書籍

スタートアップ 心エコーマニュアル改訂第3版

考える心エコー実践のために

: 増山理/合田亜希子
ISBN : 978-4-524-25895-6
発行年月 : 2020年6月
判型 : A5
ページ数 : 240

在庫僅少

定価4,180円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

“考えながら行う心エコー”“頭を使った心エコー”をコンセプトに心エコー検査の基本から疾患別の検査ポイントまでを簡潔にまとめた大好評書が遂に改訂!一層みやすい心エコー像へアップデートし、新しい指標や重症度評価も反映している。これまでどおり病態や所見の把握に結び付くシェーマを豊富に掲載。知りたい所見や計測値、症候からどこを検査すればよいか、診断の決め手をスッキリ解説。研修医、検査技師にオススメの1冊。

1章 検査の前に
 エコー検査の基本
 エコー図法
  a)種類
  b)よい画像を撮るコツ
 ドプラ法
  a)ドプラ法の基礎
  b)ドプラ計測の基本的な注意点
2章 基本的な検査手順
 断層エコー・Mモードエコーの基本断面
  a)もっとも基本となる断面(胸骨左縁アプローチ左室長軸像)
  b)Mモードエコー図
  c)基本断面(胸骨左縁アプローチ左室短軸像:大動脈弁レベル)
  d)基本断面(胸骨左縁アプローチ左室短軸像:僧帽弁口部レベル)
  e)基本断面(胸骨左縁アプローチ左室短軸像:腱索および乳頭筋レベル)
  f)基本断面(胸骨左縁アプローチ左室短軸像:心尖レベル)
  g)基本断面(心尖アプローチ四腔断面像)
  h)基本断面(心尖アプローチ二腔断面像[第1斜位RAO像])
  i)基本断面(心尖アプローチ左室長軸像)
  j)基本断面(肋骨弓下アプローチ矢状断面像)
 断層エコーの応用断面
  a)応用断面(肋骨弓下アプローチ四腔断面像)
  b)応用断面(肋骨弓下アプローチ左室短軸断面像)
  c)応用断面(胸骨上窩アプローチ)
  d)その他の応用断面
 ドプラ法
  a)カラードプラ法による異常血流の検出手順
  b)圧較差の推定法
  c)左室拡張能の評価
  d)心拍出量の計測
  e)肺動脈・右室流出路血流の計測
3章 虚血性心疾患
 病態
  a)狭心症
  b)急性冠症候群
  c)陳旧性心筋梗塞
 壁運動の評価
  a)壁運動異常の分類とその定義
  b)基本各断面と冠動脈灌流領域
  c)壁運動異常の拡がりと程度の評価(壁運動スコア)
  d)ドブタミン負荷エコー法
 冠動脈血流の検出
  a)右冠動脈起始部,左冠動脈主幹部,近位左前下行枝の描出とドプラ血流計測
  b)遠位左前下行枝の描出とドプラ血流計測
 急性心筋梗塞症の合併症
  a)自由壁破裂
  b)心室中隔穿孔
  c)心室瘤
  d)乳頭筋断裂・機能不全と僧帽弁逆流
  e)壁在血栓
  f)右室梗塞
4章 弁膜症
 1 僧帽弁狭窄症
  病因
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  計測値の解釈
  検査の流れ
 2 僧帽弁逆流症
  病因
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  計測値の解釈
  検査の流れ
 3 僧帽弁逸脱症
  病因
  定義・診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査で特に注意を要するイメージ
 4 大動脈弁狭窄症
  病因
  病態生理
  臨床医が知りたい所見,計測値
  計測値の解釈
  検査の流れ
 5 大動脈弁逆流症
  病因
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
5章 感染性心内膜炎
 病因
 診断の決め手
 臨床医が知りたい所見,計測値
 検査の流れ
6章 人工弁機能不全
 病因
 診断の決め手
 診断の手順
7章 心筋症
 1 肥大型心筋症
  病因
  分類
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 2 拡張型心筋症
  病因
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 3 拘束型心筋症などその他の心筋疾患
  病因
  拘束型心筋症の病態生理
  拘束型心筋症の診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  特に重要な検査の流れ
8章 高血圧心
 病態生理
 診断の決め手
 臨床医が知りたい所見,計測値
 計測値の解釈
 検査の流れ
9章 心不全
 定義・病因
 病態生理
 心不全の分類
 診断の決め手
 臨床医が知りたい所見
 検査の流れ
10章 心膜疾患
 1 心膜液貯留/心タンポナーデ
  病因
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 2 収縮性心膜炎
  病態
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
11章 大動脈疾患
 1 大動脈解離
  病態
  分類
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 2 大動脈瘤
  病態
  診断の決め手
  検査
12章 右心系の疾患
 1 右室圧負荷疾患(肺高血圧症)
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 2 右室容量負荷疾患
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 3 三尖弁逆流症
  病因
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
13章 心臓の腫瘍・血栓
 正常構造物
 心腔内血栓
  a)左房内血栓
  b)左室内血栓
 腫瘍
  a)粘液腫
  b)その他の腫瘍
  c)転移性心腫瘍
14章 先天性心疾患
 1 心房中隔欠損症
  分類
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  計測値の解釈
  検査の流れ
 2 心室中隔欠損症
  Kirklin分類
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  計測値の解釈
  検査の流れ
 3 房室中隔(心内膜床)欠損症
  定義
  Rastelli分類
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
 4 動脈管開存症
  定義
  病態生理
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
  検査の流れ
 5 Ebstein病
  病態
  診断の決め手
  臨床医が知りたい所見,計測値
15章 依頼目的に応える心エコー検査のマニュアル
 収縮期心雑音
 拡張期心雑音
 突然の強い胸痛
 ショック
 断続的な胸痛(狭心症の疑い)
 心電図で左室肥大が疑われた
 心電図
 ST-T変化
 呼吸困難(労作時・安静時)
 血栓塞栓源の探索(脳梗塞・末梢動脈閉塞症)
 高血圧
 不整脈(心房細動)
 不整脈(心室期外収縮)
 徐脈性不整脈(失神・ふらつき)
 心臓以外の手術の術前検査・スクリーニング
 発熱の原因精査(感染性心内膜炎)
 陳旧性心筋梗塞の定期的な検査
 狭心症の定期的な検査
 冠動脈バイパス術後の定期的な検査
 慢性心不全(心筋症)の定期的な検査
16章 予想外の異常所見がみられたときのマニュアル
 左房拡大
 左房縮小
 左室拡大
 左室縮小
 右心系拡大
 大動脈弁異常エコー
 僧帽弁異常エコー
 軽度の大動脈弁逆流
 軽度の僧帽弁逆流
 E/A比の減少
 E/A比の増大
 左室内の高流速駆出血流
索引

改訂第3版の序

 『スタートアップ心エコーマニュアル』初版を上梓して18年、改訂第2版を出版して12年以上を経ました。この度、改訂を重ねることになり、まずはご支持いただいた読者の皆さん、出版社の皆さんに厚く御礼を申し上げます。出版社の方には数年以上前に再度改訂してはどうかという話をいただいておりましたが、心エコー以外の仕事の多忙もあり、そのままになっていました。心エコーの分野も日進月歩です。組織ドプラ法、スペックルトラッキング法などの新手法開発は研究面では多くの新しいデータを産みましたが、なかなか実臨床に応用されるところまでには至ってないという感じを抱いておりました。というようなこともあり、改訂が延び延びになっていました。さすがに10年以上経つと内容をアップデートする必要があるとのことで、兵庫医科大学で心エコーグループのリーダーとして10年以上一緒に仕事をしてきた合田亜希子と増山理の共著という形で改訂第3版を出版させていただきました。
 時代遅れとなった記載は省き、新しい記載をどんどん追加するのが合田の務めと頑張ってもらいました。結果、不要な記載は削除し、一方、新しいエビデンスを踏まえた記載を追加しました。また、骨格を変えることなく、数値や内容を最新のものとしました。本書は写真よりもシェーマが中心であるという特徴があります。とは言っても、写真でないと意図が伝わらないところには、実際の心エコー図の写真を使っておりました。超音波装置側で特にハーモニックイメージングなどの技術革新により画質は著しく向上しましたので、そこにもいろんな観点で配慮しました。
 実際の診療の一部として行われる心エコー検査がこの10年・20年で根本的にはそれほど変わっていないのか、今回の改訂によってこれまでの版と全く違った書籍にはなりませんでした。これは、本書の骨格を重視したいという私たちの考えもありましたが、骨格を大きく変えずとも、今もなお、本書がこれから心エコーを学び始める医師や検査技師にとって要点を押さえた、読みやすい構成だからかもしれません。心エコー図の画質の向上、計測数値の信頼度の向上などはあっても、個々の検査でその目的から疑わないといけない病態や、必ず計測しないといけない指標などは時代を超えて変わらないのだと思います。本書が令和の時代にも充分お役に立つことを確信して、皆さまにお届けいたします。

2020年6月
増山理
合田亜希子

 循環器診療において心エコー図検査は、非侵襲的で簡便に行うことができ、そのうえ米国などに比較するとわが国では保険点数が低く抑え込まれていることもあり、広く日常診療で実施されている。簡便に行うことができる検査であるが、その診療上の役割は大変重要で、心エコー図検査が診断、病態把握のカギを担っている循環器疾患は多く、心エコー図検査に要求されるレベルは高くなっている。したがって、ある一定のレベル以上で心エコー図検査を実施し、データを解釈できることが、循環器診療に携わる者には責務として求められるといっても過言ではない。
 しかし、そのようなレベルで心エコー図検査を実施・解釈できるようになることは平易ではないことも事実である。初心者の頃は検査を行いながら、あるいは得られた記録をみながら不安になることも少なくない。そこで、筆者の師である増山 理先生が、本来臨床現場で求められる個々の患者に合わせた心エコー図検査、つまりテーラーメイド型の検査を行うことができるようになる手前のレベルの医師や検査技師向けとして本書を執筆された。2002年に初版、2007年に改訂第2版を発刊され、このたびはこれをベースに、兵庫医科大学で増山先生とともに心エコー図学に取り組んでおられた合田亜希子先生が共著として加わられて改訂第3版が発刊された。
 心エコー図検査は、本書初版が発刊された時点ですでに循環器領域における検査法としては確立した位置づけにあり、この20年間に検査の基本骨格は大きく変わっておらず、そのため本書の基本骨格も大きくは変えられていない。しかし、肉付けにあたる部分は改訂第2版以降に加わった知見を反映したupdateされた内容となっている。また、how toばかりに気をとられてしまう人が見逃しがちな“基本中の基本で、必ず知っておかなければならない点”がきっちりと押さえられている。実際のエコー画像よりもイラストが多用されていることで、理解してもらいたい点が強調されやすくなっており、本書の目的に適った編集方針となっている。
 増山先生が初版で書いておられるように、本書は心エコーに関することを全て網羅しているわけではなく、あくまで必要最低限のエッセンスを知るための入門書として活用し、さらに深めて勉強したい疑問点が残ったり、あるいは興味をもつ点に気づいたりした場合には、すでに多く出版されている分厚い教科書を用いて知識を深めていただければ、心エコーに精通した専門医、専門技師になっていただけると思う。多くの医師、検査技師の方が本書をうまく活用され、次のステップに向かうための礎としていただくことを期待している。

臨床雑誌内科126巻5号(2020年11月号)より転載
評者●鳥取大学医学部循環器・内分泌代謝内科 教授 山本一博

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