新臨床腫瘍学改訂第5版
がん薬物療法専門医のために
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 日本臨床腫瘍学会 |
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ISBN | : 978-4-524-23788-3 |
発行年月 | : 2018年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 872 |
在庫
定価16,500円(本体15,000円 + 税)
正誤表
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2020年12月28日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
がん薬物療法を行う上で、知っておくべき知識を網羅した、日本臨床腫瘍学会編集による専門医テキストの改訂第5版。基礎から臨床まで幅広く掲載し、各薬剤・各疾患の要点を解説。さらに、昨今進歩が著しいがん免疫やバイオマーカー、ゲノム領域、免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする新規薬剤、抗がん薬の曝露対策などについて内容を拡充、医療経済や社会的支援まで広く、この3年で確立した知見を盛り込んだ。「がん薬物療法専門医」を目指す人だけでなく、がん診療に携わる全ての医療者必携の書。
序章
I がんの分子生物学
1 がんの発生と進展機構
1.遺伝子異常と多段階発がん
2.染色体・ゲノム異常
3.シグナル伝達系
4.細胞周期
5.細胞死および細胞老化
6.エピジェネティクス
7.ノンコーディングRNA
8.浸潤と転移
9.血管新生
10.がん幹細胞
11.感染と発がん
12.がんと免疫
13.がんと代謝
2 分子解析法
1.ゲノム解析法
2.遺伝子変異検査
3.トランスクリプトーム解析
4.遺伝子発現解析法
5.プロテオーム解析
6.タンパク質発現解析法
7.バイオインフォマティクス
II 臨床腫瘍学の基礎
3 がんの病因と疫学
1.病因
2.疫学
3.がんの統計
4 がんの予防と検診
1.がんの予防
2.がんの検診
5 臨床試験
1.がんの臨床試験概論
2.第I相試験,第II相試験
3.第III相試験
4.有効性と安全性の評価
5.がん医療と臨床試験における倫理的原則
6.臨床試験・臨床研究をめぐる知的財産権
7.臨床試験・臨床研究をめぐる個人情報保護
8.わが国の医薬品開発をめぐる規制
6 がん診療・がん研究の社会的側面
1.わが国のがん対策の動向
2.わが国の保険診療体系とがんの医療経済学
7 がんの診断
1.がん診断へのアプローチ
2.画像診断(CT,MRI,PET・核医学,超音波)
3.内視鏡検査
A)消化器内視鏡
B)呼吸器内視鏡
4.病理診断
5.TNM分類
6.バイオマーカー
A)バイオマーカーとは
B)バイオマーカーと個別化医療
C)腫瘍マーカー
8 外科療法概論
9 放射線治療概論
10 インターベンショナルラジオロジー(IVR)松本俊郎
11 がん薬物療法概論
12 造血幹細胞移植
13 がん免疫療法
1.がん免疫療法
2.免疫チェックポイント制御
14 抗がん薬の薬理学
1.薬物の開発(発見,スクリーニング,非臨床試験まで)
2.薬物動態学・薬力学
3.ゲノム薬理学
4.ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)
15 各種抗がん薬
1.殺細胞性抗がん薬
A)アルキル化薬,抗生物質
B)プラチナ製剤
C)代謝拮抗薬
D)トポイソメラーゼ阻害薬
E)微小管阻害薬
2.内分泌療法薬
3.サイトカイン
4.分子標的治療薬
A)分子標的治療薬概論
B)小分子化合物
(1)EGFR阻害薬
(2)HER2阻害薬
(3)BCR/ABL阻害薬,KIT阻害薬
(4)mTOR阻害薬
(5)ALK阻害薬
(6)PI3K阻害薬,AKT阻害薬
(7)MEK阻害薬
(8)BRAF阻害薬
(9)血管新生阻害薬・多標的阻害薬
(10)プロテアソーム阻害薬
(11)エピジェネティック標的薬
(12)CDK阻害薬
(13)PARP阻害薬
(14)その他の分子標的治療薬
C)抗体薬
(1)細胞表面抗原に対する抗体薬
(2)抗EGFR抗体薬
(3)抗HER2抗体薬
(4)抗血管新生抗体薬
(5)免疫チェックポイント阻害薬
5.その他の抗がん薬
6.骨修飾薬(BMA)
16 薬剤耐性とその克服
17 緩和医療
1.終末期医療
2.疼痛緩和
3.その他の身体症状と症状緩和
4.サイコオンコロジー
5.緩和ケアチーム
18 新しい治療戦略
III 臨床腫瘍学の実践
19 頭頸部がん
20 肺がん
1.小細胞肺がん
2.非小細胞肺がん
21 中皮腫
22 縦隔腫瘍
23 乳がん
24 食道がん
25 胃がん
26 大腸がん,肛門がん
27 消化管間質腫瘍
28 神経内分泌腫瘍
29 原発性肝がん
A)肝細胞がん
B)肝内胆管がん
30 胆道がん
31 膵がん
32 腎細胞がん
33 膀胱がん・上部尿路上皮がん
A)膀胱がん
B)上部尿路上皮がん
34 前立腺がん
35 胚細胞腫瘍(精巣・後腹膜・縦隔原発)
36 子宮がん
1.子宮頸がん・外陰がん・腟がん
A)子宮頸がん
B)外陰がん・腟がん
2.子宮体がん・子宮肉腫・絨毛性疾患
A)子宮体がん
B)子宮肉腫
C)絨毛性疾患
37 卵巣がん・卵管がん・腹膜がん
A)卵巣がん(上皮性・間質性悪性腫瘍)
B)胚細胞腫瘍(卵巣)
38 骨軟部腫瘍
1.悪性骨腫瘍
2.悪性軟部腫瘍
A)手術適応のある肉腫
B)進行・再発肉腫
39 皮膚がん
A)悪性黒色腫
B)基底細胞がん,有棘細胞がん
40 中枢神経系腫瘍
41 内分泌がん
A)甲状腺がん
B)副腎皮質がん
C)褐色細胞腫
42 原発不明がん
43 小児がん
1.小児がんとは
2.神経芽腫
3.横紋筋肉腫
4.白血病/リンパ腫
A)急性リンパ性白血病(ALL)
B)非Hodgkinリンパ腫(NHL)
5.その他の腫瘍
44 造血・リンパ組織の腫瘍
1.WHO分類
2.急性骨髄性白血病(AML)
3.急性リンパ性白血病(ALL)
4.慢性骨髄性白血病・骨髄増殖性腫瘍
A)慢性骨髄性白血病(CML)
B)真正赤血球増加症(PV)
C)本態性血小板血症(ET)
D)原発性骨髄線維症(PMF)
E)慢性好酸球性白血病,非特定型(CEL,NOS)
F)慢性好中球性白血病(CNL)
5.慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
6.骨髄異形成症候群・骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
A)骨髄異形成症候群(MDS)
B)骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)
7.非Hodgkinリンパ腫(NHL)
8.Hodgkinリンパ腫(HL)
9.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
10.多発性骨髄腫(MM)と類縁疾患
45 二次がん
46 HIV関連悪性腫瘍
A)HIV/AIDSに関連する悪性腫瘍
B)AIDS関連悪性リンパ腫
C)Kaposi肉腫(KS)
D)浸潤性子宮頸がん
47 腫瘍随伴症候群
48 悪性胸水・心嚢液・腹水
1.悪性胸水
2.悪性心嚢液,心タンポナーデ
3.悪性腹水
49 転移がんの治療
1.骨転移
2.脳転移
50 抗がん薬の投与方法
1.ポートの留置・管理
2.髄腔内ならびにオンマヤ・リザーバーを介した薬物療法
3.抗がん薬の曝露対策
51 オンコロジックエマージェンシー
1.上大静脈症候群,気道狭窄
2.電解質異常(高カルシウム血症,低ナトリウム血症)
3.脊髄圧迫
4.消化管の閉塞,穿孔,出血
5.胆道閉塞
6.泌尿器科的エマージェンシー
7.腫瘍崩壊症候群
8.発熱性好中球減少症(FN)
9.静脈血栓塞栓症(VTE)
10.播種性血管内凝固症候群(DIC)
52 副作用対策と支持療法
1.がん薬物療法に伴う有害反応の対策
2.免疫チェックポイント阻害薬による免疫学的有害反応
3.B型肝炎ウイルスの再活性化とその対策
4.性腺機能障害とその対策−がん・生殖医療の実践
5.輸血療法
6.栄養サポート
7.リハビリテーション
53 がん医療におけるコミュニケーションの意義と必要なスキル
54 がんサバイバーシップ
55 がん医療におけるチーム医療
56 高齢者,思春期・青年期のがんとがん医療
1.高齢者のがん
2.思春期・若年成人のがん
3.がんと妊娠
57 遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング
1.遺伝性腫瘍
2.遺伝カウンセリング
付録
1.記述統計
2.現在の標準治療を決めた臨床試験
略語一覧
索引
改訂第5版 序
がん医療は大きく変わろうとしている。免疫チェックポイント阻害薬が多くのがん種で有効性を示し実臨床が変わった。効果のみられ方も従来の殺細胞性抗がん薬や分子標的治療薬と異なれば、副作用も免疫反応に基づいているので従来の薬剤とは全く異なる。しかし、免疫チェックポイント阻害薬はさまざまながん種に用いられているが、その副作用管理はがん種を問わず共通である。旧態依然とした臓器別診療体系のなかで使用するよりも、がんが発生した臓器にかかわらず幅広く診療する腫瘍内科学の体系のなかで使用するほうが合理的である。
がんの発生、増殖、転移に関わる分子生物学的機序の解明が進み、それらを標的とした分子標的治療薬もがんの薬物療法を大きく変えた。標的となる分子異常はがん種に特異的にみられることもあるが、多くの場合はがん種を超えてがんの発生、増殖、転移に関わっている。問題はそれぞれのがんでは個々の分子異常の頻度が低いことが多く、がん種ごとに検討していたのでは効率が悪いことである。そこで、がん種の枠にとらわれず特定の分子異常がみられている腫瘍を対象としたbasket trialで分子標的治療薬が評価されるようになった。また次世代シークエンシングの技術を用いて遺伝子異常を網羅的に検査し、分子標的治療薬による治療につなげるクリニカルシークエンスが、がんゲノム医療として日本でも開始された。米国では当たり前のようにクリニカルシークエンスが行われているため、製薬企業はすでにこのシークエンスの情報が医療の現場にあることを前提として特定の遺伝子異常を標的とした薬剤を開発するようになった。まだまだクリニカルシークエンスにより恩恵を受けるがん患者は数%に過ぎないが、これを導入しないと日本の抗がん薬開発は世界に後れをとる。そのため国をあげてがんのクリニカルシークエンスの実装が進められている。それぞれのがん種における個々の遺伝子異常の頻度は低いため、ここでもがん種を超えた体制が必要となる。
もともと腫瘍内科学は個別のがん種を扱うのではなくすべてのがん種を対象とする。基本的な考え方は共通だからである。つまり、がん薬物療法は臓器別診療体系のなかで行うのではなく、臓器横断的に行うほうが合理的なのである。そのため日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医は、腫瘍内科学を修得しがん種を超えて薬物療法に対応できる専門医である。したがって、臓器横断的な視野が必要な免疫チェックポイント阻害薬もゲノム医療も、腫瘍内科の概念に適合する。2018年6月、がん薬物療法専門医制度がサブスペシャルティの専門医資格として日本専門医認定医機構で承認された。腫瘍内科学の発展にとって大きなマイルストーンである。しかしがん薬物療法専門医資格は医療者のためにあるのではなく、がん患者のため、国民の福祉のためにあることを忘れてはならない。
今回、改訂された本書もこれらの学問の進歩に対応した改訂となっている。それに伴い、臓器横断的視野がますます強調された内容となっている。この臨床腫瘍学の改訂がわが国の腫瘍内科学の進歩、がん薬物療法専門医の育成に役立ち、ひいては国民のがん医療に貢献することを願ってやまない。
2018年6月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 南博信