書籍

腎臓リハビリテーション診療ガイドライン改訂第2版

編集 : 日本腎臓リハビリテーション学会
ISBN : 978-4-524-27286-0
発行年月 : 2026年4月
判型 : A4判
ページ数 : 204

在庫あり

定価4,950円(本体4,500円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

腎臓リハビリテーションに関する国内初のガイドラインの改訂版.「総論」では腎臓リハビリテーションの目的・評価法・運動療法・栄養療法・看護の実施法などを,「各論」では疾患や病期における腎臓リハビリテーションの実際について解説.腎臓リハビリテーションに関わる全てのスタッフ必読の一冊.

〈Part1 総論〉
 �T.腎臓リハビリテーション総論
  1.ガイドライン作成の背景・目的・社会的意義
  2.包括的腎臓リハビリテーション(Comprehensive Renal Rehabilitation)
  3.保険適用・保険制度
  4.リハビリテーション継続のための社会支援
  5.精神・心理的支援
 �U.腎臓リハビリテーションに要する評価
  1.腎機能の評価
  2.運動耐容能の評価
  3.機能評価(筋力,バランス,ADL)
  4.サルコペニア・フレイル,悪液質の評価
  5.QOL評価
  6.疾病管理,行動変容の評価
  7.腎臓リハビリテーションに要する評価(認知機能,精神心理機能)
  8.社会参加の評価
 �V.慢性腎臓病患者への運動療法の実際
  1.運動療法の種類と実施方法
  2.保存期CKD患者の運動療法
  3.透析患者の運動療法(透析時間以外)
  4.透析患者の運動療法の標準プロトコール(透析中)
  5.腎移植患者の運動療法
 �W.慢性腎臓病患者への栄養療法の実際
  1.栄養療法の種類と実施方法
  2.保存期CKD患者の栄養療法(移植含む)
  3.透析患者の栄養療法
 �X.慢性腎臓病患者への看護の実際
  1.多職種による疾病管理とケアの実践
  2.保存期CKD患者の看護ケア(移植含む)
  3.透析患者の看護ケア
〈Part2 各論〉
 CQ1.保存期CKD患者において運動療法は推奨されるか?
 CQ2.血液透析患者において運動療法は推奨されるか?
 CQ3.腹膜透析患者において運動療法は推奨されるか?
 CQ4.腎移植患者において食事療法は推奨されるか?
 CQ5.腎移植患者において運動療法は推奨されるか?
 CQ6.慢性腎臓病患者において神経筋電気刺激療法は推奨されるか?
 CQ7.慢性腎臓病患者の身体活動量を増加するために活動量計を用いた指導・管理は推奨されるか?
 CQ8.保存期CKD患者の生活習慣に対して,看護職を含む医療専門職による包括的療養支援は推奨されるか?
 CQ9.血液透析患者の生活習慣に対して,看護職を含む医療専門職による包括的療養支援は推奨されるか?
 CQ10.保存期CKD患者において運動療法と食事・栄養療法の併用は推奨されるか?
 CQ11.透析患者において運動療法と食事・栄養療法の併用は推奨されるか?

腎臓リハビリテーションに関する世界初の学術団体でもある当学会が,世界で最初となる画期的な腎臓リハビリテーションの臨床ガイドラインを発表してから8 年が経過しようとしています.
慢性腎臓病( CKD)・透析患者の運動療法に対して,本学会が中心になって要求してきた診療報酬加算は出来高のリハビリテーション料・運動療法料でしたが,2016 年度からは進行した糖尿病性腎症に対する運動指導の評価として「 糖尿病透析予防指導管理料 腎不全期患者指導加算」 という形で一部実現し,腎臓リハビリテーションに対する世界初の診療報酬として認められました.この際,厚生労働省から医療の質の担保が求められ,本学会ホームページ上に「 保存期CKD 患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」 を示し,さらに,前「 腎臓リハビリテーションガイドライン」 の発刊につながりました.この影響もあってか,2018 年度の診療報酬改定では,「高度腎機能障害患者指導加算」 としてeGFR 45mL/min/1.73m2 未満まで対象が拡大され,さらに2022 年からは透析患者に対する「 透析時運動指導等加算」 が新たに加わり,その加算条件として当学会が行っているガイドライン講習会の受講が必要とされています.これらの成果は,前ガイドラインが高く評価されている証拠ともいえます.
しかし,前ガイドライン発刊後から,CKD/透析患者の運動療法のベネフィットを示すエビデンスは着実に積み上がってきています.その中には日本発のエビデンスも多く含まれるようにもなっています.時間はかかりましたが,そのようななかで新しい「 腎臓リハビリテーション診療ガイドライン」 を発刊することができることは大変に喜ばしく思っています.
腎臓リハビリテーションは「 腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ,症状を調整し,生命予後を改善し,心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラム」 です.つまり,運動介入だけでなく,文字通り多職種による協働作業により,患者の社会・家庭復帰をGoal としています.そのため,本ガイドラインでは医師のみならず,理学療法士,看護師や管理栄養士がその専門を活かしたCQ を設定しており,また,社会福祉や行動変容に関する総説も新設し,MSW や臨床心理士などの腎臓リハビリテーションでの活躍を期待する内容となっており,まさに多職種による協働がガイドラインとして結実したものとなっています.
本ガイドラインの作成にあたっては,2023年11月に腎臓リハビリテーションガイドライン作成委員会( 委員長 星野純一理事) を立ち上げ,エビデンスと利益相反( COI) に配慮した透明性の高いガイドラインにするべく,合計8 回の作成委員会会議を行い,広くパブリックコメントも求めました.執筆委員は,本学会役員だけでなく,腎臓病,透析,リハビリテーション,運動療法,看護,栄養療法などの専門家により構成されています.加えて,本ガイドラインの主たる利用対象には実地医家だけでなく,医師とともに診療に携わる看護師,理学療法士,作業療法士,栄養士,薬剤師などCKD 管理のためのチーム医療関係者も利用対象となるため,日本腎臓学会,日本透析医学会,日本リハビリテーション医学会,日本臨床腎移植学会,日本移植学会,日本腎不全看護学会,日本病態栄養学会,日本栄養士会,日本リハビリテーション栄養学会,日本循環器理学療法学会,日本腹膜透析学会,日本理学療法士協会,日本作業療法士協会にも外部査読をいただいています.
今後,本ガイドラインの作成過程で行われたメタアナリシスやシステマティックレビューは英文にて論文化し,また,本ガイドライン自体も全体あるいは一部を英文化して,世界に発信する予定ですし,また,作成過程で生じた新たな臨床的疑問は今後,学会として推進する研究の根本に据えていく予定です.このようなエビデンスを積み上げていくなかで,医療行政・政策にも働きかけ,腎臓リハビリテーションに勤しむ医療者や腎疾患患者の両者に資するような診療報酬加算を目指していきたいと考えています.
本ガイドラインが腎臓リハビリテーションに携わる多くの医療者に活用され,患者に還元されることを心より願っております.
2026 年2 月
日本腎臓リハビリテーション学会 理事長 柴垣 有吾

ガイドラインが創出する腎臓リハビリテーションの新たな知見―包括的CKDケアを目指して

 本書は,わが国が世界に先駆けて発信してきた腎臓リハビリテーションの理念・概念を,最新のエビデンスと多職種医療の実践に基づき再構築した,きわめて意義深い一冊である.2018年に発刊された初版では,慢性腎臓病(chronic kidnev disease:CKD)診療における「運動制限から運動療法へ」という大きな転換を明確に示し,保存期CKD患者や透析患者に対する運動療法の重要性を,臨床現場に浸透させるうえで大きな役割を果たした.とくに,透析を受けている末期腎不全患者を含む腎機能障害を有する患者に対して,身体活動を過度に制限するのではなく,適切な評価のもとで運動療法を導入するという考え方は,その後の診療報酬上の評価や腎臓リハビリテーション指導士制度の普及にもつながった.今版では,その初版の理念を継承しつつ,内容は大きく発展している.第一に,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠し,システマティックレビューとGRADEアプローチに基づいて推奨が作成されており,ガイドラインとしての透明性と信頼性が一段と高まった.第二に,保存期CKD,血液透析,腹膜透析,腎移植という各病期・治療段階に応じた運動療法の位置づけが整理され,臨床において腎臓リハビリテーションの適用が考えやすい構成となっている.保存期CKD患者に対する運動療法については,エビデンスの確実性にはなお限界があるものの,身体機能,運動耐容能,QOLの維持・改善を見据えた実践的な提案がなされている点が興味深い.さらに本改訂版の大きな特徴は,腎臓リハビリテーションを単なる運動療法に留めず,包括的プログラムとして明確に位置づけた点にある.看護職を含む医療専門職による包括的療養支援,栄養療法との併用,活動量計を用いた指導,神経筋電気刺激療法など,日常診療で直面する具体的課題がclinical questionとして取り上げられている.また,患者のQOL向上に重要な社会福祉,行動変容,精神・心理的支援にも焦点が当てられ,医師,看護師,理学療法士,管理栄養士,薬剤師,医療ソーシャルワーカー,臨床心理士などが協働して腎臓リハビリテーションを実践していく方向性を示している.
 一方で,本書は推奨の多くにおいてエビデンスの確実性が必ずしも高くないことについても率直に言及している.この点については,マイナスと捉えるべきではなく,今後わが国から質の高い臨床研究を発信していくための課題を明確にしたものと評価できる.CKD患者の高齢化,フレイル・サルコペニア,透析患者のADL低下,腎移植後の生活再建など,腎臓リハビリテーションが果たすべき役割は今後ますます大きくなることがあらためて示されている.
 本書は,腎臓専門医のみならず,透析医療,リハビリテーション,看護,栄養,地域連携に携わるすべての医療従事者にとって実践的な指針となることが期待される.初版が腎臓リハビリテーションの必要性を示したガイドラインであったとすれば,改訂第2版はそれを多職種協働による包括的CKDケアへと発展させたガイドラインである.透析患者を含むCKD患者の生命予後のみならず,身体機能,心理社会的側面,生活の質を支えるための必携書として高く評価したい.

臨床雑誌内科138巻4号(2026年10月号)より転載
評者●深水 圭(久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門 教授)

9784524272860