書籍

糖尿病診療ガイドライン2019

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編・著 : 日本糖尿病学会
ISBN : 978-4-524-24148-4
発行年月 : 2019年10月
判型 : B5
ページ数 : 446

在庫品切れ・重版未定

定価4,400円(本体4,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

3年ぶりの改訂により最新のエビデンスを反映し、日本における糖尿病診療の指針を示したガイドラインの2019年版。今改訂においても、Clinical Question(CQ)形式、『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』に準拠した作成手順・基準を踏襲。国内外問わず、精査された多くのエビデンスを盛り込み、糖尿病専門医だけでなく、糖尿病患者を診るすべての医師にとって必携の一冊。

診療ガイドライン策定の方法論
1.糖尿病診断の指針
2.糖尿病治療の目標と指針
3.食事療法
4.運動療法
5.血糖降下薬による治療(インスリンを除く)
6.インスリンによる治療
7.糖尿病自己管理教育と療養支援
8.糖尿病網膜症
9.糖尿病(性)腎症
10.糖尿病(性)神経障害
11.糖尿病(性)足病変
12.糖尿病(性)大血管症
13.糖尿病と歯周病
14.肥満を伴う糖尿病(メタボリックシンドロームを含む)
15.糖尿病に合併した高血圧
16.糖尿病に合併した脂質異常症
17.妊婦の糖代謝異常
18.小児・思春期における糖尿病
19.高齢者の糖尿病(認知症を含む)
20.糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)
21.2型糖尿病の発症予防
付録1 糖尿病と癌
付録2 糖尿病と骨代謝
付録3 膵臓・膵島移植
付録4 日本における大規模臨床試験

序文

 この度、「糖尿病診療ガイドライン2016」刊行から3年を経て、「糖尿病診療ガイドライン2019」を刊行することとなった。本ガイドラインは、エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的とし、2004年5月に初版「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」が刊行された。その後3年ごとに改訂されており、今回は第6版になる。
 「糖尿病診療ガイドライン2019」の策定は、基本的に「糖尿病診療ガイドライン2016」に準じて行われた。組織構成も基本的には「2016年版」を踏襲して、「統括委員会」「策定委員会」「評価委員会」「SRサポートチーム」「ガイドライン顧問」「リエゾン委員」とし、さらに新たに外部評価委員を組織して、日本糖尿病協会から推薦いただいた委員に参加いただいた。各章立ては、「2016年版」から変更は加えられていない。また「2016年版」と同様に、「CQ・Q方式」とし、推奨グレードも「2016年版」と同様に策定委員の投票で決定し、合意率を記載した。ただし、CQ・Qの各項目については、適宜見直しを行い、必要に応じて新たなCQ・Qを設定した。また策定・評価にかかわった各委員の利益相反(COI)を個々に記載するとともに、推奨グレードの決定においてはCQごとに確認を行い、COI状態にある策定委員を除き投票を行った。一方、版を重ねるごとにガイドラインのページ数が増えていることに鑑み、ステートメントに引用されている文献のみにアブストラクトテーブルを作成した。したがって、「2016年版」の約560ページから、「2019年版」では約440ページへとページ数が少なくなった。「2016年版」と同様に、評価委員会の評価を終えた第四次原稿は、日本糖尿病学会の名誉会員・功労学術評議員・学術評議員に供覧し、同時に関連学会のリエゾン委員や外部評価委員からも評価をいただき、多くのコメントをいただいた。全体の整合性や他学会ガイドラインとの整合性などに鑑み、策定・評価両委員会委員長および策定委員によりコメントの採否、それに伴う原稿の修正を行った。コメントをお寄せいただいた皆様方にはこの場をお借りして深謝申し上げる。
 2004年の初版刊行以降、わが国の糖尿病を取り巻く環境は大きく変化している。最近では高齢者糖尿病の増加や、新しい作用機序を有する糖尿病治療薬の登場に加えて、これらの治療薬を用いた心血管疾患に関する安全性や抑制効果を実証するような臨床試験や、持続皮下ブドウ糖濃度測定技術の進歩とその評価などが次々と報告されている。「糖尿病診療ガイドライン2019」では、できうる限り新しい文献を引用してこれらの知見を取り上げている。さらに付録の中に、日本における大規模臨床試験としてJ-DOIT1〜3、JDCPstudy、J-DREAMSを紹介している。また、日本動脈硬化学会や日本高血圧学会の最新のガイドラインを参考に、これらとの齟齬がないような改訂が行われている。食事療法に関しても、従来の標準体重の代わりに目標体重という概念を取り入れ、より個々の症例に対応可能な柔軟な食事療法が示されている。詳細はぜひ各項目をご参照いただきたい。
 「糖尿病診療ガイドライン」は今後も最新のエビデンスを定期的に盛り込みながら、改訂、追加、修正などが継続されていくものである。本ガイドラインがわが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、さらに発展を続けていくことを願っている。

2019年9月
「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会

 日本糖尿病学会による編・著の『糖尿病診療ガイドライン2019』が南江堂から刊行された。3年ごとに改訂されてきた本書は、このたびで第6版を数える。第6版と一口で言うのは簡単だが、度重なる改訂が定期的に続けられるのは、読者にとって収載されている情報が最新、信頼し得るもの、かつ日常診療で即役立つからにほかならない。
 このたびの第6版となる本書の基本構成は、従来のものと大きく異なるものではないが、改訂ごとに内容の充実と新しい情報に接し得ることは臨床医にとってこの上ない喜びと驚きを禁じ得ない。時代の変化と進歩に即して改訂された本書が、第5版と異なる主な内容として以下のことがあげられる。
<全体を通しての内容>
・利益相反の記述がより詳細となった。
・アブストラクトテーブルの収載論文がCQのステートメントに引用された文献に限定された。
・アブストラクトテーブルのコメントが5項目に分類され、“はい”あるいは“−”で明記されており、判断根拠をサポートしている。
・CQのステートメントに記載された推奨グレードには、その判定の基準および根拠の説明が付記された。
・各頁の有効活用で総頁数が激減した。
・引用論文数が増えたのは、この3年間で新しい知見が得られたことを物語っている。
<個別的な内容>
・表現の拡大として、たとえば「糖尿病腎症」が「糖尿病(性)腎症」などがある。
・新たに設けられた項目として、食事療法の章に“甘味料”“食事の摂り方”がある。
・従来の記述と比べて最も大きく異なった章は「高齢者の糖尿病(認知症を含む)」で、2017年に日本糖尿病学会と日本老年医学会の共同編集により『高齢者糖尿病診療ガイドライン2017』が刊行されたことから、この内容を引用し、CQ・要約(ステートメント)・推奨グレードを抜粋して掲載している。
 改良点を中心に第6版の『糖尿病診療ガイドライン2019』を駆け足で紹介してみたが、本書の特徴をまとめれば、(1) 糖尿病診療に欠かせない情報がコンパクトに集約されている、(2) 記載されている情報の信頼度が一目瞭然である、(3) 日常診療で直面する疑問の回答が得られる、(4) 糖尿病診療に関わる最新の動向を把握できる、そして (5) 糖尿病診療で求められる正しい知識の整理が可能である、などがあげられる。あらためて述べるまでもなく、糖尿病のケアと治療に関する情報の充実度とその信頼度は、世界に類をみないものである。また、2016年に出版された第5版は、要点が英文化されて(Diabetology Int 9:657-697,2019,J Diabetes Investig 9:1-45,2019)、広く引用されている。このことは、今版においても本書の内容が日常診療において今後世界的に活用されていくことを想起させる。となれば、出版に携わられた方々の御苦労が報われるばかりか、今後の改訂においてさらなる内容の充実が図られることが期待されよう。
 一冊の刊行物に、これほど多くの方々が各種委員会の委員として、内容の充実と情報の信頼度を担保する作業に携わられて、編み上げられた本は類をみないものである。本書の統括委員会の委員長である荒木栄一教授をはじめとして、結実した本に携わられた各種委員会の諸先生ならびに出版社の南江堂に、その御努力に敬意を表するものである。そして、この好書が糖尿病診療に携わる人々にとって、糖尿病診療の実践的バイブルとなり、今後とも時代に即して改訂され、実臨床において活用され続け、糖尿病で苦しむ方々に大きな助けとなることを願うものである。

臨床雑誌内科125巻5号(2020年5月号)より転載
評者●中部ろうさい病院 名誉院長 堀田饒

9784524241484