書籍

実は知らない循環器希少疾患

どう診る?どう対応する?

  • 新刊

編集 : 安斉俊久
ISBN : 978-4-524-24877-3
発行年月 : 2019年9月
判型 : B5
ページ数 : 222

在庫あり

定価6,930円(本体6,300円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

遭遇頻度の低い循環器希少疾患でも、不整脈や心不全、虚血性心疾患などの背景にしばしば潜んでいることが…。知識や対応を学ぶ機会が少なく、診療に苦慮しがちな循環器希少疾患に焦点をあて、見落とさないための診断プロセスから、疫学・病態の知識、診断のポイント、治療の実践、ケアや社会福祉的な対応までをわかりやすく整理。近年進んでいる病態解明や治療の進歩などの最新の動向も反映。臨床力のレベルアップを目指す循環器科医におすすめの一冊。

I 総論 チャートでわかる見落とさないための診断プロセス
 1 原因不明の致死性不整脈に遭遇したら
 2 原因不明の心肥大・収縮障害を認めたら
 3 原因不明の右心不全を認めたら
 4 原因不明の冠動脈疾患をみたら
II 疾患各論 知っておきたい循環器希少疾患・病態
 A 不整脈
  1 特発性心室細動
 B 冠動脈疾患
  1 心筋梗塞後症候群(Dressler症候群)
  2 川崎病
 C 弁膜疾患
  1 Ebstein病
 D 心筋疾患
  1 不整脈原性右室心筋症
  2 拘束型心筋症
  3 左室心筋緻密化障害
  4 周産期心筋症
  5 心アミロイドーシス
  6 心臓サルコイドーシス
  7 筋ジストロフィー
  8 アルコール性心筋症
  9 薬剤性心筋症
  10 Fabry病
  11 ミトコンドリア心筋症
 E 心膜疾患,腫瘍
  1 心臓腫瘍(悪性・転移性)
  2 収縮性心膜炎
 F 末梢動脈疾患
  1 末梢動脈瘤
  2 閉塞性血栓性血管炎(Buerger病)
 G 静脈・リンパ管疾患
  1 上大静脈症候群
  2 リンパ管炎・リンパ浮腫
 H その他
  1 脚気心
索引

序文

 循環器診療は、一般的疾患(common disease)を対象にすることが多く、希少疾患(raredisease)に遭遇する頻度は比較的低いと考えられがちであるが、不整脈、心不全、虚血性心疾患などの背景にはしばしば希少疾患が潜んでいる。希少疾患の定義は、国や地域によって異なるが、一般的には1万人あたり1〜5人未満に発症するものとされている。しかしながら、その疾患数は膨大であり、現在も新たな疾患が報告され続けている。また、希少疾患はその特性上、自然歴に関する疫学データの蓄積や大規模臨床試験の実施が困難であったことから、診療におけるエビデンスに乏しく、希少疾患に苦しむ患者の多くは、医学的にも社会的にも弱い立場に置かれてきた。ところが、ゲノムワイド関連解析などの医療技術が進歩し、希少疾患の病態が遺伝子レベルで解明されるに伴い、その医学的ならびに社会的重要性に大きな注目が集まるようになり、国策としても希少疾患患者の生活の質向上を目指した継続的支援と医療革新が重要事項として取り上げられるようになった。
 希少疾患には、根本的な治療法が存在しないものが多いなかで、サルコイドーシスではステロイド治療の有効性が確立されており、アミロイドーシスやFabry病などに関しては、新規治療法の開発も加速度的に進んでいる。また、根本的治療法が存在していなくても、希少疾患の確定診断が得られれば、患者は自らの病気や症状に関してさまざまな情報にアクセスすることが可能になり、患者会での相談や指定難病に対する医療費助成などにより、心理的・社会的な負担を軽減することが可能になる。こうしたことから、希少疾患を見逃さずに早期の段階で治療を開始する重要性は年々高まっている。
 筆者は、前任地の国立循環器病研究センターに在籍中、全国から紹介される多くの難治性あるいは原因不明の循環器疾患、特に心不全・心筋症の症例を診させていただく機会をいただいた。高次医療機関からの紹介も多く、まさに最後の砦として正確な診断を下し、最善の治療を選択しなければいけないという重圧のなかで、系統的に鑑別診断を行う重要性を改めて学ばせていただいた。本書における総論では、希少疾患を見逃さないためのポイントやノウハウが網羅されており、第一線の臨床の現場でお役立ていただける内容となっている。各論においては、希少疾患のなかでもしばしば経験するものについて、病態や診療に関する最新の情報が記載されている。また、日常で経験することが少ない希少疾患の診療を疑似体験できるように、カラー画像なども豊富に取り入れられている。
 一生の間で数例しか経験しないような症例でも、患者本人にとってはその病気が人生を左右する大きな存在である。本書によって、一人でも多くの未診断の患者が、正確な診断のもとに適切な治療とサポートを受けられるようになれば望外の喜びである。

2019年7月
安斉俊久

 安斉俊久先生が編集された書籍『実は知らない循環器希少疾患』が最近上梓された。安斉先生は、国立循環器病研究センター心臓血管内科・心不全科の部長を務められ、バラエティー豊かな循環器疾患の病態をその深く鋭い洞察力・臨床力で次々と診断し、日本屈指の循環器疾患の高度治療現場で、その治療成績を上げてこられた。その安斉先生ご編集の本書をみて驚いた。そこには国立循環器病研究センターでさえもあまり出くわすことのない稀有な循環器疾患が丁寧に網羅されている。しかも発見者の名前の付いた世界に患者が数人しかいないような希少な病気ではなく、通常のありふれた心不全、虚血性心疾患、不整脈のなかに潜む希少疾患に目を向け、通常の循環器診療における希少疾患の診断と治療の大切さを一貫して述べている。安斉先生は、いつの間にこのような正確な知識と豊富な経験を取得されたのであろう。私は、安斎先生のことを循環器内科医師として敬服するとともに、医科学者として少しジェラシーを感じた。それはなぜか?
 当然のことであるが、ある分野を科学的に把握するには、その分野の一番大切な事象にアクセスするのが一番である。循環器疾患においては、虚血性心疾患、不整脈、心筋症を科学的に研究することであろう。虚血性心疾患は重篤であるにもかかわらず、治療可能な最もコモンな循環器疾患であり、不整脈は心電図をとれば必ず診断できるにもかかわらず致死的になり得る病態であるし、心筋症は心臓移植の対象となる重篤な疾病である。あえて、そのような疾病エンティティのなかに希少疾患が存在し、それを正確に診断することの重要性を説き、そこから循環器疾患の何たるかを把握させるところが素晴らしい。「循環器希少疾患というビューポイントからも、循環器疾患の真理の大海が見渡せるのですよ」と安斉先生がおっしゃっているようで、本書の面目躍如たるゆえんである。
 さらに本書の面目躍如な点は、「循環器疾患診療という実学」としての観点からも理解しやすいことである。われわれが循環器疾患の診療にあたるときに、どうしても解決できない、または理解すらできない病態に出くわす。そのときに、いろいろな先生の意見を聞く。場合によると国内の先生のみならず海外にも教えを乞うことがある。そのクエリーの行き先を一手に引き受けているのが本書なのである。
 本書は2部構成となっている。虚血性心疾患、不整脈、心筋症などのありふれた疾患のなかで、ルーチンの診療で理解できない病態に出くわしたときにどのようにアプローチするのかという第一部と、その各々の行き先の病態が詳細に記された第二部である。第一部の縦糸と第二部の横糸が織りなすその各々のチャプターは、今まさに臨床現場で活躍する臨床家によって書かれているところも素晴らしい。
 約30年前、「道は星に聞く」というキャッチコピーとともにカーナビが売り出され、今はカーナビなしで運転ができない時代であるが、現代の循環器医療は、さしずめ「わけのわからない循環器疾患に出会ったら本書に聞け」である。ぜひ、手元に置いておきたい一冊である。

臨床雑誌内科125巻3号(2020年3月号)より転載
評者●国立循環器病研究センター臨床研究開発部 部長 北風政史