書籍

脳神経内科医のための 末梢神経・筋疾患 診断トレーニング

「電気生理×病理×画像」を読み解く30ケース

編集 : 楠進/園生雅弘/清水潤
ISBN : 978-4-524-24815-5
発行年月 : 2019年6月
判型 : B5
ページ数 : 208

在庫あり

定価7,700円(本体7,000円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

末梢神経・筋疾患には多様な病態があり、中枢神経疾患との鑑別を要すことも多いため、脳神経内科医は専門か否かを問わず、基本知識の習得や診断のためのノウハウを学ぶことが欠かせない。本書は、末梢神経・筋疾患の診断に必要な各種検査の基礎知識と実際の進め方、主要疾患の実臨床における対応をやさしく解説した入門書となっている。30の精選された症例を収載し、診断の要点をクイズ形式で示すことで、腕試しをしながら読み進めることができる。電気生理学的検査・組織診断・画像診断の基本から、実臨床での進め方までが一気にわかる、現場感覚満載のテキスト。

Chapter1 末梢神経・筋疾患〜診断に必要な検査の基本と進め方〜
 A.神経症候からわかること
 B.電気生理学的検査の基礎知識と実際
  1.神経伝導検査
  2.針筋電図
 C.組織学的検査の基礎知識と実際
  1.末梢神経の組織学的検査
  2.筋の組織学的検査
 D.画像検査の基礎知識と実際(CT,MRI,エコーなど)
  1.末梢神経疾患
  2.筋疾患
 E.検体検査の基礎知識と実際
  1.末梢神経疾患
  2.筋疾患
 F.検査の進め方〜主な疾患における検査手順の考え方〜
  1.末梢神経疾患
  2.筋疾患
Chapter2 診断トレーニング〜症例問題と実臨床での対応〜
 A.末梢神経疾患
  Case1
  Case2
  Case3
  Case4
  Case5
  Case6
  Case7
  Case8
  Case9
  Case10
  Case11
  Case12
  Case13
  Case14
  Case15
  Case16
 B.筋疾患
  Case1
  Case2
  Case3
  Case4
  Case5
  Case6
  Case7
  Case8
  Case9
  Case10
  Case11
  Case12
  Case13
  Case14
索引

序文

 臨床神経学を専門とするneurologistは、これまで神経内科医といわれてきた。神経内科という診療科の標榜が認可されたのは1975年のことであり、比較的最近のことであるが、現在では神経内科医の団体である日本神経学会の会員は9,000名を超えて、日本の医学会のなかでも代表的な学会となっている。また神経内科専門医も5,000名以上を数える。以前は、神経内科疾患はなおらないといわれていたが、ニューロサイエンスの進歩とともに病態解明が進み、新たな治療法も開発されてきた。フロンティア精神に富む医学生にとって大変魅力のある分野といえるであろう。また、世界でもまれにみる超高齢社会を迎える日本において、脳卒中、認知症やパーキンソン病を診る神経内科医のニーズは極めて高いものがある。しかし、医療関係者以外にとっては、まだまだ神経内科の認識は十分ではなく、精神科や心療内科と間違えられることもある。そこで、日本神経学会では標榜科名を「神経内科」から「脳神経内科」にすることとした。
 一方で、脳神経内科のカバーする領域は極めて広く、脳、脊髄の疾患だけではなく、末梢神経疾患や筋疾患も、重要な対象疾患である。末梢神経や筋の炎症性疾患や変性疾患は、脳神経内科医が専ら診ているといっても過言ではなく、日常診療でも必ず遭遇する疾患である。「脳」が標榜科名についたこの時期であるからこそ、末梢神経や筋の疾患を対象とした書物を発行する意義は高いと考えて本書を編集した。
 本書は二部構成となっている。
 Chapter1では、末梢神経疾患・筋疾患診断の総論として、診察、神経伝導検査や筋電図などの電気生理学的検査、画像検査、自己抗体や遺伝子解析などの検体検査および病理学的検査について、できるだけわかりやすく解説していただいた。特に病理学的検査が日常診療において可能である点は、末梢神経疾患・筋疾患の特色のひとつである。脳神経内科医は、病理所見の解釈だけでなく、検体採取と処理にも習熟することが望ましい。
 Chapter2は、問題形式とした。そのほうが気軽に読み始めることができ、知識も身につきやすいと考えたからである。さらに詳しい情報は、成書や論文を参考にして得ていただきたい。
 本書は、多くのエキスパートの先生方のご協力により、末梢神経疾患や筋疾患についての最新の情報をわかりやすく解説する書になったと考えている。先生方に改めて感謝申し上げるとともに、企画の段階から有益な助言をいただいた南江堂編集部の方々にも、この場を借りて心より御礼を申し上げたい。本書が脳神経内科医にとって、末梢神経・筋疾患を身近に感じてもらえるきっかけになれば、望外の喜びである。

2019年5月
楠進
園生雅弘
清水潤

 私たちが学生・大学院生であった1970年代後半〜1980年代前半の頃は、末梢神経・筋疾患の診療や研究は、臨床症状の把握、電気生理検査(筋電図、伝導検査)、神経・筋生検検査などがほとんどすべてであり、治療法もビタミン剤やステロイド剤などに限られていたように思う。その後の発展を末梢神経を中心に述べてみると、私が最初に国際末梢神経研究会(現在の国際末梢神経学会(PNS)の前身)に出席したのは1978年のロンドン郊外のWyeで行われたときで、全体の出席者も50〜60人、日本からの出席者は3〜4人だったように思う。Thomas、Dyck、Asbury、Aguayo、Bungeなど、教科書でしか見ることのできなかった人々を目の当たりにして、大変感激したことを覚えている。現在では300人を超える会になって、日本からも数十名の参加がある会になってきている。その後、1980年代後半からは原因遺伝子が次々に発見され、さらに各種の病原的な抗体の発見や、末梢神経でいえばRanvier絞輪あるいはその周辺の機能蛋白質などの機能分子が明らかになり、病態とともに疾患単位の考え方も大きく変わってきたと思う。治療についても免疫グロブリン治療、生物製剤、あるいは核酸医薬や遺伝子治療などにも進展している。検査法としても遺伝子や抗体などとともに超音波やMRIなどが加わってきている。脳神経内科のこの30〜40年の発展は、どの領域でも同様かとは思うが、本当に目を見張るものがある。
 この全体を、とくに脳神経内科の若いドクター向けに簡便でわかりやすく、しかし最新の考え方も取り入れながら伝えることは容易ではないと思う。本書はその難しい仕事を見事に成功させていると思う。そのためのいろいろな特徴が組み込まれている。まず第一の特徴は、診断に特化していることである。治療については30例に及ぶ症例に収めてあり、その位置づけが明らかにしてある。第二には、Chapter 1に基本的診断手技とその進め方、Chapter 2にその応用問題として症例提示にまとめている点である。適切なクエスチョンも症例ごとに入れられている。第三には、診断手技、症例ともに日常臨床に必要な基本的なものをベースにしていることであり、実際にはもう少し詳しく調べてみたいという気を起こさせてくれる内容にもなっている。第四には、全体が200頁程度で、しかも図が豊富に入っており、末梢神経・筋以外の領域が専門の脳神経内科医にも手軽に手に取ってという気になるボリュームと内容に仕立てられている。そして最後に最も重要なのは、執筆者リストをみるとわかるが、それぞれの領域、疾患の現在のわが国のエキスパートが執筆していることである。簡にして要を得た記述はまさにこの点に由来していると思う。
 私自身、本書全体を通して、新しい発見や新しい考え方を目にして、エキスパートならではの記述に感心している。
 私は、本書を脳神経内科医とともに、整形外科や手の外科の医師、これから専門医を目指す研修医・専修医、さらにはこの領域に関係するメディカルスタッフの方々にもぜひお勧めしたいと思う。

臨床雑誌内科125巻1号(2020年1月号)より転載
評者●愛知医科大学 理事長/名古屋大学大学院医学系研究科神経変性・認知症制御研究部 特任教授 祖父江元