経食道心エコー法マニュアル[Web動画付]改訂第6版
著 | : 渡橋和政 |
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ISBN | : 978-4-524-21086-2 |
発行年月 | : 2025年8月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 304 |
在庫
定価17,600円(本体16,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

経食道心エコー法(TEE)の基本から応用までを網羅し,30年以上にわたり愛読されて改訂を重ねてきた実践テキストの最新版.今改訂では『五輪書』に着想を得て構成を刷新し,トラブル対応や上達のコツも充実させ,上級者はもちろん初学者にもよりやさしい内容に.また,著者の歩みを振り返るとともに,今後を担う若手読者への提言も収載.付録動画も大幅に拡充し,1,800本以上の動画とその解説をWeb上で閲覧できる.
第T部 地の巻―TEEとは
第1章 TEEの特徴
A 手術室でのTEE
B ER,ICUにおけるTEE
C 循環器内科のTEE
第2章 TEEのセットアップと挿入手技
A 術中TEE
1 装置のセットアップ
2 プローブ挿入
B 覚醒時のTEE
1 挿入前の準備
2 挿入手順
C プローブの抜去
1 抜去前の最終確認
2 検査後
第3章 画像のオリエンテーションと基本画像
A 画像のオリエンテーション
1 走査面と画像のオリエンテーション
2 プローブ操作
B TEEの基本画像
1 基本20画像と実用的な流れ
2 ME 4Cからスタートする3つのルート
3 ME 4Cから走査面を回転して描出する画像
4 経胃画像から走査面を回転して描出する画像
第4章 モード,設定,アーチファクト
A Bモード≡視診
1 Bモード画像
2 パネル設定
3 アーチファクト
B カラードプラモード≡聴診(+視診)
1 カラードプラモード画像
2 パネル設定とpitfall
3 アーチファクト:ドプラモード
C Mモード
1 Mモード画像
2 カラーMモード
D パルスドプラモード(PWドプラモード)≡聴診
1 PWドプラモード画像
2 パネル設定
E 連続波ドプラモード(CWドプラモード)とドプラ計測
1 CWドプラモード画像
2 ドプラ計測
F xPlaneと3Dモード
1 xPlaneモード
2 3Dモード(full volume 3D mode)
3 live 3D mode
4 3DとxPlaneの使い分けと注意点
G ノイズ
1 電磁干渉
2 TEEと術野エコーの同時使用
3 心腔内エコー
4 壁吸引
第U部 水の巻―正常画像と体外循環
第1章 心筋組織
A 左心系と右心系
B 心室:左室と右室
1 機能解剖
2 左 室
3 右 室
4 左室機能評価
5 右室機能評価
C 心 房
1 左 房
2 肺静脈
3 右 房
第2章 弁 膜
A 弁膜の構造・機能と種類
B 大動脈弁
1 構造と役割
2 描出と血流
C 僧帽弁
1 構 造
2 描出と血流
D 三尖弁
1 構 造
2 描 出
第3章 大動脈
A 構造と描出の基本
B 上行大動脈
1 解剖の要点
2 描 出
C 胸部下行大動脈?弓部大動脈
1 解剖の要点
2 基本的な描出
D 弓部分枝
1 解剖の要点
2 描 出
E 腹部大動脈
1 解剖と描出
2 血流評価
F 腹部臓器の描出
1 肝,胆?
2 脾
3 腎
4 腸 管
第4章 右心系大血管
A 下大静脈
B 上大静脈
1 構造と描出の意義
2 上大静脈描出
3 左上大静脈遺残
C 肺動脈
1 構 造
2 描 出
第5章 冠血管
A 冠動脈
1 解 剖
2 右冠動脈の描出
3 左冠動脈の描出
B 冠静脈洞
第6章 心膜,胸膜
A 心 膜
B 胸 膜
第7章 異物のエコー所見
A 異物概論
1 対 象
2 エコー画像総論
B ガイドワイヤ
1 ガイドワイヤ描出の目的
2 ガイドワイヤの描出
C SGカテーテル
1 ガイドワイヤとカテーテルの描出
2 挿入中の描出法と所見
3 トラブルシューティング
第8章 体外循環とカニューレ類
A 送血管
1 上行大動脈
2 大腿動脈送血
3 弓部大動脈へのSeldinger法による挿入
B 脱血管
1 脱血管の種類とTEEの役割
2 挿入・留置時のガイドとトラブルシューティング
3 大腿静脈からの挿入
4 上大静脈脱血管
5 脱血不良
C 左室ベント・左房ベント
1 ベントの目的
2 カニューレの描出
3 トラブルシューティング
D 脳分離灌流
E 心筋保護
1 順行性心筋保護(ルートカニューレ)
2 選択的心筋保護
3 逆行性心筋保護
第9章 補助循環
A 循環補助
B IABP
1 カテーテルとTEE画像
2 カテーテル留置時
3 トラブルシューティング
C VA ECMO(PCPS)
1 脱血管挿入
2 送血管挿入
3 送血の合併症
4 脱血不良
D Impella
1 デバイス
2 留置のガイド
第10章 心内遺残空気
A 実状と課題
B 空気の種類とTEE画像,空気塞栓
1 空気のTEE所見
2 空気塞栓とTEE画像
3 空気の挙動とTEE所見
C 空気除去とpitfall
1 空気除去の鉄則とタイミングについて
2 心拍動再開前(static phase)
3 心拍動再開後(dynamic phase)
4 空気除去のゴール
5 炭酸ガス吹奏法
第11章 臓器灌流の管理
A 臓器灌流総論
B 脳灌流障害
1 TEE
2 体表エコー
3 眼球ドプラ
4 近赤外線分光法(NIRS)
C 腸 管
1 TEE
2 体表エコー
3 視診とICG造影
4 組織内酸素飽和度
D 腹腔動脈
E 腎動脈
F 下 肢
第V部 火の巻―病態と治療
第1章 心筋虚血
A 心筋虚血とエコー評価
1 TEEが必要となる状況
2 心筋虚血のエコー評価
3 部位診断
B 冠動脈バイパス術
1 吻合前の評価
2 吻合中の評価
3 吻合後のグラフト評価
C 急性心筋梗塞
1 急性心筋梗塞の病態とTEE所見
2 外科的合併症
D 陳旧性心筋梗塞
1 病 態
2 エコー所見
第2章 弁膜疾患
A 弁膜症
B 僧帽弁狭窄
1 病 態
2 TEE所見
3 人工弁と僧帽弁置換術
4 体外循環離脱後の人工弁評価
5 慢性期のトラブル
6 PTMC
7 心房細動と心房内血栓
8 心房細動手術
C 大動脈弁狭窄
1 病態とTEE所見,重症度評価
2 大動脈弁置換術
3 TAVR
D 僧帽弁逆流
1 病態,TEE画像と機序
2 形成のためのTEE評価
3 形成の術中評価
E 大動脈弁逆流
1 病 態
2 逆流の機序とTEE所見
3 逆流の形態と治療法
F 三尖弁逆流
1 病態,原因とTEE所見
2 治療とTEE評価
G 感染性心内膜炎
1 病 態
2 エコー所見
3 体内植え込みデバイスへの感染
第3章 先天性心疾患
A 卵円孔開存
1 病 態
2 TEE所見
B 心房中隔欠損症
1 病態とTEE所見
2 術中のルーチンワーク
3 Amplatzer septal occluder
C 心室中隔欠損症
1 病態とTEE所見
2 ルーチンワーク
D 房室中隔欠損症
E 動脈管開存症
1 病態とTEE所見
2 ルーチンワーク
第4章 心筋疾患・心膜疾患
A 閉塞性肥大型心筋症
B mid-ventricular stenosis
C 拡張型心筋症
D 心?液貯留,心タンポナーデ
1 心?液貯留
2 心タンポナーデ
3 術後心?内出血
4 慢性心?液貯留
E 収縮性心外膜炎
1 病 態
2 エコー所見
3 術中TEEの役割
第5章 大動脈解離
A 病態と合併症
1 大動脈解離の概念
2 病型分類と合併症
B 解離の基本的なTEE評価
1 エントリーと真腔・偽腔
2 エントリー
C 破裂のTEE評価
1 心タンポナーデ
2 胸腔内出血,縦隔内出血
D 灌流障害のTEE評価
1 灌流障害総論
2 冠動脈の灌流障害
3 脳灌流障害
4 腹部内臓分枝の灌流障害
E 大動脈弁逆流
1 病態と機序
2 治療方針
F 術中に新たに起こりうるイベント
1 送血で起こる新たな解離
2 偽腔送血
G 体表からの解離の診断
1 血圧低下,ショック
2 意識障害,神経症状
3 背部痛
4 腹 痛
H 解離に対するステントグラフト治療
1 ガイドワイヤのガイド
2 ステントグラフト留置後の偽腔
第6章 大動脈瘤と他の大動脈病変
A 大動脈壁の粥状硬化
1 粥 腫
2 潰瘍と石灰化
B 分枝動脈の病変
C 大動脈瘤
1 病態とTEE評価
2 開胸手術におけるTEEの役割
D open stent grafting
1 概 略
2 TEEガイドでの留置手順
3 再灌流後の評価
E TEVAR
1 概 略
2 挿入前の評価とガイド
3 挿入中
4 挿入後
5 脊髄虚血
F 外傷性大血管損傷
G 大動脈基部病変
1 病態とTEE所見
2 治 療
H 大動脈閉塞
I 大動脈炎(高安動脈炎)
第7章 腫瘍性疾患
A 心臓の良性腫瘍
1 左房粘液腫
2 乳頭状線維弾性腫
B 心臓大血管の悪性腫瘍
1 平滑筋肉腫
2 悪性リンパ腫
3 肺動脈腫瘍
C 腎腫瘍の下大静脈内進展
D 肺癌と縦隔腫瘍
1 肺 癌
2 縦隔腫瘍
第8章 その他
A 急性肺塞栓
B 慢性肺塞栓
C 縦隔洞炎
D 胸腔内液貯留と無気肺
1 体表エコー,TEEによる描出
2 治療のガイドと評価
E 心停止におけるTEE
1 CPR-TEE総論
2 focus TEE(原因検索)
3 navigation TEE
4 secure TEE
F 多発外傷
1 腎損傷
2 大動脈閉塞バルン
G ショック時のTEE評価
1 総 論
2 原因の見分け方と対処
第W部 風の巻―TEEの習熟
第1章 上達へのステップ
A 知 識
B プローブ操作
C 戦略と応用力
第2章 TEEの立ち位置
A ガイドライン
B TEEは目的ではない
1 全体の進行を常に考える
2 管制塔であること
C 「観る」と「見る」の違い
第3章 食道・胃損傷を防ぐ
A 現 状
B 対策の基本方針
C 損傷のメカニズム
D 部位別の対処法
1 咽頭?頸部食道
2 胸部食道
3 横隔膜周辺
4 胃 内
E 食道の拡大
F その後の経過とまとめ
第4章 効率性
1 障害物を避ける
2 経鼻胃管
3 ハンドルをin my handに
第X部 空の巻―未来を創る
第1章 TEEの歴史を振り返る
A TEE前夜
B MモードTEEの登場
C 2D TEEの開発
D カラードプラモードの開発
第2章 心臓血管外科の課題解決
A 心内遺残空気
1 Mモード
2 Bモード
3 定量評価
4 空気除去
5 気泡の大きさ
B 留学中のその他の工夫
C 脳虚血への対策
1 NIRS
2 眼球ドプラ
3 TEEによる弓部分枝の描出
D 腸管虚血への挑戦
1 エコー診断
2 NIRS
E open stent graftingと対麻痺
1 グラフト挿入
2 留置の高さ
3 対麻痺対策
F 心房細動手術の開発
第3章 今後に向けて:研究とイノベーション
A 時間軸
B 気付くための方策
C 目の前の「雲」を取り除くのに役立つキー
1 「繋ぐ」
2 道理という視点で「観る」「仕分ける」
3 求める気持ち
4 フットワーク
5 こまめに書いて発表する
索 引
Column
■手術中にプローブが抜けたとき
■いわゆるblind zone
■STC(sensitivity time control)
■false tendon
■肺実質内の動静脈の描出
■心筋内血流
■なぜ溶血する?
■PTMCの不思議な縁
■下行大動脈の見え方
■プローブのbuckling
■Frazin先生との不思議な縁
初版を1993 年に上梓した後も本書に盛り込みたい内容が増え続け,幸い多くの方に好評をいただくという追い風を受けながら版を重ね,2019 年に第5 版を上梓した.これで締めくくりにしようかと思っていたが,定年を迎えた2023 年から麻酔科特任教授として若手にTEE を指導する機会をいただき,その中で数多くの気づき,新たな経験があり,それらもぜひ皆さんに伝えたいと思い,南江堂さんからの勧めもあって改訂に踏み切った.筆者はこれまで自らの精進を目指して走り続けてきたが,人生100 年の2/3 の地点に達し,大きく舵を切ろうと,今回の改訂では「継承」と「さらなる進化」をコンセプトとし,宮本武蔵の『五輪書』に倣って五部構成とした.筆者がメスとエコーの二刀流でずっとやってきたことに加え,この書が剣の技法にとどまらず心の持ちようや考え方にもふれているからである.
しかし,第5 版の「書籍+動画」という形では十分な継承は困難なため,新たに「書籍+Web ページ」というスタイルを導入した.書籍では基本的事項を簡潔にまとめ,各項目からWeb ページにリンクして解説と動画を見ていただく形である.解説には画像に説明を加えて内容が一目でわかるカタログ的な役割を与えるとともに,CT や術野の所見も可能なかぎり載せて両者との紐付けを図った.35 年分のデータから新たに掘り起こした素材も加え,動画は1,800 点以上となり,解説は書籍6冊分の文字数に加えて1,400 点近い図となった.書籍という目録を通じて,広大なTEE ワールドに足を踏み入れ,存分に見て回ってほしい.
しかし,筆者自身は今もなお道半ばと感じており,皆さんにはぜひ本書を踏み台として筆者がたどり着けなかったさらなる高みを目指してほしいと願っている.本書が少しでもその役に立てばと思い,筆者が何をどのように考えながら道を切り開いてきたかということも本書に含めた.「さらなる進化」を加えたのには,2つの理由がある.1 つは,近年は「VUCA」と言われるとおり,正解が存在しない多様性,混沌の中で判断を下していかなければならない時代になったことである.つまり,いくら学んでも十分ではないため,学びのステージはさっさと通過し,「考える」ことにより多くの時間とエフォートを当てなければならない.第T〜V部は前者に,第W,X部は後者に役立ててほしい.もう1 つは,これまでEvidence-based medicine が重要とされてきたが,それ単独では限界に近づいていると感じるからである.EBM は医療水準が一定レベルに達するまでは大きな役割を果たしてきたが,手術死亡が5%以下という段階に至った今,次の目標は患者さんが真に望む死亡0%という状況である.しかし,この目的のためには統計学的な確率論では限界がある.この段階で必要となるのは,「個」をしっかり見て0か1かの確かな判断を重ねていく個別化戦略である.筆者は手術件数が年100 例を超える施設での勤務経験がなかったが,その分患者さん一人ひとりに向き合いながら課題解決に取り組んできた.今回の改訂で1990 年代のデータも掘り起こしていく際に,患者さんの顔や表情,口調までも思い出したのは,そのためかもしれない.それほど「個」に向き合ってきた筆者からのメッセージが少しでも役に立てばと願っている.武蔵は霊巌洞で『五輪書』を書き下ろしほどなく亡くなったが,筆者はTEE の「五輪の書」を上梓後も,100 歳までの33 年をさらなる進化へのお手伝いに当てたいと思っており,本書はその第一歩となる.
末筆ながら,本書は留学の機会をいただいた丘ヤス先生,松浦雄一郎先生,盛生倫夫先生に捧げたい.また,本書の作成にあたり貴重な経験をさせていただいた心臓血管外科,麻酔科の先生方,たいへんな製作作業をしていただいた南江堂の皆様にこの場を借りて深謝したい.
2025 年6 月
渡橋 和政

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