腎疾患・透析最新の治療2020-2022
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 山縣邦弘/南学正臣 |
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ISBN | : 978-4-524-24977-0 |
発行年月 | : 2020年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 384 |
在庫
定価9,900円(本体9,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
3年ごとの定期刊行で、腎臓内科医・外科医・泌尿器科医・透析医および一般臨床医のために、腎疾患治療・透析の最新情報と治療方針を掲載。巻頭トピックスでは、「糖尿病性腎臓病(DKD)」「SGLT2阻害薬の腎保護効果」「オンコネフロロジー」など注目のテーマを11題取り上げた。疾患ごとに診断確定後の基本的治療方針から、薬物療法、透析療法導入のタイミングおよび注意点、患者管理、生活指導について整理されており、最新の治療の要点を網羅。
巻頭トピックス
1.IgA腎症:発症要因と診断法,早期治療への展開
2.糖尿病性腎臓病
3.SGLT2阻害薬の腎保護効果
4.CKD患者の血圧管理:SPRINT試験とその後
5.今後の慢性腎臓病対策の展開
6.腎臓病領域における希少疾患と難病対策
7.オンコネフロロジー
8.腎再生の現状と今後
9.kidney-on-a-chipの現状と課題
10.J-RBR/J-KDRの今後の展開
11.ビッグデータ解析と腎疾患
I 腎疾患に伴う緊急時の症候と対処法
1.乏尿・無尿・尿閉
2.浮腫:心疾患を合併した場合
3.浮腫:肝疾患を合併した場合
4.尿毒症の症状と対症療法
5.電解質の異常:カリウム(K)異常
6.電解質の異常:ナトリウム(Na)異常
7.電解質の異常:カルシウム(Ca)異常
8.酸塩基平衡の異常:緊急対応が必要な酸塩基平衡異常
9.急激な血圧上昇
10.ショック
II 治療方針・治療法
A 一次性糸球体疾患
1.微小変化型ネフローゼ症候群:小児
2.微小変化型ネフローゼ症候群:成人
3.巣状分節性糸球体硬化症
4.膜性腎症
5.IgA腎症(成人):予後からみた臨床・病理学的分類と治療原則
6.IgA腎症(成人):ステロイド療法の適応と実際
7.急性糸球体腎炎(溶連菌感染後急性糸球体腎炎)
8.膜性増殖性糸球体腎炎(C3腎症を含む)
9.急速進行性糸球体腎炎
10.無症候性血尿・蛋白尿(家族性良性血尿)
B 全身性疾患に伴う糸球体疾患
1.ループス腎炎
2.紫斑病性腎炎:小児
3.紫斑病性腎炎:成人
4.Goodpasture症候群
5.感染症に伴う糸球体病変
6.アミロイド腎症
7.多発性骨髄腫に伴う腎症
C 代謝異常に伴う腎疾患
1.糖尿病性腎症:早期〜顕性蛋白尿期における治療原則
2.糖尿病性腎症:晩期糖尿病性腎症の管理と注意点の実際
3.痛風腎
D 血管系疾患における腎病変
1.高血圧性腎障害(腎硬化症,加速型-悪性高血圧)
2.腎血管性高血圧症
3.強皮症腎クリーゼ
4.血管炎に伴う腎症(ANCA関連血管炎)
5.血栓性微小血管症(HUS,aHUS,TTP)
6.血液凝固異常に伴う糸球体病変:抗リン脂質抗体症候群
7.加齢による腎臓の機能変化
E 尿細管疾患
1.急性尿細管間質性腎炎
2.尿細管性アシドーシス
3.Dent病,Fanconi症候群
4.Bartter症候群,Gitelman症候群,Liddle症候群
5.尿崩症
F 遺伝性疾患
1.Alport症候群
2.多発性嚢胞腎
G 泌尿器科領域の注目すべき疾患と治療の進歩
1.尿路感染症
2.水腎症
3.膀胱尿管逆流
4.尿路結石
5.腎腫瘍
6.前立腺疾患(前立腺肥大症,前立腺がん)
7.膀胱がん
8.神経因性下部尿路機能障害(神経因性膀胱)
H 保存期腎不全
1.急性腎障害:概念と病期分類(「KDIGOガイドライン」から)
2.急性腎障害:バイオマーカー
3.急性腎障害:中毒性腎症(薬剤性腎障害)
4.慢性腎臓病:腎機能保持を目指した薬物療法
5.慢性腎臓病:腎機能保持を目指した食事療法
6.慢性腎臓病に対するチーム医療
7.慢性腎臓病:心血管系合併症対策
III 透析療法
A 透析導入
1.腎代替療法選択の説明方法の工夫
2.透析患者の生命予後規定因子および患者数予測
3.透析導入と非導入の考え方
B 血液透析
1.透析処方の指標
2.血液透析中の低血圧の管理・治療
3.貧血管理の実際
4.在宅血液透析の進歩
5.バスキュラーアクセスの管理と修復
C 腹膜透析
1.「腹膜透析(PD)ガイドライン2019」:発刊と今後の課題
2.腹膜透析+血液透析併用療法
D 長期透析の合併症治療
1.長期透析患者における心血管系合併症対策
2.CKD-MBD:概念と管理の実際
3.多発性嚢胞腎患者の動脈塞栓療法
4.心理的問題:サイコネフロロジーの関わり
E 急性血液浄化
1.多臓器不全症候群(MODS)の病態と治療
IV 腎移植
1.腎移植の動向
2.免疫抑制薬の進歩と使用法
3.腎移植後再発糸球体腎炎の管理
4.腎移植慢性拒絶反応への対応
V 治療上の注意点,患者指導
1.腎臓リハビリテーション
2.高齢者に対する腎代替療法・治療上の注意点
3.糖尿病透析患者の管理
VI 薬剤の使い方
1.抗補体薬
2.PHD阻害薬(HIF活性化薬)
3.抗酸化ストレス薬(Nrf活性化薬)
4.ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
索引
序文
わが国において末期慢性腎不全のために維持透析を必要とする患者、腎移植を要する患者はいまだに増加を続けている。最新の調査によれば、2018年に末期慢性腎不全にて新たに維持透析療法を開始した患者は40,468人、腎移植を受けた患者数は1,885人で、そのうち未透析腎移植は427人である。近年では特に糖尿病、高血圧などの生活習慣病の長期的な罹患の結果、末期慢性腎不全にいたる患者が増加している。また、2019年9月に総務省から発表されたデータによると、わが国では65歳以上の高齢者の人口割合は28.4%と過去最高であり、新たに維持透析を開始した患者の年齢は平均69.99歳である。超超高齢社会になったわが国では患者の高齢化が著しい。
このような状況で、厚生労働省は柏原直樹日本腎臓学会理事長を委員長として腎疾患対策検討会を設置し、同検討会から2018年7月に「腎疾患対策検討会報告書〜腎疾患対策の更なる推進を目指して〜」が発表され、わが国における今後の腎臓病対策の基本方針が決定された。さらに、SGLT2阻害薬の腎保護効果を示す大規模臨床試験の結果が立て続けに発表され、腎臓内科医であるOxford大学のPeter Ratcliffeが低酸素感知・応答機構の発見でノーベル生理学・医学賞を受賞し、その発見を利用した薬剤が使用されるようになるなど、長い間大きな変化がなかった腎臓病の臨床の現場にもここ数年目覚ましい進歩がみられている。
本書はこれらの最新情報と共に、このような腎臓病領域における社会医学、臨床医学、基礎医学の課題とトピックスをコンパクトにまとめた一冊となっている。これまで、初期研修医〜後期研修医、一般臨床医の皆様から大変な好評を得て版を重ね、今回2020-2022年版を刊行することとなった。特に「巻頭トピックス」では、病態の変化が注目されている糖尿病性腎臓病(DKD)からビッグデータまで、最新の話題を網羅することができた。本書が読者諸兄の日々の臨床の一助となることを祈念している。
2020年3月
編者
2020年3月に『腎疾患・透析最新の治療2020-2022』が南江堂より出版された。私が編集者として最初に担当した「2002-2004年版」から3年ごとに改訂され、同シリーズでは7冊目となり、20年近く版を重ねるロングセラーである。今回の編集者は山縣邦弘先生、南学正臣先生のお二人であり、「2017-2019年版」から続けて担当されている。山縣先生は腎疾患重症化予防のための戦略研究(FROM-J)に代表される慢性腎臓病(CKD)の疫学・臨床研究の第一人者であり、南学先生は低酸素と腎臓、糖尿病性腎臓病(DKD)の基礎・臨床研究において国内外で活躍されておられる。各稿の執筆者はその領域に精通した専門家が選ばれている。
本書の構成の特徴は、まず巻頭トピックスで最新の話題を10前後取り上げていることである。次いで疾患別の治療方針・治療法が具体的に3〜4頁の範囲内でコンパクトに記載されている。この二点は初版より一貫している。内容は、腎疾患に伴う緊急時の症候と対処方法、腎炎から代謝異常・血管系疾患における腎病変、尿細管疾患、遺伝性腎疾患、保存期腎不全の治療法、透析療法、腎移植、腎臓リハビリテーション、患者指導、最新の薬剤の使い方など、幅広く網羅されている。さらに泌尿器領域の注目すべき疾患と治療の進歩の項が含まれている。とくに高齢の腎疾患患者では前立腺肥大症など泌尿器系の疾患を合併することがあり、有用な情報となる。各稿に「TOPICS」「役に立つ豆知識」「治療の奥の手」「治療のご法度」のミニコーナーが設定され、各執筆者の考えや着眼点がコメントされている。「専門医へのコンサルト」ではその判断基準が示されており、専門医への紹介の際に役に立つであろう。本書の対象は腎臓内科医・透析医のみならず、初期研修医から後期研修医、また一般臨床医に幅広く活用されるものと思われる。また電子版も発売されており、タブレットなどの端末で使用可能であり手早く参照することができる。
薬物療法については、ほとんどが承認適応内で解説されているが、適応外使用の場合にその旨を明記しておけば、実際に治療を行う医師にはさらに有用な情報となるであろう。また診断基準も提唱され診療機会も増してきているIgG4関連腎臓病や、酵素補充療法やシャペロン療法が可能となった遺伝性疾患であるファブリー病に伴う腎病変の治療法が含まれていない点については、今後の編集における検討課題になるかと思われる。
evidence-based medicineが提唱され、その手順に沿ったエビデンスに基づく診療ガイドラインが各分野において毎年のように発表されている。国際的に普及しているGRADE(grading of recommendations assessment,development and evaluation)アプローチを使ったシステマティックレビューが行われ、文献検索に基づいた診断・治療法の客観的評価、推奨がなされる時代となった。このような状況のなかで、本書は腎疾患・透析領域の最新の治療の解説に重点を置いており、治療の要点が短時間でコンパクトに把握できる点に最大の特徴がある。日常診療において日々参照することによりその有用性が増していくのが本書である。ぜひ一度手にとってみていただきたい。
臨床雑誌内科126巻4号(2020年10月号)より転載
評者●岡山大学 学長 槇野博史