本日の内科外来
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 村川裕二 |
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ISBN | : 978-4-524-25555-9 |
発行年月 | : 2018年3月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 336 |
在庫
定価5,060円(本体4,600円 + 税)
正誤表
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2018年07月12日
第1刷・第2刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
“内科外来を担当する”、“専門領域以外の内科診療にもあたる”、そんな状況下で、“今、何をすべきか(どうしのぐか)”、“専門医に送るヒントは何か”を重た過ぎず、読破できる最小限なサイズで、やさしく解説した手引き書。検査値異常や診察室で遭遇する症状・症候に対して、“初診時に何を聞くか”、“何を診るか”、“どう対応・対処するか”に素早くたどり着ける。“すぐに電話で相談する専門医”の代わりとして、卓上に置いてもらいたい一冊。
検査値の異常
1 尿蛋白≧150mg/日−蛋白尿
2 腎炎とネフローゼ症候群
3 血清尿酸値≧7.0mg/dL−高尿酸血症と痛風
4 ペプシノゲン検査−胃癌のリスクマーカー
5 AST,ALT,γGTPの上昇−パターンで見分ける
6 血小板数≧45万/μL−血小板の増多
7 血小板数≦15万/μL−血小板の減少
8 汎血球減少症−白血球,赤血球,血小板すべてが減少
9 貧血−鉄欠乏性貧血,消化管出血,造血器腫瘍
10 HbA1c 6.5〜7.0%−糖尿病
11 HbA1c 10%−進行した糖尿病
12 収縮期血圧140〜160mmHg−軽症から中等度の高血圧
13 収縮期血圧180〜220mmHg−重症高血圧
14 脂質異常症−家族性に要注意
15 二次性の高コレステロール血症−糖尿病かメタボをチェック
16 低LDLコレステロール血症−基本的に治療は不要!?
17 低アルブミン血症−隠れた原因を突き止める
18 血清ナトリウム≦136mEq/L−低ナトリウム異常(低ナトリウム血症)
19 血清カリウム≦3.5mEq/L−低カリウム血症
20 血清カリウム≧5.0mEq/L−高カリウム血症
21 血清カルシウム≧10.4mg/dL−高カルシウム血症
22 血清カルシウム≦8mg/dL−低カルシウム血症
23 血清リン≧5mg/dL−高リン血症
24 血清リン<2.5mg/dL−低リン血症
25 心房細動−抗凝固療法の適応を判断
26 胸部X線における心胸郭比増大−呼吸苦を伴う?
頻度の高い自他覚徴候
27 目が赤い−結膜下出血と結膜炎
28 口唇の皮疹,粘膜疹−口唇ヘルペス,口唇炎,口角炎,血管浮腫
29 嗄声−声帯の障害?神経の障害?
30 血痰と喀血−出血を見きわめる
31 食べ物が飲み込みにくい−嚥下障害
32 舌苔,舌癌,舌痛症,ドライマウスなどの口の訴え
33 首の腫れ−頸部リンパ節腫大
34 顔面の浮腫−むくみは顔だけ?
35 皮膚・粘膜が黄色い−黄疸
36 労作時の息切れ−心不全,喘息など
37 喫煙者の息切れ−COPD,肺気腫
38 脈が飛ぶ−期外収縮・結滞,脈の不整
39 脈が速い−洞頻脈
40 頻拍と動悸−発作性上室頻拍,心房細動など
41 腹部大動脈瘤,腹壁の静脈瘤
42 体重減少−消化器疾患,内分泌疾患,精神疾患
43 繰り返す下痢−過敏性腸症候群
44 便秘−習慣性便秘の処方の考え方
45 下痢,嘔吐,腹痛−腸炎
46 しびれ−脊柱管狭窄症,末梢神経障害,脳障害
47 頻尿−膀胱炎,前立腺炎,過活動膀胱など
48 排尿困難と尿閉−前立腺肥大症,前立腺癌,神経因性膀胱など
49 ふらつきと転倒−脳梗塞,脳出血,パーキンソン病
50 手の震え,歩行障害,動作緩慢,ふらつき−パーキンソン症候群
51 下肢の浮腫−片足だけか,両足か
52 こむら返り−下肢の筋肉の緊張・激しい痛み
痛み・発熱
53 脳血管障害による頭痛−突発,最悪,増悪がポイント
54 眼による頭痛−緑内障発作
55 感染による頭痛−髄膜炎,副鼻腔炎
56 慢性頭痛−片頭痛,群発頭痛,緊張性頭痛
57 胃痛−消化性潰瘍,急性胃炎,機能性ディスペプシアなど
58 ピロリ菌の検査と治療
59 右側腹部痛と右背部〜右肩への放散痛−胆石症
60 転げ回るような激しい背部・側腹部痛−尿管結石
61 腹痛と圧痛−大腸憩室炎
62 上腹部の急性腹痛発作と圧痛−膵炎
63 右下腹部痛−虫垂炎を疑うとき
64 胸部の痛み−肋間神経痛,気胸,胸膜炎,心膜炎,帯状疱疹など
65 最近発症の心筋梗塞−recent MI
66 安静時の狭心症−異型狭心症
67 体の痛み−リウマチ性多発筋痛症
68 膝の痛み−痛風・偽痛風・化膿性関節炎
69 歩くと足が痛い−閉塞性動脈硬化症,間欠性跛行,下肢痛
70 片側の刺すような痛み−帯状疱疹
71 腰や背中が痛む・曲がる−骨粗鬆症
72 ビタミン欠乏症−かなり危険なビタミンB1欠乏
73 肝機能異常やリンパ節腫大を伴う発熱−伝染性単核球症など
74 発熱と関節痛−関節リウマチ,膠原病
75 皮疹と関節痛−全身性エリテマトーデスと関連疾患
76 頻尿,排尿時痛,残尿感−膀胱炎,腎盂腎炎
スッキリしない
77 のどの違和感−咽喉頭異常感症
78 遷延する咳嗽−かぜ症状が先行する
感染
79 インフルエンザ−冬から春先の咳・発熱
80 マイコプラズマ感染−非定型肺炎のスコアリングを活用
81 市中肺炎の診断−外来or入院をスクリーニング
82 咳・痰と胸部X線異常−結核
83 ノロウイルス−鑑別疾患に注意
専門医に送るヒント
84 ものわすれ−認知症
85 食後のめまいとふらつき−食後低血圧
86 肺異常陰影−サルコイドーシスなど
87 甲状腺機能亢進症−バセドウ病
88 甲状腺機能低下症−慢性甲状腺炎(橋本病)
89 肺癌の診断−胸部X線の異常陰影を見逃さない
90 骨髄異形成症候群−血球減少(WBC,Hb,PLT)に注意
処方と検査の希望
91 咽頭炎とかぜ薬−急性ウイルス感染症,細菌感染症
92 口内炎−丸くて白いアフタ
93 花粉症−アレルギー性鼻炎,モーニングアタック
94 咽頭炎や腰痛に用いる鎮痛薬の使い方−NSAIDs
95 がん疼痛に用いる鎮痛薬の使い方−オピオイド鎮痛薬
96 肝炎ウイルスと梅毒のデータの見方
索引
序文
診察室で<こころぼそい思い>をしたことはありませんか。
どんな医師だって苦手な分野があるものです。
この本は<内科外来を担当する先生>に<現場で役に立つ診療のヒント>
をお届けするために作りました。
使い方のイメージは…
■時間があるときに、パラパラッと1時間かけて眺めてください。
何が・どこに・どの程度の詳しさで書かれているかわかります。
深く読み込まなくてもかまいません。
■診察室で困ったとき、関連するページを開いて「何を考えるか」、「何を検査するか」を調べてください。
今でもたくさん<診療の手助けになる本>は出版されています。
これまでの本には「もりだくさんで、もれのない情報」が載っています。
一方、本書には「とりあえず必要な情報」だけ書いてあります。
ねらったのは…
「知りたいことにすぐたどり着ける」ことです。
はじめて内科外来を担当する若いかた
専門外の疾患も診るベテラン
どんな年代の先生にも、「あってよかった」と思っていただける本になっています。
最後に
忙しい中にもかかわらず、ご協力いただいた執筆者の先生方に感謝。
2018年2月
編者
私には、書籍が出たら“とりあえず買い”の著者が二人いる。「村上春樹」と「村川裕二」のお二人である。素敵で奥深い時間が過ごせることが、約束されている。
まず、序文をしっかりと読んでほしい。この本のねらい(効能・効果)が簡潔に述べられている。「知りたいことにすぐたどり着ける」のが、本書の特徴である。
電子カルテの本日の予約患者・新患患者一覧には、数十名の患者名が並んでいる。いつもの患者のいつもの症状ならよいのですが、「膝が痛い」「脈が飛ぶ」と訴える。検査値で、血小板が低値であることなどが外来で判明する。でもお昼近くで、他科の先生方はすでに診療終了で、今さら対診もできない。こんなときに、とりあえず今を凌ぐのに、ありがたい本である。
外来で今必要なのは、その症状から何を考えるべきなのか、その異常値をどう考えて対応すべきか、なのである。聞くべきことを忘れないこと。診るべきことを見落とさないこと。調べるべきことを、外さないこと。初回の外来で、これができるように工夫されている。方向性が決まれば、あとは各々ゆっくりと調べられるのである。患者対応を間違えず、今日の外来を乗り切ってから、「あとで調べればいい」と割り切ろう。
序文にあるように、だいたい「どこに何が書いてあるか」だけ、ぼんやりと理解しておこう。必要時に、サクサクと調べられるのが、この本の真骨頂であるから。
何もかも、覚えようとしてはいけない。どこに行けば知りたいことに出会えるか、その一つの道が、この本である。
実際に、内科外来に持っていってみた。
◎脈が飛ぶ患者:p.126へ。困っていないなら、様子をみる。単発のSVPC/PVCは、予後に影響しない。でも、隠れた器質的心疾患発見の糸口になるかも。病的背景がなければ、何も検査しないという選択もあり。
◎体の痛み:p.216へ。PMRを想定したら、ここにあげられた項目を測定し、他の疾患を否定するまでは、NSAIDsで凌ぐ。他疾患の合併に注意。確定したら、ステロイドの漸減療法へ。診断・治療への筋道をすぐに確認した。
一つの症状・異常値で、サクッとページをめくり、自分の判断を修正できた。
この本は、チェアでゆっくり読み込む本ではない。ERを含む内科外来で、切羽詰まる前に、さっと本書「本日の内科外来」に相談しよう。
各々の項目は、2〜5ページでコンパクトにまとめられている。過剰な情報は、意図的に削除されているようである。余計な検査をしなくて済む。自分の専門領域以外は、役立つTipsもきっと見つかると思う。
「聞く」「診る」「検査する」の順で、知りたいことの基本がわかる。時に症例を提示してくれる。少しだけオーソドックスな処方例もあり、治療まで完結できる。
ネットでサクサク検索が苦手な方は、この本に、いろいろと書き込みしておくのもありである。適度な余白が残してある。
村川裕二先生は、そのユニークで洒脱な多くの書籍で、多くの読者をもたれている。「村川ワールド」が、展開される。今回は編者として、独特の統一感をこの本に与えている。どの項目も、同じリズムがある。とても読みやすい。
今は、良書が良書を駆逐(?)するくらい教えの詰まった医学書が多数ある。時間的余裕があれば、いくらでも深めることができる。でもその場で、解決すべき問題がある。そんなときに、この本がお役に立つのである。
on the jobで、この本を使い倒してください。
臨床雑誌内科122巻6号(2018年12月号)より転載
評者●健和会大手町病院副院長 築島直紀