書籍

手の外科の実際改訂第7版

: 津下健哉
ISBN : 978-4-524-26217-5
発行年月 : 2011年11月
判型 : A4変
ページ数 : 734

在庫あり

定価27,500円(本体25,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

著者の10,000例に及ぶ症例経験、業績を基軸に、手の外科のすべてを詳解した。手の外科の治療にあたっての諸注意、こつを具体的に記述し、著者の基本姿勢であるatraumaticな操作、すなわちより完全な解剖学的修復、瘢痕の少ない修復操作で全章が貫かれている。手の外科の治療原則から後療法まで、個々の症例ごとに臨床応用できるよう解説した。

第1章 手の外科の特殊性

第2章 手の解剖と運動生理
I.手のアーチと力の介達
 1.Transverse arch
 2.Longitudinal arch
II.皮膚とランドマーク
III.手掌腱膜構造
IV.内在筋(intrinsic muscles)
 1.母指球筋群(thenar muscles)
 2.小指球筋群(hypothenar muscles)
 3.骨間筋および虫様筋
V.血管とリンパ管
VI.手の神経支配
 1.皮膚知覚
 2.運動支配
VII.手の筋肉
 母指のつまみ運動
VIII.屈筋腱と腱鞘
IX.指背腱膜構造(extensor apparatus)
 1.矢状索(sagittal band)
 2.腱膜構造(expansion hood)
 3.支靱帯(retinacular ligament)
 4.Cleland ligamentおよびGrayson ligament
 5.母指の背側腱膜
X.手関節部の構造
 1.手関節掌側
 2.手関節背側
XI.関節と靱帯構造
 1.手関節
 2.指関節

第3章 手の手術の一般
I.手術器具について
II.麻酔
 1.局所麻酔
 2.伝達麻酔
 3.全身麻酔
III.消毒
IV.手術台の配置
V.敷布のかけ方と術中の透視
VI.止血帯の使用
VII.皮層の切開
VIII.皮膚の縫合
IX.止血について
X.Atraumaticの操作
XI.手の良肢位について
XII.包帯について
 1.圧迫包帯の実施方法
 2.その他の包帯
XIII.固定について
 実施上の注意
XIV.手のリハビリテーション
XV.弾性副子(dynamic splint)について
 1.プラスチック板の利用
 2.手関節保持用装具(cock-up splint)
 3.指の屈曲を得るための装具
 4.指の伸展を得るための装具
 5.母指対立位保持のための装具(opponens splint)
 6.機能訓練

第4章 手における開放創の処置
I.開放創処置の目標と治療原則
II.救急処置と再感染の防止
III.受傷と受傷状況およびその問診
 1.原因
 2.受傷からの経過時間と最初の処置
IV.創の観察
 1.創の性状および汚染程度
 2.皮膚欠損について
 3.皮膚の生活力判定
 4.深部組織損傷の有無
V.麻酔について
VI.開放創の清掃
VII.Debridementについて
VIII.一次的創閉鎖の適応について
IX.深部組織修復の問題
 1.骨折、脱臼の修復
 2.血管の縫合
 3.腱の修復
 4.神経の修復
X.開放創の閉鎖について
 1.単なる縫合について
 2.局所皮膚の移動
 3.遊離皮膚移植
 4.有茎皮膚移植
XI.後療法について

第5章 挫滅創の処置
I.圧挫創
II.手指背側における挫滅創
III.手指掌側における挫滅創
IV.Degloving injuryの処置
 治療
 1.剥離皮弁の再縫合
 2.遊離植皮術
 3.有茎植皮法
 4.有茎植皮と遊離植皮の合併法
 5.二次的修復について
 Ring injuryについて
V.High-pressure injection injury
VI.指の挫滅創と切断の問題
 1.指の切断と適応の決定
 2.指切断の実際と注意
VII.新鮮外傷と一次再建術(primary reconstruction)の重要性
VIII.化膿創の処置について

第6章 爪の損傷
I.爪下における血腫形成
II.爪の剥離と爪床損傷
III.爪の変形
IV.爪の疾患
V.爪の形成と移植

第7章 指先部の切断とその被覆
I.指の手術と準備
II.末節における指の切断
 1.不完全切断
 2.完全切断
III.指の切断と再接合
IV.断端の形成術

第8章 熱傷の治療
I.熱傷について
 1.熱傷の原因と分類
 2.熱傷程度の分類
 3.ショックについて
 4.熱傷の治療
II.放射線火傷(radiation burn)について
III.電撃傷(electrical burn)について
 1.局所の所見
 2.治療
 3.陳旧例に対する機能再建
IV.化学薬品による熱傷(chemical burn)
 1.酸、アルカリ
 2.フッ化水素酸(hydrofluoric acid)

第9章 瘢痕拘縮の治療
I.瘢痕拘縮の予防
II.手術適応と手術時期
III.瘢痕拘縮除去時の諸注意
IV.線状瘢痕に対するZ-plasty
 1.実施上の注意
 2.Z-plastyの利用
V.表在性瘢痕の除去
 1.瘢痕切除と遊離皮膚移植の実施
 2.指間部における水かき形成の除去を伴う皮膚移植
VI.深部に及ぶ瘢痕拘縮の除去
 1.MP関節の過伸展拘縮の除去
 2.指背瘢痕と指のボタン穴変形
 3.指屈側の瘢痕拘縮
 4.母・示指間の瘢痕による母指内転拘縮の矯正
VII.有茎植皮の実施について
 1.適応
 2.利点と欠点
 3.種類と方法

第10章 骨折と脱臼(含 手根不安定症、靱帯損傷、ロッキング)
I.治療の原則
 1.早期整復
 2.固定肢位(安全肢位固定)
 3.固定範囲
 4.完全固定
 5.早期運動
 6.関節強直の防止
II.手関節における骨折と脱臼
 1.橈骨遠位端骨折
 2.Colles骨折
 3.不安定骨折とその治療
 4.橈・尺関節の脱臼
 5.手根骨部における骨折と脱臼
III.末節の骨折および脱臼
IV.中節の骨折および脱臼
 1.中節骨骨折
 2.PIP関節における脱臼および骨折
V.基節の骨折および脱臼
 1.基節骨骨頭顆部骨折
 2.基節骨骨幹部骨折
 3.基節骨の若年者骨折
 4.MP関節の背側脱臼
VI.中手骨の骨折および脱臼
 1.基部骨折
 2.骨幹部骨折
 3.頸部骨折
 4.手根中手骨CM関節の脱臼・骨折
VII.母指の骨折と脱臼
 1.末節、基節の骨折、脱臼
 2.MP関節の脱臼
 3.CM関節の脱臼骨折(Bennett骨折、Rolando骨折)
 4.母指CM関節の習慣性脱臼、および変形性関節症
VIII.指における捻挫
 1.側副靱帯の断裂
 2.Volar plateの断裂
 3.Boutonniere deformityの発生
 4.診断
 5.治療
IX.母指における捻挫
 1.MP関節尺側側副靱帯の断裂(Stener lesion)
 2.母指MP関節亜脱臼
 3.母指MP関節のロッキング
 4.示指におけるMP関節ロッキング

第11章 骨、関節の手術
I.肘関節
 肘拘縮の原因
 1.関節形成術
 2.人工関節による肘関節形成術
 3.肘関節側副靱帯の再建
 4.肘の離断性骨軟骨症(osteochondritis dissecans)
 5.橈骨頭(頸部)骨折
 6.上腕骨外上顆炎(テニス肘)
II.手関節
 1.関節固定術
 2.関節形成術
III.前腕の回旋運動障害
 1.尺骨末端切除術(Darrach operation)
 2.尺骨短縮術
 3.Sauve-Kapandji法
IV.中手骨の変形、欠損
 1.骨の変形
 2.骨幹部の欠損
 3.中手骨の移行術(metacarpal transfer)
 4.中手骨骨頭の欠損
V.MP関節に対する手術
 1.関節嚢切除術(capsulectomy)
 2.人工関節Avanta MCP implantによる関節授動術
 3.全関節移植術(whole-joint replacement)
VI.PIP関節に対する手術
 1.PIP関節拘縮に対する処置
 2.関節固定術
 3.関節形成術
VII.DIP関節に対する手術
 1.Heberden結節
 2.粘液性嚢腫(mucous cyst)
 3.豆状骨・三角骨関節症
 4.手根中手関節隆起(carpometacarpal boss)

第12章 Volkmann阻血性拘縮
 1.原因と病理
 2.急性期の臨床症状
 3.急性期の処置
 4.変性発生後の治療
 5.手に限局したVolkmann拘縮(ischemic contracture, local, in the hand)

第13章 Dupuytren拘縮
 1.発生と原因
 2.症状
 3.診断
 4.病理組織
 5.治療

第14章 骨の無腐性壊死疾患
 1.Kienbock病(lunatomalacia)
 2.舟状骨の無腐性壊死(Preiser病)
 3.指骨骨端炎(Thiemann病)
 4.中手骨骨端炎(Dietrich病)
 5.Microgeodic disease

第15章 母指の機能再建
I.母指内転拘縮の治療
 1.不良肢位固定による母指内転拘縮
 2.神経麻痺による母指内転拘縮
 3.熱傷、外傷性瘢痕による母指内転拘縮
 4.骨、関節の損傷による母指内転拘縮
 5.手に限局したVolkmann拘縮による母指内転拘縮
 大多角骨摘出術(trapeziectomy)、および筋膜球挿入による関節形成術
II.母指の短縮、欠損に対する処置
 1.母指の延長
 2.Cocked hat法
 3.母指の造指術
 4.母指化手術(pollicization)
 5.足指の移植(toe to thumb)
 6.Phalangization
 7.前腕での切断に対する機能再建(Krukenberg法)
III.母指の知覚再建
 1.掌側皮膚前進法(volar flap advance法)
 2.神経血管柄付き島状皮弁植皮(neurovascular island pedicle transfer)
 3.橈骨神経知覚枝の利用(sensory cross finger法)
 4.神経・血管縫合による遊離植皮

第16章 腱の損傷
I.腱と癒着
II.縫合腱の治癒過程
 1.腱の治癒機転
 2.腱の栄養
III.損傷腱治療の際注意すべき諸問題
 1.手の外科における腱手術の順序
 2.局所解剖の熟知
 3.手術時の一般的注意

第17章 屈筋腱の新鮮損傷
I.原因
II.診断
III.腱縫合の適応決定
IV.手術野の拡大と切開の延長
V.腱の縫合方法
 1.筆者らの腱縫合
 2.ループ状糸付き針を用いての腱縫合の利点
VI.腱損傷修復とその評価
VII.各部位における屈筋腱損傷の治療
 1.指先部での屈筋腱損傷(zone I)
 2.No man's landでの屈筋腱損傷(zone II)
 3.母指MP関節屈側における長母指屈筋腱損傷(zone TII)
 4.手掌部における屈筋腱損傷(zone III)
 5.手根管部での屈筋腱損傷(zone IV)
 6.前腕部における屈筋腱損傷(zone V)
 7.後療法
 8.腱剥離手術について(tenolysis)

第18章 伸筋腱の新鮮損傷
I.DIP関節部における伸筋腱損傷(zone I)
 治療
II.中節背面における伸筋腱損傷(zone II)
III.PIP関節背側における伸筋腱損傷(zone III)
IV.基節背面における伸筋腱損傷(zone IV)
V.MP関節背側における伸筋腱損傷(zone V)
VI.手背部および手関節部における伸筋腱損傷(zone VI、VII、VIII)

第19章 陳旧性屈筋腱損傷
I.腱の縫合
II.腱の移行術
III.指先部(zone I)での陳旧性屈筋腱損傷
 1.Advancement法
 2.DIP関節の良肢位での腱固定術、または関節固定術
 3.腱移植術(Pulvertaft法)
IV.No man's land(zone II)での陳旧性屈筋腱損傷
 1.腱移植の意義
 2.切開について
 3.Pulleyの残存
 4.損傷腱の剥離
 5.移植腱の採取
 6.移植腱の縫合
 7.移植腱の緊張度
 8.Pulleyの再建
 9.後療法
 10.高度瘢痕症例におけるsilicone rodの利用
 11.腱移植とparadoxical phenomenon
V.母指における陳旧性屈筋腱損傷(zone TII)
VI.手掌および手根管部(zone III、IV)における陳旧性屈筋腱損傷
VII.前腕部(zone V)における陳旧性屈筋腱損傷
 1.瘢痕が少なく良結果が期待される症例
 2.瘢痕と癒着が中等度に認められる症例
 3.瘢痕と癒着が高度に認められる症例

第20章 陳旧性伸筋腱損傷
I.DIP関節部における伸筋腱損傷(zone I)
II.PIP関節部における伸筋腱損傷(zone III)
III.MP関節背側および手背部における伸筋腱損傷(zone V、VI)
IV.手関節および前腕背側における伸筋腱損傷(zone VII、VIII)

第21章 その他の腱の諸問題(腱剥離、腱断裂、腱脱臼、腱鞘炎)
I.腱剥離術
II.腱の断裂
 1.屈筋腱の断裂
 2.伸筋腱の自然断裂
III.指伸筋腱の脱臼
IV.腱間結合による指独立伸展障害
V.小指(固有)伸筋腱の解離による障害
VI.狭窄性腱鞘炎
 1.症状
 2.診断
 3.原因と病理
 4.治療
VII.弾発指
 1.小児における弾発指
 2.成人における弾発指
 3.原因
 4.治療
VIII.手指における石灰沈着性腱周囲炎
IX.Intersection syndrome
X.手関節部の腱鞘炎
 1.尺側手根伸筋腱腱鞘炎
 2.橈側手根屈筋腱腱鞘炎
 3.尺側手根屈筋腱腱鞘炎
 4.音楽家の手(musician's hand)

第22章 末梢神経の損傷
I.神経の解剖
II.神経の変性と再生
III.神経損傷の症状
 診断と検査法
IV.神経損傷の分類
V.一次縫合と二次縫合の問題
VI.主要末梢神経の損傷
 1.手掌および指における神経損傷
 2.尺骨神経の損傷
 3.正中神経の損傷
 4.正中・尺骨神経の同時損傷
 5.橈骨神経の損傷
VII.末梢神経損傷の診断
 1.部分損傷の診断
 2.部位診断
VIII.治療方針の決定
IX.末梢神経損傷の治療
 1.保存療法
 2.観血療法
X.麻痺の回復
 1.年齢
 2.受傷と神経修復までの期間
 3.神経損傷のレベル
 4.局所の瘢痕と循環障害
 5.Gapとtensionの問題
 6.縫合手技
 7.術前・術後の処置
XI.骨折と末梢神経損傷
 1.鎖骨骨折に合併する神経損傷
 2.肩関節脱臼に合併する神経損傷
 3.上腕骨骨折に合併する神経損傷
 4.肘部骨折に合併する神経損傷
 5.前腕および手の損傷に合併する神経損傷
XII.神経剥離術と注射麻痺
 注射麻痺について

第23章 Entrapment neuropathy(絞扼性神経障害)
I.肘部管症候群(cubital tunnel syndrome)
 1.原因
 2.症状
 3.治療
II.前骨間神経の絞扼性神経障害
 Anterior interosseous nerve syndrome(pronator syndrome)
III.後骨間神経の絞扼性神経障害
 Posterior interosseous nerve syndrome、Supinator syndrome
IV.Supracondylar process(spur)による障害
V.手根管症候群(carpal tunnel syndrome)
 1.症状
 2.診断
 3.原因と病理
 4.治療
VI.尺骨神経管症候群(ulnar tunnel syndrome)
VII.ボーリングによる母指の障害
VIII.糖尿病と手の神経障害

第24章 末梢神経麻痺に対する腱移行術
I.腱移行術についての諸注意
 1.腱移行術の実施時期
 2.術前における拘縮の除去
 3.移行腱の選択と術式の決定
II.尺骨神経単独麻痺に対する腱移行術
 1.低位尺骨神経単独麻痺に対する腱移行術
 2.高位尺骨神経単独麻痺に対する腱移行術
III.正中神経麻痺に対する腱移行術
 1.低位正中神経麻痺に対する腱移行術
 2.高位正中神経麻痺に対する腱移行術
IV.正中・尺骨両神経麻痺に対する腱移行術
 1.低位正中・尺骨両神経麻痺に対する腱移行術
 2.高位正中・尺骨両神経麻痺に対する腱移行術
V.橈骨神経麻痺に対する腱移行術
 1.適応の問題
 2.腱移行術の実施
 3.Boyes法

第25章 腕神経叢の損傷(分娩麻痺、副神経・肩甲上神経・腋窩神経麻痺)
I.腕神経叢の解剖
II.腕神経叢麻痺の発生
III.腕神経叢の損傷部位と損傷状況
IV.症状と診断
V.Avulsionとruptureの鑑別
VI.腕神経叢麻痺の治療
 1.保存療法
 2.手術療法
 3.機能再建術
VII.分 娩 麻 痺
VIII.副神経麻痺
IX.肩甲上神経麻痺
X.腋窩神経麻痺

第26章 神経麻痺後の機能再建(肩・肘・前腕の麻痺、頸髄損傷)
I.肩関節の麻痺
 1.筋の移行術
 2.肩関節固定術
 3.肩関節の内転・内旋拘縮に対する手術
II.肘関節の麻痺
 1.Steindler法、およびその変法
 2.広背筋移植法
 3.大胸筋移植法(Clark法)
 4.上腕三頭筋移植
III.前腕の麻痺
 1.回内位変形
 2.回外位変形
IV.手における麻痺
 1.腱固定術(tenodesis)
 2.母指の固定術
 3.機能的把持副子(flexor hinge splint)の利用
V.頸髄損傷と手の機能再建
 麻痺の分類
 1.肘の屈曲は可能であるが、手指は完全に麻痺するもの
 2.手関節の背屈は可能であるが、指の伸展・屈曲が不能なもの
 3.指の伸展は可能であるが、指の屈曲が不能なもの
 4.Intrinsic musclesのみに麻痺をみるもの
VI.進行性筋萎縮症性疾患と手の外科

第27章 痙性麻痺の手
I.手術適応の問題
II.各部位における変形の矯正手術
 1.肩関節の変形に対する手術
 2.肘関節、前腕の変形に対する手術
 3.手関節の屈曲変形
 4.屈筋、回内筋群起始部解離術
 5.母指の内転拘縮
 6.指の変形

第28章 微小外科(マイクロサージャリー)
I.縫合材料と手術器械
II.端々吻合
III.切断指再接着手術
IV.神経・血管損傷に対するマイクロサージャリー的処置
V.一次的再建術
VI.手の機能再建でのマイクロサージャリーの応用

第29章 血管系疾患、胸郭出口、CRPS
I.血管の各種障害について
 1.血行障害の診断
 2.外傷性動脈瘤(traumatic aneurysm)
 3.外傷性動静脈瘤(traumatic arteriovenous aneurysm)
 4.閉鎖性血栓血管炎(thromboangitis obliterans、Buerger病)
 5.閉鎖性動脈硬化症(arterial thrombosis)
 6.動脈血栓症(arterial thrombosis)
 7.動脈塞栓症(arterial embolism)
 8.胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome : TOS)、神経血管圧迫症候群(neurovascular compression syndrome)
 9.Raynaud病(Raynaud disease)
 10.Raynaud症候群(Raynaud syndrome)
 11.Shoulder-hand syndrome
 12.カウザルギー(causalgia)、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
 13.Complex regional pain syndrome(CRPS)

第30章 化膿性疾患(含特殊感染症)
I.化膿の波及と手の解剖
II.ひょう疽(felon)
III.爪側炎(paronychia)
IV.中節、基節の掌側皮下膿瘍
V.急性化膿性滑膜性腱鞘炎
VI.筋膜腔の急性化膿性炎症
 1.Mid-palmar spaceの炎症
 2.Thenar spaceの炎症
 3.指間部膿瘍(web space abscess)
 4.Parona spaceの炎症
 5.Posterior adductor spaceの炎症
VII.手背部の炎症
VIII.骨髄炎および関節炎
IX.犬咬創(dog bite)、人咬創(human bite)
X.後療法
XI.特殊な感染症
 1.結核性炎症
 2.非定型的感染症

第31章 肘、手のリウマチ
I.変形の原因とその進展過程
II.変形の予防
III.手術適応の問題
IV.肘関節のリウマチ変化とその治療
 1.肘関節の滑膜切除術
 2.肘滑膜切除の予後
 3.人工肘関節置換術
V.手関節のリウマチ変化とその治療
 1.手関節部における滑膜切除術
 2.腱の自然断裂
 3.手関節固定術および橈骨遠位端骨切り術
 4.屈筋腱のtenosynovitisと手根管症候群
 5.指における屈筋腱のtenosynovitis
 6.リウマチにおける弾発指
VI.MP関節のリウマチ変形とその治療
 1.MP関節における滑膜切除術
 2.軽度のswan neck変形に対するrelease operation
 3.MP関節における伸筋腱の尺側脱臼の矯正
 4.MP関節の変形矯正と関節形成術
 5.指の尺側偏位と伸筋腱の尺側脱臼
 6.高度なswan neck変形の矯正
VII.PIP関節のリウマチ変形とその治療
 1.PIP関節の滑膜切除術
 2.Button hole(boutonniere)変形の矯正
VIII.DIP関節のリウマチ変形とその治療
IX.母指のリウマチ変形とその治療
X.リウマチと誤りやすい膠原病

第32章 手の先天異常
I.成因
II.分類
III.先天異常の分類項目別治療
 [I]形成障害による異常〔failure of formation of parts(arrest of development)〕
   横軸欠損(transverse deficiencies)
   長軸欠損 longitudinal deficiencies(縦軸欠損)
   Tendon or muscle dysplasia(筋腱形成障害)
   Nail dysplasia(爪形成障害)
 [II]Failure of differentiation of parts(分化障害)
   Synostosis(先天性骨癒合症)
   Radial head dislocation(先天性橈骨頭脱臼)
   Symphalangism(指節骨癒合症)
   Contracture(拘縮)
 [III]Duplication(重複)
   母指多指症(thumb polydatyly)
   中央指列多指症(central polydactyly)
   小指多指症(polydactyly of the little finger)
   三指節母指(triphalangel thumb)
   鏡手(mirror hand)
 [IV]Abnormality of induction of digital rays(指列誘導障害)
   Soft tissue(皮膚性合指症)
   Skeletal骨性合指(中央列合指、列手症、複合列手)
 [V]Overgrowth(過成長)
   Macrodactyly(巨指症)
 [VI]低成長(undergrowth)
   短指症(brachydactyly、short finger)
   斜指症(clinodactyly)
 VII Constriction hand syndrome(絞扼輪症候群)
 VIII Generalized skeretal abnormalities & a part of syndrome(骨系統疾患)

第33章 手の腫瘍
I.皮膚に発生する腫瘍
 1.皮膚癌
 2.Melanoma(黒色腫)
II.軟部組織よりの腫瘍
 1.脂肪腫(lipoma)
 2.線維腫(fibroma)
 3.ガングリオン(ganglion)
 4.巨細胞腫(giant cell tumor of tendon sheath, benign synovioma)
 5.類上皮嚢腫(epidermoid cyst)
 6.肉芽腫(granuloma)
 7.末梢神経よりの腫瘍
 8.血管系の腫瘍
 9.リンパ管腫(lymphangioma)
 10.Tenosynovial chondromatosis
III.骨よりの腫瘍
 1.骨嚢腫(bone cyst)
 2.骨内ガングリオン
 3.内軟骨腫(enchondroma)
 4.外骨腫(exostosis)、軟骨性外骨腫(osteochondroma)
 5.良性巨細胞腫(benign giant cell tumor)
 6.類上皮嚢腫(epidermoid cyst)
 7.類骨骨腫(osteoid osteoma)
 8.手における悪性腫瘍
IV.痛風(gout)
 1.発生と診断
 2.手術適応
 3.手術療法
 4.薬物療法

主要文献
欧文索引
和文索引

改訂第6版を出版してから20年余が経過した。私にはもはや改訂はできないものと諦めていた。しかし内容の不足は読者に対して申し訳ないと常々考えていた。たまたま県立身障者リハビリテーションセンター退職後は広島手の外科・微小外科研究所に迎えられ、これも所長から顧問職となり、時間的余裕ができたのを機会に不足部分の追加ができないかと考えた。年齢を考えて恥ずかしい面もあり、また不勉強、経験不足は否定できないが、現在のまま放置するのも残念と考えていたところ、生田義和名誉教授のアドバイスも頂き改訂に着手することとした。マイクロサージャリーの項については生田名誉教授、また砂川融教授らの援助を頂くこととし、一部手術については広島手の外科・微小外科研究所木森研治部長の手術を参考にさせて頂いた。
 本書は「私の手の外科─手術アトラス」と姉妹をなすものであり、今回の改訂では「手術アトラス」の図を一部転用させて頂いた。実際とはprinciples and practiceであり、実施面についても頭でイメージしながら読んで頂ければ幸いである。
 最近の手の外科の進歩は目覚ましいものがあり、微に入り細にわたっての術式が発表されているが、細にこだわり大局を忘れてはならない。手術は手の外科に長年従事してきた人に許されるもので、手を始めて10年以内の人は手の外科の歴史、手の外科の基礎を知る必要がある。技術は教えられるものでなく本人が自らの努力により頭と体で会得するもので、それには10年の時間が必要であろう。マイクロサージャリーの技術は手の外科の進歩に絶対必要である。手術はatraumatic techniqueに徹することであり、瘢痕をいかに最小にするかにある。手の手術をすれば手の外科医だと考えるべきでない。私は手の外科を始めて55年になる。ここに改訂版を出すことの気恥ずかしさはあるが、一面安堵感もあり、多くの人に支えられ今日に至ったことを感謝している。
2011年9月
広島大学名誉教授
津下健哉

20世紀の二度にわたる世界大戦は経済構造や政治体制にとどまらず、科学や文化の隅々にまで及ぶ変化を未曾有の規模と速度で世界全体にもたらした。「手外科」というきわめて専門性の高い外科分野もこの極端な時代のうねりの中で勃興し、第二次世界大戦の終了と時を同じくして組織された米国手外科学会を嚆矢として、前世紀後半に瞬く間に専門学会が世界各所に組織され、今日の隆盛にいたった。日本が幸運であったのは、手外科黎明期に本書の著者である津下健哉先生と、新潟大学の故田島達也先生という2人の偉大なパイオニアが存在し、それぞれが異なる手法を用いて若手医師のアニマルスピリッツを強烈に刺激していたことであろう。その結果、1957年には日本手外科学会が世界で2番目の専門学会として設立され、その後の急速な発展により今日では所属会員数が3,500名あまり、独自の手外科専門医制度を有し、日本医学会分科会にも名を連ねるまでになった。今回第7版が出版された本書は日本における急速かつダイナミックな手外科の発展を支えた名著であり、その具体的かつ包括的な記述ゆえに、およそ手外科にかかわるすべての医師が座右の書としてきた不朽の大著である。
 はじめて本書に接する若手医師にとっては、「手の外科の実際」というタイトルが医学書としてはめずらしく感じるかもしれない。しかし、「実際」という一語に津下先生が本書に込めた思いが凝縮している。一般的に医学書は解剖・生理など基礎的知識の解説に始まり、臨床的事項の記述も既存の理論や文献的考察に多く依拠する。これに対し、本書は「手の外科の特殊性」という異例の表題を与えられた1ページあまりの短い文章で始まる。本書には目次の前に「改訂第7版の序」と「第1版の序」という二つの序文があるが、本書をはじめて手にする若手医師にはこの三つの文章を読むところから始めてほしい。なぜなら、ここにはパイオニアたる津下先生が手外科を志すすべての人に伝えたいと願い、本書を出版する大きな原動力となった、そして第1版の出版から46年を経た今日まで一度も揺るいだことがないと思われる先生の思いが丁寧に記述されているからである。丁寧であるが実直に書かれたこれらの文章を読むと、本書の編纂をとおして津下先生がめざしたものが手外科の理論化や公式化ではなく、先生自らが実践をとおして体得した知識と技術をわれわれ後進に伝授することであると感じられる。本書は求道者による指南書であり、宮本武蔵の『五輪書』を彷彿とさせる手外科医必読の書なのである。序文に書かれている「手の外科の原則とその考え方の常識」の理解は他人の手にメスを入れるための大前提であり、「それには10年の時間が必要であろう」との記述は津下先生の55年の経験に裏打ちされた現実的指摘であろう。読者にはぜひ、この言葉を重くとらえて本書を繰り返し読んで、注意深く手外科診療を実践してほしい。
 今回の改訂は第6版から実に20年ぶりとなる。実際にはこの間も本書の姉妹本である『私の手の外科―手術アトラス』が改訂・増刷を繰り返しており、津下先生は自ら渉猟し、また、高弟の協力を得ることで手外科の変遷を弛むことなくつぶさにみつめ続けている。津下先生は90歳とご高齢ですでにメスをとられることはないとうかがったが、現在でも学会場に足を運び、会場で熱心にメモをとり、少しも奢ることなく、真摯に手外科に向かい合う姿勢をしばしば拝見する。第6版と比較すると今回の改訂は図表の追加や、記述の変更などを含め目立ったものだけでも50ヵ所以上に及ぶ。過去20年間に大きく進歩したマイクロサージャリーや手関節外科の章では、生田義和広島大学名誉教授や砂川融広島大学大学院上肢機能解析制御科学教授の支援により大幅な改訂が行われているが、それ以外の部分でも新たな皮弁や、Oberlin法、土井のdouble muscle法、健側第7頚神経移行術といった腕神経叢損傷治療法、手指や肘関節に対する表面置換型全人工関節、手根管症候群に対する内視鏡手術やIndiana tomeを用いた小侵襲手術、高弟・木森研治氏(土谷総合病院部長)の開発した母指対立再建法、内反手に対するIlizarov法など、第6版以降に出現した診断・治療法が多々追加されている。先天異常の項でも、従来のSwanson分類を日本手外科学会先天異常委員会による修正分類に改め、日本主導で確立された指列誘導障害などの新しい概念も紹介されている。これらの改訂に加え、評者がたいへん心打たれたものは肘関節形成術に関する記述の変更である。第6版で紹介されている後外側アプローチは「津下法」と呼ばれ親しんできたものであるが、これに加え尺側アプローチの有用性を紹介し、また、関節リウマチにおいては従来法と異なり橈骨頭切除をすすめるなど、決して過去の業績に固執せず、常に正しいものを探求する姿勢にわずかの揺るぎもみられない。細かな術式や後療法の変更は随所にみられ、求道者の真骨頂が発揮されている。
 先にも述べたように本テキストの価値は単に知識の伝授にとどまらない。本書にはじめて接する人だけでなく、これまで第6版を座右の書と大切にしてきた人にも、この第7版にかえてさらにパイオニアの精神に触れていただきたいと思う。
評者● 平田仁
臨床雑誌整形外科63巻4号(2012年4月号)より転載

9784524262175