書籍

MASLD診療ガイドライン2026改訂第3版

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患

編集 : 日本消化器病学会・日本肝臓学会
ISBN : 978-4-524-27332-4
発行年月 : 2026年4月
判型 : B5判
ページ数 : 148

在庫あり

定価3,850円(本体3,500円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本消化器病学会・日本肝臓学会の共編による診療ガイドライン.NAFLD/NASHの疾患名称がMASLD/MASHに変更されたことに伴い,大幅改訂を行った.今版でも Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて記載.CQではエビデンスレベルと推奨の強さを提示し, MASLD診療における,疫学,病態,診断,治療,フォローアップ等について,エビデンスに基づき現時点の標準的な指針を示した.

概念・定義
第1章 疫学・自然経過
 BQ1-1 MASLDの有病率は?
 BQ1-2 MASLDにおいて肝臓関連のイベントリスクは増加するか?
 BQ1-3 MASLDにおいて肝臓関連以外のイベントリスクは増加するか?
 FRQ1-1 MetALDとMASLDの臨床イベントのリスクに違いがあるか?
 FRQ1-2 MetALDのアルコール摂取量の基準における課題は?
第2章 病態
 BQ2-1 アルコールはMASLDの病態に影響するか?
 FRQ2-1 遺伝的要因はMASLDの発症・進展に影響するか?
 FRQ2-2 MASLDにおける肝細胞障害で想定される機序は?
 FRQ2-3 腸内細菌叢の変化はMASLDの病態に影響するか?
 FRQ2-4 肝臓以外の臓器がMASLDの病態に影響するか?
 FRQ2-5 MASLDからの肝発癌で想定される機序は?
 FRQ2-6 肝内微小環境はMASLDの病態形成にどのように影響するか?
第3章 併存疾患
 BQ3-1 MASLDと2型糖尿病の関係は?
 BQ3-2 MASLDと肥満の関係は?
 BQ3-3 MASLDと脂質異常症の関係は?
 BQ3-4 MASLDと高血圧の関係は?
 BQ3-5 MASLDと睡眠時無呼吸症候群,内分泌異常,高尿酸血症は関連するか?
 BQ3-6 MASLDと慢性腎障害は関連するか?
 BQ3-7 MASLDは肝臓以外の悪性腫瘍の発生リスクと関連するか?
 FRQ3-1 MASLDの肝病態は心血管疾患および脳血管疾患発症リスクと関連するか?
 FRQ3-2 MASLDの診断基準に含まれる心代謝系危険因子は,日本人でどれくらいの心血管系イベントリスクになるか?
第4章 診断
 (1)侵襲的検査
  BQ4-1 MASLDの診断に肝生検は必須か?
 (2)非侵襲的検査
  CQ4-1 MASLDの線維化や炎症の診断や評価にはバイオマーカーやスコアリングシステムは有用か?
  CQ4-2 非侵襲的脂肪化診断法は脂肪性肝疾患の診断に有用か?
  CQ4-3 脂肪定量は肝臓の病態進展の予測に有用か?
  CQ4-4 MASLDの線維化診断に超音波エラストグラフィは有用か?
  CQ4-5 MASLDの線維化診断にMRエラストグラフィは有用か?
  FRQ4-1 肝硬度に複数の要因を組み合わせたコンビネーションスコアはMASLD診療に有用か?
 (3)コンサルテーション基準
  BQ4-2 MASLD患者の消化器科へのコンサルテーション基準は?
 (4)その他
  FRQ4-2 MASLD診断にAIは有用か?
第5章 フォローアップ
 FRQ5-1 MASLDを背景とした肝硬変・肝癌の適切なスクリーニング方法は?
 FRQ5-2 MASLDの心血管疾患および脳血管疾患スクリーニング法と専門医へのコンサルテーション基準は?
 FRQ5-3 MASLDの肝臓以外の悪性疾患のスクリーニングは必要か?
 FRQ5-4 MASLDにおける医療経済的視点から見た介入の方法は?
第6章 治療
 (1)生活習慣指導
  BQ6-1 MASLDにおける食事療法の位置づけは?
  BQ6-2 MASLDにおける運動療法の位置づけは?
  BQ6-3 MASLDには何%の体重減少が有用か?
  FRQ6-1 行動療法はMASLDに有用か?
  FRQ6-2 MASLDに対する肝臓リハビリテーションの展望は?
 (2)薬物療法
  BQ6-4 肝庇護薬はMASLDに有用か?
  CQ6-1 GLP-1受容体作動薬はMASLDに有用か?
  CQ6-2 GIP/GLP-1受容体作動薬はMASLDに有用か?
  CQ6-3 SGLT2阻害薬はMASLDに有用か?
  CQ6-4 ピオグリタゾンはMASLDに有用か?
  CQ6-5 脂質代謝改善薬はMASLDに有用か?
  CQ6-6 ビタミンEはMASLDに有用か?
  FRQ6-3 その他の糖尿病治療薬はMASLDに有用か?
  FRQ6-4 レスメチロムはMASLDに有用か?
  FRQ6-5 将来MASLD治療で期待される薬剤は何か?
  FRQ6-6 MASLD治療のエンドポイントにおける課題は?
 (3)外科的治療
  BQ6-5 減量・代謝改善手術は,MASLDに有用か?
  BQ6-6 MASLD由来の非代償性肝硬変に対する肝移植の特徴は?
 (4)その他
  FRQ6-7 コーヒーはMASLDに有用か?
  FRQ6-8 プロバイオティクスはMASLDに有用か?

一般財団法人日本消化器病学会は2005 年に第8 代理事長である跡見裕先生の発議によって,消化器疾患の診療ガイドラインを作成することを決定しました.クリニカルクエスチョン(Clinical Question:CQ)を設定して,文献の検索範囲と採用基準を明確にし,エビデンスレベルを評価したうえで,推奨グレードを決定することにしました.Evidence-Based-Medicine(EBM)の手法に基づいた当時では先進的なガイドラインです.また,利益相反(Conflict ofInterest:COI)を重視し,EBM専門家の提案した基準に従って,ガイドライン作成に関わる委員全員のCOIを公開することにしました.第9代理事長である菅野健太郎先生のリーダーシップのもとに,学会をあげた事業として取り組みが継続し,2009〜2011年に胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,クローン病,肝硬変,胆石症,慢性膵炎の診療ガイドラインが上梓されました.これら第一次ガイドラインの発刊は,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示した事業として,高く評価されます.また,2014年には機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の診療ガイドラインも刊行しました.一方,第一次ガイドラインは発表後約5年が経過することから,並行してその改訂作業も開始しました.その際,国際的に主流となったGRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Developmentand Evaluation)システムを採用しています.これら改訂版は2015〜2016年に刊行されました.また,2017年には日本消化器病学会の関連研究会が慢性便秘症の診療ガイドラインを発刊しました.
計11種類となったガイドラインは臨床の現場で標準的な診療指針として活用されていましたが,どの領域でも医学・医療の進歩は目覚ましく,徐々に専門医による最先端の診療とは乖離が広がります.そこで,第10代理事長である下瀬川徹先生は2017年に,ガイドラインを原則5年ごとに改訂することを決定しました.各ガイドラインのCQは20〜30程度に絞り,結論が明らかである基礎的知識,総論はBackground Question(BQ),今後の研究課題はFutureResearch Question(FRQ)とすることになりました.また,2018 年には肝硬変とNAFLD/NASHの両ガイドラインを一般社団法人日本肝臓学会と合同で編集することを決定しました.さらに,2020年には第11代理事長である小池和彦先生がCOIの規定を厳格化し,全ガイドラインの方向性を統括する委員会も設置しました.これらの過程を経て,2020〜2021年に慢性便秘症を除く10ガイドラインの改訂版が刊行されました.一方,慢性便秘症診療ガイドラインは,当学会も協力して,2023年に一般社団法人日本消化管学会が便通異常症診療ガイドライン(慢性便秘症・慢性下痢症)を刊行した際に,いったんその役割を同ガイドラインに譲る形となりました.
その後,2024年になって,日本消化器病学会は慢性便秘症を含む全11ガイドラインを再度改訂することを決定しました.今回の改訂では,各ガイドラインの作成委員長は公募制となり,同年5月8日から6月28日に公募を実施し,利益相反委員会の厳格な審査を経て,委員長,副委員長と委員が確定しました.各ガイドライン作成委員会は,それぞれが選定したSystematicReviews(SR)委員(作成協力者)の協力のもとに作業を進め,完成したガイドライン(案)は評価委員会の意見,会員のパブリックコメント,さらに協力学会等の外部評価をもとに加筆,修正を行いました.全ガイドラインが2026年4月〜2027年3月に,次々と刊行される予定です.COI管理は厳格で,作成の過程で委員長が交代したガイドラインもあります.社会から信頼され,臨床の現場では有用性の高いガイドラインを公表できると自負しています.
「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)―代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」は芥田憲夫委員長(虎の門病院),小木曽智美副委員長(東京女子医科大学)を中心に,計13名の作成委員が,19名の作成協力者の協力で作成し,竹井謙之委員長(社会医療法人寿楽会m・oクリニック),清家正隆副委員長(大分循環器病院)をはじめとする計5名の評価委員によって評価されました.多くの時間と労力を惜しまず,ガイドラインの改訂に携わった全ての先生に感謝申し上げます.また,ガイドライン改訂の方向性を検討いただいたガイドライン統括委員会担当理事の糸井隆夫先生(東京医科大学),副担当理事の磯本一先生(鳥取大学),委員長の渡辺純夫先生(順天堂大学),研究推進室を担当する副理事長として全体を統括していただいた竹山宣典先生(近畿大学)と江口晋先生(長崎大学),利益相反委員会を担当した理事である中尾一彦先生(長崎大学)と田中靖人先生(熊本大学)をはじめ多数の先生方のご高配なしには,このガイドラインの完成はなかったことも申し添えさせていただきます.さらに,合同で編集に携わっていただいた一般社団法人日本肝臓学会,とくにガイドライン統括委員会の委員長である四柳宏先生(国立健康危機管理研究機構),および丁寧なご支援をいただいた株式会社南江堂の皆様にも御礼を申し上げます.
脂肪性肝疾患は2023年に病名と分類法が改訂され,2024年には日本語病名を発表しました.このため第2版のガイドラインとは表題,内容ともに大きく変わっています.また,改訂版の英語による簡易版は,後日,「Journal of Gastroenterology」誌に掲載する予定です.最新のエビデンスを網羅した今回の改訂版が,わが国のみならず世界の消化器病の診療に寄与することを期待します.
2026年3月
日本消化器病学会理事長
持田 智


日本肝臓学会は2020 年,日本消化器病学会と合同で『NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020(改訂第2版)』を刊行しました.肝疾患の疾病構造がウイルス性から非ウイルス性へと大きく転換するなか,アルコール関連疾患と並んでNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)は,肝臓学会として取り組むべき重要な医療的・学術的課題でした.当時得られていた最新のエビデンスを集約し,質の高いガイドラインを作成できたことは,学会として大きな成果であったと考えています.
それから5年余りが経過し,この領域の診療・研究は著しい進歩を遂げました.同時に,肝疾患の疾病構造も加速度的に変化しています.日本肝臓学会では5年ごとに肝硬変の成因調査を行っていますが,2018年調査で約50%を占めていた非ウイルス性肝硬変は,2023年には約70%にまで増加しました.非アルコール性脂肪肝の頻度も約2倍に増えており,脂肪肝対策はまさに喫緊の課題となっています.
こうした状況のなか,2023年6月には従来のNAFLDに代わりMASLDという新たな病名を用いることが国際的に合意されました.日本肝臓学会もこの合意に賛同し,その後1年にわたり日本消化器病学会と協議を重ね,2024年8月に脂肪性肝疾患の新しい日本語病名を公表しました.今回の概念変更は,脂肪肝をSLD(脂肪性肝疾患)という一つの大きな疾患群として捉え直し,そのなかで心代謝系危険因子の有無,飲酒量,その他(薬物,ウイルス,遺伝子など)の要因に応じて疾患を細分類するものです.従来は明確に定義されていなかった“そこそこ飲む脂肪肝”についても,MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)として正式に位置づけられ,診療・研究の両面で扱うことが可能になりました.
このような疾患概念の刷新を受け,今回のガイドラインはタイトルも新たに『MASLD診療ガイドライン』として刊行する運びとなりました.この5年間で,線維化評価の要となる肝硬度測定法や肝脂肪化測定法は大きく進歩し,非侵襲的かつ定量的な評価が可能になっています.また,治療薬の開発にも新たな展開がみられます.2020年当時は,期待されていた複数の第V相試験が不成功に終わり,欧米ではNASHの治療薬開発は“graveyard”とまで評される厳しい状況でした.しかし,2024年には甲状腺ホルモン受容体β作動薬,2025年にはGLP-1受容体作動薬がそれぞれ第V相試験に成功し,前者は2025年3月に米国で初のMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)治療薬として承認されました.残念ながら日本はこの開発試験に参加していませんが,GLP-1系薬剤に関しては日本の診療に応用される日も近いと考えられます.
このような背景のもと,MASLDに関する最新のエビデンスを集約した本ガイドラインを皆様にお届けできることは,学会として大きな喜びです.本書が明日からの診療,そして研究の発展に寄与することを心より願っております.
2026年3月
日本肝臓学会理事長
竹原 徹郎

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