循環器疾患最新の治療2018-2019
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監修 | : 永井良三 |
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編集 | : 伊藤浩/山下武志 |
ISBN | : 978-4-524-25218-3 |
発行年月 | : 2018年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 538 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
正誤表
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2018年09月13日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新情報と治療方針を整理し、簡潔にまとめた「最新の治療」シリーズの循環器疾患版。巻頭トピックスでは、「心構造疾患(structural heart disease)に対するカテーテルインターベンション」「心不全の新たなカテゴリー−heart failure with mid-range ejection fraction(HFmrEF)への対処」「PCSK9阻害薬による新たな脂質異常症管理」「がんと心疾患−腫瘍循環器学(onco-cardiology)とは」など注目のテーマを12題取り上げた。巻頭以外の項目も、循環器疾患を網羅しつつも最新の動向を踏まえて、それぞれ診断・検査から処方例を含めた標準的治療までを解説。巻末には薬剤一覧も収載。
巻頭トピックス
1.心構造疾患(structural heart disease)に対するカテーテルインターベンション
2.肥大型心筋症とその類縁疾患における進歩
3.Impellaによる急性期循環補助
4.心不全の新たなカテゴリー−heart failure with mid-range ejection fraction(HFmrEF)への対処
5.バルーンを用いた心房細動アブレーション(クライオバルーン,ホットバルーンについて)
6.心臓植込みデバイスの新たな選択肢−リードレスペースメーカ,S-ICD
7.direct oral anticoagulant(DOAC)の適応と今後の可能性
8.PCSK9阻害薬による新たな脂質異常症管理
9.見直されるフィブラート製剤−SPPARMα(選択的PPARαモジュレータ)への期待
10.糖尿病そして循環器診療をかえるSGLT2阻害薬
11.フレイルを合併する高齢者の循環器疾患への対応
12.がんと心疾患−腫瘍循環器学(onco-cardiology)とは
I 循環器疾患の基本的治療方針
II 心肺蘇生の実際とALS
III 循環器診療における医療安全
IV 冠動脈疾患
1.急性冠症候群(ACS)
2.急性心筋梗塞に伴う機械的合併症
3.梗塞後不整脈
4.安定狭心症
5.冠攣縮性狭心症
6.無症候性心筋虚血
7.冠動脈疾患と抗血小板療法
8.PCI(バルーン,ステント)
9.debulking PCI(ロータブレータ)
10.冠動脈血栓吸引,末梢保護
11.冠動脈疾患の運動処方,心筋梗塞後のリハビリテーション
12.冠動脈疾患の薬物療法
13.冠動脈バイパス手術
14.冠動脈バイパス手術後の外来管理
15.川崎病
V 弁膜疾患
1.僧帽弁狭窄症
2.僧帽弁閉鎖不全症
3.大動脈弁狭窄症
4.大動脈弁閉鎖不全症
5.後天性三尖弁膜症
6.感染性心内膜炎
7.僧帽弁の外科治療
8.大動脈弁の外科治療
9.機械弁,生体弁の管理
VI 心筋疾患
1.心筋炎
2.拡張型心筋症
3.肥大型心筋症
4.拘束型心筋症
5.不整脈原性右室心筋症
6.二次性心筋症(心サルコイドーシス,心アミロイドーシス,Fabry病,産褥心筋症)
VII 心膜疾患,腫瘍
1.心膜炎
2.心膜液貯留,心タンポナーデ
3.心臓腫瘍
VIII 先天性心疾患
1.心房中隔欠損
2.房室中隔欠損(心内膜床欠損)
3.心室中隔欠損
4.動脈管開存症
5.肺動脈弁狭窄症,肺動脈狭窄症(Fallot四徴症を含む)
6.Ebstein病
7.チアノーゼと肺高血圧を伴う先天性心疾患
8.Valsalva洞動脈瘤破裂
9.成人における先天性心疾患−Fallot四徴症術後
10.成人における先天性心疾患−修正大血管転位症
11.Fontan手術後の遠隔期管理
IX うっ血性心不全
1.急性心不全
2.収縮不全の慢性管理
3.HFpEF(拡張不全)
4.心不全に対する心臓再同期療法(CRT)
5.心不全における不整脈の治療
6.新世代植込み型補助人工心臓
7.心不全に対する心臓リハビリテーション
8.心不全の緩和ケア
9.心臓移植
X 不整脈
1.洞不全症候群
2.期外収縮(心房・心室)
3.心房細動−心原性脳塞栓症予防
4.心房細動−抗不整脈薬・心拍数調節薬による治療
5.心房細動−カテーテルアブレーション治療
6.心房粗動
7.上室頻拍
8.特発性心室頻拍
9.基礎心疾患に伴う心室頻拍・心室細動
10.不整脈治療薬の催不整脈作用
11.早期興奮症候群(WPW症候群)
12.J波症候群(Brugada症候群,早期再分極症候群)
13.QT延長症候群
14.心臓ペースメーカの選択と植込み患者の管理
15.植込み型除細動器(ICD)
16.不整脈の外科的治療
XI 肺循環
1.慢性血栓塞栓性肺高血圧症
2.肺動脈性肺高血圧症
3.膠原病に伴う肺高血圧症
XII 大動脈疾患
1.Marfan症候群,大動脈弁輪拡張症
2.高安動脈炎(大動脈炎症候群)
3.急性大動脈解離
4.胸部大動脈瘤
5.腹部大動脈瘤
XIII 末梢血管疾患
1.閉塞性動脈硬化症−診断・薬物療法
2.閉塞性動脈硬化症−血行再建
3.腎動脈狭窄症
4.深部静脈血栓症,急性肺血栓塞栓症
XIV 高血圧症
1.本態性高血圧−ガイドラインに沿った治療戦略
2.白衣高血圧,早朝高血圧
3.高齢者の高血圧
4.高血圧管理の生活指導
5.二次性高血圧
XV 脳血管障害
1.脳梗塞
2.頭蓋内出血
3.脳動脈瘤
4.頸動脈狭窄症
XVI その他
1.動脈硬化の基礎
2.動脈硬化の臨床診断
3.脂質異常症
4.起立性低血圧
5.Raynaud現象
6.甲状腺疾患と心臓
7.心疾患と妊娠
8.心疾患患者における運動負荷試験と運動指導
9.心疾患患者に対する心身医学的アプローチ
10.心疾患患者における一般外科手術の術前・術後管理
11.多職種によるハートチーム
循環器領域における最近の注目のエビデンス
1.虚血性心疾患のエビデンス
2.慢性心不全のエビデンス
3.不整脈のエビデンス
4.脂質異常症のエビデンス
5.抗血栓療法のエビデンス
循環器関連ガイドライン一覧
循環器疾患の薬物一覧
索引
序文
日本は超高齢社会に突入し、心不全患者の激増、すなわち「心不全パンデミック」への対応が迫られています。高血圧や動脈硬化性疾患、心房細動、加齢変性に伴う心臓弁膜症も増加しており、長生きすれば誰もが循環器疾患に羅患しうる時代になったと言えます。とても循環器専門医だけでこれら多数の患者を診療できません。一般内科医やかかりつけ医にも診療の輪に加わっていただく必要があります。「循環器疾患は苦手」という医師もいらっしゃると思いますが、安心してください。循環器疾患はガイドラインが整備され、治療の標準化が最も進んだ分野の一つです。ガイドラインに準じた治療をすれば、一定水準の治療成果を得ることができます。ところが、一つ問題があります。ガイドラインの多くはWebでの公開であり、思ったほど普及していない領域があるからです。本書では循環器疾患の病態から、最新のガイドラインに基づく治療戦略、そして具体的処方例とその根拠となった臨床研究をエキスパートがわかりやすく解説しています。是非、日常診療の参考にしていただければ幸いです。
このように成熟しているように見える循環器診療においても新たな疾患概念が出現したり、治療法が開発されたりしています。本書ではそのような最新情報を「巻頭トピックス」で取り上げました。新たな疾患概念としては、心不全の中でも収縮不全と拡張不全の中間に位置する左室駆出率(LVEF)40〜49%のheart failure with mid-range ejection fraction、フレイルを合併する高齢者循環器疾患の診療、そして担癌患者の循環器合併症の診療onco-cardiologyです。治療においては大動脈弁狭窄症(AS)や僧帽弁閉鎖不全症(MR)などstructural heart diseaseに対するインターベンション、心原性ショックに対する新たな補助循環であるImpella、心房細動に対する新たなアブレーションデバイス、リードレスペースメーカ、薬剤ではLDL-Cを異次元まで低下させるPCSK9阻害薬、フィブラートの進化系である選択的PPARαモジュレータ、そして2型糖尿病患者の生命予後を改善したSGLT2阻害薬などです。本書はこのような循環器診療の進歩を含め循環器診療の全容をテキストとして提供するものです。本書が臨床の最前線に立つ医師の最新版の手引きとなることが出来れば、監修者・編集者そして著者の最大の喜びです。
2017年12月
監修者
編集者
近年、臨床医学の領域では各種ガイドラインが整備され、学会ホームページなどでも簡単に閲覧可能になったが、ガイドラインの作成にあたっては、多くの班員、協力員が膨大な労力と時間をかけて議論するため、改訂のサイクルは5年以上の場合が多い。とくに進歩の激しい循環器領域においては、その時代にそぐわなくなってしまう場合もしばしばである。日常臨床を最新のエビデンスに基づいて実践するには、リアルタイムに情報を取得し、かつ国内外の学会でコンセンサスの得られている治療法を把握する必要があるが、多忙を極める臨床医にとって、学会に行く時間を確保し、日々発表され続ける論文を読みこなすことはかなりの負担である。また、最近では多くの教科書やマニュアルが出版されているが、教科書は臨床の現場に即応するには難があり、一方、コンパクトなマニュアル本では、治療方針の根拠となるエビデンスを十分に知ることができない。そのような状況において、2年ごとに刷新されている本書は大変実用的であり、また長年の実績からも高い信頼を得ているシリーズである。
2年ごとに巻頭トピックスは一新され、その時代の世界における循環器病学の潮流が短時間で理解できるように工夫されている。今回も新規デバイス、薬剤、新たな疾患概念などが網羅されており、ガイドラインでは踏み込めていない領域に関する最新の情報まで知ることができる。また、各項ではそれぞれの疾患に対するガイドラインに基づいた解説が掲載されているが、その領域の真の専門家ならではの意見も垣間見ることができる。さらに、現状における限界や今後の課題なども記載されており、ガイドラインを熟読するだけでは得られない学問的な興味を沸き立たせる。
内容は、循環器疾患すべての領域にわたるが、内科、外科、小児科などそれぞれの立場からバランスよく記載されているため、治療方針決定が偏ることがないように配慮されている。最近では、小児期における先天性心疾患の治療成績が向上したため、循環器内科医が成人先天性心疾患への対応を迫られる場面も増加しているが、そのような需要に応えられるように、今回の2018-2019年版では各先天性心疾患に関する詳細な記載がなされている。さらに、脳血管疾患、頸動脈疾患などの領域も広く含められており、巻末にはこれまでどおり、各種最新ガイドラインと薬物一覧が添付されている。本書のタイトルがまさに示すとおり、一冊でほぼすべての循環器疾患に対して、最新の知識と治療法を学べる内容である。
日々の臨床に役立つとともに、カンファレンス時のディスカッションなどにおいても有用な最新情報を短時間で取得できる本書は、循環器専門医はもちろん、研修医や専攻医、他領域の専門医にも強く推奨できるものである。
臨床雑誌内科122巻3号(2018年9月増大号)より転載
評者●北海道大学大学院医学研究院循環病態内科学教授 安斉俊久