ナショナルチームドクター・トレーナーが書いた種目別スポーツ障害の診療改訂第2版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集主幹 | : 林光俊 |
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編集 | : 岩崎由純 |
ISBN | : 978-4-524-26916-7 |
発行年月 | : 2014年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 516 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
競技の種目特性に基づき、スポーツ外傷・障害の予防法から、評価、応急処置、治療、リハビリテーション、再発予防までをまとめた実際書。22種の競技について、医療現場(ドクター担当)とスポーツ現場(トレーナー担当)でそれぞれ目線を同じくしてペアで解説。専門外の競技への対応が学べるだけでなく、クロスエデュケーション、クロストレーニングにも役立つ。今改訂では競技特性をより明確に打ち出すことを主眼に構成の見直しを行った
I.種目別対処法
1.陸上競技
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a アキレス腱障害(腱症、腱周囲炎、腱付着部炎)
b 足底腱膜炎
c 脛骨疲労骨折
d 膝蓋腱障害
e 大腿部の肉ばなれ
トレーナー編
1 代表的傷害
a アキレス腱炎・腱周囲炎
b 足底腱膜炎
c 脛骨疲労骨折
d 膝蓋腱炎
e 大腿部の肉ばなれ
2.野球
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 投球動作と代表的傷害
a 肩インピンジメント症候群
b SLAP lesion
c 野球肘
d 肘内側側副靱帯損傷
e 手有鉤骨骨折
f 疲労骨折
トレーナー編
1 投球動作
2 代表的傷害
a 肩インピンジメント症候群
b SLAP lesion
c 野球肘
d 肘内側側副靱帯損傷
e 手有鉤骨骨折
f 疲労骨折
3.水泳
ドクター編
1 競技特性と傷害マップ
2 代表的傷害
a 腰背部傷害
1.筋・筋膜性腰痛など
2.腰椎分離症など
3.椎間板性腰痛
b 水泳肩
c 膝関節の傷害(平泳ぎ膝)
d 足関節捻挫
e 有痛性三角骨
f 上腕骨内・外上顆炎
トレーナー編
1 代表的傷害
a 腰背部傷害
b 水泳肩
c 膝関節の傷害(平泳ぎ膝)
d 足関節捻挫
e 有痛性三角骨
f 上腕骨内・外上顆炎
4.サッカー
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 下肢の肉ばなれ
b フットボーラーズアンクル
c 足関節靱帯損傷
d 膝前十字靱帯損傷
e 膝内側側副靱帯損傷
f Jones骨折
トレーナー編
1 代表的傷害
a 下肢の肉ばなれ
b フットボーラーズアンクル
c 足関節靱帯損傷(捻挫)
d 膝前十字靱帯損傷
e 膝内側側副靱帯損傷
f Jones骨折
5.バレーボール
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 足関節捻挫
b 腰痛症
1.筋膜性腰痛症
2.椎間関節の傷害
c ジャンパー膝
d 肩の傷害
1.バレーボール肩傷害
2.肩甲上神経障害
e 手指の傷害
1.手指関節捻挫(突き指)
2.マレットフィンガー(槌指)
トレーナー編
1 代表的傷害
a 足関節捻挫
b 腰痛症
c ジャンパー膝
d 肩の傷害(ルーズショルダー)
e 手指の傷害(手指関節捻挫)
6.バスケットボール
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 足関節靱帯損傷(捻挫)
b 膝前十字靱帯損傷
c 膝半月板損傷
d ジャンパー膝
e 腰椎椎間板ヘルニア
トレーナー編
1 代表的傷害
a 足関節靱帯損傷(捻挫)
b 膝前十字靱帯損傷
c 膝半月板損傷
d ジャンパー膝
e 腰痛(椎間板ヘルニア、腰椎分離症)
7.柔道
ドクター編
1 競技特性(特徴)・傷害マップ
2 代表的傷害
a 肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼
b 鎖骨骨折
c 膝内側側副靱帯損傷
d 下腿蜂窩織炎
トレーナー編
1 代表的傷害
a 肩関節脱臼
b 鎖骨骨折
c 膝内側側副靱帯損傷
d 下腿蜂窩織炎
8.ボクシング
ドクター編
1 競技特性
2 特有の傷害が多い理由と傷害マップ
3 代表的傷害
a 脳震盪
b 頭蓋内出血
c 眼窩壁骨折
d boxer's knuckle、boxer’s fracture
トレーナー編
1 代表的傷害
a 脳震盪
b 頭蓋内出血
c 眼窩壁骨折
d boxer's knuckle
9.バドミントン
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 肩関節腱板炎
b アキレス腱断裂
c 肘の痛み(尺骨神経障害)
トレーナー編
1 代表的傷害
a 肩関節腱板炎
b アキレス腱断裂
c 尺骨神経障害
10.テニス
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 腰部の傷害(腰椎分離症)
b 肩関節の傷害
c 肘・手関節の傷害
テニス肘
d 下腿肉ばなれ(テニスレッグ)
e 足関節靱帯損傷
トレーナー編
1 代表的傷害
a 腰部の傷害
b 肩関節の傷害
c 肘・手関節の傷害
d 下腿肉ばなれ(テニスレッグ)
e 足関節の傷害
11.ラグビー
ドクター編
1 競技特性・傷害マップ
2 代表的傷害
a 腰痛
b 肩甲帯部の外傷
c 頭部外傷
d 頚部損傷(頚椎捻挫・頚椎損傷)
e 大腿部の肉ばなれ
トレーナー編
1 代表的傷害
a 腰痛
b 肩甲帯部の外傷
c 頭部外傷
d 頚部損傷
e 大腿部の肉ばなれ
12.アメリカンフットボール
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 筋損傷(肉ばなれ)
b 足関節靱帯損傷
c 膝後十字靱帯損傷
d バーナー症候群
e 頭部外傷(脳振盪)
トレーナー編
1 代表的傷害
a 筋損傷(大腿四頭筋打撲)
b 足関節靱帯損傷
c 膝後十字靱帯損傷
d バーナー症候群
e 脳振盪
13.体操競技
ドクター編
1 競技特性・傷害マップ
2 代表的傷害
a 膝前十字靱帯損傷
b 手関節傷害(手関節炎)
c 肘関節脱臼
トレーナー編
1 代表的傷害
a 膝前十字靱帯損傷
b 手関節傷害
c 肘関節脱臼
14.スキー
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 膝の靱帯損傷
b 膝痛
c 腰痛
d 頚部痛
トレーナー編
1 代表的傷害
a 膝の靱帯損傷
b 膝痛
c 腰痛症
d 頚部痛
15.スケート
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 腰椎椎間板ヘルニア
b 膝伸展機構の障害
c 足関節捻挫と足関節不安定症
トレーナー編
1 代表的傷害
a 腰椎椎間板症
b 膝伸展機構の障害(膝蓋腱炎)
c 足関節捻挫と足関節不安定症
16.レスリング
ドクター編
1 競技特性と傷害マップ
2 代表的傷害
a 肩関節の外傷・傷害
b 膝関節の外傷
c 頭部・顔面の外傷・傷害
トレーナー編
1 代表的傷害
a 肩関節の外傷
b 膝関節の外傷
c 顔面の外傷
17.ウエイトリフティング
ドクター編
1 競技特性
2 外傷・障害マップ
3 代表的障害
a 腰痛
b 膝関節の障害
c 肩関節の障害
トレーナー編
1 代表的傷害
a 体幹の傷害
b 下肢の外傷・障害
c 上肢の外傷・障害
18.トライアスロン
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 熱中症
b 下肢(股、膝、下腿)の障害
c 腰背部の障害
トレーナー編
1 代表的傷害
a 熱中症
b 下肢(股、膝、下腿)の障害
c 腰背部の障害
19.剣道
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a アキレス腱断裂
b アキレス腱周囲炎・腱炎
c 腰痛
d 腓腹筋断裂
トレーナー編
1 代表的傷害
a アキレス腱炎、アキレス腱断裂、下腿三頭筋の外傷・障害
b 腰痛
20.ゴルフ
ドクター編
1 競技特性
2 傷害マップ
3 代表的傷害
a 腰痛
b 肩・肘の傷害
c 膝関節痛
トレーナー編
1 代表的傷害
a 腰痛症
b 肩・肘の傷害
c 膝関節の痛み
21.ハンドボール
ドクター編
1 競技特性・傷害マップ
2 代表的傷害
a 足関節捻挫
b 腰痛(腰痛症、脊椎分離症、腰椎椎間板ヘルニア)
c ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
トレーナー編
1 代表的傷害
a 足関節捻挫
b 腰痛(腰痛症、脊椎分離症、腰椎椎間板ヘルニア)
c ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
22.障害者スポーツ
ドクター編
1 競技特性・傷害マップ
2 代表的傷害
a 肩関節の傷害
1.インピンジメント症候群
2.肩関節脱臼・亜脱臼および反復性脱臼・亜脱臼
b 肘関節の傷害(上腕骨外上顆炎)
c 手関節部の傷害(腱鞘炎)
トレーナー編
1 代表的傷害
a 肩関節の傷害
1.インピンジメント症候群
2.腱板損傷
3.上腕二頭筋長頭筋腱の腱鞘炎
4.肩鎖関節損傷
b 肘関節の傷害(上腕骨外上顆炎)
c 手関節の傷害
1.手関節痛
2.腱鞘炎
II.スポーツ障害診療の基礎
1.スポーツ外傷・障害の診断
1 問診
2 診察
3 検査
4 診断
2.スポーツ外傷・障害の治療
1 急性期の治療
2 回復期の治療
3 トレーニング期の治療
3.スポーツ外傷・障害の応急処置
1 応急処置の判断の方法
a プレー中の事故、外傷に対するチェック
b 体調の変化(意識消失、突然の胸痛・頭痛、呼吸困難など)に対するチェック
2 応急処置の実際
a プレー中の事故、外傷に対する応急処置
b 体調の変化(意識消失、突然の胸痛・頭痛・呼吸困難など)に対する応急処置
4.リコンディショニングテクニック
A.概論
1 位置づけ
2 目的
3 連動
4 内容
5 意識
6 再開テスト
B.物理療法
1 損傷した組織の修復過程と物理療法の適用
C.フォームローラー
1 基本事項
a ストレッチポールの種類
b ストレッチポールを使用するためのプロトコル
2 現場での使用例
D.栄養とサプリメント
1 食環境の整備
2 日常のサプリメント
3 運動前・運動中・運動後のサプリメント
4 障害からの回復を早めるサプリメント
5.スポーツ装具
1 各種競技とスポーツ装具の規定
2 各部位別装具
6.アフターケア
A.ストレッチング
1 可動域増大のメカニズム
2 解剖学的構造の理解とストレッチング
3 疼痛抑制とクライオストレッチング
4 アクティブストレッチング
B.アイシング
1 アイシングによる効果と作用機序
2 アイシングの方法
3 アイシングの部位
4 RICE(S)処置(急性外傷の応急処置)
5 各種アイシング
6 運動前のアイシング
7 アイシングの注意点
8 冷却から温熱へ
9 季節による変化
C.セルフマッサージ
1 下肢のセルフマッサージ
2 上肢のセルフマッサージ
3 その他の部位のセルフマッサージ
D.スキンケア
1 皮膚と紫外線
2 日焼け予防
3 日焼け後のスキンケアの実際
7.国際大会に際しての準備
A.ドクターの立場から
1 事前のコーディネイト
2 競技現場におけるアレンジ
3 ドーピング・コントロール対策
B.トレーナーの立場から
1 遠征準備
2 帯同スタッフ
3 参加選手の把握
4 関係者への旅に関する情報提供
5 医学関係の備品
6 トレーナー専用用品
7 時差対策の確認・徹底
8 飛行機での移動中
9 時差ぼけ対策の手順
10 環境チェック
11 用具、装具、練習補助器具
12 内的要因
13 コンディショニング
14 傷害予防のコンディショニング
15 リセットの概念
16 予防
17 ストレングス&コンディショニング
索引
2007年に刊行された初版は、疾患別・関節別にスポーツ障害を記載する従来書の概念を打ち破り、種目別・部位別に記述することによって、選手へテーラーメイド治療が実施しやすいようにとの願いから企画された。
原案を構想したのは2000年シドニーオリンピック後のことで、2004年アテネオリンピックまでの各種帯同大会の内容を盛り込んで2007年の上梓に漕ぎ着けた。その後2008年北京、2012年ロンドンの2度のオリンピックを経て、時代のニーズに対応して内容の一新を図るべく、改訂の運びとなった。
今改訂では内容のアップデートとともに、紙面の「見やすさ、読みやすさ」の向上を特に重視した。
以下に改訂のポイントを示す。
・今回から2色刷りにして、それに合わせて図表の多くを新たに作り直した。特に、「マップ図」(競技種目ごとに代表的な障害・外傷の部位と発生頻度をまとめた図)については、選手のイラストを競技中の姿勢に合わせてすべて描き直し、障害の発生状況をよりわかりやすくした。
・「第I部種目別対処法」では、各種目のトップ2ページを見開きのレイアウトとして、この中に「競技特性の解説」と「マップ図」を配し、はじめに競技種目の概要を把握できるようにした。
・障害や外傷の状態を視覚的にも理解できるように、イラストや各種画像(X線、超音波、MRI、CT・三次元CT)を多数掲載して、障害部位とその範囲を矢印等で明示して解説した。
・書籍冒頭の「スポーツ障害部位別目次」は、初版では障害名と該当競技名のみを記載していたが、今改訂では掲載ページも付記し、「目次」としての機能を強化した。
本書が、スポーツドクター・トレーナーの方々がスポーツ現場においてメディカルサポートを行うにあたり、障害・外傷を負った選手の負担を少しでも軽減すべく、ひいては競技力向上の一助とならんことを願う次第です。
2020年東京オリンピックを目指して!
2014年4月吉日
編者を代表して
林光俊
2014FIFAワールドカップブラジル大会では、日本と世界の間に立ちはだかる壁の大きさを思い知らされた。世界水準、あるいはそれ以上に達していると思われたわが国のサッカーであったが、力の差は歴然としていた。今後、選手の育成・強化システムなどを含め、あらゆる面からの根本的な見直しが行われていくのであろう。しかし、スポーツ医学的な観点からすれば、サッカーはわが国においてもっとも先進的で、整備された医学サポートシステムを有しているスポーツ種目であるといえる。1977年には、日本サッカー協会にスポーツ医学委員会がいち早く設置され、現在では各都道府県の医学委員会やJリーグのチームドクター・トレーナーとの連携体制も構築されている。トップレベルの選手に対しては、「サッカーヘルスメイト」を用いた健康管理が行われており、国際的にも「The 11+」という傷害予防プログラムが考案されている。
しかし、このような医学サポートシステムが、すべてのスポーツ種目において確立しているわけではない。現状では、種目間での格差や温度差に小さからぬ開きがあり、東京オリンピックの開催を控え、その解消が課題となっている。
本書の編集主幹である林光俊先生は、長年にわたりバレーボール日本代表のチームドクターを務めてこられた。先生は、第一線の整形外科医が長期間チームに帯同することの困難さや、医療現場(ドクターが担当)とスポーツ現場(トレーナーが担当)の考え方や手法のギャップを身をもって経験されてきた。また、オリンピックなどの国際大会を通じて、スポーツ種目間における傷害への対処法の違いや、医学サポート体制の格差を実感されてきた。これらの経験を基にした林先生のご提案により、現在、日本整形外科スポーツ医学会に、「競技種目間連携部会」(仮称)を設置する動きがすすめられている。各種目の医療担当者が、情報交換・意見交換を行うことにより、種目別の医学的問題点が明らかになるとともに、格差が解消され、ひいてはわが国のスポーツ競技力向上にも寄与するものと期待される。
本書では、21のスポーツ種目と障害者スポーツについて、日本のナショナルチームのドクターとトレーナーが執筆を担当している。まず、ドクターがスポーツ種目の特性、傷害の病態、保存・手術を含めた治療の概要を解説し、それを受けてトレーナーが現場での評価・応急処置、リコンディショニング、再発予防などについて解説している。実際のスポーツの現場がそうであるように、ドクターとトレーナーが有機的に結びつくことにより、スポーツ傷害診療の全容と方向性がより明確に示されている。また本書は、先に述べたスポーツ種目間の医学的連携活動においても、よい参考資料あるいはテキストとして活用できるものと思われる。
トップアスリートがみせる最高レベルのパフォーマンスには、その競技の特性がもっともよく現れている。同時にそこには、その競技特有の、障害につながる問題点がクローズアップされているともいえるであろう。また、試合復帰への期待やプレッシャーも大きいことから、もっとも効率のよい復帰に向けたプロトコルやノウハウが確立されているともいえる。したがって、トップアスリートにおける傷害の病態や治療の実際からは、スポーツ愛好家などの一般アスリートや学生アスリートのスポーツ診療においても、応用できる点、参考となる点を多々見出すことができるものと思う。
本書が、わが国のあらゆるスポーツの現場における傷害予防・治療のために、そして2020年の東京オリンピックでの日本人選手の活躍のために大いに活用されることを期待したいと思う。
臨床雑誌整形外科65巻11号(2014年10月号)より転載
評者●札幌医科大学整形外科教授 山下敏彦