書籍

薬剤師として身につけておきたい老年薬学プラクティス

編集 : 福島紀子
ISBN : 978-4-524-26251-9
発行年月 : 2011年3月
判型 : B5
ページ数 : 202

在庫僅少

定価3,850円(本体3,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

薬剤師のための高齢者ケア入門書。高齢者を取り巻く社会の変化や高齢者特有の身体的情報、薬物動態の基本的知識、臨床現場に即した与薬・服薬介助・排泄のサポート、経腸栄養、輸液、褥瘡、がん性疼痛管理、認知症のケアをまとめた。Question形式で高齢者ケアの初心者の薬剤師が注意すべきポイントをわかりやすく具体的に解説している。

1章 高齢者を取り巻く社会
 1.高齢社会の現状
 2.高齢化の速さ
 3.高齢者に対する施策の流れ
 4.高齢者医療制度の問題点
  Q1 高齢者のための施設の分類とその役割を理解していますか?
  Q2 高齢者ケアを支える多職種とその役割を理解していますか?
  Q3 薬剤師として高齢者ケアに積極的に関わりたいのですが、法律的に医師や看護師でないとできない行為があるのではないですか?
 
2章 見落としがちな高齢者への対応
 1.加齢による変化の全体像
 2.各機能の加齢に伴う変化や障害

3章 加齢に伴う薬物動態の変化
 1.加齢による薬物の吸収・分布・代謝・排泄の変化を推理しよう
  Q1 高齢者の薬物の吸収は若年者と比較して少なくなるのでしょうか?
  Q2 加齢は薬物の分布やVdにどのような変化をもたらしますか?
  Q3 血漿蛋白結合率は高齢者の薬物分布にどう影響するのでしょうか?
  Q4 肝抽出率(E)とは何ですか? 少し詳しく教えてください
  Q5 Eの違いは高齢者の薬効や副作用にどのような影響を与えるのですか?
  Q6 CLtotalとt1/2はどういう関係にありますか?
  Q7 肝臓で消失する薬物と腎臓から消失する薬物を見分ける薬物動態値は何ですか?
  Q8 どうして腎排泄型薬物と肝排泄型薬物とに分けるのでしょうか?
  Q9 高齢者の薬物消失は若年者と比較してどう異なるのでしょうか?
 2.高齢者の薬物投与設計を考えてみよう
  Q10 定常状態とはどんな状態ですか? 何か気をつけることはありますか?
  Q11 高齢者と若年者の血中濃度やt1/2の違いを具体的に示してください
  Q12 高齢者ではすべての薬物のt1/2が延長するのでしょうか?
  Q13 Cockcroft-Gaultの式って何ですか?
  Q14 高齢者の投与量を決めるためにはどんな情報が必要ですか?
  Q15 Beers Criteria Japanでは、その他にどんな薬物が高齢者には薬物動態値上問題があるとされましたか?

4章 高齢者をサポートするために
A.与薬・服薬介助の支援
 1.服薬介助の基本を理解
 2.服薬介助の際の衛生管理
  Q1 要介護者に接するあなたが感染の媒介者になっていませんか?
  Q2 スタンダードプリコーションってなんですか?
  Q3 高齢者施設などで発生頻度の高い感染症にはどんなものがありますか?
 3.介助者の視点に立った服薬支援
  Q4 介助者の視点に立った服薬支援にはどんなことがありますか?
 4.高齢者にとくに注意しなくてはならない服薬支援
  Q5 誰にでも「薬はコップ1杯の水で飲んでください」と言っていませんか?
  Q6 誤嚥防止のためのとろみ剤を使ってもとろみがつかないことがあるのは、なぜですか?
  Q7 服薬補助ゼリーを正しく選択していますか?
  Q8 嚥下障害予防にはどんなことがありますか?
  Q9 白内障の患者さんの薬袋に、黄色のマーカーを使っていませんか?
  Q10 服薬状況が分からなくなってしまう患者さんへの対処は?
 5.服薬後の経過観察
  Q11 高齢者のアドヒアランスが悪い理由を知っていますか?
  Q12 自助具にはどんなものがあるのでしょうか?
B.排泄介助の支援
 1.排泄介助の基本を理解
 2.排泄介助の支援
  Q13 オムツの希望があったとき、利用者の排泄機能を確認していますか?
  Q14 オムツの選択がうまくできますか?
  Q15 薬によって尿や便の色が変わることを伝えていますか?
  Q16 ゴーストタブレットについて情報提供していますか?
 3.その他
  Q17 排泄物を扱う際に注意しなければならないことを伝えていますか?
  Q18 尿失禁の相談があった場合、薬以外の提案ができますか?
C.暮らしと薬
 1.薬剤から考える
  Q19 各薬剤の薬物動態など特徴を把握し、効果・副作用・相互作用に対する予測ができますか?
  Q20 高齢者に対して、とくに注意したい副作用とその理由を語ることができますか?
 2.生活(暮らし)や体調から考える
  Q21 食事状態を悪化させる原因にはどのようなものがあるでしょう? また、その状態を招く可能性のある薬剤や原因となる疾患を挙げてみましょう
  Q22 尿・便・汗といった排泄が悪い場合、その原因にはどのようなものがあるでしょうか? またその状態に関わる薬剤について考えてみましょう
  Q23 睡眠障害がみられる場合、その原因にはどのようなものがありますか? また薬剤が関与する場合、どのようなことに注意したらよいでしょうか?
  Q24 高齢者の運動機能に関して、とくに注意しておきたい事項を挙げてみましょう.また、それに関わる薬剤も挙げてみましょう
  Q25 認知症全般に関する薬剤の関わりを理解していますか?
 3.五感でチェックする
  Q26 握手・挨拶を通して、どのようなことを推測できるでしょうか?
 
5章 知らないままではすまされない経腸栄養と輸液
  Q1 栄養投与経路とその選択基準をご存じですか?
A.嚥下困難と経腸栄養
 1.嚥下困難
  Q2 嚥下障害のグレードを判定していますか?
  Q3 経口摂取の場合、嚥下可能な食形態を確認し、どうやって服薬しているか聞いていますか?
 2.経腸栄養
  Q4 経腸栄養剤の違いをご存じですか?
  Q5 粉砕調剤の問題点を説明できますか?
  Q6 簡易懸濁法をご存じですか?
  Q7 簡易懸濁法のメリットと投薬方法を医師や介護者に説明できますか?
  Q8 簡易懸濁法に適する調剤方法はご存じですか?
  Q9 簡易懸濁法を実施するときの注意点は?
  Q10 胃瘻を見たことがありますか? どんな種類があるかご存じですか?
  Q11 胃瘻チューブが抜けてしまったら?
B.輸 液
 1.輸液理解の手順
  Q12 体液の溶質平衡を理解していますか?
  Q13 生理食塩液を理解していますか?
  Q14 5%ブドウ糖液を理解していますか?
  Q15 細胞外液補充液や1〜4号液を理解していますか?
  Q16 輸液製剤のNa+濃度(mEq/L)を見て患者の状態がおおまかにつかめますか?
  Q17 栄養輸液は決して特別なものではなく、中・高カロリーの維持輸液であることを理解していますか?

6章 知らないままではすまされない褥瘡
 1.褥瘡の発症原因と進行のメカニズム
  Q1 褥瘡が発生した部位の組織下に骨が見当たらないことがありますが、なぜですか?
 2.高齢者の特徴を考慮した予防対策
 3.高齢者褥瘡の特徴と基本的な対策
  Q2 薬剤師として知っておきたい医療材料にはどのようなものがありますか?
 4.外用薬の特性
 5.創傷治癒に関与する局所環境因子
 6.褥瘡の重症度分類
 7.DESIGN分類からみた外用薬の分類
 8.外用療法における外用薬の選び方と使い方
 9.外力から薬剤を保護して効果をよりいっそう高める対策の具体例
 10.内服薬と褥瘡の関係

7章 知らないままではすまされないがん性疼痛管理
 1.がん性疼痛の基本を理解する
  Q1 がん患者の訴える痛みはすべてがん性疼痛ですか?
  Q2 がん性疼痛の種類にはどんなものがありますか?
  Q3 痛みの種類はどのように鑑別されているのですか?
  Q4 痛みの訴えに対して、どのように対応するべきですか?
 2.がん性疼痛における薬物治療の基本
  Q5 WHO方式がん性疼痛治療法を意識していますか?
  Q6 非オピオイド性鎮痛薬はどのように併用するべきですか?
  Q7 鎮痛補助薬の種類や適応について把握していますか?
  Q8 オピオイド性鎮痛薬の導入はどのように行いますか?
  Q9 オピオイド性鎮痛薬の副作用の特徴を把握していますか?
  Q10 予防の必要な副作用を事前に回避していますか?
  Q11 オピオイド性鎮痛薬の他の薬剤との相互作用を意識していますか?
  Q12 オピオイド性鎮痛薬の過量投与に対する有効な予防策は何ですか?
  Q13 オピオイド性鎮痛薬の過量投与が疑われる場合、どのような対策が必要ですか?
  Q14 オピオイド性鎮痛薬の持続特性や投与経路からみる安全性の違いについて認識していますか?
  Q15 がん悪液質とはどのような状態でしょうか? そのような状況下での薬剤使用はどのように配慮すべきでしょうか?
 3.がん性疼痛治療の応用:モルヒネ持続皮下注射
  Q16 モルヒネの持続皮下注射について知っていますか?

8章 知らないままではすまされない認知症
 1.認知症に気付くとき
 2.認知症とは
 3.認知症の原因
 4.認知症の治療
  Q1 ドネペジル塩酸塩を処方する医師は治療効果をどのように説明しているのでしょうか?
  Q2 ドネペジル塩酸塩を処方する医師は副作用をどのように説明しているのでしょうか?
  Q3 患者さんの家族からドネペジル塩酸塩の治療効果を聞き取るにはどうすればよいでしょうか?

索引

本格的な超高齢社会を迎える中で、一人一人の高齢者に安心して健康で豊かな人生を送っていただくことは社会全体の願いであり、医療関係者にとっては、その活動を通じて、医療費などの社会的負担の増大に対する工夫も含めた医療や福祉のきめ細かい対応を具体的に実現するという社会的な使命があります。
 こうした社会的課題を解決するには、高齢者医療と介護との連携が不可欠になります。とくに、薬物動態の個人差が大きい高齢者に対して、多職種連携の中で医薬品の適切かつ、きめ細かい配慮を伴う投与設計や服薬支援、副作用の早期発見、医薬品服用後の経過観察など、専門性の高い技術を持つ「地域密着型薬剤師の育成と活躍」が期待されます。
 しかし、チーム医療の中で重要な役割を担うべき、地域医療の中での薬剤師と介護職の連携はまだまだ少なく、こうした視点で薬剤師を養成する薬学教育も後れをとっているのが現状です。また、高齢者の医療・福祉に関わるために医学では老年医学、看護学では老年看護の領域が存在していますが、薬学における高齢者に特化した領域は確立されていません。
 本書で取り上げた「老年薬学」は、慶應義塾大学薬学部(旧・共立薬科大学)が、平成18年(2006年)度文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択された「超高齢社会に必要な地域密着型薬剤師の養成」の取り組みの中で構築した内容ですが、薬剤師が高齢者の医療・福祉に関わるために必要な具体的な知識と技術として、薬学の視点から整理したものです。本学では、6年制学部教育の中に各学年の講義や実習として段階的にこれらの内容を組み込んでいますが、併せて、現役の薬剤師を対象とした60時間の研修としても平成20年(2008年)度から毎年開催し、参加者からは、とくに具体的な内容について高い評価をいただいています。
 本書は、この「老年薬学」で扱われる項目の中から、すぐに役立つと思われる内容をいくつか選び、薬剤師が高齢者に関わるときによく直面する疑問や不安を少しでも軽減できるように、「薬剤師として身につけておきたい老年薬学プラクティス」としてまとめました。
 例えば、見落としがちな高齢者特有の生理的変化についての解説や高齢者の投与設計に必要な知識など、また、高齢者をサポートするための様々な工夫や服用している薬を高齢者の暮らしや体調から見る観察力などについて、Q&A方式で分かりやすく説明しています。さらに、在宅医療を実施する中で、経腸栄養・褥瘡治療・がん性疼痛管理が必要な場合や、認知症の患者さんに関わるときに必要な知識や技術についても詳しく解説しています。これらの内容については、高齢者の薬物療法に関わりの深い、各領域の第一線で活躍されている方々に担当していただきました。
 本書が、地域において必要不可欠とされる薬剤師の業務に、具体的に活かされることを期待しています。
2011年春
福島紀子

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