書籍

エキスパートから学ぶACL再建術/再再建術[Web動画付]

編集 : 武冨修治
ISBN : 978-4-524-27046-0
発行年月 : 2025年11月
判型 : B5判
ページ数 : 312

在庫あり

定価12,100円(本体11,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

ACL再建術から再再建術までを網羅した実践書.腱採取法を含む初回再建術の基本から,難渋する再再建例への対応まで,多様な術式をポイント動画付きで詳細に解説.再断裂予防のための手術戦略,早期のスポーツ復帰,治療成績向上のポイントや注意点,リカバリー法,さらには最新の治療戦略にも言及しています.初学者からスペシャリストまで,幅広いニーズに応える一冊です.

Basic編
 1 Primary ACL再建術のコンセプトと解剖学的再建術の重要性
 2 ハムストリング腱採取・加工手技
 3 骨付き膝蓋腱(BTB)採取・加工手技
 4 ハムストリング腱を用いた角丸長方形骨孔1束ACL再建術
 5 ハムストリング腱を用いた1束ACL補強術
 6 ハムストリング腱を用いた解剖学的2束ACL再建術(経ポータル法)
 7 ハムストリング腱を用いた解剖学的2束ACL再建術(outside-in法)
 8 ハムストリング腱を用いた解剖学的3束ACL再建術
 9 BTBを用いた解剖学的長方形骨孔ACL再建術(経ポータル法)
 10 BTBを用いた解剖学的長方形骨孔ACL再建術(outside-in法)
 11 大腿四頭筋腱を用いた解剖学的ACL再建術
 12 骨付き大腿四頭筋腱を用いた解剖学的長方形骨孔ACL再建術
 13 Ramp lesionに対する半月板修復術
 14 外側半月板後根/後角断裂に対する半月板修復術
Advance編
 1 Failure例やハイリスク例への対応
 2 ACL修復術
 3 骨端線未閉鎖例に対するハムストリング腱を用いた骨端線温存ACL再建術
 4 骨端線未閉鎖例に対するover-the-topルート骨端線温存ACL再建術
 5 骨端線未閉鎖例に対する大腿四頭筋腱を用いたACL再建術
 6 脛骨前方亜脱臼のあるACL再再建術におけるnotch plasty
 7 非解剖学的ACL再建術後のACL不全に対する一期的ACL再再建術における大腿骨骨孔作製
 8 非解剖学的ACL再建術後のACL不全に対する一期的ACL再再建術における脛骨骨孔作製
 9 骨欠損により二期的ACL再再建術を要する症例への骨移植術
 10 脛骨後方傾斜角が大きく脛骨前方亜脱臼を有するACL再再建術における slope reducing osteotomy
 11 Revisionを要する症例でのhybrid closed-wedge high tibial osteotomy
 12 Over-the-topルートによるACL再再建術
 13 前外側靱帯(ALL)再建術
 14 Lateral extra-articular tenodesis(LET)による補強術
索 引

前十字靱帯(ACL)再建術は,わが国の整形外科手術の中でも主要手術の1つであり,スポーツ整形外科における代表的手術です.世界的にみても,ACL再建術の発展に日本が大きく寄与してきたことは間違いなく,現在わが国で行われているACL再建術は世界の中でも繊細で丁寧であり最高レベルであると思います.一方で,ACL再建後の経過が思わしくなく,ACL再再建術に至る例も年々増加しているように感じます.ACL再再建術においては,初回手術の骨孔の存在や,脛骨前方亜脱臼や膝関節の非生理的なキネマティクスが存在しており,初回ACL再建術より回復は難しくなるケースが多くなります.再再建術に至るケースの多くは半月板などへの処置も含めて初回手術の技術的問題によるものです.まずは適切な初回再建術を行うことが何よりも重要です.近年の解剖学的研究,バイオメカニクス研究により,ACL再建術を解剖学的に行うべきであることは,コンセンサスと言ってよいと考えますが,解剖学的再建術といっても様々な術式や移植腱選択が存在します.ACL再建術に携わる先生方には,多くの引き出しを持っていただきたいと思います.
本書では,現在のACL再建術に携わる方に知っておいていただきたいACL再建術,また再建術の際に併用する手技について,基礎的な解剖などの知識を省き,手術の詳細手技に限定して紹介しています.これからACL再建術を行うビギナーの方から現在ACL損傷の治療に携わっている方に必要な手技をBasic編で,ACL再建術を多く手掛け,各施設や地域で指導的立場として診療されている先生方にも役立つ手技をAdvance編で取り上げました.
Basic編では,新鮮ACL損傷に対するprimary ACL再建術およびその際に同時に行う半月板手術などを中心に,本邦におけるエキスパートの先生方にその術式の詳細やコツとピットフォールを解説いただきました.すべての術式のコンセプトは,解剖学的にACLを再建すること,または合併損傷した構造体をできるだけ解剖学的に修復することです.様々な術式を取り上げたので,症例の背景や適応を吟味したうえで,適切に選択していただきたいと考えています.
Advance編では,ACL再再建術のコンセプト,骨移植,notch plasty,over-the-topルートによる再再建術,未だ治療方針が確立していない骨端線未閉鎖の小児に対する手術,適応範囲はまだ狭いものの新規の補強材料の導入により可能となってきた修復術,前外側の安定性を高める追加手技である前外側靱帯(ALL)再建術や外側関節外腱固定術(LET)について,エキスパートの先生方に解説いただきました.ACL再建術のエキスパートの先生にこそ,ご一読いただきたいと考えています.対応の難しい症例への治療に役立てていただければ幸いです.
本書が,ACL損傷の診療にあたられる読者の方々の明日からの診療にお役に立てれば幸いです.
2025年11月
武冨 修治

 膝前十字靱帯(ACL)損傷は,スポーツ外傷の中でももっとも頻繁に手術が行われる疾患の一つです.筆者自身,膝関節外科医として数多くのACL再建術を執刀してまいりましたが,いまだ完璧な手術にいたったという実感を得ることはありません.
 日本整形外科学会症例レジストリー(JOANR)によれば,ACL再建術の件数は全整形外科手術のうち国内で第14位に位置し,年間17,000件以上に達しています.また,PubMedで「ACL」と検索すれば3万件を超える論文がヒットします.この数字は,ACLという小さな構造体に対し,世界中の研究者がいかに情熱を注ぎ,その機能を解明し,よりよい再建方法を追求し続けてきたかの証左といえます.
 ACL再建術は,生体力学的な理解の深化やインプラント,手術手技の改良により,この数十年で劇的な進歩を遂げました.しかし,術後の不安定性の残存や低いスポーツ復帰率,そして何より再断裂という課題は,依然としてわれわれの前に立ちはだかっています.
 このような背景の中,武冨修治先生が編者を務められた本書は,まさに膝関節外科医が待ち望んでいた一冊であると断言できます.従来のACL関連書籍は,解剖,診断,治療,後療法といった網羅的・教科書的な記述が主流でした.もちろんそれらは重要ですが,本書の画期的かつ最大の特徴は,その名のとおり「手術手技」のみに焦点を絞り込んでいる点にあります.これほどまでに手技を深掘りした書籍は,これまで皆無であったといっても過言ではありません.
 本書のBasic編は,これからACL再建術を志す若手医師にとって最良のテキストとなるでしょう.各種グラフトの採取と詳細なテクニック,骨孔作成のポイント,標準的手技の理論背景は,手術の確実性を飛躍的に高めるはずです.また,「ピットフォール」や「エキスパートのこだわり」といったコラムは,若手のみならず経験を積んだ術者にとっても,術前シミュレーションにおけるきわめて有用な指針となります.
 Advance編の構成はさらに魅力的です.特にACL再再建術は,初回手術の失敗原因の究明,骨欠損への対処,固定法の再選択など,高度な判断が要求される難易度の高い領域です.加えて,近年注目を集める前外側靱帯(ALL)再建術や外側関節外腱固定術(LET),骨切り術を併用した手技など,最先端の知見が惜しみなく盛り込まれています.ここではエキスパートの思考プロセスを追体験することができ,難症例へのアプローチを再考する貴重な機会が得られるでしょう.さらに各章には,その手術手技のコンセプトを知るうえで必須の文献が網羅されています.
 本書を読み進める中で,一つの重要な事実に気づかされます.それは,これほど膨大な研究が積み重ねられてきてもなお,ACL損傷に対してこれほど多様な手術手技が存在するという事実です.裏を返せば,それはACL再建術がいまだ「未完成の術式」であることを示唆しています.本書の行間からは,エキスパートたちが対峙している次なるresearch questionが滲み出ています.本書は単なる手術手技書にとどまらず,次世代の臨床研究を志す者にとって,未解決の課題を見出すための「研究課題集」としての側面も持ち合わせていると思います.
 本書が一人でも多くのACL損傷患者の治療成績向上に寄与することを願い,自信をもって推薦いたします.

臨床雑誌整形外科77巻4号(2025月4号)より転載
評者●(弘前大学大学院整形外科教授・石橋恭之)


9784524270460