書籍

臨床放射線腫瘍学

最新知見に基づいた放射線治療の実践 オンラインアクセス権付

編集 : 日本放射線腫瘍学会/日本放射線腫瘍学研究機構
ISBN : 978-4-524-26322-6
発行年月 : 2012年11月
判型 : B5
ページ数 : 534

在庫あり

定価16,500円(本体15,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本放射線腫瘍学会、日本放射線腫瘍学研究機構の共同編集による公式テキスト。総論ではがんの基礎から放射線生物学、放射線物理学、照射技術、放射線治療施設の運営・管理までを要領よく解説。各論では、専門医試験の口頭試問にも対応できるよう、疾患ごとの治療のポイントをケースアプローチ形式で解説。放射線治療専門医をめざす医師、放射線・がん治療に携わるすべての医師必携。

総論
1. がん治療の基礎知識
 A.がんの疫学
 B.腫瘍生物学
 C.がんの病理診断
 D.病期診断のための画像診断
 E.治療効果判定法と有害事象の評価法
 F.がん放射線治療総論
 G.がん薬物療法総論
2. 放射線生物学
 A.放射線によるDNA損傷・修復と細胞死
 B.がん細胞と正常組織の放射線応答
 C.放射線感受性の決定因子とその修飾
 D.分割照射法、多分割照射法と寡分割照射法
 E.化学放射線療法、分子標的治療
 F.有害事象と耐容線量
 G.放射線被曝の基礎と放射線の人体への影響
3. 放射線物理学と放射線治療計画
 A.放射線の種類と特性、線量測定法
 B.線量計算とアルゴリズム
 C.線量分布の作成と評価
 D.放射線治療における固定
 E.位置照合の方法
 F.放射線治療計画の基礎と方法
 G.放射線治療の品質管理
 H.高エネルギーX線発生装置、放射線治療計画装置
 I.粒子線治療装置
  1)陽子線
  2)炭素イオン線
4. 照射法・治療手技
 A.3次元原体照射
 B.強度変調放射線治療
 C.画像誘導放射線治療
 D.呼吸移動対策
 E.定位放射線治療
 F.小線源治療
 G.術中照射
 H.全身照射
 I.放射性同位元素内用療法
5. 放射線治療施設の運営・管理に関連する知識
 A.放射線に関係する法律の基礎知識
 B.放射線防護の考え方
 C.放射線治療施設の建設と設備の導入・更新に関わる法規
 D.放射線治療部門の運営
 E.チーム医療としての放射線治療

各論
1. 皮膚の悪性腫瘍
 A.有棘細胞がん
 B.特殊な皮膚腫瘍
  1)Merkel細胞がん、皮膚悪性黒色腫
  2)乳房外(extramammary)Paget病
2. 中枢神経腫瘍
 A.神経膠腫
 B.胚細胞系腫瘍
 C.髄芽腫
3. 眼球・眼窩の悪性腫瘍(悪性黒色腫)
4. 外耳道がん
5. 上咽頭がん
6. 中咽頭がん
7. 鼻腔・副鼻腔がん
8. 口腔がん
 A.舌がん
 B.その他の口腔がん
9. 喉頭がん
 A.声門がん
 B.声門上がん
10. 下咽頭がん
11. 唾液腺腫瘍
12. 甲状腺がん
13. 原発不明頸部リンパ節転移
14. 非小細胞肺がん
 A. T期非小細胞肺がん(早期)
 B. V期非小細胞肺がん(進行期)
15. 小細胞肺がん
16. 胸腺腫瘍
17. 悪性胸膜中皮腫
18. 乳がん
 A. 乳房温存療法
 B. 乳房切除術後
19. 食道がん
 A. 頸部食道がん
 B. 胸部食道がん
20. 胃がん
21. 膵がん
22. 肝細胞がん
23. 胆道系腫瘍
24. 直腸がん
25. 肛門がん
26. 膀胱がん
27. 前立腺がん
 A. 外部照射
 B. 小線源治療
 C. 術後照射
28. 陰茎がん
29. 精巣腫瘍
30. 子宮頸がん
 A. 根治的放射線治療
 B. 術後照射
31. 子宮体がん
32. 膣外陰がん
33. 悪性リンパ腫
 A. Hodgkinリンパ腫
 B. びまん性大細胞型リンパ腫
 C. 節外性リンパ腫(胃)
 D. 節外性リンパ腫(皮膚)
 E. 節外性リンパ腫(鼻)
 F. 節外性リンパ腫(脳)
 G. 節外性リンパ腫(眼)
34. 多発性骨髄腫・形質細胞腫
35. 骨・軟部腫瘍
 A. 骨腫瘍
 B. 軟部腫瘍
36. 小児腫瘍
 A. Wilms腫瘍
 B. 神経芽腫
 C. Ewing肉腫
37. 良性疾患
 A. 血管腫
 B. その他
38. 緩和的治療
 A. 転移性骨腫瘍
 B. 転移性脳腫瘍
39. がん救急
 A. 上大静脈症候群
 B. 切迫麻痺
索引

がんは2人に1人が罹り、3人に1人が命を落とす文字どおりの国民病である。がん治療の三本柱が、手術、放射線治療、薬物療法であることは国際的に広く認知されているが、わが国においては、がん治療=手術という意識が医療スタッフ、国民いずれにも深く根付いている時期が長く続いていた。
 近年の高齢化社会の到来により、手術に向かない、あるいは手術を希望しない患者が増加している。また、革新的な放射線治療技術、機器の登場、あるいは化学放射線療法の開発によって放射線治療の有効性を著しく高めることが可能となり、放射線治療の役割が増大した結果、近年では30%強の新規がん患者が放射線治療を受けていると推定されている。欧米先進国ではおおむね60%の患者が放射線治療を受けており、わが国において放射線治療はさらに発展するものと考えられる。
 国民の放射線治療への期待が高まっている中で、標準的な放射線治療を医師、医学物理士、診療放射線技師、看護師から成る放射線治療チームとして、いかに適正かつ安全に実施するかが問われる。放射線治療においては、従来職人的な要素が色濃く残り、標準化という点では十分な対応ができていない部分が少なくなかった。標準化に欠かせない臨床試験が国内外であまり実施されてこなかったことも一因であろう。
 日本放射線腫瘍学会は、今年で創立25 周年を迎える。100人前後であった会員も2,000人を超える学会に発展し、医師のみならず医学物理士、診療放射線技師、看護師を正会員、准会員として有している。
 今回、日本放射線腫瘍学研究機構との共同編集で本書「臨床放射線腫瘍学」を上梓することとなった。学会・機構が編集し、がんの基礎から、放射線生物学、放射線物理学、照射技術、放射線治療施設の運営・管理、各種臓器がんに対する各論まで、放射線腫瘍医として理解しておかなければならない内容を要領よくまとめた書籍に仕上がっている。基礎研究あるいは臨床の最前線で活躍している執筆者のご尽力に感謝申し上げるとともに、本書が「臨床腫瘍学」の教科書として臨床の現場で広く活用されることを念じてやまない。
2012年10月
公益社団法人
日本放射線腫瘍学会理事長
平岡眞寛


 特定非営利活動法人日本放射線腫瘍学研究機構は平成18年7月20日に成立し、すでに6年間の活動を行ってきた。本機構の目的は「広く一般市民を対象として、悪性腫瘍などに対する最適な放射線療法の普及のために、多施設共同研究事業や国内外の研究状況の情報の収集を通じて、科学的根拠に基づいた放射線療法を確立するとともに、得られた成果を広く社会一般に対して周知せしめるための事業を行い、もって社会全体の医療福祉の増進に寄与することで社会貢献すること」である。この目的を達成するため、出版事業や市民公開講座など社会全体の医療福祉の増進に寄与する特定非営利事業を開始している。今回はその事業の一環として、公益社団法人日本放射線腫瘍学会と共同で本書の出版を企画した。放射線治療に関する多くの教科書や図書はすでに出版されているが、こうした教科書や図書の多くは網羅的な記述が中心となっている。そこで、特徴ある教科書とすべく、総論を充実させたばかりでなく、全体の2/3を占める各論ではケーススタディを盛り込むことで、より実践に即した教科書を目指した。
 総論は、がん治療の基礎知識、放射線生物学、放射線物理学と放射線治療計画、照射法・治療手技、放射線治療施設の運営・管理に関連する知識の5章から成り立っている。各論は部位別に39章から成り、60例を超える症例を提示し、症例ごとに臨床経過(症例、現病歴、検査所見)、設問(2〜3題)、解答と解説、治療の経過、関連疾患および放射線腫瘍学関連事項の記載と解説、文献から構成されている。読者は提示された症例について各自で検討し、設問に答えてから、解説へと読み進んでいくことになる。解説ではその症例に関する放射線腫瘍学の基礎的知識や関連疾患の知識を習得することができる。さらに知識を深めたい読者には文献が添えられている。
 本書が放射線治療専門医を目指す若手医師はもちろんのこと、専門医を取得した放射線腫瘍医、その他がん治療に携わる医師ならびに医学物理士、放射線治療品質管理士、看護師といった医療スタッフにとっても座右の書となれば幸いである。
2012年10月
特定非営利活動法人
日本放射線腫瘍学研究機構理事長
三橋紀夫

近年の放射線療法の進歩はめざましく、さまざまな治療分野においてその役割が増している。外科においても、外科的根治不能な病変に対する放射線治療に加え、術前の補助療法としての放射線療法あるいは化学放射線療法が注目され、手術の根治性、さらには術後のquality of life(QOL)の向上をめざしたさまざまな試みが行われている。外科以外の診療科においても放射線療法は重要なmodalityの一つであり、放射線科のみならず、腫瘍内科、婦人科、泌尿器科、整形外科を含め多くの腫瘍学の分野で放射線療法の知識が必要となっている。
 こうした中、本書は放射線腫瘍学の基礎から幅広い診療科に関連する臨床に必要な情報を網羅している。本書は大きく総論と各論の二部構成となっており、総論では、癌治療の基礎的事項から放射線生物学、放射線物理学などの放射線療法における基礎的事項および実際の治療計画、照射法、治療手技について詳細に解説されている。さらに放射線治療に関する法的事項も含めた施設の運営・管理などについて解説されている。各論は部位別に39章からなり、内科、外科、婦人科、整形外科、泌尿器科、耳鼻科、皮膚科、小児科などにおける各疾患について記載されている。本書の特徴は、これらの疾患について具体的に60を超える症例を提示し、症例ごとに臨床経過を示し、これに対する設問形式をとっている点である。実際の症例に対する設問を提示して、これに対する解答を示すとともに詳細な解説が記載されており、実臨床により応用しやすい構成となっている。また、もう一つの特徴は、放射線治療の際に重要な多くの画像をカラーで提示している点である。カラー画像により、多くの情報量を短時間にしかもわかりやすく入手することができ、放射線腫瘍学の理解を深めるのに役立っている。
 このように、本書は総論を充実させたばかりでなく、全体の2/3を占める各論にケーススタディを盛り込むことで、より実践に即した教科書になっており、臨床現場ですぐに活用することができる。放射線療法に関与するすべての医師に推薦したい。

臨床雑誌外科75巻8号(2013年8月号)より転載
評者●東京大学腫瘍外科教授 渡邉聡明

近年の放射線治療の進歩には目を見張るものがある。高精度放射線治療機器の開発により、放射線の病巣に対する集中性が従来とは比較にならぬほど改善されたため、副作用が少なく高い局所治癒率が得られるようになった。その結果、がん患者の社会復帰が容易になり、放射線治療は体に優しく、QOLの高い治療という評価が広く社会に定着しつつある。このことは日本放射線腫瘍学会が行った全国の年間放射線治療新患数の調査で、1990年は約63,000人であったのが2010年には約216,000人と20年間で3.4倍に増加していることからも裏付けられよう。問題は放射線治療患者の急増に放射線治療医の増加が追いつかないことである。がん患者の放射線治療に対する期待に応えるためにも、放射線治療医の育成と増員は学会にとって最重要課題の一つになっている。このような状況から、このたび日本放射線腫瘍学会と日本放射線腫瘍学研究機構との共同編集により、最新の知見に基づく放射線治療のための教科書が上梓されたことは誠に時宜を得たものである。
 本書の最大の特徴は、執筆者がそれぞれ担当するがんに関して自験例の臨床経過を示し、これに関する設問、回答とその解説、治療法と治療後の経過、治療成績、さらに関連疾患と放射線腫瘍学関連事項について豊富な症例画像と図表を提示し、わかりやすく解説していることである。それゆえ、とくに放射線治療に従事する若手医師や放射線治療専門医を目指す医師にとっては最適な教科書といえる。また総論では、がん治療の基礎から放射線生物・物理学、治療計画、照射技術、放射線治療施設の運営・管理に関する重要事項にいたるまで、放射線治療に必要な基本的知識が要領よくまとめられているので、第一線で活躍する放射線治療医はいうまでもなく、技師、医学物理士にとっても現場ですぐに役立つ実践の書ともなっている。
 このように本書は放射線腫瘍学の基礎から臨床まで広い範囲をカバーしているので、多数の研究者が分担執筆している。しかしどの項目も、その分野で優れた業績をあげている研究者自身が実際の経験に基づいて執筆していることから、その内容は明快で説得力がある。また全項目が一定の編集方針に従って記述されているので、この種の本にありがちな不統一性がなく、読みやすいテキストになっており、医学生のための教科書としても推奨される。一読して本書を出版するに当たっての編集委員の明確な方針と、それに応えんとする各執筆者の熱意がよく伝わってくる本である。
 本書は放射線治療に携わる者はもちろん、がん治療に従事する内科系、外科系の医師にもぜひ利用していただきたい臨床放射線腫瘍学の教科書である。一人でも多くの方が本書を通して放射線治療に興味をもち、この分野に参加されることを心より期待するものである。

臨床雑誌内科111巻6号(2013年6月増大号)より転載
評者●京都大学名誉教授 阿部光幸

9784524263226