貧血
7-11 先天性赤血球異形成貧血

第8章 白血球系の異常
I 白血球減少症
 1 好中球減少症
 2 リンパ球減少症
 3 好酸球減少症
II 白血球増加症
 1 好中球増加症
 2 好酸球増加症
 3 好塩基球増加症
 4 単球増加症
 5 リンパ球増加症
 6 類白血病反応
III 先天性好中球機能異常症
IV 白血病
 1 急性白血病
 2 慢性白血病
 3 近年の白血病分類の変遷
V FAB分類による白血病の病型分類
 1 FAB分類の特徴
 2 FAB分類の基礎的事項
 3 急性骨髄性白血病
 4 骨髄異形成症候群
 5 急性リンパ性白血病
VI WHO分類による骨髄系腫蕩の病型分類
 1 骨髄増殖性腫瘍
 2 PDGFRA、PDGFRBまたはFGFR1遺伝子に異常を有し、好酸球増加を伴う骨髄系とリンパ系の腫瘍
 3 骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
 4 骨髄異形成症候群
 5 反復性遺伝子異常を伴うAML
 6 骨髄異形成関連変化を伴うAML
 7 治療関連骨髄性腫瘍
 8 AML、非特定型
 9 骨髄性肉腫
10 ダウン症候群関連骨髄増殖症
11 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍
VII WHO分類による混合型急性白血病
VIII WHO分類によるリンパ系腫瘍の病型分類
 1 前駆リンパ球腫瘍
 2 慢性リンパ性白血病
 3 特殊な白血病
 4 悪性リンパ腫
IX Mタンパク血症
 1 原発性マクログロブリン血症
 2 多発性骨髄腫
X 細網内皮系疾患
 1 ゴーシェ病
 2 ニーマン・ピック病
ATLAS
8-1 無顆粒球症
8-2 白血球増加症
8-3 急性骨髄性白血病
  FAB分類 MO
  FAB分類 M1
  FAB分類 M2
  FAB分類 M3
  FAB分類 M3v
  FAB分類 M4
  FAB分類 M4e
  FAB分類 M5a
  FAB分類 M5b
  FAB分類 M6
  FAB分類 M7
8-4 急性白血病
  FAB分類 L1
  FAB分類 L2
  FAB分類 L3
8-5 骨髄異形成症候群
  不応性貧血
  原発性鉄芽球性貧血
  芽球増加型不応性貧血
  慢性骨髄単球性白血病
8-6 慢性白血病
  慢性骨髄性白血病
  慢性骨髄性白血病急性転化
  慢性リンパ性白血病
8-7 その他の急性骨髄性白血病
8-8 その他のリンパ性白血病
  成人T細胞白血病/リンパ腫
  ヘアリー細胞白血病
  前リンパ球性白血病
8-9 その他の分化系統不明および特殊な血液
 腫瘍
8-10 悪性リンパ腫
  概説
  悪性リンパ腫でみられる外観
  ホジキンリンパ腫
  非ホジキンリンパ腫
  治療中にみられる日和見感染症
8-11 原発性マクログロブリン血症
8-12 多発性骨髄腫
8-13 原発性骨髄線維症
8-14 ゴーシェ細胞
8-15 ニーマン・ピック細胞
8-16 血球貪食症
8-17 骨髄へのがん細胞の転移
8-18 LE(lupus erythematosus)細胞
8-19 血球計数に影響をもたらす形態異常

第9章 血小板系の異常
I 血小板減少症
 1 特発性血小板減少性紫斑病
 2 血栓性微小血管障害
 3 偽性血小板減少症
II 血小板増加症
 1 本態性血小板血症
 2 続発性血小板増加症
III 先天性血小板形態異常症
 1 メイ・ヘグリン異常と類似疾患
 2 ベルナール・スーリエ症候群
 3 ウィスコット・アルドリッチ症候群
ATLAS
9-1 特発性血小板減少性紫斑病
9-2 血栓性血小板減少性紫斑病
9-3 本態性血小板血症
9-4 メイ・ヘグリン異常
9-5 フェッチュナー症候群
9-6 ベルナール・スーリエ症候群
9-7 ウィスコット・アルドリッチ症候群

第10章 モノクローナル抗体を応用した細胞の解析
I 正常末梢血リンパ球
 1 モノクローナル抗体
 2 CD分類
 3 末梢血リンパ球の分類
 4 T細胞抗原受容体のタイプからみたT細胞の分類と造血器腫瘍
 5 CD4+T細胞サブセット
 6 単染色と二重染色によるリンパ球サブセツトの分類
II 血液疾患における応用
 1 細胞表面マーカー
 2 抗体の反応性
 3 ゲーティング法の重要性
 4 モノクローナル抗体を用いた細胞のクロナリティー検索
 5 モノクローナル抗体を用いた細胞内抗原(ミエロペルオキシダーゼ)の検索
 6 白血病細胞の表面抗原解析パターン―症例―
 7 免疫組織染色とフローサイトメトリーの悪性リンパ腫診断への応用
 8 その他の血液疾患への応用

第11章 染色体とその異常
I 染色体
 1 ヒト染色体の種類と染色体各部の名称
 2 核型分析法
 3 分染法
 4 正常ヒト染色体の核型分析
II 染色体異常
 1 数の異常
 2 構造の異常
III 先天性染色体異常
 1 性染色体異常
 2 常染色体異常
IV 造血器腫瘍にみられる染色体異常
V 染色体分析法
 1 末梢リンパ球の培養による染色体標本作製法
 2 骨髄穿刺液を用いた染色体標本作製法
VI 性クロマチン
 1 Xクロマチン
 2 Yクロマチン

第12章 血液疾患へのFISH法の応用
I FISH法とその原理
 1 FISH法
 2 FISH法の原理
II FISH法に用いられる検体
III FISH法に用いるプローブの種類
IV FISH法による操作手順
 1 原理
 2 必要試薬
 3 必要器具
 4 プローブ調整
 5 標本処理
V FISH法の応用(SKY FISH法、M-FISH法)
 1 原理
 2 SKY FISH法およびM-FISH法の解析
 3 操作方法
 4 SKY FISH法およびM-FISH法による核型像

第13章 遺伝子検査
I 遺伝子検査に必要な基本技術
 1 核酸の取り扱い
 2 酵素類
 3 ゲル電気泳動
 4 DNAプローブの作製
 5 サザンブロッテイング法
 6 ハイブリダイゼーション法
 7 RI、発光、発色によるシグナルの検出
 8 PCR法とRT-PCR法
II 遺伝子検査の方法
 1 重複、欠失、転座などのDNAの量的変化や構造的変化を検出する方法
 2 DNAやmRNAを定量する方法
 3 塩基の突然変異や多型をみつける方法
III 遺伝子検査による臨床診断
 1 Bリンパ球性腫瘍における免疫グロブリン遺伝子の再構成
 2 Tリンパ球性腫瘍におけるT細胞受容体遺伝子の再構成
 3 成人T細胞白血病/リンパ腫のHTLY-1ウイルス確認
 4 JAK2遺伝子変異
 5 BCR-ABL融合遺伝子
 6 PML-RARα融合遺伝子
 7 WTl遺伝子
IV 遺伝子検査の展望

索引

「ビジュアル臨床血液形態学」の初版は1999年に発行され、好評を得て版を重ね、今回改訂第3版を発行する運びとなった。思うに好評の理由は、血液疾患診療の第一歩であり、どこの施設でも実施可能な血球の顕微鏡観察を重視し、対象疾患としては日常診療でしばしば遭遇する“common disease”や、“common”ではないが病態理論のうえでも臨床的にも重要度の高い疾患を幅広く取り上げ、血球の形態異常とその診断・病態的意義について実例を示し解説していることであろう。また本書では基本的な血液検査・研究法の術式を多くの図表を使ってわかりやすく解説している。術式の基本を正しく理解することは、検査異常値の解釈にあたって、その意義と妥当性を正しく理解するうえで必須である。各種疾患の臨床的特徴の記述は簡潔でわかりやすい。
 2008年に造血器腫瘍の国際標準であるWHO分類第4版が発行された。本書では、疾患名の記載や用語使用は基本的にこれに従った。WHO分類第4版では、以前の版以上に、疾患分類において遺伝子異常が重視され、その基本となっている。したがって本書でも「第13章 遺伝子検査」を大幅に改訂した。全体として約30%の改訂となった。
 以上から本書は、日々血液疾患の診療に携わる若手臨床医、検査・研究者、看護師など多くの医療者、これらの職種を目指す学習者にとって格好の参考書となろう。
 本書には、藤田保健衛生大学血液内科、血液臨床検査研究部で長年集積した資料に加え、全国のいくつかの施設の協力を得て、各種疾患・病態にみられる異常血球像を網羅し、血液疾患アトラスの役目も十分果たしている。ご協力いただいた施設および協力者に感謝申し上げる。
2011年11月
藤田保健衛生大学名誉教授
平野正美

血液学は形態学が基本である。今日の血液疾患の診断は、形態学のほかに生化学検査、細胞表面マーカー検査、染色体検査、遺伝子解析などを駆使して行われる。しかし、これらはあくまで確認的な検査であり、形態学なしでこれらの検査だけで診断できるわけではない。
 ここに1枚のメイギムザ染色された末梢血塗抹標本がある。顕微鏡を用いて400倍くらいの倍率で覗いてみると、実に鮮やかで饒舌な世界が広がる。視野一面に多数のピンク色で円形の赤血球が敷き詰められている。そして赤血球の合間の所々に、これより一回り大きく赤紫色の棒状もしくは縄状の核をもった、淡い色をした白血球がみえる。そしてさらによくみると、赤血球の数十分の一程度で見落としてしまうほどの小さな薄紫の血小板がまばらに存在する。さまざまな血液疾患ではこうした血球の形や頻度に多彩な変化をきたす。赤血球を例にあげれば、大小不同や球状、楕円、標的、鎌状、棘状、涙滴、破砕などの形状変化、連銭形成など特徴的な所見があれば、診断の大きな手がかりとなる。同様に白血球や血小板においても血液疾患で特徴的な形態変化が現れる。標本一枚には無限の情報が詰まっているといっても過言ではない。しかし、情報を読み取る力がなければ、視野はただの景色になってしまう。形態を観察するにはそれなりの知識と訓練が必要である。
 本書は、タイトルが示すようにビジュアルを重視した臨床血球形態学書である。鮮明で豊富なカラー写真はもとより、要所において観察すべきポイントをカラーのイラストで説明しているのは秀逸である。よく似顔絵は写真より人物の特定に有用であるといわれるが、本書における血球観察の仕方と判定のポイントを解説したイラストはまさに似顔絵として特徴を際立たせており、理解しやすい。本書は2008年に刊行された造血器腫瘍のWHO分類第4版で重視された遺伝子異常の項目を大幅に取り入れるなど、意欲的な改訂第3版となっている。
 本書は藤田保健衛生大学の血液内科や検査部で長年にわたって集積された資料を中心に、関連施設のエキスパートの協力で血球形態像が網羅されており、血液疾患アトラスとしての役割を存分に果たしている。血液疾患診療に携わる臨床医、臨床検査技師、看護師をはじめ、新たに学習を志す多くの医療者、学生にとって身近で有用な手引き書となるものと期待される。
評者● 堀田知光
臨床雑誌内科109巻6号(2012年6月増大号)より転載

9784524264179