糖尿病診療ガイドライン2016
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編・著 | : 日本糖尿病学会 |
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ISBN | : 978-4-524-25857-4 |
発行年月 | : 2016年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 560 |
在庫
定価4,730円(本体4,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
国内外の最新エビデンスを反映した診療ガイドライン。臨床現場での利便性を高めるため、Clinical Question(CQ)方式を採用。新規治療薬や新たな診療機器の登場等、飛躍的な進歩を遂げる糖尿病診療を網羅し、また糖尿病性腎症病期分類や妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値の検討といった新知見も盛り込んでいる。わが国の糖尿病診療におけるEBM実践の指針であり、糖尿病患者に関わるすべての医療者必携の一冊。
1.糖尿病診断の指針
Q1-1 糖尿病の診断をどのように行うのか?
Q1-2 高血糖をどのように判定するか?
Q1-3 血糖・HbA1cが一度糖尿病型で,その後の反復検査で糖尿病と診断できなかった場合は,どのようにするのか?
Q1-4 糖尿病の病型分類をどのように行うのか?
Q1-5 1型糖尿病をどのように診断するか?(急性,緩徐進行,劇症を含む)
Q1-6 その他の特定の機序,疾患による糖尿病をどのように診断するか?
Q1-7 糖尿病の病型分類(成因)と病態(病期)の関係はどのようか?
2.糖尿病治療の目標と指針
Q2-1 糖尿病の治療の目標は?
Q2-2 糖尿病の基本的治療方針はどう考えるべきか?
Q2-3 血糖コントロールの目標はどう設定すべきか?
Q2-4 糖尿病の慢性合併症の予防・進展抑制はどう行うか?
3.食事療法
Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスはどのようなものか?
CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士による指導は有効か?
Q3-3 目標体重と総エネルギー摂取量をどのように定めるか?
Q3-4 炭水化物の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-5 食物繊維の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-6 たんぱく摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-7 脂質摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-8 ビタミンやミネラルの摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-9 食塩の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか?
Q3-10 アルコール飲料を摂取してよいのはどのような場合か?
4.運動療法
Q4-1 運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か?
CQ4-2 2型糖尿病患者に運動療法は有効か?
CQ4-3 1型糖尿病患者に運動療法は有効か?
Q4-4 有酸素運動,レジスタンス運動とは何か?
Q4-5 具体的な運動療法はどのように行うか?
5.血糖降下薬による治療(インスリンを除く)
Q5-1 血糖降下薬の適応は?
Q5-2 血糖降下薬の選択はどのように行うか?
Q5-3 スルホニル尿素(SU)薬の特徴は?
Q5-4 ビグアナイド薬の特徴は?
Q5-5 αグルコシダーゼ阻害薬の特徴は?
Q5-6 チアゾリジン薬の特徴は?
Q5-7 速効型インスリン分泌促進薬(グルニド薬)の特徴は?
Q5-8 DPP-4阻害薬の特徴は?
Q5-9 GLP-1受容体作動薬の特徴は?
Q5-10 SGLT2阻害薬の特徴は?
Q5-11 血糖降下薬の併用は有効か?
Q5-12 血糖降下薬による治療でも血糖コントロールが不十分な場合は,どのように対応するか?
6.インスリンによる治療
Q6-1 インスリン製剤にはどのような種類があるのか?
Q6-2 インスリン療法の適応とはどのような場合か?
Q6-3 インスリン療法の副作用にはどのようなものがあるか?
Q6-4 1型糖尿病のインスリン療法にはどのような方法があるか?
CQ6-5 1型糖尿病に対する強化インスリン療法は細小血管症の抑止に有効か?
CQ6-6 1型糖尿病に対する強化インスリン療法は大血管症の抑止に有効か?
Q6-7 2型糖尿病のインスリン療法にはどのような方法があるか?
CQ6-8 2型糖尿病に対する強化インスリン療法は細小血管症の抑止に有効か?
Q6-9 2型糖尿病に対する強化インスリン療法は大血管症の抑止に有効か?
7.糖尿病の自己管理教育と療養支援
CQ7-1 組織化された糖尿病自己管理教育と療養支援は糖尿病治療に有効か?
CQ7-2 集団教育と個別教育は糖尿病治療に有効か?
CQ7-3 血糖自己測定(SMBG)は糖尿病治療に有効か?
Q7-4 糖尿病治療と療養上の心理的課題は何か?
CQ7-5 心理的・行動科学的アプローチは糖尿病治療に有効か?
Q7-6 糖尿病治療にうつ病のスクリーニング・治療は重要か?
Q7-7 ガイドラインと実践的マニュアルはどのように活用されるべきか?
8.糖尿病網膜症
CQ8-1 定期的な眼科受診によって糖尿病網膜症の発症・進展を阻止できるか?
CQ8-2 糖尿病網膜症に血糖コントロールは有効か?
CQ8-3 糖尿病網膜症に血圧コントロールは有効か?
CQ8-4 糖尿病網膜症に脂質コントロールは有効か?
Q8-5 抗血小板薬によって網膜症の発症・進展を阻止できるか?
CQ8-6 眼科治療によって網膜症の進展を阻止できるか?
Q8-7 糖尿病合併妊娠は糖尿病網膜症の発症・進展のリスクとなるか?
Q8-8 糖尿病網膜症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
9.糖尿病腎症
CQ9-1 尿中アルブミン測定は糖尿病腎症の早期診断に有用か?
Q9-2 腎機能の評価は何を指標にして行うか?
CQ9-3 糖尿病腎症に血糖コントロールは有効か?
CQ9-4 糖尿病腎症に血圧コントロールは有効か?
CQ9-5 糖尿病腎症に脂質コントロールは有効か?
CQ9-6 糖尿病腎症における血圧コントロールの第一選択薬としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は推奨されるか?
CQ9-7 糖尿病腎症に食塩摂取制限は推奨されるか?
Q9-8 糖尿病腎症にたんぱく質摂取制限は有効か?
Q9-9 貧血治療は糖尿病腎症の進行抑制に有効か?
Q9-10 糖尿病腎症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
10.糖尿病神経障害
Q10-1 糖尿病神経障害をどのように診断するのか?
Q10-2 糖尿病神経障害の臨床的分類は?
Q10-3 糖尿病神経障害の発症と進展のリスクファクターは何か?
CQ10-4 糖尿病神経障害に血糖コントロールは有効か?
Q10-5 感覚神経障害の薬物療法はどのように行うのか?
Q10-6 自律神経障害の治療はどのように行うのか?
Q10-7 単神経障害の治療はどのように行うのか?
Q10-8 糖尿病神経障害はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
11.糖尿病足病変
Q11-1 糖尿病足病変とはなにか?
CQ11-2 足の定期観察は足病変の予防に有効か?
CQ11-3 フットケア教育は足病変の予防に有効か?
CQ11-4 血糖コントロールは足病変の発症や切断予防に有効か?
CQ11-5 ハイリスク患者に対するフットケアは足潰瘍の予防や救肢に有効か?
Q11-6 足潰瘍の治療はどのように行うか?
CQ11-7 チーム医療は足病変発症予防と足潰瘍治療に有効か?
CQ11-8 足潰瘍治療は患者の生活の質(QOL)の維持に有効か?
Q11-9 足病変はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
12.糖尿病大血管症
Q12-1 糖尿病大血管症の予防のために必要なリスク管理をいつからどのように始めるのか?
Q12-2 リスク管理をどのような糖尿病患者に行えば糖尿病大血管症の抑止に有益か?
CQ12-3 生活習慣の改善と肥満の是正は糖尿病大血管症に有効か?
CQ12-4 糖尿病大血管症に血糖コントロールは有効か?
CQ12-5 糖尿病大血管症に血圧コントロールは有効か?
CQ12-6 糖尿病大血管症に脂質コントロールは有効か?
CQ12-7 糖尿病大血管症に抗血小板薬は有効か?
Q12-8 糖尿病大血管症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
13.糖尿病と歯周病
Q13-1 歯周病とはどのような疾患か?
Q13-2 糖尿病は歯周病の発症や進行に影響を及ぼすか?
CQ13-3 糖尿病治療は歯周病の改善に有効か?
Q13-4 歯周病は血糖コントロールに影響するか?
CQ13-5 歯周治療は血糖コントロールの改善に有効か?
14.肥満を伴う糖尿病(メタボリックシンドロームを含む)
Q14-1 肥満の原因は何か?
Q14-2 肥満の診断をどのように行うのか?
Q14-3 肥満を伴う糖尿病にどのように対応するのか?
Q14-4 肥満2型糖尿病への行動療法は減量や血糖コントロールに有効か?
Q14-5 肥満2型糖尿病への薬物療法は血糖コントロールに有効か?
CQ14-6 高度肥満症を伴う2型糖尿病への外科療法は有効か?
Q14-7 メタボリックシンドロームとは何か?
15.糖尿病に合併した高血圧
Q15-1 糖尿病に合併した高血圧は大血管症のリスクファクターか?
Q15-2 糖尿病に合併した高血圧は細小血管症のリスクファクターか?
Q15-3 糖尿病に合併した高血圧の治療を開始すべき診察室血圧値は?
CQ15-4 糖尿病に合併した高血圧を診察室血圧130/80mmHg未満に管理することは合併症予防に有効か?
CQ15-5 糖尿病に合併した高血圧の降圧療法での第一選択薬はACE阻害薬・ARBか?
Q15-6 糖尿病に合併した高血圧の併用療法での選択薬はカルシウム拮抗薬か利尿薬か?
16.糖尿病に合併した脂質異常症
Q16-1 糖尿病に合併した脂質異常症は大血管症のリスクファクターか?
Q16-2 糖尿病に合併した脂質異常症は細小血管症のリスクファクターか?
Q16-3 糖尿病に合併した脂質異常症の治療開始値と治療目標値は?
CQ16-4 糖尿病患者の脂質異常症に食事療法は有効か?
CQ16-5 糖尿病患者の脂質異常症に運動療法は有効か?
CQ16-6 糖尿病患者の脂質異常症に対するスタチン系薬剤による治療は,心血管疾患(CVD)発症率や生命予後の改善に有効か?
CQ16-7 糖尿病患者の脂質異常症に対するスタチン系以外の薬剤による治療は,CVD発症率や生命予後の改善に有効か?
17.妊婦の糖代謝異常
CQ17-1 妊娠前,妊娠中の血糖コントロールは妊婦や児の予後を改善するか?
Q17-2 妊婦の糖代謝異常をどのように診断するか?
Q17-3 糖尿病患者の妊娠前管理・治療はどのように行うか?
Q17-4 妊娠前・妊娠中の糖尿病網膜症をどのように管理・治療するか?
Q17-5 妊娠時・妊娠中の糖尿病腎症をどのように管理するか?
Q17-6 妊娠糖尿病のスクリーニングをどのように行うか?
Q17-7 糖代謝異常妊婦の血糖コントロールをどのように行うか?
Q17-8 糖代謝異常妊婦の分娩時管理をどのように行うか?
Q17-9 妊娠糖尿病および妊娠中の明らかな糖尿病患者の分娩後の評価・管理をどのように行うか?
18.小児・思春期における糖尿病
Q18-1 小児・思春期糖尿病の基本的治療方針は?
Q18-2 小児・思春期1型糖尿病をどのように診断するか?
Q18-3 小児・思春期1型糖尿病をどのように治療するか?
Q18-4 小児・思春期2型糖尿病をどのように診断するか?
Q18-5 小児・思春期2型糖尿病をどのように治療するか?
Q18-6 新生児糖尿病の診断と治療をどのように行うのか?
Q18-7 患児・家族の支援をどのように行うのか?
19.高齢者の糖尿病(認知症を含む)
Q19-1 高齢者糖尿病はどのような特徴があるか?
CQ19-2 高齢糖尿病患者の血糖コントロールは血管合併症の抑止に有効か?
Q19-3 高齢者の高血糖,低血糖は認知機能低下・認知症やADLの低下,うつ病のリスクファクターか?
Q19-4 高齢糖尿病患者において食事療法は血糖コントロールに有効か?
CQ19-5 高齢糖尿病患者において運動療法は血糖コントロールや,ADL,認知機能の維持に有効か?
Q19-6 高齢者糖尿病の血糖降下療法で注意すべき点は?
Q19-7 高齢糖尿病患者の高血圧,脂質異常症はその他の合併症のリスクファクターとなるか?
20.糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)
Q20-1 糖尿病ケトアシドーシスの診断と治療はどのように行うか?
Q20-2 高血糖高浸透圧症候群の診断と治療はどのように行うか?
Q20-3 乳酸アシドーシスの診断と治療はどのように行うか?
Q20-4 低血糖にはどう対応するか?
Q20-5 糖尿病に特徴的な感染症にはどのようなものがあるか?
Q20-6 感染症時の血糖コントロールはどのようにするのか?
Q20-7 糖尿病患者に予防接種は推奨されるか?
Q20-8 シックデイにはどう対応するか?
21.2型糖尿病の発症予防
Q21-1 2型糖尿病の発症リスクをどのように評価するか?
Q21-2 肥満体格やその変化は2型糖尿病発症にどの程度関与するか?
Q21-3 身体活動や運動習慣は2型糖尿病発症にどの程度関与するか?
Q21-4 エネルギーや栄養素摂取と2型糖尿病発症リスクとの関連は?
Q21-5 アルコールや他の嗜好飲料による2型糖尿病発症リスクへの影響は?
Q21-6 喫煙,禁煙による2型糖尿病発症リスクへの影響は?
Q21-7 ストレスや労働環境などの心理・社会的要因は2型糖尿病発症に関係するか?
CQ21-8 生活習慣介入によって2型糖尿病の発症は抑止できるか?
Q21-9 2型糖尿病発症は薬物により予防できるか?
序文
この度、「科学的根拠に基づく糖尿病ガイドライン2013」刊行から3年を経て、「糖尿病ガイドライン2016」を刊行することとなった。本ガイドラインは、エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的として2004年5月に初版が刊行され、その後3年毎に改訂されている。したがって、今回は第5版に相当することになる。
初版刊行以降の12年間に、わが国の糖尿病を取り巻く環境は大きく変化した。高齢者糖尿病が増加したこと、新しい作用機序を有する糖尿病治療薬が登場したこと、などが挙げられる。また、種々の疾患に関する「ガイドライン」が刊行され、「ガイドライン」の策定方法も変化してきた。
本ガイドラインにおいては、策定委員会と評価委員会の上部に、新たに統括委員会を組織し、基本方針の決定、全体的内容調整を行った。また、エビデンスとなる論文の評価を厳密に行うため、新たにSR サポートチームを組織した。さらに、「糖尿病診療ガイドライン策定作業の方法論」に詳述されているように、クリニカルクエスチョン(CQ)を取り入れるとともに、推奨グレードの変更も行った。推奨グレードは、策定委員の投票で決定し、合意率も記載した。評価委員会の評価を終えた第四次原稿を、日本糖尿病学会の名誉会員・功労学術評議員・学術評議員に供覧し、同時に関連学会のリエゾン委員にも評価いただき、多くのコメントをいただいた。全体の整合性や他学会ガイドラインとの整合性等を鑑み、策定・評価両委員会委員長および策定委員によりコメントの採否、それに伴う原稿の修正を行った。コメントをお寄せいただいた先生方にはこの場をお借りして深謝申し上げたい。
特に、高齢者糖尿病に関しては、「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」が設置されたため、合同委員会および日本糖尿病学会理事会の決定に基づき、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を記載した。
本ガイドラインでは、国際的にも高い評価を受けているわが国発のエビデンスが多く引用されており、日本人の糖尿病診療におけるEvidence-based Medicine(EBM)を実践する際の指針となっている。近い将来には、「糖尿病予防のための戦略研究」としてのJ-DOIT3やJDCP study、J-DREAMS研究などの複数の大規模臨床試験の結果が発表される予定である。本ガイドラインはこれら新しいエビデンスを定期的に盛り込みながら、わが国の糖尿病診療のいっそうの向上に貢献するものとして今後も発展することを期待したい。
2016年5月
「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会
このたび、日本糖尿病学会編・著の『糖尿病診療ガイドライン2016』が南江堂から上梓された。本書は「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」との表題で2004年の初版以降、3年ごとに改訂されてきたものの第5版にあたる。このたびの版では、“科学的根拠に基づく”という言葉が削除されたが、この言葉が不必要とされるほど、本書の成り立ちとその内容がわが国で広く浸透している証と言える。版を重ねるごとに種々の改良が加えられて、読む者をしていかに内容を理解させ、正しい知識を蓄積させ、そして得られた情報を日常診療の実際で知恵として活用してもらいたいという意図と努力が窺えて嬉しい。
本書のシリーズは、このたびの改訂で5版を重ねたが各版の序文が冒頭に掲載されていて、それに目を通すことでそのときどきの糖尿病に纏わるトピックスと出版の意図が窺えるばかりか、本書の進化の過程が知れ、別の視点から読者に興味を抱かせる。細かな内容は別にして、このたびの第5版が従来の版と大きく異なる主な点は以下である。先に紹介させていただいた本書のタイトルは別にして、(1) 糖尿病の多用な病態に鑑みて“リエゾン委員”を設けて、関連学会との連携を密にすることで内容の正確性と各学会の見解との整合性を図った。(2) 従来、各章の構成は、a。ステートメント、b。解説、c。文献、d。アブストラクトテーブル、とに分けて執筆されていたが、それを大きく変えてc、dは従来どおりだが、a、bは一つにして“Question &Answer”の形式で解説を行っていて各章の問題点がわかりやすい。(3) 新しい試みとして本書の構成目次の後に、a。各章ごとに“Questions”と明記した項目、引き続いてb。“ステートメント・推奨グレード一覧”を併記し、そしてc。“略語一覧”の頁を設けたことである。多忙な読者にとって読みたい章の要点が把握しやすくなった。(4) 従来は2色刷の本であったが本書では多色刷の図が4つあり、いずれも血糖コントロールに関連したものである。たとえば、図2は“血糖コントロール目標”、図4では“高齢者糖尿病の血糖コントロール目標”、で理解しやすいように工夫されている。(5) 新たに付録として、糖尿病と癌、糖尿病と骨代謝、膵臓・膵島移植、が設けられた。以上、第5版が従来版と異なる主な特徴を羅列してみたが、このたびの大改訂によって読みやすい頁レイアウトとなったばかりか、充実した内容となり、結果として頁数が従来のものに比べて約47%増となった。あえて短所をあげるとすれば、頁の増によって本棚がかさばることである。しかし、この短所を補って余りのあるほどの充実した内容である。
このたびの第5版にみられる大改訂は、総じてエッセンスを浮き彫りにして、糖尿病診療に際しての新しい情報と正しい知識の習得を容易とし、臨床現場で役立つ本になったとしても過言ではない。この好書が、広く読まれ、座右の書として活用されて糖尿病の患者さんとその家族に潤いのある療養生活がもたらされることを願って止まない。最後に、このたびの出版に関わった先生方と日本糖尿病学会そして出版社に、このような素晴らしい内容にまで昇華された努力に敬服する次第である。
臨床雑誌内科119巻1号(2017年1月号)より転載
評者●中部ろうさい病院 堀田饒