ダーモスコピーのすべて改訂第2版
著 | : 斎田俊明/宇原久/古賀弘志 |
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ISBN | : 978-4-524-24686-1 |
発行年月 | : 2021年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 432 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
ダーモスコピー本の決定版,大改訂! 読者の好評を得た初版のビジュアルなデザインはそのままに,さらに幅広い疾患での適用やより体系化した診断手順,日常診療でのポイントを追加・更新した.本邦における第一人者である執筆陣による幅広い知見を集大成した,まさに「ダーモスコピーのすべて」であり,本領域の「標準的テキスト」といえる.
総論
1 ダーモスコピーの原理・機器・観察法
2 日常診療に役立つダーモスコピーのポイント
3 ダーモスコピー診断学総論
各論T
悪性黒色腫
1 表在拡大型黒色腫
2 悪性黒子型黒色腫
3 掌蹠の悪性黒色腫
4 結節型黒色腫
5 無(低)色素性黒色腫
6 その他の悪性黒色腫
7 局所再発悪性黒色腫
8 悪性黒色腫の皮膚転移巣
各論U
色素細胞母斑類
1 Clark母斑(dysplastic nerve)
2 Spitz母斑,Reed母斑
3 Miescher 型母斑
4 Unna型母斑
5 掌蹠の後天性色素細胞母斑
6 先天性色素細胞母斑
7 再発母斑
8 青色母斑
9 結合母斑
各論V
非メラノサイト系腫瘍性疾患
[上皮系腫瘍]
1 基底細胞癌
2 脂漏性角化症
3 日光黒子
4 扁平苔癬様角化症
5 日光角化症(光線性角化症)
6 Bowen 病
7 有棘細胞癌
8 ケラトアカントーマ
9 乳房外Paget 病
10 エクリン汗孔腫,エクリン汗孔癌
11 澄明細胞性棘細胞腫
12 脂腺過形成(老人性脂腺増生症)
13 脂腺腫,脂腺癌
14 Merkel 細胞癌
[非上皮系腫瘍]
1 皮膚線維腫
2 隆起性線維肉腫
3 毛細血管拡張性肉芽腫
4 被角血管腫
5 出血性病変と血管腫,毛細血管拡張症
6 悪性リンパ腫
各論W
感染症,炎症性疾患,その他
1 尋常性疣贅
2 扁平疣贅とミルメシア
3 verruciform xanthoma
4 疥 癬
5 シラミ症
6 尋常性乾癬
7 扁平苔癬
8 汗孔角化症
9 急性痘瘡状苔癬状粃糠疹
10 慢性苔癬状粃糠疹
11 顔面播種状粟粒性狼瘡
12 黄色肉芽腫
13 黄色腫
14 柑皮症
15 white fibrous papulosis of the neck(頸部白色線維性丘疹症)
16 雀卵斑
17 血管線維腫
18 黒色表皮腫
19 抗がん薬による色素沈着
20 棘・異物刺入
21 太田母斑
22 Becker 母斑
23 カフェオレ斑
24 炎症性線状疣贅状表皮母斑
25 脂腺母斑(類器官母斑)
26 膠原病の爪上皮血管所見
各論X
爪甲病変
1 爪部メラノーマ
2 爪部の母斑
3 反応性爪甲色素線条
4 爪部のBowen 病と有棘細胞癌
5 爪部の疣贅
6 Glomus 腫瘍
7 緑色爪
8 乾癬の爪病変
9 扁平苔癬の爪病変
10 爪甲下血腫
各論Y
トリコスコピー(毛髪病変)
1 円形脱毛症
2 脂漏性皮膚炎と乾癬の鑑別
3 男性型脱毛
4 瘢痕性脱毛症
5 膠原病による脱毛(全身性エリテマトーデス,円板状エリテマトーデス,限局性強皮症)
各論Z
粘膜・粘膜移行部の病変
1 粘膜・粘膜移行部の悪性黒色腫
2 メラノーシス(melanosis)
3 粘膜・粘膜移行部の色素細胞母斑
4 粘膜部の血管性病変(口唇静脈湖など)
5 傍外尿道口嚢胞(parameatal cyst)
6 粘膜・粘膜移行部の扁平苔癬
7 光線性口唇炎,口唇癌
8 Peutz-Jeghers 症候群とLaugier-Hunziker 症候群
9 bowenoid papulosis(ボーエン様丘疹症)
10 尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)
巻末付録
1 ダーモスコピーの各種診断手順
2 ダーモスコピー用語解説
改訂第2版の序文
ダーモスコピーは皮膚科の新たな検査法として1990年代初頭に登場したものである.その後すぐに診療の現場に取り入れられ,現在では皮膚科診療に欠かすことのできない診断法として定着している.
本書の初版を2012年に発行したところ,幸い多くの読者に利用していただくことができた.本書の特徴は,「ダーモスコピーのすべて」という書名に示されているように,この診断法の手技・手順から各種疾患の所見まで,ダーモスコピーに関連する知見をすべて網羅的に収載している点にある.ダーモスコピーの教本は国内において複数,発行されているが,その多くは主として初心者向けの入門書である.そのなかで,ダーモスコピーの「すべて」を記載する本書は,この分野において標準的テキストとしての役割を果たせるのではないかと考えている.
ダーモスコピーの新知見は,その後も続々と報告されており,対象疾患も当初の色素性皮膚腫瘍から無色素性腫瘍へ,さらに最近は炎症性皮膚疾患や感染症,毛髪疾患などにまで広がってきている.そこで,これらの最新情報を取り入れて改訂第2版を刊行することとした.今回は共著者の宇原 久先生,古賀弘志先生の担当分を大幅に増やし,全面的な改訂となった.3名の著者が文献的知識に加え,自らの経験を踏まえて,具体的で正確な記載となるように心掛けて原稿を作成した.
今回の改訂では,まず総論において改訂2段階診断法に加え,Kittlerの修正パターン分析法について詳しく解説した.また,初学者に混乱をもたらすダーモスコピーの用語を整理し,理解しやすいように総論と巻末にまとめて解説した.各論では腫瘍性疾患のみでなく,非腫瘍性疾患,炎症性疾患も含めて対象疾患を大幅に拡充した.各疾患のダーモスコピー画像もなるべく多数掲載し,所見のていねいな解説を心掛けた.巻末付録では国際ダーモスコピー学会のweb siteに“dermoscopedia”として公開された網羅的2段階診断法とKittler法の簡易版といえるChaos&Clues法について詳しく解説した.読者には,この改訂によってダーモスコピーに関する最新知見の全貌を把握いただけるものと確信している.
本書の改訂にあたっては南江堂の杉山孝男氏にご高配いただいた.また,改訂の緒を開いてくれた杉山由希氏,大幅な原稿作成の遅滞にもかかわらず脱稿まで激励してくれた仲井丈人氏,赤字で埋まった校正に的確に対応し,素晴らしい書籍に仕上げてくれた千田麻由氏に深謝する.
本書がダーモスコピー修得の手助けとして読者の先生方のお役に立つことを願っている.
2021年10月
著者を代表して
斎田俊明
本書は本邦のダーモスコピーのメッカともいえる信州大学の斎田俊明(名誉教授),宇原久(現 札幌医科大学教授),古賀弘志(講師)の3名による分担執筆の書である.文献に裏打ちされた知識に加えて豊富な経験に基づいて書き綴られており,信州大学が総力を結集して築き上げてきた本邦のダーモスコピーの歴史そのものを記した名著といっても過言ではない.しかも3名がそれぞれ得意とする項目を担当することで本書の完成度をさらに高いものにしている.書名の「ダーモスコピーのすべて」に表れているように,文字どおり「すべて」を網羅した,ダーモスコピーの標準的な日本語教科書である.本書はダーモスコピー診断学の決定版ともいうことができ,これからダーモスコピーを専門的に勉強したいと思う方の期待に十分に応えることのできる本である.これほど充実したダーモスコピーの専門書は本邦には唯一であり,数多くの英語教科書と比べてもまったく遜色のないものである.一般に日本語の教科書は多くの場合,英語の教科書よりも数年から10年遅れの情報になっていることがめずらしくないが,本書に関しては,ダーモスコピーの最先端の情
報が収載されており,本書を読破すれば,現時点で世界最先端の情報を手にすることになろう.
今版の特徴をいくつかあげさせていただくと,まずページ数が初版の1.5 倍以上になりながら,価格はそれに比べ抑えられている.また,巻末付録として,各種診断手順に加え,Kittler の修正パターン分析法に相当する実地医家向け簡易版であるChaos &Clues 法に関して詳しく解説されている.写真も大きくてわかりやすく,用語集も充実しているので,
皮膚科専門医必読の書として強くお勧めする次第である.
さて,たとえこのように有用な書物であっても途中で挫折しては意味がないので,私なりに本書を読破する工夫を示して,ぜひとも購入したら完全読破を目指していただきたいと思う.まずは4ページある目次をしばらく眺めてみよう.そうすると,どこか一つの章を最初に読みたいと思うはずである.付録の用語解説から読み始めてもよいし,爪甲病変か
ら始めてもよいと思う.一つの項目を読み終わったら,目次の四角で囲んだページ番号に印を付けておこう.こうすることで,加速度的に読み進めること請け合いである.印の付いてない部分が減るに連れて読破の目標が明確に見えてくるからである.
最後に,著者の斎田名誉教授は私にとって多くのことを教わった恩師の一人であり,宇原教授,古賀講師は長年の友人であり仲間でもあることを申し添え,COI の開示とさせていただければ幸いである.
臨床雑誌内科129巻4号(2022年4月号)より転載
評者●東京女子医科大学附属足立医療センター皮膚科 教授 田中 勝