消化器疾患最新の治療2021-2022
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編集 | : 小池和彦/山本博徳/瀬戸泰之 |
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ISBN | : 978-4-524-22784-6 |
発行年月 | : 2021年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 422 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
正誤表
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2021年07月30日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2年ごとの改訂で、年々進歩する消化器疾患における治療指針と最新の情報を簡潔に提供。巻頭トピックスでは、「内視鏡診療におけるAIの活用」、「消化器癌に対する免疫療法の現状と展望」、「NAFLD/NASHの最新知見」、「拡大する肝細胞癌分子標的治療」など、話題の8テーマを取り上げる。各論では各疾患の主要な治療法はもちろん、「患者への説明のポイント」や最新の「TOPICS」、治療における豆知識や禁忌などのコラムを豊富に掲載。消化器診療に携わる医師、研修医にとって、知識のアップデートに欠かせない一冊。
巻頭トピックス
1.食道癌に対する集学的治療
2.消化器臓器移植up to date
3.内視鏡診療におけるAIの活用
4.消化器癌に対する免疫療法の現状と展望
5.潰瘍性大腸炎に対するトファシチニブの有効性と注意点
6.NAFLD/NASHの最新知見
7.拡大する肝細胞癌分子標的治療
8.肝硬変治療の新しい展開
I 消化器疾患の治療法
1.栄養療法
2.血液製剤の使い方
3.内視鏡的止血法
4.ステント治療
5.経皮内視鏡的胃瘻造設術
6.消化器癌の緩和ケア
II 主要な消化器症状へのアプローチ
1.腹痛
2.悪心・嘔吐
3.吐血,下血,血便
4.下痢
5.慢性便秘
III 消化管疾患
A.食道
1.アカラシア
2.食道炎,食道潰瘍およびGERD,NERD
3.食道・胃静脈瘤
4.食道癌
a.内視鏡的治療
b.外科的治療
c.化学療法,放射線療法,狭窄対策
B.胃・十二指腸
1.急性胃炎,急性胃粘膜病変(AGML),びらん性胃炎
2.Mallory-Weiss症候群
3.慢性胃炎
4.機能性ディスペプシア
5.消化性潰瘍
a.薬物治療指針
b.H.pylori除菌療法
c.NSAIDs潰瘍の予防と治療
6.消化性潰瘍の合併症
a.内科的治療
b.外科的治療
7.胃MALTリンパ腫
8.胃癌
a.早期胃癌の内視鏡的治療
b.早期胃癌の外科的治療
c.進行胃癌の外科的治療
d.切除不能胃癌の治療
9.胃術後障害
10.早期十二指腸腫瘍の内視鏡的治療
C.腸
1.腸管感染症
2.抗菌薬関連腸炎
a.出血性大腸炎
b.Clostridioides(Clostridium)difficile感染症
3.吸収不良症候群
4.蛋白漏出性胃腸症
5.急性虫垂炎
6.潰瘍性大腸炎
7.Crohn病
8.腸結核
9.虚血性腸炎
10.過敏性腸症候群(IBS)
11.小腸腫瘍
12.mid-Gl bleeding
13.大腸ポリープ,ポリポーシス
14.大腸癌
a.早期癌
b.結腸進行癌
c.直腸進行癌
15.大腸憩室の合併症
a.内科的治療
b.外科的治療
16.イレウス
a.成人の場合
b.小児の場合
17.偽性腸閉塞
18.放射線性腸炎
19.腸管Behçet病,非特異性多発性小腸潰瘍症
20.痔核,痔瘻,裂肛
D.消化管全般にわたるもの
1.急性腹症
2.好酸球性消化管疾患
3.膠原病の消化器病変
4.消化管リンパ腫
5.消化管神経内分泌腫瘍(NEN)
6.消化管間質腫瘍(GIST)
7.横隔膜ヘルニア
8.鼠径ヘルニア
IV 肝・胆・膵疾患
A.肝
1.A型肝炎,E型肝炎
2.B型急性肝炎
3.急性肝不全,劇症肝炎
4.B型慢性肝炎
5.C型慢性肝炎
6.自己免疫性肝炎(AIH)
7.薬物性肝障害
8.アルコール性肝障害
9.肝硬変
a.一般的治療,外来管理
b.反復性肝性脳症
c.腹水
10.原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎
11.代謝性肝疾患
12.肝膿瘍,寄生虫性肝嚢胞
13.肝嚢胞
14.肝良性腫瘍
15.肝細胞癌
a.TACE,動注療法,全身化学療法
b.ラジオ波焼灼術
c.外科手術と集学的治療
16.胆管細胞癌(肝内胆管癌)
17.転移性肝癌
18.生体肝移植
B.胆
1.胆道閉鎖症
2.胆道感染症
3.胆嚢・胆管結石症
a.非観血的治療
b.観血的治療
4.胆嚢・胆管癌
C.膵
1.急性膵炎
a.内科的治療
b.外科的治療
2.慢性膵炎
a.内科的治療
b.外科的治療
3.膵嚢胞性疾患
4.膵癌
巻末付録
主な消化器系薬剤一覧表
索引
序文
ご好評をいただいている「消化器疾患最新の治療」の2021–2022年版をお届けします。本書は2年ごとに改訂を行っていますが、全体の構成としては、「巻頭トピックス」、「消化器疾患の治療法」、「主要な消化器症状へのアプローチ」、そして各消化器疾患の基本および最新の治療法について、内科および外科の立場などから解説されています。この2年の間に登場した新しい治療法や大きく進歩した治療法については「巻頭トピックス」として詳しく記載されていますが、今回は8のテーマを取り上げました。
版を重ね、本号は第17版に相当します。これまでの巻頭トピックスの変遷をみるだけで、消化器領域の治療の変化・進歩がわかります。今回は、AIの登場と免疫療法のひろがりが特徴的なことと思います。AIは特に画像診断にその威力を発揮すると言われ、将来ヒトの目を超えるとも考えられています。免疫療法は、ノーベル賞受賞ともあいまって、薬剤、保険適用疾患ともに飛躍的に拡大しており、薬物療法のひとつの柱と考えられるに至っています。これから、これら新しい診断手技、治療法をさらに活用していくためには、なお一層の取り組みが必要と思いますが、2年後の記載がどうなるか、楽しみにしています。消化器臓器移植も、臓器移植法の改正もあり、従来の生体移植だけではなく、脳死体からの移植が増えているのが特徴です。わが国でもより一般的な治療法になるものと思います。
各消化器疾患については、冒頭に「患者への説明のポイント」を箇条書き形式で簡潔にまとめた後に、原則として「疾患の解説」、「診断と検査」、「治療の一般方針」、「処方例」、「生活指導」に分けて記載されています。さらに、最新の進歩・話題をわかりやすく説明するために、必要に応じて「最新の動向」や「TOPICS」として記載させていただきました。そのほかにも役立ちそうな情報を「役に立つ豆知識」として、また一歩進んだ治療やピットフォールを「治療の奥の手」、「治療のご法度」として紹介しております。
近年の医学の進歩は急速であり、消化器疾患の診療においても年々新しく進歩がみられています。最新の情報を得て最善の医療を提供し続けていくためには、正確な知識を習得していく努力は欠かせません。最新かつ正確な情報を適切かつコンパクトにまとめて編集してある本書を、皆様の日常診療に役立てていただければ幸いです。
2021年1月
編集者一同
患者に「この治療が標準療法です」と説明すると,「いやいや,並の治療では困ります.ぜひ,上の治療,いや特上の治療でお願いします」といわれたという話がある.標準療法とは,臨床試験によって治療効果が証明され,かつ安全性が許容されたもっとも推奨される治療法といえる.ただ確かに,「標準」というのは患者にとってインパクトがなく,患者は,標準ではなくより高度な治療を受けたいと思うのである.一方で,癌治療に関する誇大広告をよくみかける身としては,間違ったことはいいたくないのが本音である.そこで筆者は,「最新の」というフレーズを「標準」に付け加えると患者も満足してくれるように思っている.
一方,専門領域の最新治療は驚くべきスピードで進歩している.自分自身がフォローできている領域はどれほどのものであろうか.筆者の専門は肝癌の集学的治療である.外科医は,外科の手術法の研鑽だけでよいであろうか.筆者は最初に赴任した病院の上司に,「外科医は内科医や放射線科医と対等に議論できるように,病気のことや最新の治療を勉強しないといけない」と教えられた.胃癌の術前には自分で胃カメラ・胃透視を行って,開腹所見や切除標本さらに病理組織検査から病気を学ぶという習慣を植え付けられた.つまり,外科医といっても,病気を治すという目的においては外科も内科もない,外科医といっても,日夜最新の情報をキャッチして,手術適応や周術期の治療に関して考えてほしいと思っている.
本書『消化器疾患 最新の治療 2021-2022』は,患者のニーズである「最新の標準療法」を細かく紹介してくれている.疾患別の項目で分けられているだけでなく,「肝硬変」では,「一般的治療,外来管理」「反復性肝性脳症」「腹水」と症状により分けられていたり,「肝細胞癌」では,「TACE,動注療法,全身化学療法」「ラジオ波焼灼術」「外科手術と集学的治療」と治療法により分けられていたり,非常にコンパクトにまとめられている.薬物療法においては,「処方例」まで紹介されており心強く,巻末の「主な消化器系薬剤一覧表」で薬剤の詳細を調べられる.各論だけでなく,総論ともいえる「栄養療法」「血液製剤の使い方」「消化器癌の緩和ケア」をあらためて読むことにより知識の整理にもなる.「TOPICS」では,最新のコンセプトやランダム化比較試験(RCT)の結果が紹介されており,それこそ「最新」である.8つの巻頭トピックスがあげられており,「最新」の「最新」が勉強できる.
消化器内科医のみならず消化器外科医にもおすすめしたい.筆者は,たとえば,巻頭トピックスの巻頭の「食道癌に対する集学的治療」をまず読む.自分とは別領域の考え方を自分の領域に当てはめたりして学ぶ.次に「消化器臓器移植up to date」を読んで,自分の専門領域にもかかわらず知らなかったことがあって学ぶ.あとは,自分の領域をパラパラと読んでみた.「TOPICS」で,取り上げるべきRCTをグローバルな視点で紹介している章もあれば,自分の業績をさらりと紹介している章もあり,「ああ,自分も以前は自分の業績を一生懸命紹介してたなあ」と思い出して,今後はもっと大きな視点で「TOPICS」を紹介しようと思った次第である.
臨床雑誌外科83巻12号(2021年12月号)より転載
評者●京都大学肝胆膵・移植外科教授 波多野悦朗
本書は「1989‒1990 年版」の発刊以来,2 年ごとに刷新されている南江堂のシリーズ書で,消化器病の専門医だけでなく,一般内科や総合診療に従事しておられる実地医家の先生,また研修医の先生にも,ぜひ購読していただきたい一冊である.巻末付録として「主な消化器系薬剤一覧表」が記載されている.専門医はもとより,実地医家の先生方が薬剤を投与するときに,適応疾患や治療効果はもとより,一番心配なのが副作用であり,この点に関しては“重要な基本的注意の抜粋”として詳細に取り上げられているので,なんだか付録というよりも,次回の改訂版からは一項目として表に出してよいような“付録”である.
本書の特徴は,名称は「消化器疾患最新の“治療”」ではあるが,各疾患の診断基準や定義について,あるいは治療手技について,コンパクトに説明されていることである.各疾患の冒頭に「患者への説明のポイント」を,次いで「最新の動向」が記載されている.この2 項目で,実診療を頭の中でイメージしながら,各疾患の専門知識も身に付けることができる.その後,それぞれの疾患について,疾患の解説,診断と検査と続き,治療法については「治療方針の立て方」が最初に記載されており,その後の実際の治療へと導く流れになっている.診療ガイドライン,あるいは治療ガイドラインが作成されているものは,すべて取り上げられている.使用する薬剤については商品名が用いられており,保険適用外の薬剤にはきちっと「保険適用外」と明記されており,実診療に即している.まず処方する薬剤を決め,巻末付録の薬剤一覧表の“重要な基本的注意の抜粋”で処方時の注意点を確認する.各疾患の診断基準や分類,さらに診断・治療のガイドライン,美しいX 線や内視鏡画像,そして病理組織像,さらにわかりやすいイラストが数多く用いられており,流し読みも可能である.「TOPICS」,「役に立つ豆知識」,「うまくいかないときの次の一手」,「治療の奥の手」,「治療や検査のご法度(禁忌)」などの項目が紙面に上手に配置されていて,さまざまな工夫が凝らされている.診療にあたってはついつい薬物療法に頼りがちであるが,このテキストでは生活指導についてもしっかりと取り上げてくれている.
巻頭トピックス,各疾患の解説と治療,さらに手技についても,現在の本邦の第一人者により書かれており,この一冊で消化器疾患についての最新の情報を得ることができる.
臨床雑誌内科128巻3号(2021年9月号)より転載
評者●川崎医科大学総合医療センター総合内科学2(消化器内科) 特任教授 春間 賢