書籍

ここが知りたかった緩和ケア改訂第2版

: 余宮きのみ
ISBN : 978-4-524-22528-6
発行年月 : 2019年6月
判型 : A5
ページ数 : 324

在庫あり

定価3,190円(本体2,900円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

緩和ケアの定番書がついに改訂!緩和医療の現場、どこにも書かれていなくて困っていた薬剤の使い方やケアのコツを、各項目冒頭の「概念図」でつかみ、その場で教えてもらっているようなわかりやすい解説がセットの構成で大好評。増補版刊行後に新たに登場したオピオイドや便秘治療薬に関する情報を盛り込み、さらに臨床に役立つ内容となった。

I 疼痛治療
 A アセスメント
  1 痛みのスケールの使いこなし法
  2 痛みのスケールだけじゃない,便利なツール
 B 非オピオイドと鎮痛薬
  3 疼痛治療では腎障害をチェック!
  4 NSAIDsを使用する前に消化性潰瘍のリスクを考える
  5 アセトアミノフェンを活用する
 C オピオイド
  6 オピオイドをうまく使い分けるには
  7 経口オピオイドの導入
  8 オピオイド注射の導入と増量間隔
  9 フェンタニル貼付剤投与中の患者で急に強い苦痛が出たら
  10 フェンタニル貼付剤の1日製剤と3日製剤,どのように使うか
  11 オピオイドスイッチング:換算比は万能ではない
  12 オピオイドの非経口投与への変更
  13 オピオイド投与中に腎障害が悪化したとき
  14 肝代謝が低下している状態でオピオイドを使用するには
  15 レスキュー薬:説明が大事!
  16 レスキュー薬:剤形の選択と投与量の決定
  17 フェンタニル口腔粘膜吸収剤:適応患者をピックアップする
  18 フェンタニル口腔粘膜吸収剤:導入する
  19 フェンタニル口腔粘膜吸収剤:タイトレーションする
  20 フェンタニル口腔粘膜吸収剤:継続して使いこなす
  21 失敗しないメサドンの使い方
 D 鎮痛補助薬
  22 鎮痛補助薬を使用するタイミング
  23 鎮痛補助薬の選択方法
  24 鎮痛補助薬を使用するポイント
  25 どの鎮痛補助薬も無効というときのポイント
 E 鎮痛薬への抵抗解消
  26 疼痛治療の意義を考える
  27 オピオイドに抵抗があるとき
II 疼痛治療がうまくいかないとき
  28 痛みと眠気の組み合わせで解決の糸口をつかもう
  29 いま一度,痛みの原因を評価する
  30 「痛みがとれない」という中身をアセスメントする
  31 持続痛なのか突出痛なのか
  32 レスキュー薬の効果判定による対処方法
  33 夜間だけ痛みが増強する場合
  34 鎮痛薬の対象かどうかを見極めよう
  35 しびれを訴えたら脊椎転移を見逃さない
  36 病的骨折のリスクをどう評価するか
  37 骨転移による体動時痛への対応:薬に頼りすぎない対応
  38 悪性腸腰筋症候群を見逃さない
  39 ステロイドパルス療法の出番
  40 どうしても痛みが和らがず苦痛が強いときどうするか
III 痛み以外の症状の緩和
 A 全身症状
  41 オピオイドの副作用と思ったらすべき3つのこと
  42 これで見逃さない,薬剤性錐体外路症状
  43 困ったときのステロイド
  44 ステロイドを開始するときの注意点
  45 ステロイドの具体的な投与方法
  46 見逃してはならないオンコロジーエマージェンシー:脊髄圧迫
  47 見逃してはならないオンコロジーエマージェンジー:高カルシウム血症
  48 終末期の輸液・栄養管理の考え方
  49 激しい苦痛のあるときの助け舟
 B 消化器症状
  50 悪心が緩和されないとき:原因を考え,原因治療を行う
  51 悪心が緩和されないとき:症状緩和を行う
  52 排便コントロールの重要性をもう一度
  53 新しい便秘治療薬を活かす
  54 オピオイド誘発性便秘治療薬−ナルデメジン−を使いこなす
  55 オピオイド投与中の患者で悪心や下痢:実は,便秘や宿便
  56 排便コントロールのポイント:予防とセルフケア
  57 腸閉塞時の治療方針:「食べたい」を叶えるために
  58 「食べたい」を叶える薬物療法
  59 必ず「舌を出してください」とお願いしよう
  60 悪性腹水による腹部膨満感
 C 呼吸器症状
  61 呼吸困難:評価と原因治療
  62 呼吸困難:症状緩和
 D 睡眠障害,精神症状
  63 眠気が強いとき,せん妄のときにすべきこと
  64 せん妄の薬物療法
  65 飲酒歴を問診しよう:アルコール離脱でせん妄が
  66 不眠時の問診
  67 注射剤で睡眠コントロールしているが,どうしても眠れないとき
IV 鎮静
  68 鎮静の基本
  69 鎮静の方法
  70 持続的深い鎮静前に確認しておく事項
  71 鎮静について家族へどのように説明したらよいか
V コミュニケーション
  72 最短の時間で最大の効果をあげるチューニング
  73 化学療法やる・やらない:患者の選択への援助
  74 コミュニケーションは質問力
  75 難しい質問には逆質問
  76 家族ケア
  77 チーム医療の“うまくいっているつもり”が危ない!
索引

改訂第2版 序文

 「書かれた医学は過去の医学である。目前で悩む患者のなかに明日の医学の教科書の中身がある」東京大学名誉教授の冲中重雄先生の言葉です。
 9年前、この言葉を知り、本書を執筆する決心をしました。
 実は今になって白状すると、出版当初は、こんなことを執筆してしまって“科学的エビデンスがない”とお叱りを受けるのではないかと恐れていました。科学的エビデンスのあることは当然行う、でも科学的エビデンスだけでは苦痛緩和は得られない。目の前の苦しんでいる患者さんの苦痛を今すぐに緩和する必要に迫られて、筆者が蓄積してきた知恵を執筆することこそが、身を挺して筆者に経験の機会をくれた患者さんとご家族への恩返しであると、勇気を奮って出版しました。
 そうしたところ、ありがたいことに全国各地の多くの医療者の方々が、“実用的”“臨床で本当に役立っている”などの感想をお寄せくださいました。本書を患者さんの幸せに役立ててくださった方々に心からの感謝を申し上げます。
 2011年の初版刊行後、新規薬剤などを補った「増補版」を2016年に刊行しましたが、ここ数年でさらに多くのことを患者さんを通して教えてもらいました。そこで、内容を刷新して第2版を刊行することとしました。
 第2版では、最近使用されるようになったヒドロモルフォンやメサドン、筆者が鎮痛補助薬として使用しているラコサミド、ミロガバリンやメマンチン、複数の新規便秘治療薬を加えて大幅に加筆修正しました。武器が増えたことの恩恵を患者さんの幸せに活かす手助けとなれば嬉しいです。
 加えて、高齢化によりポリファーマシーが問題となるなかで、常に薬物相互作用を念頭に置かないと、患者さんに予想外の害を与えてしまうことになります。そのため、各所に薬物相互作用について加筆しました。そのほか、患者さんから経験を積ませていただいた悪心・嘔吐、せん妄、不眠の薬物療法を全面的に改訂し、そのまま臨床で役立つ処方例に変更しました。
 今回、このような改訂を行うことができたのは、初版、増補版をご利用下さった多くの方々のお蔭と感謝の気持ちでいっぱいです。
 最後に、第2版刊行へ導いてくださった南江堂の杉浦伴子さん、一條尚人さん、また表紙絵を描いてくださった画家の柏木リエさんに深く感謝を申し上げます。
 本書が、続けて、苦しんいる方々のお役に立てることを心より祈っております。

2019年春
余宮きのみ

 2007年10月より岩手県立大船渡病院緩和ケアチームの活動を開始し、外科医であった私は身体症状担当医師として患者さんの苦痛の軽減に努めてきた。当院は岩手県のなかでも田舎にあり、PEACE PROJECTの研修会以外に緩和ケアを学ぶ機会もなく、本や文献をもとに主治医への提言を行っていた。しかし、有効な提言をすることができず、苦しむ患者さんを前に立ち尽くすこともあり、可能な限りさまざまな学会や研究会に参加し、解決するきっかけを求めていた。
 そうしたなか、2011年10月16日、東北労災病院の研修会で余宮先生から、「今度本を出したので、お役に立てれば」と、『ここが知りたかった緩和ケア』の初版をいただいた。
 東日本大震災後、心身ともに疲労していた私にとって、この本は診療を支える柱となった。なぜならば、科学的根拠と膨大な臨床経験をもとに「どうしたらこの患者さんの苦痛を一刻も早く和らげることができるのか」という視点に基づいて、患者さんに接してから薬剤を処方し効果を得るためのすべての過程(アセスメント、処方の工夫、説明、投与方法、吸収、代謝、排泄)と、実際の苦痛の緩和につなげるために重要な質問の方法、具体的な処方例にいたるまで記載され、医療者にとって(患者さんにとっても)、安心・安全を提供する内容であったからである。
 さらに、多忙な業務のなかで迅速に患者さんの苦痛をとるために、知りたいポイントだけをみてもその内容が理解できるように、一つの項目がほぼ5頁前後でつくられている。文章も簡潔にまとめられており、全体を理解しやすいように表を用いたり、使い慣れない薬剤でも安心して安全に使用できるよう注意点やコツを加えるなど、徹底して現場を意識した構成に使いやすさを感じた(本文中に挿入されているイラストも、緊張した臨床の現場において大切なポイントをわかりやすく、穏やかに伝えている)。
 また、緩和の難しい苦痛に対し、「解決の糸口は基本をさらに掘り下げたところにある」との記述のとおり、オピオイドをはじめ、従来使用されている薬剤でも、使用の工夫で対応可能だったことも経験した。例として、鎮静のための第一選択薬として用いられるミダゾラムを、難治性の症状緩和(疼痛、呼吸困難、悪心)において鎮静にいたらない少量を持続投与することで劇的な改善が得られることがあると、そのメカニズムを含め述べられていたことを参考に、実際に難治性の症状に苦しむ患者さんへ使用(オピオイドと併用)してみたところ、呼吸抑制や意識レベルの低下なく症状が改善し、オピオイドだけでは苦痛の軽減を図れなかった患者さんたちに穏やかな時間を過ごしていただくことができた。
 今回の改訂では、
・新たな武器としてのヒドロモルフォンとタペンタドールのメリットや、従来のオピオイドを含めた選択(薬物相互作用も含めて)。
・新たに使用されている鎮痛補助薬:ラコサミド、ミロガバリン、メマンチン。
・難治性疼痛に対して有効な手段であるが、副作用、半減期、代謝酵素の誘導など、使用するためにはコツが必要なメサドンの特殊性と対応をまとめて、add on方式を用いた安全、安心な導入の方法。
・服薬回数や腎機能低下時の副作用、耐性の問題などに対応する新規便秘薬。
などが加えられている。
 本書は、痛みなどの苦痛の軽減を求める患者さんと、多忙な業務のなかで対応する医療者の期待にさらに応える本であると感じている。

臨床雑誌内科125巻3号(2020年3月号)より転載
評者●岩手県立大船渡病院緩和医療科 科長 村上雅彦