書籍

対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル

編集 : 日本消化器がん検診学会 対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル作成委員会
ISBN : 978-4-524-25528-3
発行年月 : 2017年3月
判型 : A4
ページ数 : 122

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

胃がん検診の標準化された実施体制の構築を目的として日本消化器がん検診学会の編集により作成されたマニュアルをもとに、内容の改訂を行った。また、新たに「既導入地域の事例紹介」や「用語解説」を盛り込むことで、より実践的な知識を提供。胃内視鏡による対策型検診を導入する施設はもちろん、対策型胃がん検診に関わるすべての医療従事者必携のマニュアル。

第1部 対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル
 I.目的
 II.胃内視鏡検診の科学的根拠
  1.胃がん検診ガイドライン
  2.胃がん死亡率減少効果
  3.感度・特異度
  4.生存率
 III.胃内視鏡検診の不利益
  1.偽陰性
  2.偽陽性
  3.過剰診断
  4.感染
  5.偶発症
 IV.実施方法
  1.対象年齢
  2.検診間隔
  3.対策型検診の対象年齢・検診間隔
 V.精度管理の考え方
  1.精度管理総論
  2.胃内視鏡検診のための精度管理
 VI.胃内視鏡検診実施の条件
  1.胃内視鏡検診の処理能
  2.胃内視鏡検診運営委員会(仮称)
  3.検診受診対象
  4.検査医・メディカルスタッフ
  5.検査関連機器
  6.読影体制
  7.結果判定
  8.検診データベース
  9.精度管理指標の算出
  10.研修カリキュラム
 VII.検査手順
  1.検査の準備
  2.インフォームド・コンセント
  3.前処置
  4.胃内視鏡検査手順
  5.機器管理
  6.結果報告
 VIII.不利益への対策
  1.偽陽性
  2.過剰診断
  3.感染
  4.偶発症
 IX.まとめ
 X.今後の課題
  1.リスク層別化
  2.胃内視鏡によるヘリコバクター・ピロリ感染診断
  3.ヘリコバクター・ピロリ除菌
 Q&A
  【市区町村編】
  【医療機関編】
第2部 既導入地域の事例紹介
 横浜市における対策型胃内視鏡検診
 金沢市における対策型胃内視鏡検診
 浜松市における対策型胃内視鏡検診
 福岡市における対策型胃内視鏡検診
用語解説
索引

序文

 内視鏡検査による胃がん検診については、国立がん研究センターの「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版」での提言をもとに、厚生労働省「がん検診のあり方に関する検討会」の議論を経て、平成28年度から対策型検診として実施することが可能となりました。主に集団検診の形態で実施されてきたこれまでのX線検診と異なり、内視鏡検診は病院や診療所などで医師が実施する個別検診であることから、精度管理体制、検査体制、安全管理体制などまったく新しい実施体制を構築することが必要となります。そこで日本消化器がん検診学会では、内視鏡検診の実施体制の標準化を目的として、平成27年度厚生労働省科学特別研究事業「対策型検診としての胃内視鏡検診等の実施にかかる体制整備のための研究」(研究代表者:深尾彰)に基づき、日本消化器内視鏡学会などの関連機関のご協力を得て、「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル2015年度版」を作成いたしました。本マニュアルに関しては、すでに本学会ホームページで公表したほか、印刷・製本した冊子を自治体、医師会、検診機関などに送付させていただいております。平成28年2月に改正された厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、内視鏡検診実施にあたっては本マニュアルを参考にする旨が明記されており、今後の内視鏡検診の普及に向けて、さらに多くの関係各位にご提供申し上げたいところでありますが、印刷・製本の原資が公的資金であるため、今後の増刷は事実上不可能となっておりました。そのような状況のなかで、種々検討した結果、このたび南江堂のご協力を得て市販版を出版することにいたしました。先に無料配布した冊子は厚生労働省の研究費による研究成果物であることから、そのままの形で市販することができないため、本市販版では、用語集とすでに先行して内視鏡検診を実施している4つの地域の事例紹介を新たに加筆するなど、体裁を変更していることをおことわりしておきます。この事例に垣間みえる各地域での問題解決の工夫を是非参考にしていただきたいと思います。
 最後に、当初から本マニュアルの作成にご尽力くださった編集委員会の諸先生、また出版にあたり事例紹介の原稿執筆いただいた諸先生、ご無理をお聞き入れてくださった南江堂の担当諸兄に厚く御礼申し上げます。

2017年2月
一般社団法人日本消化器がん検診学会理事長
深尾彰

 平成27年9月、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」は、50歳以上を対象とした胃内視鏡検査を用いた胃がん検診を対策型検診として推奨した。すでに医療現場で広く普及した胃内視鏡検査を、検診として実施するにあたっては、さまざまな配慮が必要である。というのは医療では、症状のある患者と医師との間で検査を行うにあたって、説明や同意が行われ診療録に記載される。また、それが適切であったかは医療保険の指導・監査などによるチェック機能が働く。一方、自治体が行うがん検診は、無症状の住民に税金を使って検診を提供するものであり、医療と同様の説明と同意を行う時間的余裕や診療録がない。よって同じ検査であっても診療と検診では、運用方法を分けて対応しなければならない。医療機関ごとに前処置や撮影・読影などがバラバラではいけないということである。この『対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル』は、国が推奨するにあたって、日本消化器がん検診学会に委託した運用手順書である。国の推奨にいたる有効性を示すエビデンスのほか、内視鏡検診を実施するにあたっての組織づくり、読影体制、前処置や検査手順、感染症対策などがまとめられている。現在、比較的大規模な病院では感染症対策としてstandard precautionsの概念に基づき事前の感染症検査を行わず、全例を自動洗浄機で洗浄しているところであるが、診療所の多くはいまだ手洗いであったり、感染症検査陽性者のみ消毒している施設がある。しかし、自治体が行うがん検診では、健常者に“税金を投じて”感染症を広めることは決してあってはならないのである。よりいっそうの安全対策が必要であることから、病院と同レベルの配慮を要求している。
 内視鏡医の多くが二重読影という条件に不満を感じていると聞く。二重読影は肺・乳房など画像を用いた検診では必須条件になっている。診療での内視鏡検査でわざわざ2名で読影することは行われていないだろう。しかし、肺や乳房の検診では権威とされる放射線科医であっても二重読影の一翼を担っている。胃内視鏡だけ別という論理は成り立たないだろう。
 このマニュアルで最も注目すべき点は胃内視鏡検診運営委員会の提案である。市町村の行うがん検診はがん対策の一環と位置づけられており、PDCAサイクルに基づき業務管理が必要とされている。胃内視鏡検診は集団検診ではなく医療機関個別方式として行われるため、データを一元管理し分析し課題解決を行う組織が必要となる。この組織を胃内視鏡検診運営委員会として位置づけ何をすべきかを定義している。このような組織は胃内視鏡だけではなく他のがん検診でも同様に必要であるが、このマニュアルが初めて業務を定義し検診を行ううえでの必須条件と位置づけている。
 各地で、胃内視鏡検診を導入する動きが急速に進んでおり、市町村から内視鏡を所有する医師たちへ参加する意志や機器の確認が行われていると聞く。胃内視鏡検診への参加を考えている医師にとっては、このマニュアルは必須のバイブルであり、ぜひ一読をお勧めする。

臨床雑誌内科121巻2号(2018年2月号)より転載
評者●大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部部長 中山富雄