特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第2版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会 |
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ISBN | : 978-4-524-26388-2 |
発行年月 | : 2011年3月 |
判型 | : A4変 |
ページ数 | : 136 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会と厚生労働省びまん性肺疾患研究班による診療の手引き。呼吸器内科、放射線科、病理の各領域の専門家が全体像と各病型を詳しく解説。今改訂では、一般内科医のための特発性間質性肺炎診療のアウトラインを新設。薬剤情報はもとより鑑別診断や治療指針を充実。本症の疾患概念から治療まで網羅した、肺炎診療に必携の一冊。
第I章 びまん性肺疾患と特発性間質性肺炎
第II章 診断の進め方
1 診断のフローチャート
2 臨床像
3 一般検査
1)胸部単純X線写真
2)高分解能CT(high resolution CT:HRCT)
3)血液検査
4)呼吸機能検査、運動耐容能検査、動脈血ガス検査
4 特殊検査
1)気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)
2)経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)
3)外科的肺生検(surgical lung biopsy:SLB)
5 間質性肺炎の病理組織総論
1)間質性肺炎総論
2)病理組織学的鑑別診断の要点
6 鑑別診断
1)膠原病および関連疾患
2)過敏性肺炎
3)気腫合併肺線維症
4)じん肺
5)薬剤性肺炎
6)慢性および急性好酸球性肺炎
7)感染症
8)その他
第III章 治療総論
1 日常の生活管理
1)禁煙
2)環境因子
3)微生物因子
4)胃食道逆流
5)日常生活
6)定期的な診察
7)感染予防
8)精神的配慮と福祉
2 薬物療法
1)ステロイド
2)免疫抑制薬
3)抗線維化薬
4)その他の薬物療法
3 在宅酸素療法とリハビリテーション
1)在宅酸素療法
2)呼吸リハビリテーション
4 肺移植
1)一般的肺移植の適応
2)IIPsにおける肺移植の適応
3)IPFにおける肺移植の意義
5 合併症の対策とその管理
1)肺癌
2)急性増悪
3)気胸、縦隔気腫
4)呼吸不全、肺高血圧、右心不全
5)感染症
第IV章 IIPs各疾患の概念と診断・治療
A.特発性肺線維症(IPF)
1 疾患概念
2 疫学
3 危険因子
4 臨床症状
5 臨床検査と血清検査
6 画像所見
7 呼吸機能検査
8 気管支肺胞洗浄(BAL)
9 病理
10 治療
B.特発性肺線維症(IPF)の急性増悪
1 概念
2 臨床診断基準
3 誘因の評価
4 臨床像と検査所見
5 画像所見
6 急性増悪の病理
7 外科的肺生検(SLB)のリスクと注意事項
8 急性増悪の治療
9 急性増悪の予後
C.非特異性間質性肺炎(NSIP)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 診断
6 治療
D.急性間質性肺炎(AIP)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 治療
E.特発性器質化肺炎(COP)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 診断と治療
F.剥離性間質性肺炎(DIP)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 治療
G.呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 治療
H.リンパ球性間質性肺炎(LIP)
1 疾患概念
2 臨床像と検査所見
3 画像所見
4 病理
5 治療と予後
付録
付1 一般内科医のための診療アウトライン
付2 わが国の特発性間質性肺炎の歴史と臨床診断基準の第四次改訂
付3 厚生労働省特定疾患認定基準
付4 厚生労働省特定疾患認定審査臨床調査個人票
作成作業の経過と委員会の構成
索引
2004年9月に『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き』の第1版が発行されてから、既に6年の月日が流れた。その間、「特発性間質性肺炎」をめぐる研究は大きな進歩をとげ、様々な変化がもたらされている。その中で最も特筆すべき事は、治療薬として世界初の抗線維化薬・ピルフェニドンの特発性肺線維症(IPF)治療への導入であろう。ピルフェニドンは当初、アメリカで開発され小規模な治験が行われていた。悪くはない成績であったが、それ以上の進展はなかった。この薬剤に一早く目を着けられたのが、「びまん性肺疾患研究班」の先々代の班長をされていた、当時日本医科大学教授の工藤翔二先生である。日本における第II相、第III相試験が「びまん班」(工藤翔二班長、貫和敏博班長)の強力なバックアップのもと見事に成功し、世界初のIPF治療薬として上市されたのが2008年の暮れであった。その後2年余が経過し、少しずつその有効なターゲットも明らかにされてきた。そして、2010年暮には、CHMPからヨーロッパでのピルフェニドンの承認勧告がだされ、EMA(European Medicines Agency)によるヨーロッパでの承認の期待が高まっている。今後の欧米でのピルフェニドン使用も視野に入ってきている昨今である。ピルフェニドン以外にも、「特発性間質性肺炎の画期的治療法に関する臨床研究班」(工藤翔二班長)でなされていたN-アセチルシステインの検討も東邦大学 本間によりまとめられ、新たな選択肢としての位置をかためつつある。その他にも、6年間に色々な進歩があり、これらを加えた改訂版を早急に発刊する必要があった。そこで、「びまん班」を中心に「手引き」改訂委員会を編成し、2009年から改訂作業にとりかかった。今回は、第1版の精神を継承し、大きな骨格や中心となるコンセプトは変更せず、その後の進歩のみを加えるというマイナーな改訂にとどめ、形も第1版同様『手引き』とし、しかしながら迅速な刊行を目指すこととした。一方、2011年春には欧米の新ガイドラインが刊行される予定である。今後はこの新ガイドラインをふまえて、いよいよ日本での「ガイドライン」作成にむけて走り出す予定である。
本『手引き』の内容は、一般論として臨床現場の意思決定を支援するものであり、さまざまな病状を示す患者に対して画一的に用いられることなく、個別的な治療を行うための参考の書として活用されることをお願いすると共に、本『手引き』が医療訴訟等の資料になるものではないことを明記したい。また、本改訂にあたっては厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」の援助を受けた。
2010年12月
日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会委員長 杉山幸比古
「びまん性肺疾患に関する調査研究班」「手引き」改訂部会部会長 本間栄
『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き』は2004年に初版が世に出て、2011年3月に改訂第2版が出版された。特発性間質性肺炎(IIPs)はCOPDなどに比べ患者数は少ないが、学会や研究会のIIPsに関するセッションは常に多くの参加者で賑わう。それだけ間質性肺炎に関心をもつ呼吸器専門医が多いのも事実であり、本書の役割はきわめて大きい。
IIPsと診断するのは困難ではないが、7つあるIIPsのサブセットまで迫るには、呼吸器専門医、放射線科医、病理医の話し合いによらなければならないことが多い。医師であれば誰でも理解できるような明確な診断基準があるわけではなく、どのサブセットにも存在する非特異的所見の多寡を根拠にして、どこかで線引きしてサブセット診断をするという作業になる。かくも臨床医にとって悩ましい作業を手助けするのが、本書である。
タイトルこそ手引きとなっているが、内容はテキストブックである。コンパクトな中にもIIPs診療のすべてを網羅するこれだけ中身の濃い書物は、本書をおいてわが国にはない。初版の骨格を受け継ぎ、杉山幸比古委員長のもとで日本におけるびまん性肺疾患の臨床・放射線・病理のエキスパートの英知を結集して作ったものである。
初版から今回の改訂第2版までの数年間にあったIIPsに関するエポックメイキングな進歩をいくつかあげてみると、急性増悪の概念の国際的浸透、pirfenidoneをはじめとするさまざまな治療薬のトライアル、特発性NSIP(非特異性間質性肺炎)の確立(一方では膠原病との密接なつながりもあるUCTDという概念も提唱された)、IIPs診断におけるHRCTの重要性、肺気腫合併肺線維症を含めた喫煙関連間質性肺炎の考え方、などがある。本書ではそれらの重要な知見を新たに加えた、説得力のある内容になっている。ことに急性増悪は近藤・谷口らが世界にさきがけて提唱したわが国の誇るべき知見であり、改訂第2版では各論である7つのサブセットの項目とは別扱いで論じられている。
2011年5月に開催されたAmerican Thoracic Society(ATS)の年次総会では2002年に提唱されたIIPsの国際分類をもとにして、新たな国際分類を2012年に誌上発表すべくその骨子が明らかにされた。それによればIIPsはIPF、NSIP、RBILD、DIP、COP、AIPを基本的なサブセットとし、まれなIIPsや分類不能のIIPsを新たに設け、LIP、上葉優位型の肺線維症(idiopathic pleuroparenchymal fibroelatosis)、AFOP、bronchiolocentric patterns of IPなどをその中に組み入れている。また、従来の組織分類の枠組みを越えて、より現実的な臨床的進行度や治療方針を重要視した5つのカテゴリーも呈示された。杉山委員長が改訂第2版の序で述べておられるように、ATSで示された国際分類を踏まえわが国においても新たな「ガイドライン」作成に向けて始動するはずである。
本書の末尾に「一般内科医のための診療アウトライン」という項がある。呼吸器専門医だけでなく、一般内科医に対するアドバイスも掲載しており、細かな配慮があることを附記しておく。
評者● 渡辺憲太朗
臨床雑誌内科108巻2号(2011年8月号)より転載