書籍

ここが大事!高齢者皮膚診療のコツとピットフォール

編集 : 戸倉新樹/秋山真志
ISBN : 978-4-524-24935-0
発行年月 : 2019年6月
判型 : B5
ページ数 : 222

在庫あり

定価6,820円(本体6,200円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

高齢皮膚疾患患者の診療・ケアを行うにあたって必須となる、皮膚の加齢変化の特徴、高齢者に多い疾患ごとの診療技術、褥瘡ケア、爪のケア、フットケアなどの方法、併存疾患をもつ患者(透析患者・低栄養状態の患者・癌患者)への注意点、在宅医療の現場における診療のコツや制度の知識・動向など、高齢者特有の背景知識とポイント、診療技術のコツとピットフォールを解説した。

第I章 加齢により皮膚はどう変わるか〜生理的変化
 1.老化と光老化〜長期間の日光照射による変化
 2.“見た目”はどう変わるか〜皮膚の肉眼的な変化
 3.バリア機能は落ちるか〜皮膚バリアの変化
 4.皺とたるみのナゾ〜真皮の変化
 5.皮膚免疫は低下するか〜皮膚免疫の変化
 6.白髪と薄毛のナゾ〜毛髪の変化
 7.皮膚のアブラはなくなるか〜脂腺の変化
 8.汗は出なくなるか〜発汗の変化
 9.皮膚表面の細菌はどう変わるか〜年代ごとの皮膚細菌叢の変化
第II章 高齢者治療のコツとピットフォールを知る
 1.内服療法のコツとピットフォール
 2.外用療法のコツとピットフォール
 3.皮膚外科のコツとピットフォール
 4.日常生活指導のコツとピットフォール
第III章 高齢者の皮膚疾患診療のコツを学ぶ
 1.乾燥肌の本質を見極める〜老人性乾皮症,尋常性魚鱗癬,皮脂欠乏症
 2.アトピー性皮膚炎の年齢的変化を考える
 3.紅皮症の鑑別の要点は何か
 4.高齢者の薬疹の特徴を知る
 5.薬剤性光線過敏症と原因薬の関係を学ぶ
 6.高齢者の自己免疫性水疱症を捉える〜水疱性類天疱瘡
 7.高齢者顔面に見られる色素斑を見分ける
 8.高齢者の紫斑の注意点は何か
 9.高齢者の白斑を見分ける
 10.うっ滞性皮膚炎の原因を追究する
 11.高齢者の血管腫に気をつける
第IV章 高齢者皮膚病変のケアを究める
 1.乾燥肌に基づく湿疹のケア
 2.皮膚〜痒症のケア
 3.褥瘡ケア
 4.下肢うっ滞・下腿潰瘍のケア
 5.フットケア
 6.爪病変のケア
 7.鶏眼・胼胝のケア
 8.疥癬のケア
 9.男性型脱毛症,女性型脱毛症のケア
 10.脂漏性角化症のケア
 11.日光角化症〜早期癌病変のケア
 12.高齢者帯状疱疹のケア
 13.おむつかぶれのケア
第V章 高齢者によく見られる合併症と皮膚病変の関係
 1.糖尿病性潰瘍
 2.透析患者と皮膚病変
 3.低栄養状態と皮膚病変
 4.がん患者と皮膚病変
第VI章 在宅医療現場における皮膚科的対処の心得
 1.在宅医療者が知っておきたい皮膚の診かた
 2.皮膚科在宅現場
 3.日本臨床皮膚科医会での在宅医療の取り組み
 4.在宅医療の仕組みと診療報酬算定
[付録]在宅診療に必要なスキンケア用品・用具,薬剤一覧
索引

序文

 編者が医業に就き始めた頃と比較して、高齢者の患者数・割合は大きく増加し、高齢者は医療の対象として大きな存在となった。これは想定されたこととはいえ、実際にその時代を迎えると、医療現場では驚くばかりである。わが国の高齢者割合は30%に届こうとしており、65歳以上の外来患者割合、入院患者割合、要介護者数、認知症をはじめとする推定有病率などの数字を目の当たりにすると、驚愕し無意識にもう一度数字を追うことになる。皮膚科は全年齢層の患者を対象とするが、近年、当然ながら小児の割合は低下し、高齢者の割合は高くなっている。診療科によっては患者のほとんどが高齢者であり、円滑な診療のために医療そのものに加えてコミュニケーションにも腐心している現状がある。
 皮膚も他の臓器と同様に老化に伴い独特の変化を示す。バリア低下など老人性皮膚変化は種々の炎症性疾患を引き起こし、光老化は腫瘍性病変も引き起こす。また糖尿病など全身性疾患の存在は特有の皮膚病変を誘発する。より全科的には、高齢者の診療に伴って、ポリファーマシー、スキンテア、フレイル、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、IADなどという特別の用語が生まれ、医療全体にも波及している。
 一方で高齢者診療は医療のシステムにまで変革をもたらしている。医院や長期療養型病院での診察に加え、在宅医療も高齢者に対する重要な医療の受け皿になっており、それを実践するノウハウも習得する必要がある。これは純粋に医学的な問題というよりも制度の枠内でいかに効果的で効率的な医療を行うかというプラグマティックな課題でもある。
 本書では、加齢と皮膚の変化を鳥瞰し、高齢者皮膚治療の問題点を内科学的・外科学的・看護学的に浮き彫りにし、皮膚疾患での各論と全身疾患とのかかわりを扱い、そして在宅医療の課題を解説した。各項目はこの分野のエキスパートの方々にお願いした。全編を読んでいると高齢者皮膚診療が大きな分野であることに改めて気づかされる。
 コツとピットフォールとして、この分野で特に重要であることにページを割いており、かつ実践的な課題を扱っている。高齢者の医療現場にぜひ本書を置いていただき、困ったときに医学的意味を得て、ベッドサイド情報を吸い上げていただければ幸いである。

2019年5月
戸倉新樹
秋山真志

 皮膚科に来院する患者は男女を問わず、また小児から高齢の方まで年齢も幅広い。少子高齢化社会に伴い、私たち皮膚科医も高齢者を診察する機会が増えている。とくに冬季には中〜高年の皮脂欠乏性湿疹患者が多数来院する。また、高齢者の糖尿病や人工透析に伴う難治性掻痒性疾患は臨床医としても頭を悩ませるところである。さらに、高齢者では皮膚の脆弱性からの紫斑、擦過創における皮弁様の広範囲皮膚剥離やwarfarin内服中の打撲でみられる解離性皮下血腫など、若年の患者ではみられない特異な所見も観察される。寝たきり患者でオムツを使用していれば、オムツ皮膚炎や褥瘡にもなる。栄養状態がわるければ褥瘡の治癒も遷延する。糖尿病の足潰瘍や動脈硬化による壊死もあるため、爪やフットケアの知識も重要である。高齢者では認知症も加わり、病歴の不確かさもあれば、外用薬の残量もあてにならない。指導したスキンケアもなされていない。多数の薬剤を服用していれば薬疹も起こりやすい。処置にも時間がかかる。こうした高齢者のスキントラブルの問題点を整理し、理解するためのテキストはまさに時代の要望であった。
 さて、本書を紐解くと、最初に基本的事項として加齢に伴う生理的変化が載っている。加齢における皮膚や毛髪の生理的変化が細かく説明してあり、老化から発癌にいたるまで通読して読み応えがある。美容外科や皮膚外科にも役立つ加齢による皮膚変化がわかりやすく記載されている。まさに加齢医学の教科書といってもよいほどの充実した内容となっている。
 各論では、各種治療、指導のコツとピットフォールについて実際に則した内容となっており、さらに高齢者に多い皮膚疾患を中心にわかりやすく解説してある。爪の変形でも転倒する危険もあり、かなりのQOLの低下を招く。高齢者診療の視点から、本書では足のケアについても力点が置かれている。また、在宅現場での治療や注意点など皮膚を通してトータルに高齢者を見つめていく姿勢が貫かれており、高齢者特有の症状や応対についてまできめ細かく述べられている。在宅医療についても実際から報酬算定まで“目から鱗”の内容で、初心者や門外漢にもわかりやすい。
 まとめてみると、まず本書は単なる診療におけるコツやノウハウを伝授するだけではなく、そのバックグラウンドの理論、基礎知識がしっかり書かれているのがわかる。疾患の治療各論についてもそれぞれの領域のエキスパートの解説により、高齢者という斬新な切り口でうっ滞性皮膚炎やアトピー性皮膚炎にいたるまで取り上げられており意義深い。表紙のデザインも面白く、イラストもユニークで各項目がきっちりと統一されており、落ち着いた色調のカラーが読み進めるうえで心地よい。高齢者の皮膚科診療における特殊性に鑑みて、加齢による皮膚の変化の基礎的事項から臨床にいたるまできっちりと書かれている。皮膚の老年科、まるわかりの内容で、高齢者を診察する往診医などすべての医療関係者の役に立つ内容になっている。まさに待望の一冊がついに出たと言っても過言ではない。

臨床雑誌内科125巻1号(2020年1月号)より転載
評者●自治医科大学附属さいたま医療センター皮膚科 教授 出光俊郎