NBI内視鏡アトラス
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編集 | : 武藤学/八尾建史/佐野寧 |
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ISBN | : 978-4-524-26081-2 |
発行年月 | : 2011年5月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 284 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
NBI(narrow band imaging)内視鏡診断における貴重な写真を満載したアトラス。持ち歩いていつでも参照できるハンディサイズながら、通常光、拡大内視鏡、病理像も盛り込み、咽頭・喉頭〜大腸・直腸を一冊で網羅。NBIの開発時から先駆的に取り組んできた編者らによる入魂の一冊。消化器科医、内視鏡医、内視鏡診療に携わる実地医家必携。
第1部 NBIの基礎知識
NBIの原理と歴史
NBlを用いた最良の観察条件を得るためのコツ
A.咽頭
B.食道
C.胃
D.十二指腸
E.結腸-直腸
F.下部直腸-肛門
第2部 NBIアトラス
I章 咽頭-食道
総論
1.診断体系
2.咽頭の解剖(1)(内視鏡像と亜部位の相関)
3.咽頭の解剖(2)(亜部位の解剖学的な位置)
4.食道扁平上皮の血管像(1)(拡大内視鏡によるIPCLパターン分類)
5.食道扁平上皮の血管像(2)(拡大内視鏡による表在食道病変の微細血管分類)
アトラス
●正常像
A.正常扁平上皮
●疾患別各論
〈非腫瘍性病変〉
A.毛細血管拡張
B.メラノーシス
C.炎症性変化
D.乳頭腫
E.扁平な乳頭腫
F.放射線照射後の変化
G.ESD後搬痕
H.異所性胃粘膜
I.逆流性食道炎
J.非びらん性胃食道逆流症(NERD)
K.Barrett上皮
〈腫瘍性病変〉
A.多発ヨード不染帯
B.小さな上皮内腫瘍(咽頭)
C.小さな上皮内腫瘍(食道)
D.発赤調のIIa型病変(咽頭)
E.白色調のIIa型病変(咽頭)
F.上皮内腫瘍(食道):0-IIa型
G.上皮内腫瘍(咽頭):0-Hb型
H.上皮内腫瘍(食道):0-IIb型
I.咽頭および食道の表在癌の辺縁所見
J.隆起の目立つ表在性咽頭癌:0-I型
K.隆起の目立つ表在食道癌:0-I型
L.口蓋垂の表在癌
M.軟口蓋の表在癌
N.喉頭の表在癌
O.隆起性腫瘍周囲に広がる表層進展(咽頭)
P.隆起性腫瘍周囲に広がる表層進展(食道)
Q.メラノーシスを伴った上皮内腫瘍(咽頭)
R.メラノーシスを伴った上皮内腫瘍(食道)
S.血管の豊富な表在性咽頭癌
T.血管の豊富な表在食道癌
U.血管増生の目立たない表在性咽頭癌
V.血管増生の目立たない表在食道癌
W.Barrett腺癌(1)
X.Barrett腺癌(2)
II章 胃・十二指腸
総論
1.診断体系
アトラス
●正常像
A.正常胃体部腺粘膜
B.正常胃幽門腺粘膜
C.正常十二指腸粘膜
●疾患別各諭
〈非腫瘍性病変〉胃
A.慢性胃炎、萎縮性胃炎
B.腸上皮化生(LBC+)
C.腸上皮化生(WOS+)
D.過形成性ポリープ
E.胃底腺ポリープ
F.胃癌と鑑別が必要な限局した胃炎(平坦)
G.胃癌と鑑別が必要な限局した胃炎(陥凹)
H.胃潰瘍瘢痕
I.胃黄色腫
J.血管病変
〈腫瘍性病変〉胃
A.胃腺腫(隆起型)
B.胃腺腫(陥凹型)
C.超高分化腺癌
D.早期胃癌(分化型):I型
E.早期胃癌(分化型):IIa型(1)
F.早期胃癌(分化型):IIa型(2)
G.早期胃癌(分化型):IIa型(3)
H.早期胃癌(分化型):IIa型(4)
I.早期胃癌(分化型):IIb型
J.早期胃癌(分化型):IIc型(1)
K.早期胃癌(分化型):IIc型(2)
L.早期胃癌(分化型):IIc型(3)
M.早期胃癌(分化型):IIc型(4)
N.早期胃癌(分化型):IIc型(UL+)
O.早期胃癌(未分化型):IIc型(1)
P.早期胃癌(未分化型):IIc型(2)
Q.MALTリンパ腫
R.胃カルチノイド腫瘍、A型胃炎
〈非腫瘍性病変〉十二指腸
A.胃上皮化生
〈腫瘍性病変〉十二指腸
A.腺腫(十二指腸乳頭部)
B.腺腫(十二指腸非乳頭部)
C.十二指腸癌(十二指腸乳頭部)
D.十二指腸癌(十二指腸非乳頭部)
III章 大腸-直腸
総論
1.診断体系
2.NBI国際(NICE)分類(CTNIGコンセンサス)
アトラス
●正常像
A.Peyer板
B.正常大腸上皮
C.肛門管上皮
●疾患別各論
〈非腫瘍性病変〉
A.便
B.炎症性ポリープ
C.過形成性ポリープ
D.潰瘍性大腸炎
E.リンパ濾胞過形成
〈腫瘍性病変〉
A.隆起型腺腫
B.平坦型腺腫(LST-NG)
C.陥凹型腺腫
D.早期大腸癌:I型(1)
E.早期大腸癌:I型(2)
F.早期大腸癌:IIa型(1)
G.早期大腸癌:IIa型(2)
H.早期大腸癌:IIc型(1)
I.早期大腸癌:IIc型(2)
J.早期大腸癌:IIc型(3)
K.進行大腸癌
L.sessile serrated polyp
M.colitic cancer(1)(潰瘍性大腸炎関連high grade dysplasia)
N.colitic cancer(2)(潰瘍性大腸炎関連low grade dysplasia)
O.家族性大腸腺腫症
P.悪性リンパ腫
Q.カルチノイド
R.肛門コンジローマ
S.肛門管癌
索引
Narrow band imaging(NBI)はしばらく内視鏡検査には不可欠なモダリティーとなるだろう。
本書の企画に際し、共同編集の八尾建史先生、佐野寧先生、そして小生の3名が集まりディスカッションする中で一致した意見は、「写真は鮮明でわかりやく」、「診断はシンプルで再現性をもつように」、「解説は簡潔で理解しやすく」の3点であった。レイアウトデザインからも、本アトラスがこの3つのコンセプトで成り立っていることをご理解いただけるだろう。また、本書の大きさは、内視鏡室に手軽に持参できるようにコンパクトにしてほしいと要望した。このコンセプトが決まるまで、30分もかからなかったことを記憶している。
内容に関しては、NBI開発に当初から関わり早期大腸癌のNBI拡大による診断法の検討を進めてきた佐野先生、早期胃癌における血管異常にいち早く着目し組織構築と内視鏡光学的視点からのNBI拡大診断を進めてきた八尾先生、そして頭頸部および食道の扁平上皮癌のリスクに関する研究から早期発見法を模索し、佐野先生と一緒にNBI開発の段階から検討を重ねてきた小生の3名が、NBIの原理に基づいた個々の病変における特徴像をわかりやすく理解できるように企画した。
また、NBIは、拡大内視鏡、ハイビジョン内視鏡、ハイビジョンモニターとの組み合わせで最高のパフォーマンスを発揮する。そのため、できる限りこれらの最高の条件での写真を掲載するように努力した。したがって、本書は、NBIがより高度な診断法でありながら、消化器科を専門にしている先生方のみならず初心者の先生にとっても、習得しやすいものに仕上がったと期待している。
NBIは、これまでの内視鏡診断に革命的な進歩をもたらしたと言える。その理由のひとつとして、病変をより客観的に診断できるようになったことが挙げられる。これは、内視鏡診断能の向上に加え、内視鏡診断学の教育、そして内視鏡検査を受ける被験者にとって大きな利益をもたらした。しかし、一方で、使い方がわからない、病変の読み方がわからないという声もまだ聞かれるのも現実である。シンプルな診断で理解しやすくという点にこだわったのも、これらの課題の解決に一役買えればと期待したためである。
NBIの開発は、吉田茂昭先生(国立がんセンター東病院名誉院長、青森県立中央病院院長)、田尻久雄先生(東京慈恵会医科大学教授)、後野和弘氏(オリンパスメディカルシステムズ)を抜きに語れない。まさに産学共同研究の中で生まれた産物であり、基礎研究から臨床応用、そして臨床的意義がはっきりした成功事例と言える。NBIの開発によって、これまで以上に早期癌の発見が期待されている。癌で苦しむひとを救う画期的な技術であると言ってよいだろう。そして消化管のみならず、頭頸部、気管支、婦人科、泌尿器科の領域に至るまで、その有用性は広く検討されるようになってきた。今後、NBIが他領域での診療にも役立つことを期待している。
2011年4月
編集者を代表して
武藤学
武藤学、八尾建史、佐野寧3氏編集の『NBI内視鏡アトラス』がこのたび発刊された。数多くのめずらしい症例が収載され、執筆者の努力に改めて深甚な敬意を表したい。
内容をみると食道疾患がかなりの比率を占め、本書の総ページ数のほぼ1/3を占めている。かつて食道のルゴール染色でめずらしい症例に数多く遭遇し驚いたことがあるが、本書の内容をみるといっそうその感を深くする。咽頭、喉頭の疾患などはついなおざりにされがちなのはどなたも同じと思うが、このように集めてみると決してなおざりにはできない領域なことがよくわかる。詳しく内容をみると本書の各章とも最初に診断の基本となるNBI所見の意味付けがまとめられ、その後にアトラスとして各疾患の詳細な所見の読みが記載されている。非常にわかりやすい編集方針であると思う。NBIに拡大観察を加えると、病変の表面に向かって細長く延長する異形血管が確認でき、とくに軽度発赤調の病変では血管の変化はNBI観察でbrownnish area(brown spot)として認められ、この所見の意義が繰り返し説かれている。この所見に注目することで病変の質的診断、範囲診断がいっそう容易となるであろう。まだ全体を通じて詳しく読むことは不可能であるが、これから時間をかけて勉強させていただく。いずれにしても単なる事実の羅列でなく、著者の経験、考えを前面に出しての編集、執筆であって、読者諸氏にとって非常に役立つ内容に違いない。
各論についてはこのように満足であるが、最初の「NBIの原理と歴史」には大いに不満がある。現在のNBIはもちろん最近登場したが、NBIに通じる考え自体は非常に古く、随所に発表されてきている。かつて筆者らは照明光の帯域別に診断能に差があるかどうか、今から50年以上前の昭和32年ごろ紫外線、近紫外線を使って写真で観察してみれば細かい所見が表現できると考え、スペクトルの短波長域、紫外線に感光性のあるミニコピーフィルムでストロボを使って検討したことがある。まだ胃カメラの時代で諸技術が未発達で十分な成果は得られず、血管の変化については想像が及ばなかった。しかし、この方法で粘膜表面の細かい情報を得ることが可能であった。確か東大助手の月給が2万円のころ、この研究に対し米国のNIHより360万円余をいただき、その研究成果は大森、金子両博士の学位論文になっている。また電子スコープの国内試作がようやくできたころ、スペクトルのR. G. B.の帯域別に診断能に差があるかどうか、宮原、丹羽が検討し、その成果を学会誌に発表したこともある。当時は光源が暗く青の色が不十分で、CCDも青領域の感光特性が低く十分な成果は出なかったが、光源をキセノンランプとしCCDの感受性を増加させ観察帯域を変えて検討してみた。この際照明光は血中ヘモグロビンによる吸収に合わせて、805nmとし、これは意味が違うが赤外線電子スコープとして完成をみた。この時には使用波長だけでなく今のNBIのように偽色表示も併用してみた。さらに赤外線反射の大きい940nmの赤外線も併用して、二相性のスコープを完成し実用化した。
さて今回の図書の発行を含めて、これまでのNBIの実用化にはとくに国立がんセンターの吉田茂昭、佐野寧、武藤学らの努力が大きいが、彼らが開発者として出てこないのはどういうわけだろうか。NBIは画期的な発明として内閣総理大臣賞を受賞したが、受賞者は技術者だけで、直接の責任者であった医師の名前は1人も出てこない。産学協同を謳いながら、利を得るのはいつも技術者、会社だけで、学の側の医師はいつも蚊帳の外である。これでは技術者が作ったものを医師は使ってみただけとなってしまう。直接関係した医師の立場をもっと明確にすべきであると思っている。
評者● 丹羽寛文
臨床雑誌内科109巻2号(2012年2月号)より転載