書籍

みんなの皮膚外用薬

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 常深祐一郎
ISBN : 978-4-524-24917-6
発行年月 : 2019年10月
判型 : B5
ページ数 : 192

在庫品切れ・重版未定

定価3,960円(本体3,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

皮膚の外用薬は他科の医師が処方することも多く、また看護師・薬剤師の実践・指導が治療成功に大きく関与する。本書は、こうしたあらゆる職種の読者(「みんな」)を対象として、現在の皮膚外用薬の大事なところだけをまとめた。掲載薬剤一覧や参照箇所の表示、重要事項の色字表記や全編にわたる箇条書きなど、利便性を追求しながらも、とにかくどんどん読み進められる仕立てとした。

皮膚外用薬一覧
I 皮膚外用薬のキホン
 A 剤形の種類と特徴をおさえる
 B 外用療法を使いこなす
  1 単純塗布
  2 重層療法
  3 密封療法
  4 ショートコンタクト療法
 C 薬剤の種類と特徴を知る
  1 ステロイド外用薬
  2 タクロリムス軟膏
  3 活性型ビタミンD3外用薬
  4 保湿薬
  5 外用抗菌薬
  6 外用抗ウイルス薬
  7 外用抗真菌薬
  8 皮膚潰瘍治療薬
  9 ざ瘡治療薬(アダパレン,過酸化ベンゾイル)
  10 外用麻酔薬
  11 免疫賦活外用薬(イミキモド)
  12 古典的外用薬
II 皮膚外用薬の上手な使い方
 1 アトピー性皮膚炎
 2 脂漏性皮膚炎
 3 皮脂欠乏症,皮脂欠乏性湿疹
 4 乳児湿疹
 5 接触皮膚炎,貨幣状湿疹
 6 虫刺症
 7 痒疹
 8 手湿疹
 9 口唇炎
 10 汗疹
 11 薬疹,中毒疹
 12 乾癬
 13 尋常性ざ瘡
 14 伝染性膿痂疹(とびひ)
 15 白癬(足白癬,爪白癬,体部白癬,頭部白癬)
 16 カンジダ症
 17 癜風,マラセチア毛包炎
 18 疥癬
 19 円形脱毛症,男性型脱毛症(AGA)
 20 尋常性白斑
 21 日光角化症,尖圭コンジローマ
 22 褥瘡,皮膚潰瘍
 23 熱傷
 24 凍瘡(しもやけ)
 25 酒さ,酒さ様皮膚炎
 26 日光皮膚炎(日焼け)
索引

序文
「みんな」に贈る『みんなの皮膚外用薬』

 多くの教科書は疾患を中心にして書かれており、その疾患の治療の項目で治療薬は登場するものの、薬剤名だけが記載されているか、処方例があるとしても代表的なものが簡単に述べられているだけのことが多い。実際の治療に際して、往々にしてどのように使いこなせばよいのかよくわからないという事態に陥る。
 今回、治療薬を主役にし、かつ外用薬に絞った書籍を企画した。外用薬は、皮膚の悩みを訴える患者さんに対し、診療科を問わずどのような医療現場でも頻繁に使用されている。そこでは、処方する医師と使用する患者さんだけではなく、調剤や説明を行う薬剤師、実際に患者さんに塗布する看護師など多くの人が関わる。本書はそういう外用薬に関係する人たち「みんな」を読者対象に執筆した。「みんな」の目線が一致していないと治療は成功しないためである。医師は目の前の患者さんの疾患に適した薬剤を選択して十分な量を処方し、薬剤師はその処方意図を汲み取って患者さんに薬剤の説明を行い、看護師は適切な範囲に適切な量で患者さんに薬剤を塗布しながら外用指導を行い、患者さんは正しい知識を身につけて日々治療を継続する、という流れである。本書は是非「みんな」に読んでいただきたい。
 本書は分担執筆である。各領域を得意とする先生方に執筆を依頼した。分担執筆による書籍は専門家に執筆してもらえるという利点がある一方で、ともすると執筆者により内容の難易度や記載分量、意識している読者層が異なって、全体として統一感に欠けるものになってしまうことがある。本書ではそれを避けるために編者が徹底的に先生方の原稿に赤字を入れさせていただいた。初校は真っ赤になり、再校も再校と思えないほど手を入れた。せっかくご執筆いただいた文章の至る所を修正したり、追加をお願いしたり、大幅に削除したり、場合によっては書き直しを依頼したこともある。専門家の先生方に対して無礼きわまりなく、大変失礼な話であるので、途中でお詫びのお手紙をお送りしたほどである。この場をお借りしてご執筆いただいた先生方には再度お詫び申し上げる次第である。しかし、この作業によって、書籍全体の統一感とわかりやすさは格段に向上したと信じている。編者の哲学というか、こういう書籍にしたい、という思いを通させていただいた。各領域の専門家の先生方と編者と「みんな」でつくり上げた、熱い思いの詰まった1冊である。
 本書は2つの章で構成される。I章で剤形の特徴および外用療法と薬剤ごとの使い方を述べ、II章で疾患ごとにその治療について詳しく解説した。つまり、縦糸と横糸の構成である。そして参照すべきページを詳細に明示することでI章とII章をリンクさせて使用しやすいようにした。本書は、薬剤の使い方を調べることも、疾患の治療法を調べることもできる。どちらも臨床現場でよく行われる調べ方で、両方に対応できるようにしている。もちろん、通読していただければ、縦糸と横糸が全部頭に入り、皮膚疾患の外用治療という1枚の布が完成する。そこまで活用いただければうれしい限りである。
 皮膚の診療に関わる「みんな」に贈る自信の1冊である。本書が「みんな」のお役に立てることを心から祈っている。

2019年(令和元年)9月6日 45歳の誕生日
常深祐一郎

非皮膚科医が皮膚外用薬を適切に使用するコツを学ぶ絶好の書
 このたび、常深祐一郎教授のご編集で、非皮膚科医が皮膚外用薬を適切に使用するコツを学ぶ絶好の書『みんなの皮膚外用薬』が上梓された。評者は大学病院の外来以外にも、同大学グループの診療所で外来・訪問診療を行っており、皮膚外用薬を処方する機会が多い。そして常深教授と同じ大学で診療する医師として、患者・家族はもちろん、他職種への配慮、生活指導も含めた診療姿勢など多くを学ばせていただいている。本書はこれら常深教授の“皮膚科哲学”に満ちているといえよう。
 本書は、あくまで皮膚外用薬が“主薬”、いや“主役”となっている。つまり、病態、症状、診断などについてはコンパクトにまとめられ、皮膚外用薬に関する臨床の実際について多くの紙面が割かれている。また本書は、「皮膚外用薬は、診療科を問わずさまざまな医療現場で頻繁に使用されている」という立ち位置、つまり「非皮膚科医が皮膚外用薬を処方する前提」で皮膚科医によって執筆されている。非皮膚科医が皮膚科医からのアドバイスを受けることができる内容であり、大変ありがたい。
 第I章「皮膚外用薬のキホン」では、剤形の種類と特徴、外用薬の使用法(外用療法)、各種薬剤の種類と特徴について解説されている。「保湿薬」「古典的外用薬」の項はとくに奥深く、必読である。
 第II章「皮膚外用薬の上手な使い方」においては、26の疾患カテゴリーについて、分担執筆ではあるが徹底した統一性をもって解説されている。とくに「皮脂欠乏症、皮脂欠乏性湿疹」の項は、常深教授の“皮膚科哲学”が凝縮されているように思われ、特筆に値する。各項は「使用する薬剤」「外用療法のコツ」「代表的処方例」などの項目に沿って皮膚外用薬について詳細に解説されている。さらに、たとえば「手湿疹」の項における「乾燥・亀裂を伴う場合」「浸潤が強い場合」「角化が強い場合」のように、具体的なアドバイスが得られる内容になっている点もとてもありがたい。
 また、各項には「外用指導のコツと注意点」という項目も設けられている。これは本書の題名にある「みんな」、つまり、皮膚外用薬を実際に使用する患者さん、処方する医師、調剤・指導を行う薬剤師、塗布する看護師、の全員が統一した理解で皮膚外用薬を使用することの重要性が強く意識されているためである。この考え方により、“疾患中心”ではなく“患者中心”の皮膚外用薬へつながるであろう。欲をいうならば、皮膚科が門外漢の立場から、とくにアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、白癬など頻度の高い皮膚疾患において、「皮膚外用薬による治療が奏効しない際の対応法」「皮膚科専門医へのコンサルトのタイミング」などが項目に含まれていればさらにありがたいと感じた。
 その他の本書の特徴として、参照ページが随所に提示され、さまざまな内容のつながりが理解できるように工夫されている。またコラムには、たとえば「蕁麻疹に外用薬は効果がある?」のような非皮膚科医が抱く素朴な疑問が含まれ、まさに「かゆいところに手が届く内容」となっている。
 本書は、常深教授をはじめとする皮膚科専門医の先生方から「みんな」への熱いメッセージがまとめられた本である。「かゆいときに塗る」ように疑問が生じた際に調べながら読むことはもちろん、「ベタ塗りする」ように丹念に通読することもできる。すべての内科医はもちろん、皮膚診療に関わる「みんな」に強くお勧めする次第である。

臨床雑誌内科126巻2号(2020年8月号)より転載
評者●埼玉医科大学総合診療内科 教授/HAPPINESS館クリニック 木村琢磨

 整形外科の外来には日々多くの患者が受診する。整形外科医は本来、外科的治療を行うようにトレーニングされてはいるが、さまざまな症状を有する患者の多さのため、プライマリケア医としての役割を担っている。よって運動器疾患だけでなく、皮膚科疾患を含めたさまざまな疾患の診療にあたることがある。
 このたび、南江堂より『みんなの皮膚外用薬』が刊行された。本書の特徴は外用薬に絞った内容であることであり、その帯には「ぱっと見でよくわかる皮膚外用薬一覧がついています」とある。まず目にするのが、これまでなじみのある外用薬の写真付きの一覧である。これはわれわれ整形外科医にとって非常に役立つものである。本書はすべての診療科の医師、プライマリケア医、看護師、薬剤師、患者のために皮膚外用薬のキモをまとめたということで、医療者「みんな」の視点を大事にしていることがうかがえる。33名の高名な皮膚科医の分担執筆であるが、編者の常深祐一郎先生の意向で文章が統一され、非常に読みやすくわかりやすいものとなっている。
 構成は、「I。皮膚外用薬のキホン」、「II。皮膚外用薬の上手な使い方」からなっている。Iでは、皮膚外用薬の総論が示されている。中でも外用薬はその特徴によって使い方がさまざまであり、単純塗布、重層療法、密封療法、ショートコンタクト療法があることなど、自分自身の見識の浅さからこの事実をはじめて知ることとなり、たいへん勉強になった。IIでは、アトピー性皮膚炎、手湿疹、薬疹・中毒疹、褥瘡・皮膚潰瘍、熱傷など26の疾患における使用すべき外用薬の種類、外用療法のコツ、注意点などがそれぞれ具体的に記載されている。整形外科医が扱う疾患が含まれており、写真入りの記載はたいへんインパクトがある。
 本書はわれわれ整形外科医にとっても非常にわかりやすく、懇切に記載されている。診療のかたわらでぜひ一読をおすすめしたい良書である。

臨床雑誌整形外科71巻11号(2020年10月号)より転載
評者●富山大学整形外科教授 川口善治

9784524249176