書籍

かかりつけ医もここまで診よう!肛門部外来診療マニュアル

: 栗原浩幸
ISBN : 978-4-524-24697-7
発行年月 : 2019年5月
判型 : B5
ページ数 : 118

在庫あり

定価4,620円(本体4,200円 + 税)


  • お気に入りに登録
  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

「実はおしりも診てほしいんです」と言われたこと、ないですか?他疾患の外来患者が実は肛門の痛みや排便異常に悩んでいることは少なくない。日常診療で遭遇頻度の高い肛門疾患の病態を豊富な写真で示し、基本的な肛門部の診察方法と鑑別の流れ、外来で行える処置までをエキスパートが一般臨床医のためにやさしく解説。つい敬遠しそうな肛門をまず「自分で診る」ためのアドバイスが満載の一冊。

I 総論
 A.肛門の解剖
 B.肛門の診察
  1.心構え
  2.問診
  3.視診
  4.指診
  5.肛門鏡検査
 C.診断へのアプローチ
  1.脱出が主訴の場合
  2.出血が主訴の場合
  3.肛門痛が主訴の場合
  4.硬結(しこり)が主訴の場合
  5.その他の主訴の場合
 D.肛門疾患に対する治療
  1.治療に対する考え方
  2.保存的に診てよい疾患と専門施設に紹介すべき疾患
  3.肛門疾患に対する保存的治療
  4.痔核に対する外科的治療
  5.裂肛に対する外科治療
  6.痔瘻に対する外科治療
  7.肛門周囲膿瘍やその他の化膿性疾患に対する外科治療
  8.その他の治療
II 知っておきたい肛門疾患
 A.痔核
  1.内痔核
  2.外痔核
  3.嵌頓痔核
 B.痔核と紛らわしい肛門周囲疾患
  1.皮垂
  2.直腸粘膜脱症候群
  3.大腸腫瘍の脱出
 C.裂肛
  1.急性裂肛
  2.慢性裂肛
  3.随伴裂肛(脱出性裂肛)
 D.肛門周囲膿瘍と痔瘻
  1.痔瘻
  2.肛門周囲膿瘍
 E.クローン病の肛門病変
  1.裂肛,肛門潰瘍
  2.皮垂
  3.痔瘻,肛門周囲膿瘍
 F.化膿性の肛門周囲疾患
  1.膿皮症
  2.毛巣洞
  3.肛門部粉瘤
  4.フルニエ壊疽
 G.骨盤底筋群脆弱による疾患
  1.直腸脱
  2.直腸瘤
III 肛門部の皮膚疾患
 A.肛門.痒症
 B.真菌感染症
  1.白癬
  2.カンジダ症
 C.ウイルス感染症
  1.尖圭コンジローマ
  2.肛門部Bowen病,肛門部Bowen様丘疹
  3.単純疱疹
  4.帯状疱疹
 D.梅毒
  1.硬性下疳
  2.扁平コンジローマ
 E.肛門部Paget病
  1.肛門部の乳房外Paget病
  2.肛門部のPaget現象
 F.悪性黒色腫
 G.基底細胞癌
IV 肛門部の腫瘍性疾患
 A.直腸絨毛腫瘍
 B.肛門管癌
 C.痔瘻癌
V 肛門鏡で見る大腸疾患
 A.潰瘍性大腸炎
 B.大腸憩室出血
 C.虚血性大腸炎
 D.放射線性直腸炎
 E.大腸癌
参考情報
索引

序文

 「日本人の半分は痔主である」というように、肛門疾患に罹患している患者さんは大変多いものです。また大腸疾患の増加に伴い、肛門を見る機会も増えています。医師にとって肛門はとても身近な器官です。しかし多くの臨床医は肛門診察を行いません。もちろん肛門を診察することによって、大腸癌やクローン病などを発見できることがあることを頭では理解しつつも、つい肛門診察を避けてしまうのです。
 肛門疾患の種類は決して多くはなく、診断も難しいものではありません。しかし肛門疾患を学ぶ機会は専門施設にでも属さなければほとんどなく、指導できる医師も少ないのが現状です。また自ら学ぼうとしてもこれという教科書がありませんでした。
 教育を受けたり、勉強したりする手立てがないため肛門診察に自信を持てず、肛門を「見る」状況にあっても、「診る」ことなく終えてしまうのが現実だと思います。著者は元々外科医ですが、肛門専門施設に勤務する前には、肛門に関する患者さんからの質問や他科からのコンサルトに対して、明確な回答を出せなかったことが幾度もありました。これは疾患に対する知識不足というよりも、診断をしっかりできなかったことによると考えます。
 著者は数少ない肛門専門病院の一つである所沢肛門病院に勤続して25年になります。その間、名誉院長である金井忠男先生に肛門疾患の診療を一から指導していただき、また豊富な症例を経験しさまざまな疾患に巡り合うことができました。幸運にも多くの経験を優れた指導者の下で積むことができたのです。
 臨床の現場ではひとりで診断しなければならないことも多々あります。このようなときには内容の充実した医学書が役立つことは多くの臨床医の知るところです。本書はその役割を担えると自負しています。
 本書は自信を持って肛門を診られるようになることを目指しています。痔核、痔瘻、裂肛を三大肛門疾患といいますが、肛門部にはそれ以外にも皮膚疾患、炎症性腸疾患、骨盤底筋群脆弱による疾患などいろいろな疾患があります。本書では日常診療で比較的多く見かける疾患や見落としてはならない疾患について、カラー写真を活用して視覚的にわかりやすく解説しました。また「外来担当医へのワンポイントアドバイス」を設け、臨床実地に役立つ「本音」を書き下ろしました。所沢肛門病院の知識をフルに盛り込んだつもりです。
 肛門を診たからといって、治療まで責任を持つ必要はありません。保存的に診てよいもの、専門家に任せるものの判断がつけば、まずはそれで十分です。本書を手元において、時間のあるときに開いていただきたいと思います。そうすれば日常診療で自信を持って肛門を診察できるようになると確信しています。

2019年3月
所沢肛門病院院長
栗原浩幸

 肛門疾患に関連する症状は出血、疼痛、脱出、腫瘤、違和感、残便感、排便障害などがある。このような悩みをもつ人がまず受診する医療機関はどこであろうか。自覚症状によって、“肛門科”を標榜している医院か、外科や内科の施設を受診すると思われる。しかし“肛門科”はどこにでもあるわけではなく、近所のかかりつけ医、近隣の外科や婦人科、泌尿器科、内科などを受診される人も多いと思われる。診察される先生が専門外の場合は、問診と視診程度で専門知識のある医師のいる医療機関を紹介されていることと思われる。そのような場合に役に立つのがこの一冊といえる。
 肛門疾患は、問診、視触診や直腸診で診断がつくことが多い。しかし、これには数多くの症例の診療経験が必要である。本書は問診の仕方、診察方法、主訴別の診断法が項目別にコンパクトにまとめられているため、比較的容易に疾患の推測ができる“肛門疾患の入門書”といえる。さまざまな肛門疾患がきれいな写真付きで紹介されているので、目の前の患者がどの疾患に類似しているのか診断の手助けになり、その説明にも用いることができる。また随所にある「ワンポイントアドバイス」には、多くの経験をしたからこそいえることが掲載されている。解説が簡潔であるため、診療の合間にでも抵抗なく読めるものになっている。
 近年では、医学科学生の講義で“肛門病学”という項目で教育しているところは少なくなっていると聞く。一口に肛門疾患といっても、関連する可能性のある診療科は外科以外にも、婦人科、泌尿器科、内科、皮膚科などがあり、高齢化社会に伴い肛門疾患は増加しているように思われる。このようなコモンディジーズほど、初期研修の2年間に経験・教育すべきであるが、現制度ではそういう状況でもない。今後ますます肛門診察を行わなくなる医師が多くなることが危惧される。本書はかかりつけ医の先生や肛門科を志そうとする先生、研修医にもおすすめしたい一冊である。ぜひ本書を手にとってページをめくっていただきたい。

臨床雑誌外科81巻13号(2019年12月号)より転載
評者●久留米大学外科教授 赤木由人

 本書は肛門部の外来診療を行ううえで基本的な診察法から診断にいたるまでの知っておくべき事柄を、この領域を牽引するお一人である著者が懇切丁寧に解説した教科書である。痔核・裂肛・痔瘻などの肛門疾患をはじめ、肛門周囲の皮膚疾患や悪性腫瘍、またクローン病の肛門病変など、肛門科医が扱う疾患の範囲は広い分野にわたるが、これらの疾患を適切に診断するためには診察のちょっとしたコツや幅広い疾患の知識が不可欠である。
 I章「総論」の最初の項目として肛門管の解剖がイラスト入りで解説されていることは、肛門管という特殊な器官の解剖や機能を理解しておくことが診察や診断にとても重要であるという著者の考えが反映されていると思う。診察ではその心構えから始まり、問診、視診、指診、肛門鏡検査という流れが肛門診察の基本中の基本であり、本書の解説どおりに診察を行えば、誰でも肛門科と同じ手順で肛門診察ができる。診断へのアプローチは症状や所見に基づいたアルゴリズム図で解説されており、外来診察のみでほとんどの肛門疾患を適切に診断できるようにビジュアル的にも工夫されている。治療については痔核・裂肛・痔瘻の治療が簡潔に概説されているが、一次的な診療機関で行うことができる治療と専門施設に紹介して行うべき治療に言及しており、本書を手にした医師の立場(内科医、一般・消化器外科医、産婦人科医、初期研修医など)に配慮している点はこれまでの肛門疾患の教科書にはあまりみられなかった本書の特徴である。
 II〜Vの各章は各論として「肛門疾患」「肛門部の皮膚疾患」「肛門鏡で見る大腸「肛門部の腫瘍性疾患」疾患」の項目立てになっており、肛門部の診察で遭遇する広い範囲の疾患がほぼすべて網羅されている。とくに肛門疾患では痔核や裂肛、痔瘻など一つの疾患でも外観や症状が多様であるが、本書ではわかりやすい症例写真がたくさん提示されており、疾患アトラスとして外来診療の場で手に取ってみることで診断にとても役立つと思われる。内科医にとってはクローン病の肛門病変は診断基準にも含まれているため、クローン病の診断につながる重要な手がかりとなる所見が肛門診察だけでも得られるというメリットがある。また、肛門部の皮膚疾患や悪性疾患は肛門科専門医でも診断に迷うケースがあり、これらの症例写真は肛門科の専門医を目指す医師にとってもとても勉強になる内容である。
 本書を通読すれば、患者さんが肛門部の症状を訴えたときに自分自身で肛門疾患の診察や診断ができる、という自信がつくことを保証したい。

臨床雑誌内科125巻4号(2020年4月増大号)より転載
評者●JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門外科 部長 山名哲郎