書籍

慢性膵炎診療ガイドライン2021改訂第3版

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-22837-9
発行年月 : 2021年11月
判型 : B5
ページ数 : 168

在庫あり

定価3,520円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本消化器病学会編集による診療ガイドライン.Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて記載.CQではエビデンスレベルと推奨の強さを提示.慢性膵炎診療における,病態,診断,鑑別診断,治療,予後等について,エビデンスに基づき現時点の標準的な指針を示す.

クエスチョン一覧
第1 章 病態
 BQ 1-1 慢性膵炎の定義と臨床診断基準とは何か?
 BQ 1-2 慢性膵炎の病期分類とは何か?
 BQ 1-3 膵外分泌機能不全とは何か?
 BQ 1-4 膵性糖尿病とは何か?
 
第2章 診断
(1) 概要
 BQ 2-1 慢性膵炎の診断のための検査法にはどのようなものがあるか?
(2) 問診
 BQ 2-2 慢性膵炎の診断に病歴聴取,身体診察は有用か?
(3) 生化学検査
 BQ 2-3 慢性膵炎の診断に血中・尿中膵酵素測定は有用か?
(4) 画像検査
 BQ 2-4 慢性膵炎の診断に胸・腹部X 線撮影は有用か?
 BQ 2-5 慢性膵炎の診断に腹部超音波検査( US) は有用か?
 BQ 2-6 慢性膵炎の診断にコンピューター断層撮影法 (CT) は有用か?
 BQ 2-7 慢性膵炎の診断に内視鏡的逆行性膵胆管造影法 (ERCP) は有用か?
 CQ 2-1 慢性膵炎の診断に腹部MRI/MRCP は推奨されるか?
 CQ 2-2 慢性膵炎の診断に超音波内視鏡( EUS) は推奨されるか?
(5) 機能検査
 BQ 2-8 慢性膵炎の診断に膵外分泌機能検査は有用か?
 FRQ 2-1 膵外分泌機能不全の診断はどのように行うか?
(6) 病理検査
 FRQ 2-2 慢性膵炎の定義からみた病理学的特徴とはどのようなものか?
(7) 鑑別診断
 BQ 2-9 膵癌,膵管内乳頭粘液性腫瘍との鑑別として細胞診,組織診は有用か?
(8) 遺伝子検索
 FRQ 2-3 どのような症例で膵炎関連遺伝子異常を検索すべきか?
 
第3章 病期診断
(1) 臨床所見
 BQ 3-1 慢性膵炎の病期の判定に臨床徴候は有用か?
(2) 生化学検査
 BQ 3-2 慢性膵炎の病期の判定に血中・尿中膵酵素測定は有用か?
(3) 画像検査
 CQ 3-1 慢性膵炎の病期の判定に画像検査は推奨されるか?
(4) 機能検査 (外分泌)
 BQ 3-3 慢性膵炎の病期の判定に膵外分泌機能検査は有用か?
(5) 機能検査 (内分泌)
 BQ 3-4 慢性膵炎の病期の判定に膵内分泌機能検査は有用か?
 
第4章 治療
(1) 概要
 BQ 4-1 慢性膵炎の内科的治療にはどのようなものがあるか?
 BQ 4-2 慢性膵炎の内視鏡的治療にはどのようなものがあるか?
 BQ 4-3 慢性膵炎の外科的治療にはどのようなものがあるか?
(2) 治療方針
 BQ 4-4 治療方針決定のために成因検索は有用か?
 BQ 4-5 治療方針決定のために病期の判定は有用か?
(3) 生活指導
 BQ 4-6 慢性膵炎の治療に断酒指導は有用か?
 BQ 4-7 慢性膵炎の治療に病期を考慮した栄養療法は有用か?
 CQ 4-1 慢性膵炎の治療に禁煙指導は推奨されるか?
(4) 疼痛対策
 BQ 4-8 慢性膵炎の疼痛治療に内視鏡的治療( +ESWL) は有用か?
 BQ 4-9 慢性膵炎の疼痛治療にEUS/CT ガイド下腹腔神経叢ブロック (CPB)/融解術(CPN) は有用か?
 CQ 4-2 慢性膵炎の疼痛治療に非オピオイド鎮痛薬,オピオイド鎮痛薬,抗コリン薬,鎮痛補助薬は推奨されるか?
 CQ 4-3 慢性膵炎の疼痛治療に膵消化酵素薬補充療法は推奨されるか?
 CQ 4-4 慢性膵炎の疼痛治療に蛋白分解酵素阻害薬は推奨されるか?
 CQ 4-5 慢性膵炎の疼痛治療に長期反復内視鏡的治療は推奨されるか?
 CQ 4-6 内視鏡的治療が無効な場合の疼痛治療に外科的治療は推奨されるか?
(5) 外分泌不全の治療
 BQ 4-10 膵外分泌機能不全の治療に脂溶性ビタミン薬の投与は有用か?
 BQ 4-11 膵外分泌機能不全の治療に骨粗鬆症検査は有用か?
 BQ 4-12 膵外分泌機能不全の治療効果判定にどのような評価項目が有用か?
 CQ 4-7 膵外分泌機能不全の治療に脂肪制限食は推奨されるか?
 CQ 4-8 膵外分泌機能不全の治療に高力価膵消化酵素薬は推奨されるか?
 CQ 4-9 膵外分泌機能不全の治療に胃酸分泌抑制薬は推奨されるか?
 CQ 4-10 膵外分泌機能不全に糖尿病の合併がある場合に一次性糖尿病に準じたカロリー制限は推奨されるか?
(6) 糖尿病の治療
 BQ 4-13 糖尿病慢性合併症の診断と治療は膵性糖尿病でも有用か?
 CQ 4-11 膵性糖尿病の治療に経口血糖降下薬は推奨されるか?
 CQ 4-12 膵性糖尿病の治療にインスリン療法は推奨されるか?
 FRQ 4-1 膵性糖尿病の治療に一次性糖尿病における血糖コントロール目標値は適切か?
(7) 合併症の治療
 BQ 4-14 慢性膵炎に合併した仮性動脈瘤・hemosuccus pancreaticus にIVR(interventional radiology) は有用か?
 CQ 4-13 慢性膵炎に伴う仮性囊胞にドレナージ治療は推奨されるか?
 CQ 4-14 IPF( internal pancreatic fistula,膵性胸腹水など) に膵管ステントは推奨されるか?
 CQ 4-15 慢性膵炎に合併した胆道狭窄に胆管ステントは推奨されるか?
 FRQ 4-2 慢性膵炎に伴うサルコペニアの治療はどのように行うべきか?
 
第5章 予後
(1) 概略
 BQ 5-1 慢性膵炎の生命予後はどうか? 126
(2) 病態の進行阻止
 CQ 5-1 無症状の慢性膵炎に内視鏡的治療( +ESWL) は推奨されるか?
 CQ 5-2 慢性膵炎の病態進行の阻止に外科手術は推奨されるか?
(3) 予後
 FRQ 5-1 慢性膵炎の予後改善に膵癌スクリーニング検査は有用か?
 FRQ 5-2 慢性膵炎の予後改善に早期治療介入は有用か?
 FRQ 5-3 膵癌の予防に内視鏡的治療,外科手術は有用か?

刊行にあたって

 日本消化器病学会は、2005 年に跡見裕理事長(当時)の発議によって、Evidence-Based Medicine(EBM)の手法にそったガイドラインの作成を行うことを決定し、3 年余をかけて消化器6疾患(胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、肝硬変、クローン病、胆石症、慢性膵炎)のガイドライン(第一次ガイドライン)を上梓した。ガイドライン委員会を積み重ね、文献検索範囲、文献採用基準、エビデンスレベル、推奨グレードなどEBM 手法の統一性についての合意と、クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など、基本的な枠組み設定のもと作成が行われた。ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)を重要視し、EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員のCOI を公開している。菅野健太郎理事長(当時)のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として継続されたガイドライン作成は、先進的な取り組みであり、わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価される。
 第一次ガイドラインに次いで、2014 年に機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)、大腸ポリープ、NAFLD/NASH の4 疾患についても、診療ガイドライン(第二次ガイドライン)を刊行した。この2014 年には、第一次ガイドラインも作成後5 年が経過するため、先行6 疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行われた。改訂版では第二次ガイドライン作成と同様、国際的主流となっているGRADE(The Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)システムを取り入れている。
 そして、2019〜2021 年には本学会の10 ガイドラインが刊行後5 年を超えることになるため、下瀬川徹理事長(当時)のもと、医学・医療の進歩を取り入れてこれら全てを改訂することとした。2017 年8 月の第1 回ガイドライン委員会においては、10 ガイドラインの改訂を決定するとともに、近年、治療法に進歩の認められる「慢性便秘症」も加え、合計11 のガイドラインを本学会として発刊することとした。また、各ガイドラインのCQ の数は20〜30 程度とすること、CQ のうち「すでに結論が明らかなもの」はbackground knowledge とすること、「エビデンスが存在せず、今後の研究課題であるもの」はfuture research question(FRQ)とすることも確認された。
 2018 年7 月の同年第1 回ガイドライン委員会において、11 のガイドラインのうち、肝疾患を扱う肝硬変、NAFLD/NASH の2 つについては日本肝臓学会との合同ガイドラインとして改訂することが承認された。前版ではいずれも日本肝臓学会は協力学会として発刊されたが、両学会合同であることが、よりエビデンスと信頼を強めるということで両学会にて合意されたものである。また、COI 開示については、利益相反委員会が定める方針に基づき厳密に行うことも確認された。同年10 月の委員会追補ではbackground knowledge はbackground question(BQ)に名称変更し、BQ・CQ・FRQ と3 つのQuestion 形式にすることが決められた。
 刊行間近の2019〜2020 年には、日本医学会のガイドライン委員会COI に関する規定が改定されたのに伴い、本学会においても規定改定を行い、さらに厳密なCOI 管理を行うこととした。また、これまでのガイドライン委員会が各ガイドライン作成委員長の集まりであったことを改め、ガイドライン統括委員会も組織された。これも、社会から信頼されるガイドラインを公表するために必須の変革であったと考える。
 最新のエビデンスを網羅した今回の改訂版は、前版に比べて内容的により充実し、記載の精度も高まっている。必ずや、わが国、そして世界の消化器病の臨床において大きな役割を果たすものと考えている。
 最後に、ガイドライン委員会担当理事として多大なご尽力をいただいた榎本信幸理事、佐々木裕利益相反担当理事、研究推進室長である三輪洋人副理事長、ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生、刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい。

2021 年11 月
日本消化器病学会理事長
小池 和彦

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