書籍

軟部腫瘍診療ガイドライン2020改訂第3版

監修 : 日本整形外科学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/軟部腫瘍診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-22811-9
発行年月 : 2020年7月
判型 : B5
ページ数 : 96

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

Mindsのガイドライン作成指針に沿った全面改訂版。「希少がん」の中でも典型的である悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は、発生部位や病理組織も多彩であり、専門医による集学的治療が求められる。軟部腫瘍全般の疫学、組織分類、確立した治療法についてまとめるとともに、臨床における医師・患者双方の意思決定場面で重要な臨床課題(CQ)を設定し、推奨と解説を設けている。

前文
疾患トピックの基本的特徴
 1.疫学
 2.分類(WHO,病期)
 3.診断
 4.治療
 5.予後
Clinical Question
 Clinical Question1 軟部腫瘍に対して,unplanned excisionを行わないことを推奨するか
 Clinical Question2 軟部腫瘍の病理診断において,遺伝子検査は推奨されるか
 Clinical Question3 悪性軟部腫瘍の診断を受けた患者において,診断時遠隔転移検索としてCTは推奨されるか
 Clinical Question4 悪性軟部腫瘍患者に対して,治療前のPET/CTは推奨されるか
 Clinical Question5 悪性軟部腫瘍患者に対して,治療後のPET/CTは推奨されるか
 Clinical Question6 5cm以上の軟部腫瘍に対して,術前の生検は推奨されるか
 Clinical Question7 2cm以下の軟部腫瘍に対して,切除生検は許容されるか
 Clinical Question8 四肢および表在体幹発生の異型脂肪腫様腫瘍に対して,広範切除と比較して辺縁切除は推奨されるか
 Clinical Question9 悪性軟部腫瘍に対して,広範切除は推奨されるか
 Clinical Question10 画像上浸潤所見を有する悪性軟部腫瘍に対して,浸潤範囲を考慮した切除縁の設定は推奨されるか
 Clinical Question11 悪性軟部腫瘍切除術において,出血コントロールを目的とした超音波切開凝固装置の使用は推奨されるか
 Clinical Question12 手術可能な高悪性度軟部腫瘍に対して,周術期の補助化学療法は推奨されるか
 Clinical Question13 乳児線維肉腫に対して,周術期化学療法は推奨されるか
 Clinical Question14 小児・思春期の滑膜肉腫に対して,周術期化学療法は推奨されるか
 Clinical Question15 悪性軟部腫瘍に対して,周術期の補助放射線療法は推奨されるか
 Clinical Question16 悪性軟部腫瘍に対する補助放射線療法として,術前照射と術後照射のいずれが推奨されるか
 Clinical Question17 遠隔転移を有する悪性軟部腫瘍患者において,原発巣の切除は推奨されるか
 Clinical Question18 遠隔転移を有する悪性軟部腫瘍患者において,転移巣の切除は推奨されるか
 Clinical Question19 悪性軟部腫瘍局所再発に対して,前回の手術瘢痕を含めた広範切除は推奨されるか
 Clinical Question20 切除不能進行・再発悪性軟部腫瘍に対して,薬物療法の実施は推奨されるか.その場合,一次治療としてdoxorubicin単剤は推奨されるか
 Clinical Question21 切除困難な悪性軟部腫瘍に対して,粒子線治療は推奨されるか
 Clinical Question22 広範切除可能な高齢者悪性軟部腫瘍患者に対して,辺縁切除+放射線照射は推奨されるか
索引

改訂第3版の序

 2012年に『軟部腫瘍診療ガイドライン』第2版が刊行されて以来、軟部腫瘍の診療においては、新たな薬剤の登場、種々の臨床試験の結果の公表など、診療の現場に大きな影響を与える様々な出来事が生じた。このような状況を受け、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会を作成主体として軟部腫瘍診療ガイドライン策定委員会が設けられ、改訂第3版の作成が開始された。
 改訂にあたり、軟部腫瘍診療の第一線で活躍する整形外科専門医のなかから、策定委員およびシステマティックレビュー委員をできるだけ地域などに偏りがないよう日本整形外科学会・骨軟部腫瘍委員会で選出した。また、前版までは整形外科医のみが策定に関与したが、軟部腫瘍診療における集学的アプローチの重要性を鑑み、腫瘍内科、小児科、放射線科、病理科のスペシャリストの先生方にも新たに策定委員会・システマティックレビューチームに加わっていただき、多角的な議論・検討が可能なメンバー(策定委員会17名、システマティックレビューチーム52名)からなる執筆体制を整えた。
 実際の策定は、『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』および『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』に準拠して行った。軟部腫瘍の疫学、組織分類、確立した治療法など、いわゆるBackground Questionは「疾患トピックの基本的特徴」としてまとめて解説した。軟部腫瘍の診療において、患者と医療者が行う意思決定の重要ポイントのなかから、患者アウトカムへの影響が大きいと考えられる重要臨床課題を選び、22のClinical Question(CQ)を選定した。すべてのCQにおいて新たに推奨と解説文を作成し、委員全員で議論を繰り返し行った。策定の方法から内容まで、まったく新たなガイドラインを作成するのと同等な非常に多くの労力を割いていただいた策定委員会、システマティックレビューチームの方々に心より感謝を申し上げたい。
 悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は発生部位も病理組織も多岐にわたる典型的な希少がんである。その診療は、十分な知識と経験を有する集学的診療チーム(multidisciplinary team:MDT)によって行われるべきであり、このガイドラインに則った治療といえども、決して非専門医による安易な診療を推奨するものではない。悪性軟部腫瘍の可能性が疑われるときには専門医へのコンサルトを行うことが強く推奨される。日本整形外科学会の「骨・軟部腫瘍相談コーナー」(https://www.joa.or.jp/jp/public/bone/index.html)、あるいは、国立がん研究センターがん情報サービスの「四肢軟部肉腫情報公開専門病院」(https://hospdb.ganjoho.jp/rare/#top)などを参考にしていただきたい。
 本ガイドラインが、整形外科医のみならず、軟部腫瘍の診療にかかわる様々な分野・領域すべてのメディカルスタッフの意思決定に役立ち、わが国の軟部腫瘍診療の向上につながれば、これ以上の喜びはない。本ガイドラインが軟部腫瘍診療の“生きた指針”として広く活用されることを望んでやまない。

2020年7月
日本整形外科学会
軟部腫瘍診療ガイドライン策定委員会
委員長 川井章

 本書は,初版が2005年4月に,第2版が2012年1月に発刊され,今回の改訂は8年ぶりに大幅に行われた.第3版の特徴は,まず,策定委員会の構成および策定作業のプロセスが,前版と比較して大きく変更されたことである.策定委員会の構成は,前版までは軟部腫瘍診療の第一線で活躍されている整形外科専門医のみで構成されていたが,本改訂から整形外科のみならず,腫瘍内科,小児科,放射線科,病理科の軟部腫瘍に精通した各専門領域の専門医も参画しており,軟部腫瘍の診療における集学的アプローチの見地から,推奨文の策定過程で多角的かつ客観的な議論がなされたものと考える.また,改訂作業のプロセスにおいては,前版と異なり,「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」および「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準拠して改訂作業が行われており,これは近年策定された他診療領域の診療ガイドラインと同じ策定手続きであり,本邦におけるガイドライン策定過程の統一化および客観性を担保するうえで重要な変更点と考えられる.さらに,策定過程のシステマティックレビューにおいては,策定委員会とはまったく異なるメンバーから構成されるシステマティックレビューチームが,エビデンスの抽出と評価を行い,推奨文,エビデンスレベル決定の根拠となるシステマティックレビューの客観性,透明性が担保されており,前版とは大きく異なっている.<br>  第3版の記載内容は,策定作業のプロセス変更の影響もあり,前版までと多くの点で違いが認められる.まず,第2版では,45のクリニカルクエスチョンが選定され,分類,疫学などの12章から構成されていた.一方,第3版では,疫学,分類,診断,治療,予後などの項目は,バックグラウンドクエスチョン(背景疑問)とし,「疾患トピックスの基本的特徴」として,クリニカルクエスチョンとは分けて記載がなされている.これは,軟部腫瘍の基本的知識として,軟部腫瘍の診療を専門としない医師にとっても有用な情報であると考えられる.第3版では22のクリニカルクエスチョンが選定されており,いずれのクリニカルクエスチョンも,実際の軟部腫瘍診療において直面する具体的な臨床上の疑問であり,重要な事項であると考えられる.各クリニカルクエスチョンに対する推奨には,推奨文,推奨度,合意率,エビデンスの強さが明記されており,非常にわかりやすい.ただし,第3版以降に保険収載された分子標的薬や遺伝子パネル検査に関しては,現時点でエビデンスの集積が不十分であるためか,解説への記載のみにとどまっている.フューチャーリサーチクエスチョンとして今後のエビデンス集積がなされ,次回改訂時にクリニカルクエスチョンとして選定されることを期待したい.また,第3版では,推奨の策定にあたって,医学的見地からの益と害のバランスのみならず,患者の価値観や希望,負担,コストや医療資源の利用の観点も加味されており,これらの観点は推奨文に対する解説のなかに記載されていることも新たな改訂部分である.<br>  以上のように,第3版ではさまざまな改訂がなされている.ただし,悪性軟部腫瘍は希少がんであるため,前版までと同様に,ほとんどのクリニカルクエスチョンにおいて,エビデンスの強さは弱い(C)または非常に弱い(D)であるため,推奨文のみを参考にして診療の意思決定を行うことには注意が必要であり,推奨文に対する解説の内容も十分に理解して意思決定を行うべきであると考える.また,希少がんである悪性軟部腫瘍の診療には,十分な経験と多診療科による集学的アプローチが不可欠であり,本ガイドラインが独り歩きするようなことが決してあってはならず,悪性軟部腫瘍を疑う際は,軟部腫瘍に精通した医師,診療施設にコンサルトするべきであることは申し上げておきたい.<br>  最後に,本改訂作業にあたり,策定委員会およびシステマティックレビューチームの先生方および関係者の方々は,膨大な時間と労力を傾けられており,心より敬意を表したい.<br> <br> 臨床雑誌整形外科72巻5号(2021年5月号)より転載 評者●神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域教授/神戸大学医学部附属病院整形外科  秋末敏宏