消化器疾患最新の治療2019-2020
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 小池和彦/山本博徳/瀬戸泰之 |
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ISBN | : 978-4-524-24549-9 |
発行年月 | : 2019年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 510 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2年ごとの改訂で、年々進歩する消化器疾患における治療指針と最新の情報を簡潔に提供。巻頭トピックスでは、「炎症性腸疾患薬物療法の新展開」、「ロボット直腸癌手術」、「C型肝炎治療の最新ガイドライン」、「肝細胞癌に対する分子標的治療」など、話題の10テーマを取り上げる。各論では各疾患における主要な治療法はもちろん、「患者への説明のポイント」や「トピックス」をはじめ治療における豆知識や禁忌などのコラムを豊富に掲載。消化器疾患診療に携わる医師、研修医にとって、最新の治療をアップデートするのに欠かせない一冊。
巻頭トピックス
1.縦隔アプローチ食道癌根治術
2.PPI長期投与の問題点
3.新ガイドラインにみる胃癌内視鏡治療
4.炎症性腸疾患薬物療法の新展開
5.全身疾患と腸内細菌
6.ロボット直腸癌手術
7.C型肝炎治療の最新ガイドライン
8.肝細胞癌に対する分子標的治療
9.肝疾患とサルコペニア
10.膵癌に対する集学的治療
I章 消化器疾患の治療法
1.栄養療法
2.輸血療法
3.内視鏡的止血法
4.ステント治療
5.胃瘻造設とその管理
6.消化器癌の緩和ケア
II章 主要な消化器症状へのアプローチ
1.腹痛
2.悪心・嘔吐
3.吐血・下血・血便
4.下痢
5.慢性便秘
6.便失禁
III章 消化管疾患
[A.食道]
1.アカラシア
2.食道炎,食道潰瘍およびGERD,NERD
3.食道・胃静脈瘤
4.食道癌
a.内視鏡的治療
b.外科的治療
c.化学療法,放射線療法,狭窄対策
[B.胃・十二指腸]
1.急性胃炎・びらん性胃炎・AGML
2.Mallory-Weiss症候群
3.慢性胃炎
4.機能性ディスペプシア
5.消化性潰瘍
a.薬物治療指針
b.H.pylori除菌療法
c.NSAIDs潰瘍の治療
6.消化性潰瘍の合併症
a.内科的治療
b.外科的治療
7.胃CMALTリンパ腫
8.胃癌
a.早期胃癌の内視鏡的治療
b.早期胃癌の外科的治療
c.進行胃癌の外科的治療
d.切除不能胃癌の治療
9.胃術後障害
10.早期十二指腸腫瘍の内視鏡的治療
[C.腸]
1.腸管感染症
2.抗菌薬関連腸炎
a.出血性大腸炎
b.Clostridium difficile関連下痢症(CDAD)
3.吸収不良症候群
4.蛋白漏出性胃腸症
5.急性虫垂炎
6.潰瘍性大腸炎
7.Crohn病
8.腸結核CJR
9.虚血性腸炎
10.過敏性腸症候群
11.小腸腫瘍
12.mid-GI bleeding
13.大腸ポリープ・ポリポーシス
14.大腸癌
a.早期癌
b.結腸進行癌
c.直腸進行癌
15.大腸憩室の合併症
a.内科的治療
b.外科的治療
16.イレウス
a.成人の場合
b.小児の場合
17.偽性腸閉塞
18.放射線性腸炎
19.腸管Behcet病,非特異性多発性小腸潰瘍症
20.痔核,痔瘻,裂肛
[D.消化管全般にわたるもの]
1.急性腹症
2.好酸球性消化管疾患
3.膠原病の消化器病変
4.消化管悪性リンパ腫
5.消化管神経内分泌腫瘍(NET/NEC)
6.消化管間質腫瘍(GIST)
7.横隔膜ヘルニア
8.鼠径ヘルニア
IV章 肝・胆・膵疾患
[A.肝]
1.A型肝炎・E型肝炎
2.B型急性肝炎
3.急性肝不全,劇症肝炎
4.B型慢性肝炎
5.C型慢性肝炎
6.自己免疫性肝炎(AIH)
7.薬物性肝障害
8.アルコール性肝障害
9.NAFLD/NASH
10.肝硬変
a.一般的治療,外来管理
b.反復性肝性脳症
c.腹水
11.原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎
12.代謝性肝疾患
13.肝膿瘍,寄生虫性肝嚢胞
14.肝嚢胞
15.肝良性腫瘍
16.肝細胞癌
a.TACE,動注療法
b.ラジオ波焼灼術
c.外科手術と集学的治療
17.胆管細胞癌(肝内胆管癌)
18.転移性肝癌
19.生体肝移植
[B.胆]
1.胆道閉鎖症
2.胆道感染症
3.胆.・胆管結石症
a.非観血的治療
b.観血的治療
4.胆嚢・胆管癌
[C.膵]
1.急性膵炎
a.内科的治療
b.外科的治療
2.慢性膵炎
a.内科的治療
b.外科的治療
3.膵嚢胞性疾患
4.膵癌
巻末付録
1.主な消化器系薬剤一覧表
索引
序文
ご好評をいただいている「消化器疾患最新の治療」の2019-2020年版をお届けします。本書は2年ごとに改訂を行っていますが、全体の構成としては、「巻頭トピックス」、「消化器疾患の治療法」、「主要な消化器症状へのアプローチ」、そして各消化器疾患の基本および最新の治療法について、内科および外科の立場などから解説されています。この2年の間に登場した新しい治療法や大きく進歩した治療法については「巻頭トピックス」として詳しく記載されていますが、今回は10のテーマを取り上げました。
各消化器疾患については、冒頭に「患者への説明のポイント」を箇条書き形式で簡潔にまとめたあとに、原則として「疾患の解説」、「診断と検査」、「治療の一般方針」、「生活指導」に分けて記載されています。さらに、最新の進歩・話題をわかりやすく説明するために必要に応じて「最新の動向」や「トピックス」として記載させていただきました。そのほかにも役立ちそうな情報を「役に立つ豆知識」として、また、一歩進んだ治療やピットフォールを「治療の奥の手」、「治療のご法度」として紹介しております。
PPIは強力な酸分泌抑制作用を持つ安全性の高い薬剤として消化性潰瘍、GERD、H.pyloriの除菌などに広く有効性を発揮してきましたが、近年その長期投与に様々な問題点がある可能性が指摘され、それをよく認識したうえで適切に使用していくことが重要だと考えられます。また、炎症性腸疾患に対する薬物療法に種々の生物学的製剤などが加わり、新たな展開をみせています。腸内細菌叢と全身疾患との関連も注目され、新たな知見が出てきています。肝疾患においてはめまぐるしく進歩してきたC型肝炎治療に対する最新ガイドラインを紹介しました。また、肝細胞癌に対する分子標的治療の現状と問題点、今後の展望についても解説いたしました。外科分野ではロボット手術の導入による直腸癌手術の進歩、まだまだ早期診断や根治的治療が難しく、予後不良である膵癌に対する集学的治療の最新情報について紹介しました。
近年の医学の進歩は急速であり、消化器疾患の診療においても年々新しく進歩がみられています。最新の情報を得て最善の医療を提供し続けていくためには、正確な知識を習得していく努力は欠かせません。最新かつ正確な情報を適切かつコンパクトにまとめて編集してある本書を、皆様の日常診療に役立てていただければ幸いです。
2019年2月
編集者一同
「消化器疾患最新の治療」は、1989年に世に出て以来、消化器領域における主に2年ごとの治療の進歩を紹介してきた。創刊30周年となる今年、「2019-2020年版」が充実した内容で上梓されたことは大変喜ばしいことである。関係各位のご努力に心より敬意を表したい。
本書は、3名の編集者が2年間を一単位として編集を担当し、編集者の一部を入れ替えながらも、本書のスタイルと意図を貫き続けているところに特徴がある。この30年間の医学、医療の進歩には隔世の感があり、消化器領域においても、30年前には想像もしなかったような医療が現在展開されている。本書は、このような時代の潮流にあって、最先端医療を紹介しつつも、消化器診療の基本を大切にするコンセプトを堅持している。
「2019-2020年版」の冒頭を飾る「巻頭トピックス」では、診療ガイドラインとして2018年に公表された「胃癌治療ガイドライン(第5版)」と、「C型肝炎治療ガイドライン(第6.2版)」が解説される。薬物療法では、進行肝細胞がんに対する分子標的治療薬として新たに適応拡大されたlenvatinibとregorafenibの治療成績が紹介され、免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験成績にも触れている。炎症性腸疾患では、最新の治療戦略とともにJAK阻害薬やインテグリン阻害薬などの開発状況について述べられる。外科治療では、2018年に保険承認された直腸がん手術におけるロボット手術の治療成績、ロボット支援により新たな展開をみせる縦隔アプローチの食道がん根治手術ならびに進行膵がんに対する免疫療法を含む集学的治療が紹介される。腸内細菌叢と神経、代謝、免疫系疾患との関連や、肝疾患におけるサルコペニアは臓器連関における新たな仕組みを示唆する。PPI長期投与の問題点も、日常臨床における注意喚起としてトピックスに相応しい。
第I章では、消化器疾患の治療の基本として栄養療法と輸血療法が取り上げられた。内視鏡技能では各種止血法と視野確保のためのgel immersion endoscopyが紹介された。消化管や膵管・胆管の良悪性狭窄に対する各種ステントの適用と選択も詳述されている。広い診療領域をカバーする消化器専門医の素養として、胃瘻造設の実際と管理、合併症やトラブルへの対応ならびに消化器がんの緩和ケアが今回取り上げられている。
第II章では、主要な消化器症状が解説され、症状から診断にいたる手順や最適な治療法の選択が系統的に解説される。今回は、機能性腹痛症(functional abdominal pain syndrome:FAPS)という新しい概念が紹介された。慢性便秘や便失禁についても病型がよく整理されており、治療方針もわかりやすい。
第III、IV章の疾患各論では、消化器専門医として対応を知っておくべき頻度の高い疾患や、最近とくに治療法に新たな展開がみられる疾患が取り上げられている。解説の冒頭に「患者への説明のポイント」が置かれ、患者目線を大切にし、臨床現場で役立つことを意図して編集された実用書である印象を強く受ける。「最新の動向」、「トピックス」、「治療の御法度(禁忌)」、「治療の奥の手」、「役に立つ豆知識」、「処方例」がバランスよく配置され、診療のこつやエッセンスを具体的に学ぶことができる。
このように本書は、消化器疾患診療に関する最新の情報をコンパクトにわかりやすくまとめており、消化器専門医だけでなく、消化器専門医を目指す後期研修医にも勧めたい実用書である。日々の診療に追われ、急速に進歩する消化器病学の発展に遅れをとらないためにも必携の専門書といえるであろう。
臨床雑誌内科125巻2号(2020年2月号)より転載
評者●東北大学名誉教授/みやぎ県南中核病院企業団 下瀬川徹