書籍

まるわかり!肺音聴診[Web音源・動画付]

聴診ポイントから診断アプローチまで

  • 新刊

: 皿谷健
ISBN : 978-4-524-24981-7
発行年月 : 2020年4月
判型 : B5
ページ数 : 144

在庫あり

定価3,630円(本体3,300円 + 税)


  • お気に入りに登録
  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

肺音聴診に必要な部位別の聴診ポイント、正常音・副雑音の特徴など基本的知識のほか、肺音所見から「何を聴き取り、何を疑うべきか」「次の一手は?」といった臨床的要点を凝縮し、わかりやすく解説した入門書。特徴的な肺音所見のほか具体的な症例も実際のWeb音源・動画として多数収載し、実践的な考え方や対応を学べるため、日常診療のスキルアップに役立つ一冊となっている。

第I章 聴診をする前に
 1.聴診の方法
 2.聴診部位の狙い撃ち
 3.肺音の分類と原則
 4.正常呼吸音の分類をおさえる−気管呼吸音,気管支呼吸音,肺胞呼吸音
 5.正常呼吸音が変化する時とは
 6.副雑音の分類
 7.声音聴診の所見
 8.打診/聴診を組み合わせたテクニック
 9.画像所見の割に聴診所見が乏しくても考慮すべき疾患群
第II章 聴診の実際−聴診部位から考える診断アプローチ
 1.頸部
  Case1 頸部で気管呼吸音に混じる喘鳴が聞こえたら
  Case2 頸部でcoarse cracklesとwheezesが聞こえたら
  Case3 頸部で著明な呼気時間の延長を伴うwheezesが聞こえたら
 2.上葉(気管分岐部)
  Case4 胸部全体にwheezesとrhonchiの両方が聴取されたら
 3.中葉・舌区
  Case5 喀痰喀出でcoarse cracklesとrhonchiが減弱したら
  Case6 多彩な音が聞こえたら
  Case7 吸気のはじめに,ちょこっと音が聞こえたら
  Case8 頭がぼーっとしたら? 慢性II型呼吸不全の典型例
 4.下葉(肺底部)
  Case9 最大吸気で,背部でバリバリという音が増えたら
  Case10 1つひとつの音を分離して聞き取れないバチバチ音(バリバリ音)が聞こえたら
  Case11 背側右肺底部で連続性血管雑音が聞こえたら
第III章 症例で学ぶ!疾患別の目の付けドコロ−clinical contextから理解する
 CaseA レジオネラ肺炎
 CaseB マイコプラズマ肺炎
 CaseC マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎
 CaseD 誤嚥性肺炎
 CaseE 加湿器肺
 CaseF インフルエンザウイルス感染と肺炎球菌肺炎の合併
 CaseG インフルエンザウイルス感染とアスペルギルス肺炎の合併
 CaseH 粘液産生性肺胞上皮癌
 CaseI 自然気胸に合併した皮下気腫/縦隔気腫
 CaseJ HIVに合併したニューモシスチス肺炎
 CaseK アスベストーシス
 CaseL 特発性器質化肺炎
 CaseM 特発性間質性肺炎の急性増悪
参考文献
索引

Web音源・動画タイトル一覧
 第I章 聴診をする前に
 2.聴診部位の狙い撃ち
  1,2 口腔聴診
 4.正常呼吸音の分類を押さえる
  3 気管呼吸音
  4,5 気管支呼吸音
  6 肺胞呼吸音
 5.正常呼吸音が変化する時とは
  1 肺胞呼吸音の気管呼吸音化
  2,3 空洞呼吸
  4,5 肺胞呼吸音の減弱/消失
  6,7 気管支呼吸音の低下
  7,8 気管支呼吸音の左右差
 7.声音聴診の所見
  8,9 ペクトロキー
  10,11 やぎ音
 8.打診/聴診を組み合わせたテクニック
  12,13 scratch test
  14〜16 percussion scratch test
  17 auscultation percussion test
  9 声音聴診
  18 声音聴診
第II章 聴診の実際
 1.頸部
  19,20 Case@の聴診所見
  21〜24 CaseAの聴診所見
  25 CaseBの聴診所見
  26 Wheezesの頸部への放散
 2.上葉(気管分岐部)
  27,28 CaseCの聴診所見
 3.中葉・舌区
  29,30 CaseDの聴診所見
  31 CaseEの聴診所見
  32,33 CaseFの聴診所見
  34〜36 CaseGの聴診所見
 4.下葉(肺底部)
  37〜39 CaseHの聴診所見
  40 CaseIの聴診所見
  41 CaseJの聴診所見
第III章 症例で学ぶ!疾患別の目の付けドコロ
 42〜47 レジオネラ肺炎
 48 マイコプラズマ肺炎
 49 マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎
 50,51 誤嚥性肺炎
 52,53 加湿器肺
 54 インフルエンザウイルス感染と肺炎球菌肺炎の合併
 55〜58 インフルエンザウイルス感染とアスペルギルス肺炎の合併
 59 粘液産生性肺胞上皮癌
 60,61 自然気胸に合併した皮下気腫/縦隔気腫
 62 HIVに合併したニューモシスチス肺炎
 63 アスベストーシス
 64 特殊な胸膜摩擦音
 65 特発性器質化肺炎
 66 特発性間質性肺炎の急性増悪

はじめに

 筆者は以前より医師、看護師、メディカルスタッフ向けに聴診のサイト「聴診スキル講座」(看護roo!サイト内)を無料公開してきた(https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2424)。しかしながら呼吸器の代表的疾患を体系的に、かつ、聴診音とともにコンパクトにまとめた本は多くない。そこで研修医や若手医師、プライマリケア医や看護師、メディカルスタッフのすべてを対象に「聴診を実際の呼吸診療にどのように活用できるのか」をわかりやすくかつコンパクトにまとめ、さらに代表的疾患や日常診療で必ず役立つ疾患群の音源を収集・解析した肺音図付きWeb動画を見て学べる書籍を企画するに至った。
 本書では、第I章においては聴診の方法から、正常音・副雑音の特徴、打診/聴診を組み合わせたテクニックなどをやさしく解説している。第II章においては実症例を取り上げながら部位別に気をつけたい呼吸音所見や考えられる疾患などプラクティカルな考え方や対応を学べる。第III章はレベルアップ編として実症例を取り上げて聴診に加えてその他の患者情報からどのように診断がつけられるかを解説している。なお、本書およびWeb動画に掲載している肺音図の解析ソフトは株式会社JVCケンウッドのiPhone/iPad解析アプリを使用し、Web音源は株式会社DGS(デジタルグローバルシステムズ)の無線聴診器と録音機器を用いて収集した。
 本書のWeb音源と肺音図付きのWeb動画は、肺音を目でみて何度でも聞くことを可能にしており、本書の解説をあわせて読んでいただくことで実践的な聴診のエッセンスを効率よく学ぶことができると自負している。
 特徴的な、またはレアな聴診音は一期一会である。出会いは突然やってくる。一定の時間しか聴取できないのが肺音であり、病態に応じて消失したり出現したりする(一方で、弁膜症は、心雑音が安定して聴取できることが多いのである)。肺音でこれだという音を聞いたら、録音して共有できる体制があると臨床能力がアップするだろう。

2020年3月
皿谷健

 新型コロナウイルス感染症が世界を覆っている今、多くの重症者が肺炎で命を奪われている。その診断は、胸部X線写真および胸部CT画像、重症度はパルスオキシメーターによる酸素飽和度(SpO2)や動脈血酸素分圧(PaO2)および吸入気酸素濃度(FIO2)との比(P/F ratio)によっている。肺聴診はどうだろうか。
 中国の新型コロナウイルス肺炎57例の聴診所見では、coarse breath sounds、wheezes、medium-coarse crackles、fine cracklesおよびVelcro cracklesを認めたとしている(Wang B et al:Lancet,SSRN,Manuscript Number:THELANCET-D-20-02009)。coarse breath soundsは“気管支呼吸音化”を指していると推察している。今から100年前、1919年から1920年にかけてスペイン風邪に罹患して旧陸軍病院(現在の国立国際医療研究センター病院)に入院した患者470人(死亡8例)の診療録を調べた最近の論文(Kudo K et al:Emerg Infect Dis 23:662-664,2017)では、不連続性ラ音の出現、最大呼吸数、入院後の高熱持続等が入院期間の長さと関連していた。とくに興味深いのは、重症例にラ音だけでなく、肺が硬くなって音響伝達の亢進を示す呼吸音の“気管支呼吸音化”がみられたことである。当時の医師たちの聴診所見の正確な記録に驚かされる。
 19世紀の初めフランスのLaennecによってもたらされた肺聴診は、200年を経た現在の医療現場においても、フィジカルアセスメントの基本として用いられている。このたび、杏林大学皿谷 健准教授によって、南江堂から『まるわかり!肺音聴診[Web音源・動画付]−聴診ポイントから診断アプローチまで』が発刊された。この本では、「聴診を実際の呼吸診療にどのように活用できるか」を主眼に、豊富な実際の音源を用いて、現在のIT技術を駆使し、実践的な肺音解説を展開している。
 Laennec以来100年以上もの長い間、肺聴診は音であるにもかかわらず文字と伝承によって伝えられてきた。音を「聴く」教材として最初に登場したのは、1960年代のレコード教材であった。やがて1970年代にはカセットテープに替わり、1990年代になるとCDになった。本書ではWebで音を聴き、動画を見ることができ便利である。
 肺聴診に科学の光を与えた英国のForgacsによる『Lung Sounds』(1978年刊行)以来、肺聴診で聴かれる音は、その発生メカニズムや肺の音の伝達を「考え」ながら、肺に起こっている病態を「考える」医学になった。米国の2人の教授、MurphyとLoudonによって1976年に設立された「国際肺音学会(ILSA)」と、1983に設立された日本の「肺音(呼吸音)研究会」によって、肺聴診で聴かれる音の分類と用語の統一、発生機序と病態との関連などが検討され、1,000篇を超える研究論文が発表されてきた。本書では、こうした成果を基礎に最新の考え方をわかりやすく解説している。
 本書が、医師、看護師、理学療法士など医療に従事する者にとって欠かすことのできない臨床技術である肺聴診の理解に役立つことを願っている。

臨床雑誌内科126巻1号(2020年7月号)より転載
評者●公益財団法人結核予防会 理事長 工藤翔二