書籍

感染症の診断って、こんなちょっとしたことで差がついちゃうんですね。

編集 : 蛹エ克紀
ISBN : 978-4-524-25993-9
発行年月 : 2017年2月
判型 : A5
ページ数 : 122

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

感染症を適切に診断する上でうっかり見逃しがちなポイントを短時間で効果的に学ぶための実践書。感染症の診療現場で臨床医と臨床検査技師が共有しておきたい知識・ピットフォールをQ&Aでまとめ、互いの疑問や認識のズレが解消され、一歩上の感染症診断が可能となる一冊。

1章 大きな声では聞きにくい感染症診断のキホンをそっと聞いてみる。
 (1)喀痰培養
  Q1 喀痰培養ってどんな性状の喀痰を出せばいいの?
  Q2 喀痰のグラム染色ってなにをみているの?
  Q3目的菌を伝えておくとどんなメリットがあるの?
 (2)血液培養
  Q4 血液培養が有用な患者さんって?
  Q5 採取のタイミングや採血量には決まりがあるの?
  Q6 血培陽性になったら,原因菌って考えてもいいの?
 (3)便培養
  Q7 便培養の目的菌はどうして必要なの?
 (4)尿培養
  Q8 尿検体を採取するときに気をつけることは?
 (5)抗酸菌検査
  Q9 塗抹,培養以外の検査ってなにかある?
 (6)抗原検査
  Q10 肺炎なのにどうして尿中抗原を検査するの?
  Q11 非定型肺炎らしいんだけど,どんな検査をしたらいいの?
  Q12 ディフィシル・トキシン,ディフィシル菌体抗原検査ってなに?
  Q13 インフルエンザ抗原検査が陰性なのに抗インフルエンザ薬投与ってどういうこと?
 (7)特殊検査
  Q14 特殊培地での培養が必要な病原体って?
  Q15 長期間培養しないと見逃しちゃう病原体って?
 (8)薬剤耐性菌検査
  Q16 薬剤耐性菌の判定ってどうやるの?
  Q17 S(感性)と判定されれば,その抗菌薬は使っても大丈夫?
  Q18 MICの値が低いのにR(耐性),それってどういう意味?
 (9)その他
  Q19 時間外に採取した検体はどうやって保管すればいいの?
2章 よくある症例の,よくあるピットフォールを胸に刻んでおく。
 Case1 肺結核〜肺炎とばかり思っていたのに
 Case2 感染性心内膜炎〜血液培養を1セットしかとらなかったことがきっかけで
 Case3 市中肺炎〜見落としがちな検査オーダーのポイントとは.
 Case4 ノカルジア〜脳腫瘍?肺腫瘍?紆余曲折を経て導き出した結論は
3章 感染症診断の検査法をちゃんと知る。
 1.検体処理の流れ〜検体提出から結果が判明するまで
 2.各検査法〜これだけは知ってほしいポイント
  a.塗抹検査
  b.培養検査
  c.菌の同定と薬剤感受性検査
  d.抗原検査
  e.遺伝子検査
4章 ああ,これぞ現場の感染症診療。今日からできる実地のがんばり!
 1.感染制御チームが成功する秘訣
 2.病院に微生物検査室がないときの工夫
索引

序文

 感染症はありふれた疾患であり、その診断は極めて重要である。適切な診断は、患者の予後に大きく貢献できるだけではなく、感染対策上も有用である。しかしながら、症状が多彩であることや原因微生物も様々であることから、感染症の診断は難しい、といわれる。その一方で、診断を進めていくプロセスは、謎解きのようでとても面白いと感じる人も多い。
 本書は、難しいが面白い感染症診断をわかりやすく学ぶために企画された。まずは基本的な知識の習得が大切であり、わかっているのに忘れがち、うっかり見逃しがちなポイントを短時間で効果的に学べるよう配慮した。臨床医・臨床検査技師がともに知っておきたい知識を......形式で解説した。患者を診療する医師と原因微生物を検出する臨床検査技師の対話が進むことで確定診断がつく症例も多く、円滑なコミュニケーションが必要である。本書がその一助になれば幸いである。
 得られたノウハウを定着させるためには、症例を通じて学ぶことが望ましい。研修医と指導医の会話形式によるケーススタディにベテラン技師のコメントも盛り込み、臨場感あふれる内容に仕上げることができた。
 本書は、平易な文章で執筆していただいており、楽しく、一気に読み通せるように構成されている。感染症診断や微生物検査にかかわるすべての医療従事者に活用され、感染症診療内容の向上、ひいては患者の予後改善に結びついていくことを切望している。

2017年1月
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野(臨床検査医学)/長崎大学病院検査部
蛹エ克紀

 本書は、感染症医と臨床微生物検査技師、専門家によって著された良書である。近年、多くの病院でインフェクションコントロールチーム(ICT)が活動し、抗菌薬の適正使用(antimicrobial stewardship)が推進されつつある。その活動のスタートラインとなるのは、より質の高い微生物検査を含めた適切な診断であることは言うまでもなく、「こんなちょっとしたこと」による大きな「差」を丁寧に解説している。
 本書は4章で構成されている。第1章は「大きな声では聞きにくい感染症診断のキホンをそっと聞いてみる。」として、喀痰、血液、便、尿、抗原検査、特殊検査など9項目である。なかでも検体採取に関わる注意事項、目的菌を伝えるメリット、血液培養の採取時間の記載、各種塗抹・培養検査、薬剤耐性検査、抗原検査の位置づけ、検体保存など、感染症検査では検査技師とのコミュニケーションが不可欠といわれるのはなぜか、具体的にどのような理由で重要かが詳細に述べられている。
 第2章の「よくある症例の、よくあるピットフォールを胸に刻んでおく。」は、研修医、指導医、検査技師との4つのケースディスカッション形式である。感染症の診断において、感染症医また臨床微生物検査技師からのコメントがいかに重要かは「ここがポイント」、現場の医師がそれぞれの微生物検査としてあらかじめ知っておかなくてはならないことは「医師と検査技師の認識のズレ」として述べられている。医師からコミュニケーションをとること、検査技師からコミュニケーションをとることによる感染症診断の「差」について、肺炎、菌血症、膿瘍の「よくある症例」から多くの「ピットフォール」を学ぶことができる。
 第3章は「感染症診断の検査法をちゃんと知る。」である。検体処理の流れ、塗抹・培養・同定感受性・抗原・遺伝子検査など一連の感染症検査について、それぞれの検査の位置づけも含めてオーバービューされている。
 第4章は「ああ、これぞ現場の感染症診療。今日からできる実地のがんばり!」である。「感染制御チームが成功する秘訣」、「病院に微生物検査室がないときの工夫」は、多くの読者にとって最も知りたい内容ではなかろうか。
 筆者は大変楽しく読むことができ大いに勉強になった。もちろん、感染症を深く習熟する専門家や、臨床微生物検査技師にとっては、すでに周知の内容もあるかもしれないものの、現場の医療者、インフェクションコントロールドクター(ICD)を含むICTやAST(antimicrobial stewardship team)にとっては、日々の活動の指針ともなりうるとも思う。ぜひ抗菌化学療法に携わる薬剤師や感染管理認定看護士(ICN)の方にも読んでいただきたい。
 本書の序文として、編者の蛹エ克紀先生が「ひいては患者の予後改善に結びついていくことを切望している」と結んでおられる。私は、患者の予後改善に結びつくことを確信しているし、現場の感染症診療においてより楽しく仕事ができるようになると思う。感染症診療における微生物検査の重要性に鑑み、本書が一人でも多くの医療者の学びとなり、全国の医療施設で活用されることを願ってやまない。

臨床雑誌内科120巻6号(2017年12月号)より転載
評者●聖マリアンナ医科大学感染症学講座教授 國島広之