書籍

新 てんかんテキスト改訂第2版

てんかんと向き合うための本

  • 新刊

編集 : 井上有史/池田仁
ISBN : 978-4-524-23071-6
発行年月 : 2021年10月
判型 : B5
ページ数 : 196

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

豊富なイラストと共に,てんかんの基本から診断・治療まで,診療に関する役立つ知識を網羅し,やさしく解説した好評書の改訂版.患者や家族の疑問や不安に答えるQ&Aも掲載.今版では,関連ガイドラインの改訂や新薬の登場をはじめとしたてんかん診療の変化を盛り込み,より内容を充実させた.医療スタッフだけでなく,患者やその家族にもぜひ読んでほしい一冊.

口絵 主なてんかん治療薬一覧

第1章 てんかんとは何か
 1 てんかんとはどのような病気か
 2 てんかんの原因
  Q&A. 1 発作を引き起こす急性の疾患は?
  Q&A. 2 遺伝子異常がわかれば治療できるのでしょうか?
 3 熱性けいれん

第2章 てんかんの種類
 1 てんかんの分類
 2 てんかん発作の種類と特徴
  Q&A. 3 発作で脳は障害を受けますか?
 3 子どものてんかん
  Q&A. 4 予防接種は受けても大丈夫ですか?
 4 高齢者のてんかん
  Q&A. 5 認知症とてんかんは関係しますか?

第3章 てんかんの診断
 1 てんかん診断のフローチャート
  Q&A. 6 どんな病院を受診すればよいのでしょうか?
 2 診察時のポイント
 3 発作観察のポイントと記録法
  Q&A. 7 患者として普段何を記録しておけばよいでしょうか?
 4 てんかんの検査
  a.血液検査,尿検査
  b.脳波検査
  c.その他の生理検査,脳磁図
  d.画像検査(CT,MRI,SPECT,PET)
  e.神経心理検査
  f.発達検査
  g.その他の検査
  Q&A. 8 てんかん発作と間違えやすい発作はありますか?(子ども)
  Q&A. 9 てんかん発作と間違えやすい発作はありますか?(大人)
 
第4章 発作以外の病気・症状
 1 身体の病気・症状
 2 てんかんと突然死
 3 てんかんと高次脳機能
 4 てんかんと心の病気
  Q&A.10 てんかんや治療薬によって精神的に不安定になることはありますか?
 5 てんかんと性格・行動

第5章 てんかんの治療
 1 てんかん治療の目標と治療選択
 2 発作の誘因とその対処法
 3 薬物治療の基本
 4 抗てんかん薬の種類(副作用とその対策を含む)
 5 これからの薬物治療
  Q&A.11 副作用の心配をせずに使える薬はありますか?
 6 血中濃度測定の意義・目的
 7 薬物治療での注意点
  Q&A.12 薬の相互作用とは何ですか?
  Q&A.13 薬のために発作が増えることはありますか?
 8 てんかん重積状態の治療
 9 高齢者の薬物治療
  Q&A.14 ジェネリックはありますか? また,変更しても問題ありませんか?
  Q&A.15 漢方薬や市販のサプリメントは治療に影響しますか?
  Q&A.16 薬でてんかんが治ることはないのでしょうか? 薬をやめると再発しますか?
 10 薬で発作がよくならないとき
 11 外科治療の適応,術前検査
  Q&A.17 内側側頭葉てんかんとは何ですか?
 12 脳波に関連する特殊な検査
 13 外科治療の方法
  Q&A.18 外科治療を受けるにあたって注意することはありますか?
 14 外科治療後の薬物治療
 15 外科治療後の注意点と援助
 16 食事療法

第6章 通院と入院
 1 通院での治療
  Q&A.19 忙しい担当医に病気や薬のことをうまく聞くにはどうすればよいですか?
 2 入院での治療
 3 医療費の助成

第7章 てんかんと発達
 1 てんかんと運動発達
 2 てんかんと言語発達
 3 てんかんと精神発達

第8章 てんかんと保育・教育
 1 てんかんのある子どもの「子育て」
 2 てんかんのある子どもの保育
 3 学校選び
  Q&A.20 病気のことを学校へどのように伝えればよいでしょうか?
 4 学校側の留意点

第9章 てんかんと仕事
 1 どのような仕事ができるか
 2 仕事に就く準備をする
  Q&A.21 自動車やオートバイの運転はしてもよいのでしょうか?
 3 仕事に就くための訓練
 4 就職に利用できる機関・制度

第10章 てんかんと生活
 1 発作への対応と介助の注意点
  Q&A.22 発作があったとき,救急車を呼ばないといけませんか?
 2 病気の告知
  Q&A.23 祖父母が病気を理解してくれず困っています.どうしたらよいでしょうか?
 3 家庭生活での注意点
 4 外出・旅行時の注意点
 5 スポーツにおける注意点
  Q&A. 24 てんかんで保険に入れますか?
 6 結婚,妊娠,出産
  Q&A.25 避妊薬は服用しても大丈夫でしょうか?
  Q&A.26 母親にてんかんがある場合,授乳してもよいのでしょうか?
 7 生活への援助と制度
 8 ほかの病気になったとき,手術を受けるとき

付録 てんかんについてもっと詳しく知りたい人のために
 1 てんかんの詳しい情報を得る
 2 てんかんのある人と出会う
  Q&A.27 てんかんについて学ぶ機会はあるでしょうか?
 3 てんかんのある人を支える人・団体
 4 災害に備えて
 5 巻末資料

まえがき

 本書の第1 版は、1991 年に初版(1999 年改訂第2 版)の「てんかんテキスト―理解と対処のための100 問100 答」(清野昌一、八木和一 著)の新版として、2012 年に出版されました。旧版同様、多くの方に手にとっていただき、感謝しています。9 年がすぎ、新たな薬物の登場、てんかんの国際分類やガイドラインの変更などがあり、内容を更新する必要が生じたため、改訂第2版としてお届けします。最初の出版からは20年の節目になります。
 前回同様、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターのスタッフが、てんかんの診断・治療・ケアに関する役に立つ情報をできるだけ具体的にわかりやすく説明するよう努めました。てんかんのある人とその家族、てんかんのケアにかかわる人、医療関係の人、そしててんかんについて知りたい一般の人を念頭に記述しています。イラストは渡邊真介(看護師、イラストレーター)が内容に合わせて描き直しました。
 本書が、てんかんという病気の時代に即した理解と克服に役立つことをこころより願っています。
 南江堂の達紙優司さん、米田博史さん、一條尚人さんには大変お世話になりました。記して感謝申し上げます。

2021 年晩夏
井上有史、池田 仁

 てんかんは,てんかん発作を繰り返して起こす慢性の脳疾患である.性別や人種を問わず,乳幼児から高齢者までの幅広い年齢で発病し,有病率は1%と考えられており,決してまれな疾患ではない.てんかん発作は事故や怪我のリスクになるだけでなく,日常生活に制限を強いられ,周囲から誤解されることもある.さらに知的障害や運動障害,精神症状を合併することもある.このように,てんかん発作自体の持続時間は短いものの,てんかんであることの心理・社会的な影響は大きい.そのため,医療者や支援者には,単にてんかん発作を抑制することを目標にするのではなく,てんかんのある人の人生や生活をいかに充実させていくのかという視点が求められている.
 このような視点に基づく,包括的てんかん診療を長年実践している静岡てんかん・神経医療センターのスタッフによって執筆されたのが本書である.9年ぶりの改訂ということで,2017 年のてんかん分類・発作分類,2018 年の「てんかん診療ガイドライン2018」,新規抗てんかん薬そして現在開発中の抗てんかん薬などの最新の情報が盛り込まれており,てんかんの診断・治療・生活支援についてわかりやすく説明されている.いずれの記述に関しても共通して,いかに患者や家族にその意義を理解してもらい,診察・検査や治療に前向きに取り組んでもらうのかという視点が盛り込まれている.たとえば,問診に関しては発作症状の聴取のポイントだけでなく,家族や支援者が発作を観察し記録するためのポイントも詳しく述べられている.また,現在使用されている主な抗てんかん薬の各剤形がカラー写真で掲載されているが,一般名や血中濃度治療域も併記されているため,医療者・支援者が本人・家族と情報共有するのに活用することができる.外科手術に関しては「家族や周囲も患者自身の不安や葛藤をよく理解し,患者の意思決定を尊重し,支えることが大切」と述べられている.スタッフによって描かれたイラストも親しみやすく,文体もソフトで親しみやすいが,その根本にある静岡てんかん・神経医療センターの哲学を評者はひしひしと感じる.
 先にも述べたように,新時代のてんかん診療の目標は,その人らしい,充実した生活を送ることであり,仮にてんかん発作をコントロールできなくても,人生を決定するのは自分自身であるということを実感してもらうことも目標の一つの形といえる.こういった目標を達成するためには,患者自身,家族,友人,関係者,同僚などがてんかんについて理解を深めることがまず大事である.てんかんは発作症状,合併症や原因,生活背景もさまざまであるため,正しい知識を得ることは困難なことがある.しかし本書には,てんかん診療のみならず,ライフステージごとの生活のポイントや発作時の対応などのあらゆる事柄に関して詳しく記述されている.患者や家族がしばしば疑問にもつ事案に関してQ&A方式で述べられているのも読みやすい.このような患者・家族視点での内容を知ることは医療者や支援者にとっても有益であるが,何よりも患者や家族などの一般の人々が「てんかん発作が止まらないと何も始まらない,できない」という思考から「治療をしながら少しでもやれることを」と前向きな姿勢に変化することが期待できる.
 このように,本書はてんかん診療に関わる医療者,支援者のみならず患者自身や家族,友人,同僚など,幅広い読者を対象としうる内容である.そして,それぞれの人がそれぞれの立場でてんかんに向き合うときに,やさしく,そして力強く支えてくれることであろう.

臨床雑誌内科129巻4号(2022年4月号)より転載
評者●国立精神・神経医療研究センターてんかん診療科 医長 谷口 豪