書籍

整形外科医のための手術解剖学図説原書第4版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

監訳 : 寺山和雄/辻陽雄/長野昭
ISBN : 978-4-524-26247-2
発行年月 : 2011年7月
判型 : A4変
ページ数 : 766

在庫なし

定価41,800円(本体38,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

整形外科手術における代表的なアプローチについて局所の手術解剖を基軸として、美麗なわかりやすい図を数多く用いて解説した、安全・確実に手術を行うための定本。今改訂では、ほぼすべての部位に「最小切開によるアプローチ」の項が新設され、随所に“より安全かつ侵襲の小さい”アプローチを行うための改訂が加えられている。

Surgical Exposures In Orthopaedics The Anatomic Approach
Hoppenfeld,S.、deBoer,P.&Buckley,R.

第1章 肩
 1 鎖骨への前方アプローチ
 2 肩関節への前方アプローチ
 3 肩関節への前方アプローチに必要な外科解剖
 4 肩鎖関節と肩峰下腔への前外側アプローチ
 5 上腕骨近位部への外側アプローチ
 6 上腕骨近位部への外側最小切開アプローチ
 7 前外側および外側アプローチに必要な外科解剖
 8 肩関節への後方アプローチ
 9 肩関節への後方アプローチに必要な外科解剖
 10 肩関節への関節鏡アプローチ
    関節鏡視の一般的原則
 11 後方および前方アプローチ
 12 後方アプローチによる肩関節鏡視

第2章 上腕
 1 上腕骨骨幹部への前方アプローチ
 2 上腕骨骨幹部への前方最小切開アプローチ
 3 上腕骨遠位部への前外側アプローチ
 4 上腕骨遠位部への後方アプローチ
 5 上腕骨遠位部への外側アプローチ
 6 上腕部展開に必要な外科解剖
 7 上腕骨髄内釘手術のための最小切開アプローチ

第3章 肘関節
 1 肘関節への後方アプローチ
 2 肘関節への内側アプローチ
 3 肘関節への前外側アプローチ
 4 肘窩部への前方アプローチ
 5 橈骨頭への後外側アプローチ
 6 肘関節手術に必要な外科解剖
    内側アプローチに必要な外科解剖
    前外側アプローチに必要な外科解剖
    前方アプローチに必要な外科解剖
    後方アプローチに必要な外科解剖

第4章 前腕
 1 橈骨への前方アプローチ
 2 前腕の前方区画の手術に必要な外科解剖
    区画症候群
 3 尺骨骨幹部へのアプローチ
 4 尺骨へのアプローチに必要な外科解剖
 5 橈骨への後方アプローチ
 6 橈骨への後方アプローチに必要な外科解剖

第5章 手関節と手
 1 手関節への背側アプローチ
 2 手関節背側の手術に必要な外科解剖
 3 手関節への掌側アプローチ
 4 尺骨神経への掌側アプローチ
 5 手関節掌側の手術に必要な外科解剖
 6 指屈筋腱への掌側アプローチ
 7 指屈筋腱鞘への側正中アプローチ
 8 指屈筋腱の手術に必要な外科解剖
 9 舟状骨への掌側アプローチ
 10 舟状骨への背橈側アプローチ
 11 手における膿に対するドレナージ
 12 爪周囲炎に対するドレナージ
 13 指腹腔感染(ひょう疽)に対するドレナージ
 14 指間腔感染に対するドレナージ
 15 指の指間腔の解剖
 16 母指の指間腔の解剖
 17 腱鞘感染に対するドレナージ
 18 深手掌腔感染
 19 内側腔(手掌中央腔)に対するドレナージ
 20 外側腔(母指腔)に対するドレナージ
 21 深手掌腔の手術に必要な外科解剖
 22 橈側滑液鞘感染に対するドレナージ
 23 尺側滑液鞘感染に対するドレナージ
 24 手の解剖

第6章 脊椎
 腰椎
 1 腰椎への後方アプローチ
 2 腰椎への後方最小切開アプローチ
 3 腰椎への後方アプローチに必要な外科解剖
 4 腰椎への前方(経腹膜)アプローチ
 5 腰椎への前方(後腹膜)アプローチ
 6 腰椎への前方アプローチに必要な外科解剖
 7 腰椎への前側方(後腹膜)アプローチ
 頚椎
 8 下位(C3-C7)頚椎への後方アプローチ
 9 下位頚椎への後方アプローチに必要な外科解剖
 10 上位(C1-C2)頚椎への後方アプローチ
 11 上位頚椎への後方アプローチに必要な外科解剖
 12 頚椎への前方アプローチ
 13 頚椎への前方アプローチに必要な外科解剖
 胸椎
 14 胸椎への後側方アプローチ(肋骨横突起切除術)
 15 開胸による胸椎への前方アプローチ
 その他のアプローチ
 16 脊柱側弯症に対する胸腰椎への後方アプローチ
 17 胸腰椎への後方アプローチに必要な外科解剖
 18 肋骨切除のための後側方アプローチ

第7章 骨盤と寛骨臼
 1 採骨のための腸骨稜への前方アプローチ
 2 採骨のための腸骨稜への後方アプローチ
 3 恥骨結合への前方アプローチ
 4 仙腸関節への前方アプローチ
 5 仙腸関節への後方アプローチ
 6 骨盤アプローチに必要な外科解剖
 7 寛骨臼への腸骨鼡径アプローチ
 8 寛骨臼への腸骨鼡径アプローチに必要な外科解剖
 9 寛骨臼への後方アプローチ

第8章 股関節
 1 股関節への前方アプローチ
 2 股関節への前外側アプローチ
 3 股関節への外側アプローチ
 4 股関節への前方、外側および前外側アプローチに必要な外科解剖
 5 股関節への後方アプローチ
 6 股関節および寛骨臼への後方アプローチに必要な外科解剖
 7 股関節への内側アプローチ
 8 股関節への内側アプローチに必要な外科解剖

第9章 大腿骨
 1 大腿骨への外側アプローチ
 2 大腿骨への後外側アプローチ
 3 大腿骨遠位2/3への前内側アプローチ
 4 大腿部への後方アプローチ
 5 大腿骨遠位部への最小切開アプローチ
 6 大腿部の手術に必要な外科解剖
 7 大腿骨への後方アプローチ
 8 髄内釘のための大腿骨近位部への最小切開アプローチ
 9 大腿骨の逆行性髄内釘のための最小切開法

第10章 膝関節
 1 膝への関節鏡アプローチ
 2 膝への関節鏡視
 3 内側傍膝蓋アプローチ
 4 内側半月へのアプローチ
 5 膝関節への内側アプローチとその支持組織
 6 膝関節への内側アプローチに必要な外科解剖
 7 外側半月へのアプローチ
 8 膝関節への外側アプローチとその支持組織
 9 膝関節への外側アプローチに必要な外科解剖
 10 膝関節への後方アプローチ
 11 膝関節への後方アプローチに必要な外科解剖
 12 前十字靱帯手術のための大腿骨遠位部への外側アプローチ

第11章 脛骨と腓骨
 1 脛骨外側プラトーへの前外側アプローチ
 2 脛骨近位部への前外側最小切開アプローチ
 3 脛骨近位部への後内側アプローチ
 4 脛骨骨幹部への前方アプローチ
 5 脛骨遠位部への最小切開アプローチ
 6 脛骨骨幹部への後外側アプローチ
 7 腓骨へのアプローチ
 8 下腿部の手術に必要な外科解剖
 9 脛骨髄内釘のための最小切開アプローチ

第12章 足関節と足
 1 足関節への前方アプローチ
 2 内果への前方および後方アプローチ
 3 足関節への内側アプローチ
 4 足関節への後内側アプローチ
 5 足関節への後外側アプローチ
 6 外果へのアプローチ
 7 足関節および後足部への前外側アプローチ
 8 後足部への外側アプローチ
 9 後距踵関節への外側アプローチ
 10 踵骨への外側アプローチ
 11 足関節へのアプローチに必要な外科解剖
 12 後足部へのアプローチに必要な外科解剖
 13 足中央部への背側アプローチ
 14 母趾中足趾節関節への背側および背内側アプローチ
 15 第2-5趾の中足趾節関節への背側アプローチ
 16 背側趾間部へのアプローチ
 17 前足部の手術に必要な外科解剖

第13章 創外固定のアプローチ
 1 上腕骨
 2 橈骨と尺骨および手関節
 3 骨盤
 4 大腿骨
 5 脛骨と腓骨
 6 足関節

索引
 図題索引
 内容項目索引
 用語索引

初版から25年との永きにわたって版を重ねた本書は、整形外科・災害外科医にとって欠かすことのできない手術の展開アプローチの在り方に対し、解剖学に基づいた独特の手術理念のもとにこのたび原書改訂第4版が上梓された。
 わたしたちは2009年初秋に、改訂の内容を点検し、新たに長野昭名誉教授が監訳者に加わり、翻訳担当者のほぼ半数が交替し、新たな気持ちで全面的に見直すこととした次第である。
 このたびの改訂においては、一部の項目の組替えと修正など含めて、70余りの新図を加えた合計約770図を用いて幅広く視覚的充実を図っている。そして昨今の小切開化あるいは低侵襲化を求めようとする趨勢をもふまえて、主として四肢長管骨の外傷などに対する最小切開アプローチが加味された他、橈骨、手関節、骨盤、足部などに対する創外固定法が新たに追加されている。
 いずれにせよ技術変革の1つの方向性は、最小切開・低侵襲(内視)手術へと向かっているといえるが、すべてがそれに取って代わることはありえない。つまり、機能再建外科としての整形外科・災害外科の原点は臨機応変に対処しうる開放手術の生理解剖に基づいたアプローチであることは疑う余地もなかろう。読者諸氏がこれら小切開・低侵襲手術などに興味を持ち実践開発をしようとするとき、問題点の1つとしてすでに指摘されている「アプローチ起因性障害」を防ぐ意味をも含めて、基礎となる開放手術における基本展開法の応用力を常に兼ね備えておくべきと思われる。
 すでに超高齢社会に立ち至ったわが国では、整形外科・災害外科手術の受療者もますます高齢層にシフトしている。そして手術の適応や方法の選択を含めて複雑多様化しつつある中にあって、本書が各位の日頃の研鑽と実践にさいして大いに活用されることを望んでいる。
2011年初春
監訳者識

『Surgical Exposure in Orthopaedics;the Anatomic Approach』(ed by Stanley Hoppenfeld, Piet deBoer)の初版(1984年)が発行されて28年が経つ。2005年にその和訳書である『整形外科医のための手術解剖学図説』(原書第3版)が南江堂より出版され、今回原書第4版が出版されるにいたった。
 手術を行う際には局所解剖を平面ではなく三次元的にとらえなければばらない。その点本書は初版以来、手術進入路を三次元的にinternervous planeとしてとらえることで麻痺(神経脱落)の危険性を回避し、一方で手術展開をintramuscular planeとしてとらえ、皮切から骨組織に到達するまでの筋層の展開を「浅層の展開」と「深層の展開」に分けて考えることで、より局所解剖を理解しやすいものとしている。
 7年前に出版された本書の和訳書(原書第3版)においては全図版がカラー化して出版されたことで、解剖がより可視的に理解しやすいものとなっていた。今回の原書第4版においては、70あまりの新たな図版が加えられ合計で約770図となっている。初版が633図で、しかも白黒であったことを思えば隔世の感がある。この28年間における本書の視覚的充実は眼を見張るものがある。近年、三次元画像(映画、DVDなど)が流行であるが、本書の図は紙の上の二次元画であるにもかかわらず、凝視していると三次元にみえてくるから不思議である。初版から図版を担当しているHugh A.Thomas氏に賛辞をささげたい。
 近年、人工関節手術における最小切開手術や各種内視鏡手術に代表される低侵襲手術の進歩はめざましいものがある。本書では最小切開手術に対するアプローチ、特に上腕骨、大腿骨遠位部、脛骨近位部、脛骨遠位部へのアプローチが新しく加えられているとともに、新しい創外固定法のアプローチが収載されている。また脊椎と踵骨への新しいアプローチが追加されている。最小切開(侵襲)手術を行う際に、局所解剖の理解が足りないがために周辺軟部組織を必要以上に損傷させる愚だけは行ってはならない。本書に記載されている通常の開放手術の展開法を十分習得したうえで、最小切開(侵襲)手術を学んでいただきたい。
 初版の序でDr.Hoppenfeldは「手術を安全に行うために必要なことは解剖の知識とテクニックであり、この二つが両立しなくてはならない。後者は優秀な先輩外科医の手術に立ち会うことでのみ習得できるが、前者は解剖書と解剖実習によって習得せねばならない」と述べている。前版の書評でも書かせていただいたが、手術テクニックは先輩整形外科医から学ぶことができるとしても、解剖の知識を習得するにはなんらかの教科書に頼らざるをえない。近年の整形外科領域の手術解説書や特集雑誌は手術テクニックに重点をおいているものが多く、手術進入法や外科的解剖に言及した教科書は数少ない。その中で本書は手術テクニックから離れて、整形外科的手術を局所解剖の面から詳述した数少ない教科書の一つであり、日々の診療の中で手軽に局所解剖の知識を得るには最適の教科書といえる。
 その他、原書第3版と同様に訳者注が随所に挿入されていること、索引が従来どおり「図題索引」、「内容項目索引」、「用語索引」の3本立てになっていること、各章の最後に手術アプローチについてそれぞれのオリジナルの文献が可能な限り記載されていることが嬉しい。本書を利用する先生方には、時間をみつけてぜひオリジナルの文献も一読してほしいものである。
 最近の学会会場や医局内では、メーカー主導による手術器械などの説明会が頻繁に行われている。もちろん新しい手術器械の操作法などの知識を得ることは必要であるが、若い先生方は手術器械の操作法を知ることで自身の手術技術も上達すると錯覚することなく、まずは局所解剖を三次元的に理解したうえでのアプローチ法(手術進入路)と周囲組織、なかでも神経・血管などの重要臓器への距離感を身に付けることに専念して欲しいと思う。そのような意味でも、本書はこの二つを身に付けるために最適の教科書といえる。本書を熟読し、本書の整形外科的アプローチにおける初版以来の基本理念である“avoid cutting round structures”を肝に銘じていただきたい。
評者● 松野丈夫
臨床雑誌整形外科63巻2号(2012年2月号)より転載

9784524262472