日本整形外科学会診療ガイドライン
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改訂第2版
文献アブストラクトCD-ROM付
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 日本整形外科学会/日本骨折治療学会 |
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編集 | : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会 |
ISBN | : 978-4-524-26076-8 |
発行年月 | : 2011年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 222 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
新たに2007年7月までの文献から信頼性と有益性を評価した。「分類」「疫学」「危険因子」「予防」「診断」「治療」「周術期管理」「リハ」「退院後の管理」について90のクリニカルクエスチョンを設け、推奨・要約と解説を示す。最新のエビデンスに基づく診断・治療の指針を示した、有効な治療を選択する際のガイドとして、また、患者への説明のよりどころとなる整形外科医必携の書。付録CD-ROMに文献アブストラクトを収載。
前文
1 ガイドラインの作成手順
1.1.基本的な考え方
1.2.作成手順
1.3.エビデンスと推奨Grade
1.4.エビデンス評価の課題、問題点
2 ガイドラインの構成と編集方法
2.1.用語について
2.2.クリニカルクエスチョン
2.3.ガイドラインの読み方と注意事項
2.4.本ガイドラインの対象者と作成意図
2.5.統一化の程度と基準
2.6.関連ガイドラインとの関係
2.7.その他
第1章 大腿骨近位部骨折の分類
CQ1.大腿骨頚部骨折と転子部骨折
CQ2.大腿骨頚部骨折の分類
CQ3.大腿骨転子部骨折の分類
第2章 大腿骨頚部/転子部骨折の疫学
CQ1.わが国における発生数・発生率
CQ2.発生率の諸外国との比較
CQ3.骨折型別発生率の比較
CQ4.骨折型別発生率の変化
CQ5.発生数の予測
第3章 大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子
3.1 骨に関連した危険因子
CQ1.骨密度の低下は危険因子か
CQ2.骨密度の測定部位はどこが最も良いか
CQ3.脆弱性骨折の既往は危険因子か
CQ4.骨代謝マーカーの高値は危険因子か
CQ5.生化学検査のうち骨代謝マーカー以外の危険因子
CQ6.危険因子となる既往症・疾病・家族歴
CQ7.大腿骨の形態と骨折リスクとの関係
3.2 骨に関連しない危険因子
CQ8.転倒
CQ9.転倒以外の危険因子
第4章 大腿骨頚部/転子部骨折の予防
CQ1.薬物療法は予防に有効か
CQ2.運動療法は予防に有効か
CQ3.ヒッププロテクターは予防に有効か
CQ4.その他の予防法はあるか
第5章 大腿骨頚部/転子部骨折の診断
CQ1.大腿骨頚部/転子部骨折はすべてエックス線単純写真で診断できるか
CQ2.MRIは診断に有用か
CQ3.骨シンチグラフィーは有用か
CQ4.MRIと骨シンチグラフィーとではどちらのほうが有用か
CQ5.臨床的には股関節周辺骨折を疑うが、エックス線単純写真で診断できない場合に、選択する検査は何か
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.1 入院から手術までの管理と治療
CQ1.適切な手術時期
CQ2.術前牽引は行ったほうが良いか
CQ3.術前の関節穿刺(関節内血腫除去)は大腿骨頭壊死予防に有用か
6.2 関節、骨頭壊死およびlate segmental collapse(LSC)発生の術前予測
CQ4.MRIで術前予測できるか
CQ5.骨シンチグラフィーで術前予測できるか
CQ6.血管造影で術前予測できるか
CQ7.術中所見で予測できるか
6.3 治療の選択
6.3.1.初期治療の選択
CQ8.非転位型骨折を保存的に治療して良いか
CQ9.外科的治療では骨接合術と人工物置換術とのいずれを選択するか
CQ10.人工物置換術を選択する場合、人工骨頭置換術とTHAのどちらを選択するか
6.3.2.骨接合術の術式選択と後療法
CQ11.内固定材料には何を用いるべきか
CQ12.骨接合術後の早期荷重は推奨できるか
6.3.3.人工骨頭置換術の術式選択と後療法
CQ13.セメント使用とセメント非使用の選択基準
CQ14.バイポーラーとユニポーラー、その選択基準
CQ15.人工骨頭置換術後は早期荷重を行うべきか
6.4 骨接合術の合併症とその対処法
CQ16.偽関節の発生率
CQ17.骨頭壊死、late segmental collapseの発生率
CQ18.その他の合併症
CQ19.偽関節に対して再骨接合術は適応となるか
CQ20.偽関節に対して人工骨頭置換術とTHAのどちらを選択するか
6.5 内固定材料抜去
CQ21.内固定材料抜去の適応
6.6 人工骨頭置換術の合併症
CQ22.術中合併症の発生率
CQ23.脱臼発生率
CQ24.その他の術後合併症
6.7 予後
CQ25.歩行能力はどの程度回復するか.また、歩行能力回復に影響を及ぼす因子は何か
CQ26.生命予後
6.8 occult fracture(不顕性骨折)の治療
CQ27.occult fracture(不顕性骨折)の治療
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.1 入院から手術までの管理と治療
CQ1.適切な手術時期
CQ2.術前牽引は行ったほうが良いか
7.2 外科的治療・保存的治療の適応
CQ3.外科的治療・保存的治療の適応
7.3 外科的治療の選択
CQ4.骨接合術にはどのような内固定材料を用いるべきか
CQ5.頚基部骨折(分類の章参照)に対する内固定法
CQ6.術中の骨片間の圧迫手技は必要か
CQ7.初回手術における人工骨頭置換術の適応
7.4 術後早期荷重
CQ8.術後早期荷重は可能か(早期荷重が可能な条件)
7.5 骨接合術の合併症
CQ9.術中合併症
CQ10.カットアウトを予防するためのラグスクリューの至適刺入位置
CQ11.内固定材料の破損
CQ12.偽関節・骨癒合不全の発生率
CQ13.骨頭壊死の発生率
7.6 内固定材料抜去
CQ14.内固定材料抜去の適応
7.7 予後
CQ15.歩行能力はどの程度回復するか.また、歩行能力回復に影響を及ぼす因子は何か
CQ16.生命予後
7.8 occult fracture(不顕性骨折)の治療は
CQ17.occult fracture(不顕性骨折)の治療は
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.1 麻酔方法
CQ1.全身麻酔と局所麻酔(脊椎・硬膜外麻酔)のどちらが良いか
CQ2.抗凝固薬を服用中の患者の麻酔方法・抗凝固薬の休薬・手術時期
8.2 術後の酸素投与
CQ3.術後の酸素投与は必要か
8.3 輸液バランス・輸血
CQ4.術後の電解質異常とその意義
CQ5.術中の輸液管理のために中心静脈圧測定や経食道心エコーモニタリングは必要か
CQ6.輸血の適応は何によって判断するか
8.4 感染
CQ7.術後手術部位感染症の発生率
CQ8.抗菌薬の全身予防投与はどのように行うべきか
CQ9.ドレープ使用は有効か
CQ10.ドレーン使用は有効か
8.5 導尿カテーテルと尿路感染率
CQ11.導尿カテーテルと尿路感染率
8.6 術後全身管理
CQ12.術後合併症とその頻度
CQ13.栄養状態の改善は有効か
CQ14.精神面の管理
第9章 大腿骨頚部/転子部骨折のリハビリテーション
CQ1.入院中のリハビリテーションは何が有効か
CQ2.リハビリテーションにおけるクリニカルパスの意義
CQ3.退院後のリハビリテーションは有効か
CQ4.術後のリハビリテーションはどのくらい続けるべきか
第10章 大腿骨頚部/転子部骨折の退院後の管理
CQ1.大腿骨頚部/転子部骨折を生じた患者は対側の骨折予防策を講じるべきか
CQ2.大腿骨頚部/転子部骨折を生じた患者に対する骨折予防策は何か
索引
Evidence based medicine(EBM、根拠に基づいた医療)は、「現時点で利用可能なもっとも信頼できる情報を踏まえて、目の前の患者さんにとっても最善であると考えられる治療を行うこと」と定義されています。EBMは、医療行為の妥当性を確認するための思考過程であり、以下の5つのステップからなります。
Step1:臨床的疑問点の抽出
Step2:信頼性の高い根拠を示す文献の検索
Step3:臨床疫学と生物統計学の原則に則った文献の批判的吟味
Step4:得られたエビデンスを目の前の患者へ適応してよいかどうかの判断
Step5:患者の意向と医師の判断との交渉
この思考過程は、私たちが日常診療の中でほとんど無意識に行っている思考過程と同等のものです。ただし、EBMとevidence based clinical guidelineとは別物であるという点にも注意しなければなりません。EBMは「個々の患者」に対して最善の治療を行うにはどうすればいいのかを知るための手法であるのに対して、診療ガイドラインは特定の患者に対して一番よく当てはまりそうな治療は何かを知るためのツールです。
日常診療の中で多くの文献を読み、その中から「目の前の患者さん」に適用できる内容を常に求め続けるということは、多忙な臨床医にとっては簡単なことではありません。診療ガイドラインは、臨床医がEBMを実践するための補助ツールになるものです。世の中の診療ガイドラインには、独善的なガイドラインと、根拠に基づいたガイドラインとがあります。EBMを実践するためのツールとして、診療ガイドラインが機能するためには、そのガイドラインが根拠に基づいたものでなければなりません。日本整形外科学会診療ガイドラインは、すべて根拠に基づいた診療ガイドラインです。Evidence based clinical guidelineを作成するには、必要な文献が収集できていることを担保することが大前提となります。これは、臨床の専門家と文献検索の専門家とが協力して文献検索することで初めて可能になります。このようにして収集した文献を、多くの日本整形外科学会員が精読しアブストラクトフォームを作成し、策定委員会で徹底的な議論を尽くしてこの改訂第2版は完成しました。2005年(平成17年)6月に『大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン』の初版が発刊されてから、早6年近くが、改訂作業開始から約3年が過ぎてしまいました。変化の速い領域では、診療ガイドラインの賞味期限は約3年と言われています。大腿骨頚部/転子部骨折の領域では、この6年間で革新的な治療の進歩はありませんでしたが、根拠が強化された項目や新しい知見もありました。改訂版では、Clinical Questionの項目を統廃合して整理し、より読みやすく使いやすくしました。さらに、初版で採用した文献については、そのエビデンスレベルを再度吟味し、必要なものは修正しました。
Evidence based health careは、「根拠・経験・価値」の3つの柱を重視する医療です。臨床的な疑問点に対する回答を科学論文の批判的吟味から求めることが「根拠」にあたります。医師とコメディカルの技能や技術、医療施設の設備や体制が「経験」であり、患者さんやその家族あるいは社会が求める好みが「価値」にあたります。「根拠」だけを重視した医療を標準化することがEBMの目的ではありませんが、『大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン(改訂第2版)』はevidence based health careの3つの柱のうちの「根拠」の部分を埋めるone pieceとして使用していただければ幸いです。
2011年5月
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会
委員長 松下隆