書籍

日本整形外科学会診療ガイドライン

骨・関節術後感染予防ガイドライン

文献アブストラクトCD-ROM付

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/骨・関節術後感染予防ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-24353-2
発行年月 : 2006年5月
判型 : B5
ページ数 : 102

在庫なし

定価3,080円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

骨・関節術後感染の「疫学」「術前・術中の管理・対策」「抗菌薬の適正使用」「術後の対処・管理」について35のリサーチクエスチョンを設け、推奨・要約と解説を示す。エビデンスに基づいた診断・治療、患者への説明のよりどころとなる、整形外科医必携の書。付録のCDには文献アブストラクトを収載。

前文
 1. ガイドラインの作成手順
  1.1 基本的な考え方
  1.2 作成手順
  1.3 エビデンスの評価
  1.4 エビデンスと推奨Grade
  1.5 エビデンス評価の課題、問題点
 2.ガイドラインの読み方と注意事項
 3.国内外の関連ガイドラインとの関係

第1章 骨・関節術後感染予防のための疫学
 RQ1 術後SSIの発生率は
 RQ2 術後SSIの起炎菌で頻度の高いものは何か
 RQ3 易感染性宿主は術後SSIの発生率が高いか
 RQ4 術後深部SSIのため人工関節を抜去した例で再置換術はどの程度行われているか、その保持率はどの程度か
 RQ5 人工関節置換術後深部SSIに対する一期的再置換術と二期的再置換術では感染率に差があるか

第2章 術前・術中での術後感染予防のための管理、対策
2.1 患者および術野に対する管理、対策
 RQ1 術前の鼻腔その他の除菌(含MRSA)は、術後SSIを減少させるか
 RQ2 関節リウマチ患者で、術前抗リウマチ薬の継続投与は術後SSIを増加させるか
 RQ3 術野の剃毛を行うことにより、術後SSIが減少するか
 RQ4 術野の術直前のブラッシングは術後SSI予防に有用か
 RQ5 骨・関節手術において、術野に使用する消毒薬により術後SSIの発生率に差があるか
 RQ6 プラスチックドレープ、ポビドンヨード含有ドレープの使用により術後SSIは減少するか

2.2 術者に対する管理、対策
 RQ7 整形外科手術を行う術者のもっとも適切な手洗い方法は
 RQ8 人工関節置換術等の骨・関節手術において、
  a. 不織布製のガウンは綿製のガウンより術後SSIを減少させるか
  b. 閉鎖性のガウン、全身排気スーツ(body-exhaust suits)、手術用ヘルメット(steri-shield filtered exhaust helmet)等によって術後SSIが減少するか
 RQ9 人工関節置換術等の骨・関節手術では、手術用手袋を2枚重ねて使用することにより術後SSIが減少するか

2.3 手術室の管理、対策
 RQ10 人工関節置換術では、超清浄空気および層流により術後SSIが減少するか
 RQ11 手術室の環境清浄用の紫外線殺菌法は有効か

第3章 術後感染予防のための抗菌薬の適正使用
 RQ1 人工関節置換術を除く整形外科領域の清潔手術において、予防的抗菌薬投与は術後SSIの発生率を低下させるか
 RQ2 人工関節置換術における予防的抗菌薬投与は術後SSIの発生率を低下させるか
 RQ3 術後SSI予防のための抗菌薬の適切な投与経路は
 RQ4 術後SSI予防のための抗菌薬の適切な静脈内投与時期は
 RQ5 術後SSI予防のため抗菌薬投与後、いつ駆血帯を使用すべきか
 RQ6 人工関節置換術において術後SSI予防のための抗菌薬の1回投与量は
 RQ7 人工関節置換術において術後SSI予防のための抗菌薬の投与間隔は
 RQ8 人工関節置換術において術後SSI予防のための抗菌薬の投与期間は
 RQ9 術後SSI予防のために第一選択とする抗菌薬は何か
 RQ10 術野に使用する洗浄液に抗菌薬を入れることは有用か
 RQ11 抗菌薬の2剤投与は単剤投与より術後SSIを減少させるか
 RQ12 サイクリング療法により耐性菌は減少するか
 RQ13 抗菌薬使用前の皮内反応は有用か

第4章 術後での感染予防のための対処、管理
 RQ1 術後SSIの有無を判定するための有用な検査法はあるか
 RQ2 術後のドレナージとその管理について
  a. 術後ドレナージはSSI予防に有用か
  b. 術後創部のドレーンの留置はSSI予防のためにいつまで行うべきか
 RQ3 創外固定用ピンのSSI予防のために術後どのような対応、管理がよいか
  a. 創外固定用ピン刺入部の清潔処置は毎日行うべきか
  b. 創外固定用ピン刺入部は清潔な被覆材でおおっておくべきか
  c. 創外固定用ピン刺入部の清潔処置に消毒薬は必要か
  d. 消毒薬として何がよいか
  e. 創外固定用ピン刺入部に感染が疑われた場合の対処はどうするか
 RQ4 人工関節置換術後のSSIで、術後何日までに対応すれば人工関節を抜去せずに沈静化できるか
 RQ5 創処置について
  a. 術後の創処置は毎日行うべきか
  b. 術後の創処置をどのように行うべきか

索引

日本整形外科学会は事業の一環として、整形外科疾患の診療ガイドラインの作成を平成14年度から開始し、平成17年に5疾患について、続いて今回3疾患の診療ガイドラインが完成した。これで11疾患のうち8疾患の診療ガイドラインを世に送り出すことができた。
 一般的に診療ガイドラインとは質の高い新しい情報に基づいて医療を提供するのに役立つ素材であり、患者と主治医がより良い解決策を探って行こうとするときに、その手引きとして傍らに置いておく資料である。今日、診療ガイドラインを出版するにあたり、診療ガイドラインを個々の患者に短絡的に当てはめてはならないことをまず強調したい。
 本診療ガイドラインは、広範囲な科学論文の検索から、疾患の専門医たちによる厳密な査読をおこない、信頼性と有益性を評価したうえで作成された。論文のエビデンスを根拠とする推奨レベルには特に多くの議論を費やした。その結果、当初、推奨度はAの「強く推奨する」からDの「推奨しない」の4段階としていたが、項目によっては科学的論文数が不十分であったり、結論の一致を見ない項目があるために、その推奨レベルとして(I)レベル「(I):委員会の審査基準を満たすエビデンスがない、あるいは複数のエビデンスがあるが結論が一様でない」を新たに追加した。このような項目に関しては、整形外科専門家集団としての委員会案をできるだけその項目中に示すように努力した。
 さらにこの診療ガイドライン作成中に、文献上認められる診断名の定義が統一されたものではないことに気づいた。このために策定委員会として診断基準を提示する必要があると考えて策定委員会案を前文に示した。また、診断方法も一定した基準がない現状を考えて、多くの医師が利用できるように、策定委員会案として診断の章に診断手順を示した。
 近年の医学の進歩に伴い、従来からおこなわれてきた治療法は今後劇的に変化する可能性がある一方で、種々の治療法が科学的根拠に基づくことなく選択されている。さらにわが国ではさまざまな民間療法が盛んにおこなわれており、なかには不適切な取り扱いを受けて大きな障害を残す例も認められている。このように不必要な治療法、公的に認められていない治療法、特に自然軽快か治療による改善か全く区別のつかないような治療法に多くの医療費が費やされている現状は、早急に改善されるべきと考えられる。
 今回作成された診療ガイドラインは、現在の治療体系を再認識させるとともに、有効で効率的な治療への第一歩であると考えられる。しかし、科学的な臨床研究により新たな臨床知見が出現する可能性もあり、今後定期的に改訂を試みなければならない。今回、取り上げた5疾患が頃度の高い疾病であることを鑑みれば、倫理規定を盛り込んだ前向きな臨床研究をおこなう必要を強く実感する。このように、より良い診療ガイドラインを科学的根拠に基づいて作成し続けることは、患者の利益、医学発展、医療経済の観点から日本整形外科学会の責務であると考えている。
2006年5月
日本整形外科学会
診療ガイドライン委員会
委員長 四宮謙一

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