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胆石症診療ガイドライン2016改訂第2版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-26779-8
発行年月 : 2016年2月
判型 : B5
ページ数 : 138

在庫なし

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本消化器病学会編集による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。今版ではGRADEシステムの考え方を取り入れ、エビデンスレベルと推奨の強さを設定。胆石症の疫学・病態、診断、治療、予後・合併症において問題となるクリニカルクエスチョン(CQ)の診療指針を示した。とくに、めざましい進歩を遂げつつある内視鏡治療や外科治療について診療現場環境に応じた選択肢が担保されるように改訂がなされた。一般内科医・非専門医必携のガイドライン。

クリニカルクエスチョン一覧
第1章 疫学・病態
1 疫学
 CQ1-1 わが国の胆石保有率は増加しているか?
2 リスクファクター
 CQ1-2 胆石症のリスクファクターは?
3 成因
 CQ1-3 コレステロール胆石の成因は?
 CQ1-4 ビリルビンカルシウム石の成因は?
 CQ1-5 黒色石の成因は?
 CQ1-6 総胆管結石の成因は?
 CQ1-7 肝内結石の成因は?
4 自然史
 CQ1-8 胆嚢結石の自然史は?
5 胆道炎
 CQ1-9 急性胆嚢炎発生のメカニズムは?
 CQ1-10 急性胆管炎発生のメカニズムは?
6 胆道癌
 CQ1-11 胆嚢結石症は胆嚢癌のリスクファクターか?
 CQ1-12 肝内結石症は肝内胆管癌のリスクファクターか?
第2章 診断
1 症状
 CQ2-1 胆石症の症状は?
2 病歴・診察
 CQ2-2 胆石症の診断に有用な病歴聴取,診察所見は?
3 検査
 CQ2-3 胆石症の一次検査は?
 CQ2-4 胆嚢結石が疑われたときに次に行う検査は?
 CQ2-5 総胆管結石が疑われたときに次に行う検査は?
 CQ2-6 肝内結石が疑われたときに次に行う検査は?
第3章 治療
1 胆嚢結石
 CQ3-1 無症状胆嚢結石は治療すべきか?
 CQ3-2 有症状胆嚢結石の治療は?
 CQ3-3 手術では腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択か?開腹の適応は?
 CQ3-4 腹腔鏡下胆嚢摘出術における合併症は?
 CQ3-5 胆石溶解療法の適応は?
 CQ3-6 ESWLの適応は?
 CQ3-7 Mirizzi症候群の治療は?
 CQ3-8 急性胆嚢炎合併例の治療は?
 CQ3-9 胆汁性腹膜炎併発例,胆嚢周囲膿瘍併発例の治療は?
2 総胆管結石
 CQ3-10 無症状総胆管結石は治療すべきか?
 CQ3-11 総胆管結石の治療は?
 CQ3-12 -1内視鏡的治療:1)ESTとEPBDの選択基準は?
 CQ3-12 -2内視鏡的治療:2)胆管ステント留置の適応は?
 CQ3-12 -3内視鏡的治療:3)胆管炎合併例の治療は?
 CQ3-12 -4内視鏡的治療:4)胆石性膵炎合併例の治療は?
 CQ3-12 -5内視鏡的治療:5)Roux-en-Y吻合やBillrothII法胃切除後例の治療は?
 CQ3-12 -6内視鏡的治療:6)胆嚢結石合併例の治療は?
 CQ3-13 外科的結石除去術の方法は?
3 肝内結石
 CQ3-14 無症状肝内結石は治療すべきか?
 CQ3-15 薬物療法の適応は?
 CQ3-16 ESWLの適応は?
 CQ3-17 肝切除術の適応は?
 CQ3-18 経皮的内視鏡治療(PTCS)の適応は?
 CQ3-19 経口的内視鏡治療の適応は?
 CQ3-20 胆道再建後の肝内結石に対する治療は?
第4章 予後・合併症
1 予後
 CQ4-1 胆嚢結石に対する胆嚢摘出術後の経過観察は必要か?
 CQ4-2 胆嚢摘出は消化吸収機能を低下させるか?
2 長期合併症
 CQ4-3 胆嚢摘出術後の長期合併症は何か?
 CQ4-4 総胆管結石治療後の長期合併症は何か?
 CQ4-5 肝内結石治療後の長期合併症は何か?
索引

胆石症診療ガイドライン作成の手順

1.改訂の目的
 初版「胆石症診療ガイドライン」は1983年から2007年に発表された文献エビデンスをもとに,「1.疫学・病態」,「2.診断」,「3.治療(胆嚢結石,総胆管結石,肝内結石を独立して項目立て)」,「4.予後・合併症」の章立てにより作成し,2009年に刊行された.しかしながら,項目によっては検索期間中のエビデンスに乏しく,古典的なものを参照せざるを得ないものも多く,特に「1.疫学・病態」の章はその傾向が強かった.その後,内視鏡関連のデバイスなど医療機器の進歩は目覚ましく,疫学研究成果も国内外で加わってきたこともあり,新たな情報をもとにガイドラインの改訂にふさわしい時期を迎えたことから,日本消化器内視鏡学会や日本胆道学会の協力のもとに実臨床に即した「胆石症診療ガイドライン2016(改訂第2版)」を作成することとした.

2.改訂ガイドライン作成の実際
 1)診療ガイドライン改訂委員会の設立
 日本消化器病学会主導の診療ガイドライン作成は,2011年7月1日の統括委員会において先行6疾患(胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,クローン病,肝硬変,胆石症,慢性膵炎)の改訂が決定され,同年11月9日の第1回改訂委員会から本格的に作業が開始された.胆石症診療ガイドラインについては,2012年7月27日に第1回[改訂]胆石症作成・評価合同委員会,年9月21日に第2回[改訂]胆石症作成・評価合同委員会を経て,委員会の陣容と作業工程を共有した.
 2)作成方法
 ・今回の改訂ではGRADE システムを採用して文献検索とその評価が行われた.委員会の構成メンバーは半数が新たに加入するとともに,作成委員会と評価委員会も初版の構成から役割分担を刷新して客観性の担保に配慮した.
 ・まず第一に,CQを「1.疫学・病態」12件,「2.診断」6件,「3.治療」20件,「4.予後・合併症」5件に整理した.「3.治療」はさらに,「胆嚢結石」9件,「総胆管結石」4件(内視鏡的治療はさらに6項目に細分化),「肝内結石」7件に項目立てを行った.
 ・次に,文献検索は初版の検索に加えて,2007年以降2012年6月までの文献に関して検索が行われ,構造化抄録が作成されたのちにRCTについてはバイアスリスク表を参考にしてエビデンスレベルを決定した.さらに検索期間外(1982年以前,2012年7月以降)の文献も必要に応じて加えたうえで検索期間外であることを明記した.
 ・CQに対するステートメントの作成に際しては,関連する文献全体のエビデンスレベル(総体)の決定と推奨の強さの決定は作成委員会で議論を行い,そのうえで推奨の強さを示すとともに投票による最終合意率を明記した.
 ・それらを総括するフローチャートを,「1.診断」,「2.胆嚢結石症治療」,「3.総胆管結石症治療」,「4.肝内結石症治療」ごとに作成した.
 ・その間,作成メンバーの一部に異動も発生して分担の見直しなどもあり,計11回という多数の作成委員会を経て全体像が確定した(2012年11月21日:第1回,2013年5月24日:第2回,2013年10月23日:第3回,2014年3月13日:第4回,2014年5月29日:第5回,2014年7月24日:第6回,2014年8月26日:第7回,2014年10月9日:第8回,2014年10月25日:第9回,2015年4月10日:第10回,2015年4月25日:第11回).
 ・最終工程として,評価委員会のチェックを経て修正した最終版を2015年7月28日〜8月11日の期間で日本消化器病学会ホームページに掲載して,広く会員からパブリックコメントを求めたのち必要に応じて修正を加えた.

3.改訂ガイドラインの特徴
 目覚ましい進歩を遂げつつある内視鏡的治療や外科手技について診療現場環境に応じた柔軟な選択肢が担保されるようにガイドライン改訂を行った.実臨床が必ずしも画一的ではない多様性を有することに配慮しつつ,フローチャートの形式で診療の手順も提示した.改訂診療ガイドラインの適切な活用による診療対応が期待される.

4.おわりに
 今回の改訂に際して,作成副委員長の海野倫明先生はじめ,五十嵐良典先生,乾和郎先生,内山和久先生,甲斐真弘先生,露口利夫先生,真口宏介先生,森俊幸先生,山口幸二先生,良沢昭銘先生の各作成委員の先生方,評価委員長の二村雄次先生,評価副委員長の藤田直孝先生,窪田敬一先生,正田純一先生,田端正己先生,峯徹哉先生の各評価委員の先生方,会議の調整や実際の運用など様々な事務作業にご尽力いただきました日本消化器病学会事務局ならびに南江堂の関係者のみなさまに心より感謝申し上げます.

2016年1月
日本消化器病学会胆石症診療ガイドライン作成委員長
田妻進

 非常に僭越ながら田妻進作成委員長を中心に諸先輩方の作られた『胆石症診療ガイドライン2016(改訂第2版)』の書評をすることとなった。自身もいくつかのガイドライン作成に関わってきて作る側の苦労が身に染みているので、いつもガイドラインを読むと作成委員の先生方の努力ばかりが忍ばれてしまう。しかし、今回は読者に徹してじっくりと本ガイドラインを読んでみて、いろいろなことに気付かされた。ガイドラインはそのときに必要な項目しか読まないが、今回本ガイドラインの全体を通読してみて、細部にわたる気配りが感じられ、非常に丁寧に作られたガイドラインという印象を受けた。ステートメントには出てこないが、日常臨床で直面する細かいことが解説文に多数記載してあり、総説よりもコンパクトで、かつ濃い内容の文章となっている。「そうか、ガイドラインは参考書でもあったのか」と新たな読み方に多少興奮しつつ全体を読破した。
 胆道についての知識が少ない消化器専門医の先生方にとって、本書は診療の方針を教えてくれる非常によい診療ガイドラインであると同時によくできた参考書であり、知識の整理に最適である。かくいう私も、恥ずかしながら知らなかったことが満載で、大変勉強になってしまった。酒の肴に、といっては失礼ではあるが読み物としても知的好奇心を満足する一冊であり、お堅い本と思っていたガイドラインが意外にも楽しく読めてしまった。
 「日本は胆石が少ない国だった!」冒頭の疫学では海外の胆石保有率が示されており、意外にも日本人の胆石保有率は高くないことがわかったが、誰かに教えてあげたいことはこれだけではなかった。無症状胆嚢結石は経過観察で2〜3%が疝痛発作を起こし、4%が急性胆嚢炎、胆嚢がん、黄疸、膵炎を発症し、年率では胆嚢炎0.3%、黄疸0.2%、膵炎0.04〜1.5%となっている。無症状胆嚢結石の予防的手術は一般的ではなく、発がんとの関係について高いレベルのエビデンスが得られていないと解説文には記してあった。ときに質問されることであるが、細かい数字は知らなかったので、外来での患者さんへの説明に非常に役に立つ知識である。一方で、まだ本邦では一般的ではない肥満手術時の予防的胆嚢摘出術は推奨されていないとの文言もあり、先進的過ぎて感心した次第である。外科医、内科医が一堂に会して作成されているので、知っているようで知らない、隣の情報が手に入るのも本書の利点であろう。
 このあたりの味付けは、やはり作成委員長の田妻先生に負うところが大きいのであろう。最近仕事をご一緒する機会に恵まれ、よくお話をお聞きするようになった。先生のお話にはいろいろな患者さんの話題が次々に出てきて、症例の背景や病態の関与などの詳細な謎解きを聞かせていただける。先生は知的好奇心が豊富で、「解明せずにはいられない、調べないではいられない性格である」という印象であり、本ガイドラインは先生の性格そのままに楽しい読み物に仕上がったのではないかと想像している。
 本書は最新の情報も盛り込んだうえで診療指針が作成されており、高いレベルの診療を約束してくれる。一方、読み物としては知的好奇心を満たす情報が満載で、読んでいて楽しいだけでなく、患者さんへのinformed consentと後輩を煙に巻くのに大変役に立つ。胆石症の患者さんが外来にくる可能性のある先生方にはぜひ書棚に置いておいてときどき眺めていただきたい一冊である。

臨床雑誌内科118巻3号(2016年9月増大号)より転載
評者●東京大学医学系研究科消化器内科学准教授 伊佐山浩通

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