循環器疾患最新の治療2020-2021
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編集 | : 伊藤浩/山下武志 |
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ISBN | : 978-4-524-24976-3 |
発行年月 | : 2020年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 500 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
正誤表
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2020年09月25日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2年ごとの改訂で、年々進歩する循環器疾患における治療指針と最新の情報を簡潔に提供。巻頭トピックスでは、「心不全治療薬の新たな展開」、「Onco-cardiology」、「注目される心アミロイドーシス」、「腸内細菌と循環器疾患」など、話題の12テーマを取り上げる。今版では目次を刷新し、より最新の循環器疾患治療に対応する構成とした。巻末付録には「循環器疾患の薬剤一覧表」をアップデートし、収載。循環器疾患診療に携わる医師、研修医にとって、最新の治療の知識をアップデートするのに欠かせない一冊。
巻頭トピックス
1 心不全薬物療法の新たな展開
2 心不全患者の栄養管理
3 超高齢者心不全治療の課題
4 僧帽弁閉鎖不全症治療の新展開:MitraClip
5 腫瘍循環器学
6 下肢動脈インターベンションの新展開
7 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の多面的作用
8 注目される心アミロイドーシス
9 循環器疾患と炎症:新たな治療ターゲット
10 マイクロRNAと循環器疾患
11 腸内細菌と循環器疾患
12 循環器診療におけるビッグデータの活用
I 循環器疾患の基本的治療方針
1 循環器疾患の基本的治療方針
II 心不全
1 急性心不全
2 HFrEF
3 HFmrEF
4 HFpEF(拡張不全)
5 新世代植込み型補助人工心臓
6 心不全に対する心臓リハビリテーション
7 心不全の緩和ケア
8 心臓移植
III 不整脈
1 心臓突然死
2 徐脈性不整脈
3 期外収縮(心房,心室)
4 心房細動:心原性脳梗塞予防
5 心房細動:リズムコントロール
6 心房細動:レートコントロール
7 心房粗動
8 上室頻拍,WPW症候群
9 特発性心室頻拍
10 基礎心疾患に伴う心室頻拍・心室細動
11 不整脈治療薬の催不整脈作用
12 J波症候群(Brugada症候群,早期再分極症候群)
13 QT延長症候群
14 心臓ペースメーカの選択と植込み患者の管理
15 植込み型除細動器(ICD)
IV 冠動脈疾患
1 急性冠症候群
2 急性心筋梗塞に伴う機械的合併症
3 冠攣縮性狭心症
4 PCI
5 PCIと抗血栓療法
6 冠動脈疾患・心筋梗塞後のリハビリテーション
7 冠動脈疾患の薬物療法
8 冠動脈バイパス術
9 川崎病
V 弁膜疾患
1 僧帽弁狭窄症
2 僧帽弁閉鎖不全症:一次性
3 僧帽弁閉鎖不全症:二次性
4 大動脈弁狭窄症
5 大動脈弁閉鎖不全症
6 感染性心内膜炎
7 生体弁・機械弁の選択と管理
VI 心筋疾患
1 急性心筋炎
2 拡張型心筋症
3 肥大型心筋症
4 拘束型心筋症
5 不整脈原性右室心筋症
6 心臓サルコイドーシス
7 周産期(産褥)心筋症
8 その他の二次性心筋症(Fabry病)
VII 心膜疾患,腫瘍
1 急性心膜炎
2 収縮性心膜炎
3 心膜液貯留,心タンポナーデ
4 心臓腫瘍
VIII 先天性心疾患
1 心房中隔欠損
2 房室中隔欠損(心内膜床欠損)
3 心室中隔欠損
4 動脈管開存症
5 Ebstein病
6 Valsalva洞動脈瘤破裂
7 先天性心疾患:Fallot四徴症術後の管理と問題点
8 先天性心疾患:修正大血管転位の管理と問題点
9 Fontan手術後の遠隔期管理と問題点
10 先天性心疾患と妊娠・出産
IX 肺循環
1 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
2 肺動脈性肺高血圧症
3 膠原病に伴う肺高血圧症
X 大動脈疾患
1 Marfan症候群,大動脈弁輪拡張症
2 高安動脈炎(大動脈炎症候群)
3 急性大動脈解離
4 胸部大動脈瘤
5 腹部大動脈瘤
XI 末梢血管疾患
1 閉塞性動脈硬化症
2 腎動脈狭窄症
3 静脈血栓塞栓症
XII 高血圧症
1 本態性高血圧:ガイドラインに沿った治療戦略
2 白衣高血圧と仮面高血圧(早朝高血圧)
3 高齢者の高血圧
4 高血圧管理のための生活指導
5 二次性高血圧
XIII 脳血管障害
1 脳梗塞
2 頭蓋内出血
3 脳動脈瘤
4 頸動脈狭窄症
XIV その他
1 動脈硬化のスクリーニング検査
2 血管不全の診断
3 脂質異常症(高脂血症)
4 起立性低血圧
5 失神
6 甲状腺疾患と心臓
7 サルコぺニア・フレイルと心臓
8 心疾患患者における運動負荷試験と運動指導
9 心疾患患者に対する心身医学的アプローチ
10 心疾患患者における一般外科手術の術前・術後管理
11 ハートチーム
■循環器領域における最近の注目のエビデンス
1 冠動脈疾患のエビデンス
2 心不全のエビデンス
3 不整脈のエビデンス
4 脂質異常症のエビデンス
5 抗血栓療法のエビデンス
■心肺蘇生の実際とALS(advanced life support)
1 心肺蘇生の実際とALS(advanced life support)
■医療安全と循環器疾患
1 医療安全と循環器疾患
■巻末付録
1 循環器関連ガイドライン一覧
2 循環器疾患の薬剤一覧
索引
序文
日本の循環器疾患およびその治療は、今一つの変革期を迎えているのかもしれません。高齢化人口に伴う疾病構造の変化、さまざまな新しい治療デバイスの開発、そしてICTを駆使したビッグデータを用いた疫学研究の進歩などが、循環器疾患のとらえ方自体を徐々に、また確実に変化させています。このような状況を考え、「循環器疾患最新の治療2020-2021」では、各章で取り上げる項目の構成を今回大きく見直しました。もちろんすでに積み重ねられてきた伝統や基本は残しつつ、ここ数年で明らかになった、もしくは新しく生み出された概念を取り入れた標準的な最新のテキストとなるよう工夫しています。循環器診療の進歩はさまざまなガイドラインの改訂を余儀なくさせていますが、実情はなかなかその速度に間に合っていないようです。2年ごとに全面的に改訂される本書を、ぜひ最新の知識、情報にアップデートする有用なツールとしてお使いいただければ幸いです。
今回の巻頭トピックスとして取り上げたものの約半数は、広い意味で「心不全」治療に関わるものです。あるいは、その多くは「高齢者」に関わるものといってよいかもしれません。このようなトピックスの編成からも、循環器疾患の管理や治療に関わる医師の悩みの大きな種は、高齢者や心不全、そしてその両者の合併にあることが見て取れます。そして、この課題の解決法として、新しい薬物開発、あるいは治療デバイスの開発が行われています。このような挑戦の実情、成果、限界は、これからの時代における循環器診療に必須の情報です。また、その先を見据えれば、基礎、臨床、疫学にわたる幅広い医学研究が、将来へのさらなる歩みを確かにするはずです。巻頭トピックスには、このような将来を見据えた循環器疾患の研究も取り上げられています。各章では、基本的な疾患の病態把握、標準的な治療を解説していただきました。もうすでによく知っていると思っている疾患でも、あらためてお読みになればそれぞれの分野で少しずつ進歩していることがわかるはずです。循環器専門医をこれから志している医師だけでなく、すでに十分な経験のある医師にとっても日頃の日常診療のなかで該当する疾患を診療する際は、ぜひ一度読んでいただければ、診療のあり方が少し変化するかもしれません。
循環器疾患の把握、管理、治療がたえまなく速い速度で変化していく今の時代に、本書もそれに沿って毎回大きく進歩しています。そして、本書が、臨床の最前線で頑張っている医師すべてにとって役立つテキストとなることが、編集者、そして著者の願いです。
2019年12月
編集者
臨床医は複眼的視野が必要である。疫学と病態は基本であり、そのうえで診断法や治療法の感度と特異性を、分子と診断のレベルで理解しておかなければならない。さらに臨床医学は、患者にとっての利益と、副作用などの不利益との比較衡量である。また診療と研究は表裏一体の面があり、倫理的課題を踏まえてどのように社会と協働して臨床研究を行うかも重要な課題である。
生活習慣病が増加し、高齢社会が進行するなかで、循環器臨床では多くの新たな展開がみられる。糖尿病や高脂血症、さらに腎臓病を基盤として発症する循環器疾患は、しばらく前から循環器臨床の主要テーマとなっている。とりわけ心不全は、社会と医療が一体となって取り組む課題である。また外科手術の進歩による生存率の改善が、長期的には心不全や不整脈疾患の病態をより複雑化している面も見逃せない。とくに最近は、小児の先天性手術の成績が改善した。このため毎年1万人の先天性心疾患患者が成人に達し、内科医による管理へ移行している。こうした変化は、診療体制だけでなく、循環器医の人材育成にも影響を与えている。
本書はダイナミックに変化する循環器診療の進歩を反映することを目指して、1986年以来、最新の治療情報を臨床現場に届けてきた。今回の巻頭トピックスは、高齢社会で増加する心不全の治療と管理に焦点を絞った。心不全薬物療法、心不全の栄養管理、高齢者心不全、MitraClip、腫瘍循環器、下肢動脈インターベンション、心アミロイドーシス、マイクロRNA、腸内細菌と心疾患、ビッグデータ活用などの話題が並ぶ。その後に続く章は、従来の構成と大きく異なることはない。しかし各論文は以前よりわかりやすく記述されている。冒頭の「診断のポイント・治療指針」に要点がまとめられ、本文もガイドラインの改訂と臨床の進歩を踏まえて理解しやすい。病態に応じた処方例も現場で歓迎されるであろう。単に役立つだけでなく、随所にオリジナル論文とともにTOPICSが挿入され、学習意欲を高める工夫がなされている。これらはある意味で臨床医のための玉手箱である。
医療は本来総合的な学術である。しかし、専門分野が深化すると、専門家の育成も狭い領域で行われるようになった。すでに循環器診療においてもその傾向が強まっている。本書は循環器疾患の治療を広くカバーしており、臨床医学の全体性を回復するうえでも大変重要な意味をもつ。専門医だけでなく、研修医や医学生にも推薦したい良書である。
臨床雑誌内科126巻3号(2020年9月増大号)より転載
評者●自治医科大学 学長 永井良三