肺高血圧症診療マニュアル
根治を目指す最新の治療指針
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 伊藤浩/松原広己 |
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ISBN | : 978-4-524-26491-9 |
発行年月 | : 2012年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 204 |
在庫
定価5,500円(本体5,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
予後不良の難治性疾患とされている肺高血圧症の最新治療指針を、この領域の第一人者らが明快に解説。病態生理から身体所見のとり方、診断法のポイントや注意点、診療指針と実際の治療法を、具体的かつ明確にまとめ、臨床現場でプラクティカルに役立つ内容とした。特に、薬物療法では、どの薬剤から使用すべきか、効果が上がらない場合の薬剤切替はどのようにするのか、併用療法はいかに行うかについて具体的に解説。実臨床における治療指針となる一冊。
I 肺高血圧症の病態生理を理解する
1.肺高血圧症の分類(ダナポイントの肺高血圧症臨床分類)
2.肺高血圧症の病態生理
3.肺高血圧症の病理像
4.肺高血圧症の自然歴と治療介入後の予後
II 肺高血圧症を診断する
1.肺高血圧症の診察法(身体所見のとり方)
2.肺高血圧症の診断のポイントと注意点
A.診断フローチャートと重症度分類
B.胸部X線
C.心電図
D.血液検査
E.6分間歩行距離、心肺運動負荷試験
F.呼吸機能検査
G.心エコー図
H.胸部CT・MRI
I.肺血流シンチグラフィ
J.肺動脈造影
K.右心カテーテル検査
3.各群の鑑別
III 特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症の診療指針と実践
1.診断のポイントと注意点
2.治療フローチャート(治療法の選択方法)
3.薬物療法
4.肺移植
IV 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診療指針と実践
1.診察法(身体所見のとり方)
2.診断のポイントと注意点
3.治療指針と実践
A.内科的治療
B.経皮的肺動脈カテーテル治療
C.外科的治療
V その他の肺動脈性肺高血圧症の診療指針と実践
1.膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症
2.先天性シャント性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症
3.門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症
4.HIV感染症に関連する肺動脈性肺高血圧症
5.薬物および毒物に起因する肺動脈性肺高血圧症
6.肺静脈閉塞性疾患/肺毛細血管腫症
VI 特殊な肺高血圧症の診療指針と実践
1.左心系心疾患による肺高血圧症
2.呼吸器疾患に合併する肺高血圧症
3.高地性肺高血圧症
付録 肺高血圧症治療に使用する薬剤一覧
索引
今でも鮮明に覚えている症例があります。今から20年以上前、30歳代前半の女性が救急搬送されてきました。頻呼吸で、収縮期血圧は100mmHg前後、心拍数は120bpmで、SaO2は80%台前半でした。心エコー図検査をした私は息をのみました。極端に拡大した右室、推定肺動脈圧が80mmHgを超えていました。その当時、原発性肺高血圧症と呼ばれていた病態でした。3歳の子供を抱え、前日までしんどい体に鞭打ってミシンを踏んでいたそうです。いよいよ我慢できなくなり、救急要請したとのことです。懸命の治療にもかかわらず、入院3日目で亡くなられました。悄然とするご家族を見て、思わず涙がこぼれました。“何もできなかった。”ただただ、悔しかったことを憶えています。
肺高血圧症については、これまで予後不良の難治性疾患として捉えられていました。しかし、現在では、病態もかなり解明され、それとともに新しい作用機序をもつ薬剤が出てきています。特にエンドセリン受容体拮抗薬、PDE?5阻害薬、プロスタサイクリン製剤が臨床使用され、その治療成績は劇的に改善されています。最近では病態の進行を抑えるだけではなく、regressionも可能であるというデータも出てきました。今後も新薬の登場が予定されています。しかし、これら薬剤について、どの薬剤から使用すべきか、効果が上がらない場合の薬剤の切り替えはどのようにして行うか、併用療法はどのようにして行うべきか、といった点に関して明確なエビデンスは存在せず、実臨床において指針となるものがないのも実情です。他方、肺動脈血栓塞栓症に関しては薬物療法のほか、経皮的肺動脈カテーテル治療の登場もあり、根治も目指せるようになりましたが、これに関しても治療指針がありません。
そこで、この治療の進歩が著しい肺高血圧症について、その診療の実践的内容を解説し、今後の実臨床における診療指針となることを目指して本書を上梓しました。本書は共同編集者である岡山医療センターの松原広己先生が、企画、編集において心血を注いだ結晶であることも申し添えます。彼の意気込みは“根治を目指す最新の治療指針”というサブタイトルに表れています。本書によりひとりでも多くの肺高血圧患者を救いたい、これが編集者・執筆者一同の心からの願いです。
2012年2月
編集者を代表して
伊藤浩