英語抄録・口頭発表・論文作成虎の巻
忙しい若手ドクターのために
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 南都伸介 |
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著 | : 上松正朗 |
ISBN | : 978-4-524-24212-2 |
発行年月 | : 2006年4月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 176 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
「まず用意すること」「何をいつしなければならないか」「最低限押さえておくべきポイントとは何か」といった実践的な英語による抄録、口頭発表、論文の書き方がわかる“虎の巻”。わかりやすい図表や関連するアドバイスをまとめたコラムにより、読み進むだけで何をすればよいかが明確にわかる。付録として、日本語論文の書き方、英語の例文集、類語一覧を収載。論文の執筆指導にあたるベテランドクターにもおすすめの一冊。
第1章 英語抄録「虎の巻」
1.英語で学会抄録を書いてみよう
2.“Sushi”theory
3.なぜ採択されないのか
4.まず“敵”を知る
5.論理構成を明確に
6.抄録の設計図を作ろう
7.Title(タイトル)の考案
8.Methods(方法)と Results(結果)
9.Conclusions(結論)
10.設計図の検討
11.トピックセンテンスの英訳
12.字数の調節
13.添削の依頼
14.例題
15.チェックリスト
16.まとめ
第2章 英語による口頭発表「虎の巻」
はじめに
1.喜びと不安
2.早めに準備を
3.準備の進め方
4.発表の基本を確認する
5.何が言いたいのかを明確に
プレゼンテーション・ファイル作成
1.プレゼンテーション・ファイルはシンプルに
2.Background(背景)
3.Objective(s)(目的)
4.Methods(方法)
5.Results(結果)
6.Conclusion(s)(結語)
読み原稿
1.必ず読み原稿を作ろう
2.文章は短く、シンプルに
3.Background(背景)
4.スライドの文章と読み原稿の文章を一致させる
5.Objective(s)(目的)
6.Methods(方法)
7.Results(結果)
8.Conclusion(s)(結語)
英語読み原稿とその解説
口頭発表練習
1.イメージトレーニングをやろう
2.呼吸のコントロール
3.単語の言い換え
4.声に出すこと
5.アイコンタクト
6.リハーサル
“実戦”話す英語のテクニック
1.英語なんか簡単!?
2.通じる発音
3.音節を認識する
4.母音の違いに注目
5.アクセントの確認
6.英語はリズム
いよいよ本番
質疑応答編
1.質問のメモを取ろう
2.質問に対する答えは結論を先に
3.共同演者からの助けは期待できない
4.他の演題に質問しよう
第3章 いよいよ英語論文「虎の巻」
1.モチベーションをはっきりさせよう
2.臨床医なのになぜ論文か
3.なぜ英語か
4.強力な名刺代わりになる英語論文の別刷
5.指導者をみつける
6.何を伝えたいのかを明確に
7.まとまった時間をみつける
8.まず用意するもの
9.論文設計図の作成
10.設計図をもとに、英文を作成する
11.Title page
12.Abstracts and Key words
13.Introductionを書く
14.Methodsを書く
15.統計処理についての記載
16.Resultsをまとめる
17.Discussionを書く
18.Acknowledgments
19.References
20.Tables
21.Figure legends
22.Figures
23.Titleを推敲する
24.Abstractを書く
25.推敲する
26.投稿規定のチェック
27.カバーレターをつける
28.翻訳業者への翻訳や校閲の依頼
29.チェックリスト
第4章 “実戦” 論文英語のコツ
1.辞書の選び方、使い方
2.文型のマジック:生きた文法を覚えよう
3.パラグラフについて
4.トピックセンテンス
5.時制についての「虎の巻」
6.可算名詞と不可算名詞
7.理科系のための“冠詞入門”
8.自動詞と他動詞の区別をしっかり認識しよう
9.前置詞
10.まわりくどい文を引き締める
11.可能性の表現法
付録1 「虎の巻」の「虎の巻」―まだ日本語論文も書いたことのない人のために―
1.論文「虎の巻」の「虎の巻」
2.英文の一流誌の構成を参考にしよう
3.標準的な論文の構成
4.その他の一般的注意
5.その他のアドバイス
付録2 例文集
1.口頭発表に関する例文
2.Introduction、Discussionに関する例文
3.従来の研究の引用に関する例文
4.Methods、Resultsに関する例文
5.Conclusionsに関する例文
付録3 日本人にわかりにくい類語
付録4 参考図書
コラム
1.MeSH term
2.“技”の大切さ
3.Data splitting
4.英文タイピング(その1)正しいタイピングは大切
5.英文タイピング(その2)スペースの重要性
6.英文タイピング(その3)セミコロンに注意
7.英文タイピング(その4)数値の範囲の示し方
8.英文タイピング(その5)略号の使い方
9.海外への投稿では全角文字はご法度
10.○と×
11.黄金律
12.ヒアリングができない?
13.通じない和製英語
14.アニメーションはほどほどに
15.有効数字と標準誤差
16.ポスター・パネルのレイアウト
17.OrderとRequest
18.My Fair Lady
19.英語も筋力トレーニングが必要?
20.ちょっと一息
21.魔法のことば
22.ファイルは開いたらセーブしよう
23.ButとAnd
24.縦線はいらない
25.三人寄れば文殊の知恵
26.フォーマルとカジュアル
27.添削の頼み方のコツ
緊急入院の受け持ち、受け持ち患者の急変、緊急手術の呼び出しなど、若手医師への呼び出し音は鳴り続ける。ハードな日常に耐え、臨床経験を積み、技術を磨き、人間的にも成長して一人前の医師が育つ。臨床ばかりではない。厳しいマッチングに選ばれ、幸運にも(?)基幹病院に配属された若手医師は、さらに学会研究会活動や論文執筆までも要求される。大変なことである。一人二役も三役もこなさねばならない。
ちゃんとした臨床医になりたいだけなのに、なぜ学会や論文なのか。しかし不思議なことに学会発表や論文発表に挑戦することにより、自分の臨床レベルは上がる。病院のレベルも上がる。そして患者さんも幸せになる。多くの先輩たちがこのような厳しい状況を経験し、もまれ、病院を支えつつ一人前の臨床家となっていった。大変なことであるが、やりがいのあることである。しかしながら、臨床医はじっくりと腰を落ち着けて勉強する時間を取ることができない。そこで、回り道をしないで、要領よく、よい学会発表や論文執筆ができればと思う。
論文の書き方など、本来は医学生の間に習得すべき事柄だろう。しかし、著者は学生時代にまったくそういう訓練を受けた記憶がない。日本の学部教育は、教員数の少なさからか、講義中心のインプットが主で、アウトプットのための訓練はほとんどなかったように思う。医学が進歩し、インプットすべき事柄が格段に増えた現在、医学生はますますアウトプットのための訓練を受けずに卒業してしまうのではないだろうか。
それなのに、患者さんの命を預かる忙しい研修医になってから、やれ学会で発表せよ、はやく論文を書けといわれる。この状況はなんとかせねばなるまい。
本書は著者の勤務する病院の若手医師のために、著者自身が二十数年前に知っていれば、もっとよい発表ができ、あるいはもっと要領よく論文を書くことができただろうにと思ったことをまとめた「虎の巻」である。若手医師に対する著者の心からのエールでもある。
「虎の巻」とは、中国の兵法書「りくとう」から出た語で、転じて秘事、秘伝の書の意とされる。また講義などの種本、教科書の安直な学習書(あんちょこ)という意味もある。本書では、志は格調高く「秘伝書」を目指したが、できるだけ「あんちょこ」であるように努めた。
つまり実地に役立つ道しるべとして、簡単に目を通すことができるよう配慮した。もちろん、畳の上の水練だけでは泳げるようにはならないが、それでも道しるべがあるのとないのとでは、目的地に到達する過程に大きな違いが生じることだろう。
日本の国内学会においても英語での発表、ディスカッションが増えている。また著者の専門とする循環器病学の分野をみても、20年前には考えられなかったほど世界の場での日本人のすぐれた発表が増えている。この「虎の巻」がさらに発表者の裾野を広げ、日本発、世界に向けての価値ある医学情報の発信のため、そしてがんばっている若手医師の「やりがい」のために、いささかでもお役に立てばと願っている。
2006年3月
上松 正朗