書籍

教科書やガイドラインではわからない!糖尿病薬物療法の裏ワザ、豆知識

: 弘世貴久
ISBN : 978-4-524-25224-4
発行年月 : 2020年5月
判型 : A5
ページ数 : 124

在庫あり

定価3,080円(本体2,800円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

糖尿病専門医として臨床経験豊富な著者が糖尿病治療薬の各薬剤について、その作用機序、適応となる患者、患者に応じた使い方などをわかりやすく解説。著者自身の経験や臨床研究に基づく、教科書やガイドラインには載っていない薬剤の使い方や知識が満載。専門医はもちろんのこと、非専門医も知っておきたい処方内容を紹介する。臨床現場で糖尿病治療薬の選択に自信がもてるようになる一冊。

序章 各論の前に 〜私の考える糖尿病治療のキホン〜
1章 グリニド薬
 1.2型糖尿病の病態に迫るインスリン分泌パターン改善薬
 2.アッという間にどこの医局でも大人気!BBTからのステップダウンで大活躍.1回の投与で判定できる効果−効き目がすぐにわかるグリニド薬
 3.どうやって内服率を上げるのか?患者が効き目を実感してはじめて内服率が上がる!
 4.これは使える!最強,最善のインスリン分泌促進薬−DPP4阻害薬との併用
2章 SGLT2阻害薬
 1.夢のクスリ,ダイエット薬!?
 2.食べなかったことにするクスリを有効利用するには!?
 3.糖毒性の強い患者の入院期間を短縮
 4.エビデンスが示す新しい腎臓病薬としてのSGLT2阻害薬(エビデンスの話にも少しだけ耳を傾けてください!)
 5.副作用を防ぐために本当に気をつけるべきこと
3章 DPP4阻害薬
 1.解説の要らない安全なクスリ,実はインスリン分泌促進薬ではない!
 2.エビデンスに乏しい薬?DPP4阻害薬
 3.レスポンダーはどんな患者?
 4.心不全にも効果あり!SGLT2阻害薬の独壇場でDPP4阻害薬は真っ向勝負しても勝てないのか?
4章 ビグアナイド薬
 1.使ってはいけない患者,使いたい患者
 2.効果を判定するためにみるべき検査値−このときばかりは空腹時血糖値を測ってください!
 3.高用量の意義と分服の必要性,製薬会社がやっと証明してくれた分服の必要性の怪!
5章 αグルコシダーゼ阻害薬
 1.αグルコシダーゼ阻害薬,本当はインスリン節約薬である
6章 チアゾリジン薬
 1.不遇の歴史,トログリタゾン
 2.今だからいえる,エビデンスに翻弄されたピオグリタゾン
 3.中止が怖い!とても怖い!
7章 SU薬
 1.もういらない薬なのか
 2.インスリンとの併用,経験からみえること
8章 GLP-1受容体作動薬
 1.不遇の歴史
 2.ファーストインジェクションとして基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬はどちらがふさわしいか?
 3.DPP4阻害薬を使用している患者では同じインクレチン薬であるGLP-1受容体作動薬に切り替えるのは回り道だろうか?
 4.効果的な用量はピンからキリまで
 5.思い込みは怖い!価格とレスポンダーのはなし
 6.GLP-1受容体作動薬は1週間製剤があればそれでよいのか?
9章 インスリン
 1.BOTは市民権を得た!
 2.インスリンの論文を読むときに注意するべきはTreat to Target
 3.SAPは新しい時代へ.これなら使いたい
10章 基礎インスリン/GLP-1受容体作動薬の配合剤
 1.高め合う配合療法.新しい考え方で使用して生きる!持効型溶解インスリンとGLP-1受容体作動薬,配合剤の新しい考え方(New Philosophy)
 2.2つの基礎インスリン/GLP-1受容体作動薬の配合剤はどのように使い分けるのか?
索引
あとがき

はじめに

 南江堂さんが「今度は飲み薬の本を書きませんか?」と声をかけてくださりました。これまでインスリンの本は単著で3冊、医局員の合作で1冊書いていましたが、飲み薬を含む薬物療法全体の書籍ははじめてです。糖尿病の薬物療法、もちろんインスリンだけでは済まない世界。しかも現在カテゴリーだけで7種類(間もなく9種類になりそうです)もあるのです。私が医師になった1985年、経口糖尿病治療薬はアセトヘキサミド(ジメリン)やトルブタミド(ヘキストラスチノン)くらいしか使われていませんでした。メトホルミンもありましたが、そんな「怖い薬」を使う変わり者の医師は私の周りには居ませんでした。そしてSU薬がダメなら中間型のインスリンを朝1回注射に切り替える。もう糖尿病の薬物療法といったらこれだけしかなかったのです。それが今では選択肢は山のようにあります。使い方のフローチャートの提案もあちこちで示されていますがなかなか定まりません。臨床研究でA薬は効果的だ、とかB薬はC薬より効果的だとかいったデータはたくさん発表されています。でもどうでしょうか? 結局、患者の病態に合わせるというのが結論です。アメリカ糖尿病学会やヨーロッパ糖尿病学会の発表した糖尿病の薬物療法のフローチャート(8章-3 図1[p.82]参照)はメトホルミンこそ第一選択薬になっていますが、あとはその患者が抱えている合併症(動脈硬化性心疾患、心不全、慢性腎臓病、肥満など)と大規模臨床研究で証明されたエビデンスに基づき、2剤目、3剤目と決めていきます。
 しかし、「糖尿病の病態に合わせて」使用するという部分は相変わらず主治医に全部お任せ状態です。だって患者背景やエビデンスに合わせてその薬剤を使ったら「よく効く」とは限らないですからね。おそらく欧米は肥満をベースとするインスリン抵抗性主体の2型糖尿病が大部分なので思い切ったフローチャートをつくれるのでしょうが、日本はかなりカオスの状態です。ただ、これはある程度仕方ないのかなと思っています。
 そうすると日々の糖尿病診療のなかで行き詰まったとき、悩むとき、どのような情報が必要でしょうか? 本書ではそんなカオスの糖尿病薬物療法のなかで行き当たる問題点や知っていて損のない情報を筆者の経験や臨床研究の結果に基づき薬剤ごとに(独断で?)まとめてみました。ぜひ手に取って御一読ください。きっとフムフムと納得いただける内容でいっぱいと自負しています。
 最後までお付き合いいただけますと幸甚です。

2020年5月
弘世貴久

 インスリン治療の著書をすでに4作出版している東邦大学弘世教授による、経口糖尿病薬を中心とした“糖尿病治療薬の使用法の指南書”である。糖尿病は世界的に激増しており、複雑化する糖尿病の薬物治療をどのように行うかは、糖尿病の専門医にとっても頭の痛い問題である。しかも糖尿病の専門医の数は限られており、糖尿病患者の大部分は、非専門医によって治療されているのが現状であり、薬物治療の知識は非専門医からも求められている。そのため、非専門医、若手の専門医も含め、幅広い医師を対象とした指南書が求められているのが現状である。
 糖尿病領域の治療は進歩が速く、さまざまな新薬の登場とともに治療は複雑化している。糖尿病治療薬は、新しい作用機序を有する新薬が次々に登場し、また、次々に新しいエビデンスを生み出しており、最新のエビデンスに基づいた治療を行うためには、関連する膨大なエビデンスの知識が必要となる。しかしながら、多くの医師は、複雑化した糖尿病治療薬の使用法について包括的な知識がないまま実際の治療をせざるを得ない状況に陥っている。本書は、糖尿病治療のプロ、トップオピニオンリーダーの1人である著者が、7種類の経口糖尿病治療薬と、インスリン、GLP-1受容体作動薬、さらに両薬剤の配合剤の使用法について、包括的な解説をしている。各薬剤についてそれぞれ大規模臨床試験の結果を含め、重要な臨床試験データを交えて、わかりやすく解説しているが、通常の解説書と異なる点は、全体が“肩の凝らない読み物仕立て”となっていることである。読みやすいため、かなり専門的でハイレベルな内容にもかかわらず、あっという間に読み終わってしまうという、“エッセイ風専門書”といってもよいつくりになっている点がユニークである。
 第1章のはじめは、著者が医師になった頃のエピソードや、これまでの経歴を交えて、治療法が解説されており、糖尿病治療薬の“表の評価”だけでなく、これまでその薬が実診療上どのような評価を受けてきたかの“実際の歴史的評価”も解説されており、額面どおりの効能・効果だけでなく、実診療に基づく評価もわかるように書かれている点が貴重である。また、その薬剤を具体的にどのように使用すればよいのかも解説されているので、実践的な使い方を学ぶうえで重宝する1冊となっている。また、4つのコラム欄では著者の豊富な臨床経験から実際の症例をもとに治療法が概説されており、糖尿病治療の実情を知るうえで貴重なページとなっている。
 全体のつくりが、図表を豊富に取り入れ、カラー印刷のためとても読みやすく、研修医、非専門医はもちろん、糖尿病専門医を目指す医師向けに有用であるだけでなく、専門医がマスターすべき知識の整理や、実際のエビデンス、また薬剤の歴史的評価など、ほかの著書では学べない貴重な情報が満載で、専門医にとってもありがたい良書であり、幅広く多くの読者にとって価値のある1冊となると思う。

臨床雑誌内科126巻6号(2020年12月号)より転載
評者●山王病院糖尿病内分泌代謝内科 部長/国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授/東京医科大学 特任教授 小田原雅人