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呼吸器疾患最新の治療2016-2018

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編集 : 杉山幸比古/門田淳一/弦間昭彦
ISBN : 978-4-524-25834-5
発行年月 : 2016年3月
判型 : B5
ページ数 : 494

在庫品切れ・重版未定

定価11,000円(本体10,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

最新情報と治療方針を整理し、簡潔にまとめた「最新の治療」シリーズの呼吸器版。巻頭トピックスでは、「高速シークエンサーと疾患診断技術開発」「生物学的製剤と呼吸器疾患」「中東呼吸器症候群(MERS)」などの注目テーマを取り上げた。各論では治療方針、処方の実際から患者管理、生活指導までを具体的に記すとともに、治療に関する最新の知見を紹介し、呼吸器診療のすべてを網羅する。

I 巻頭トピックス
 1.高速シークエンサーと疾患診断技術開発
 2.microRNA研究と癌診療−次世代がん診断国家プロジェクトも含めて
 3.コンパニオン診断薬の展望
 4.生物学的製剤と呼吸器疾患
 5.肺移植の現状
 6.中東呼吸器症候群(MERS)
 7.深在性真菌症ガイドラインupdate−肺アスペルギルス症
 8.肺炎の予防戦略update
 9.呼吸器感染症における網羅的細菌叢解析による原因菌検索法
 10.COPDのphenotype
 11.閉塞性細気管支炎の現況
 12.特発性肺線維症の新治療
 13.特発性肺線維症の基礎
 14.難治性稀少肺疾患の治療開発
 15.EBUSと気管支鏡
II 主な呼吸器用薬剤の作用機序と適応
 1.鎮咳薬
 2.去痰薬
 3.気管支拡張薬
 4.抗アレルギー薬
 5.抗炎症・免疫抑制薬(マクロライドも含む)
 6.副腎皮質ステロイド薬
 7.抗癌薬
 8.抗菌薬
III 呼吸器疾患の治療手技
 1.気管挿管/気管切開
 2.酸素療法の適応と投与法
 3.侵襲的人工呼吸の適応とウィーニング
 4.NPPV(非侵襲的陽圧換気)の急性呼吸不全における適応と実際
 5.胸腔穿刺/胸腔ドレナージ
 6.心膜腔穿刺法と開窓術
 7.気道狭窄治療−レーザー治療とステント治療
 8.在宅酸素療法の適応と導入
 9.肺理学療法
 10.運動療法の実際
 11.在宅人工呼吸療法の適応
IV 呼吸器系の救急治療
 1.慢性呼吸不全の急性増悪
 2.重症喘息発作
 3.喀血
 4.気胸
 5.胸水
 6.気道異物(成人)
 7.化学物質の吸入
 8.気道熱傷
 9.溺水
 10.高地肺水腫
V 呼吸不全と呼吸調節障害
 1.急性呼吸不全とARDS
 2.慢性呼吸不全
 3.睡眠時無呼吸症候群
 4.原発性肺胞低換気症候群
 5.過換気症候群
VI 呼吸器感染症
 1.かぜ症候群と急性気管支炎
 2.百日咳(成人)
 3.原因菌不明の肺炎(市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎を含む)
 4.マイコプラズマ肺炎
 5.クラミジア・ニューモニエ肺炎
 6.オウム病
 7.Q熱
 8.レジオネラ肺炎
 9.肺膿瘍
 10.肺クリプトコックス症とその他の肺真菌症
 11.MRSA肺炎
 12.緑膿菌感染症
 13.肺結核(症)
 14.結核性胸膜炎
 15.非結核性抗酸菌症
 16.寄生虫,リケッチアによる肺感染症
 17.ニューモシスチス肺炎
 18.誤嚥性肺炎
VII 閉塞性肺疾患と気道系疾患
 1.気管支喘息
 2.咳喘息
 3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 4.びまん性汎細気管支炎/副鼻腔気管支症候群
 5.気管支拡張症
VIII 間質性肺疾患
 1.急性間質性肺炎
 2.特発性肺線維症
 3.非特異性間質性肺炎(NSIP)
 4.特発性器質化肺炎(COP/BOOP)
 5.肺Langerhans細胞組織球症
 6.慢性好酸球性肺炎
 7.肺胞蛋白症
 8.リンパ脈管筋腫症
 9.肺胞微石症
IX 免疫・アレルギー性肺疾患
 1.サルコイドーシス
 2.過敏性肺炎
 3.アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
 4.急性好酸球性肺炎
 5.ANCA関連肺疾患
 6.granulomatosis with polyangiitis(GPA,Wegener肉芽腫症)
 7.Goodpasture症候群
 8.IgG4関連呼吸器疾患
X 医原性肺疾患
 1.薬剤性肺障害
 2.放射線肺炎
 3.造血幹細胞移植後の呼吸器合併症
XI 肺循環障害
 1.肺血栓塞栓症
 2.肺動脈性肺高血圧症
XII 全身性疾患による肺病変
 1.腎不全,透析患者の肺合併症
 2.膠原病の肺病変
 3.エイズ(HIV感染症)の肺病変
 4.血液疾患(白血病,悪性リンパ腫)の肺病変
XIII 腫瘍性疾患
 1.肺癌の外科治療
 2.小細胞肺癌の治療(手術適応と化学療法)
 3.非小細胞肺癌の治療
 4.肺癌合併症への対策
 5.肺癌の緩和ケア
 6.抗癌薬の副作用対策
 7.縦隔腫瘍
 8.転移性肺腫瘍
 9.胸膜中皮腫
XIV 先天性異常・形成不全
 1.肺分画症
 2.肺動静脈瘻(肺動静脈奇形)
XV 呼吸器疾患の患者指導
 1.妊婦への呼吸器系薬の処方に際しての留意点と患者指導
 2.慢性呼吸不全患者の日常生活指導と訪問看護(現状と問題点)
 3.慢性呼吸不全患者に対する栄養指導
 4.誤嚥性肺炎防止のための患者指導
 5.肺癌の外来管理
 6.禁煙指導の実際
巻末付録−薬剤一覧表
索引

序文

 実地の臨床現場において、呼吸器疾患の患者さんが占める割合は少なからぬものがあります。カゼをはじめとする様々な感染症、タバコ病であり患者数がきわめて多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー疾患としての気管支喘息・好酸球性肺炎、肺癌、間質性肺炎を含む難病・稀少疾患などなど、呼吸器疾患はジャンルも、また各ジャンルでの疾患数も大変多い、多様性のある分野です。こういった呼吸器疾患の分野において、近年診断面、治療面で様々な進歩がみられております。
 本書、『呼吸器疾患最新の治療』は3年ごとのupdateな発行により、進歩の早いこの呼吸器領域を、特に治療に特化してfollowする書籍として多くの御支持を頂き、早、第7巻目を迎えることとなりました。この間、呼吸器疾患治療の分野では多くの進歩が生まれており、特に肺癌分野では、個々の肺癌の遺伝子タイプに応じた分子標的薬剤を用いるという、以前は夢のように語られてきたテーラーメイド治療というものが、EGFR阻害薬、ALK阻害薬によって実現してきています。また、間質性肺炎の分野では、従来全く有効な薬剤がなかった特発性肺線維症に対して、2つの有効な抗線維化薬が開発され、既に広く使われ始めております。感染症の分野でも、抗インフルエンザ薬の開発、抗結核薬の新規導入などがみられ、患者数のきわめて多い気管支喘息、COPDでは、長時間作用型の気管支拡張薬と吸入ステロイドの多種多様な合剤が上市されてきています。このような激しい進歩をみせている呼吸器分野での治療の最先端を、各分野のエキスパートの先生方に詳しく、実際的に解説頂いたのが本書です。
 また、本書の特徴の1つとして、巻頭トピックスを置いており、今巻でも15のトピックスを執筆して頂きました。高速シークエンサーの発達による遺伝子診断、microRNAを用いた治療の可能性、コンパニオン診断薬などは今日の分子生物学的手法の進歩の産物に他なりません。また、日本においてきわめて好成績を収めている肺移植の現状、新興感染症としての中東呼吸器症候群(MERS)、古くからの手強い感染症アスペルギルスについても触れて頂きました。COPDについては近年、phenotypeという考え方が定着し、これによって患者さんをきめ細かく治療していこうという流れです。先に述べたように間質性肺炎では、pirfenidone、nintedanibという画期的な抗線維化薬の導入により、これまで全く手のほどこしようのなかったこの難病に対して、我々は大きな武器を手にしたことになります。さらに、呼吸器疾患、特に間質性肺疾患と呼ばれるジャンルには様々な稀少難病があり、従来、全くなすすべもなかったこれら難病への新しい光が差し込んでいる現況にも触れて頂いております。本書はトピックスに続いて、主要な呼吸器用薬剤の作用機序と適応のパートを設けており、ここで、縦糸として各薬剤を概観して頂きます。そしてさらに、続くパートIIIにおいて横糸として各種疾患での治療を、数多くの呼吸器疾患殆どすべてを網羅して述べて頂いております。本書においては3年ごとの改訂に際して、執筆者の先生方に可能な限り毎回交代して頂き、新しい目で最新の情報をお届けすることに努力しております。
 大変お忙しい中、多数の執筆者の先生方に御尽力頂きましたことを深く感謝するとともに、きめ細かなサポートを頂きました南江堂のスタッフの皆様に感謝し、本書が全国の多くの先生方の座右の書として日常の臨床の場で活躍することを編者一同期待して序文を閉じさせて頂きます。

2016年1月
杉山幸比古
門田淳一
弦間昭彦

 まだインターネットが発達していなかった私の研修医時代、内科各科をローテーションするごとに「最新の治療」シリーズにはたびたびお世話になっていた。おそらく専門研修を始めたばかりの各科のシニアレジデントが購入していたのだろうと思われるが、各病棟の本棚にはたいてい置いてあった。そして本シリーズは、何もかも新しく学ばなくてはならないなかで厳しい指導を受ける研修医にとっても、各科の基本的知識と最新の診断や治療を短期間で急いで身につけ、ローテーション中に勉強を深める余裕をつくるのにちょうどよかったのである。
 さて、呼吸器領域を網羅する本書は3年ごとに出版され、今回はすでに7回目の内容更新だそうである。こういった特定の分野全体を網羅する書籍については、その内容の幅と深さをどの程度に設定して構築するのかが難しいと思われる。まずは例として私が現在専門としている感染症関連の項目をみてみることにする。
 呼吸器感染症が関連する項目については、錚々たる執筆者の名前が並んでいることが目次からもみてとれる。そして頻繁に遭遇する、あるいは要注目の呼吸器系感染症について、疫学、診断、治療と各疾患数頁でオーバービューすることができる。ただ「この感染症だったらこの検査と処方を出しましょう」という内容ではなく、病態や最新の知見、今後の方向性などが盛り込まれているのが、単純なマニュアル類と異なる格調高いところである。検査項目の選択や解釈の方法、処方例については、多少執筆者や所属施設の癖のようなものが感じられ、「私はこの検査や薬剤は使わないなあ」という箇所もある。しかしこれは「専門家でも最後の選択には色々バリエーションがあるのだ」ということの表れでもある。そのように読者にも認識していただき、オーバービューとして読んでいただく、あるいは困ったときの参考書にするのが本書のよい使い方と思われる。さらに深い各論を学ぶ必要がある感染症や呼吸器疾患の専門家は、本書を入口にして勉強を進めればよいだろう。
 続いて私の専門外であるアレルギーや閉塞性肺疾患の領域についてもみてみる。呼吸器感染症領域の内容の幅と深さから考えて、これらの領域について、非専門家はこのくらい知っていれば十分なのだろう(私の普段の診療内容と照らし合わせ、それほど大きな間違いはないようでホッとしているところである)。また本書では、専門性の高い肺がんや間質性肺炎の治療にみられる進歩についても多くの頁が割かれている。これらの診療を非専門家が行うことはないのかもしれないが、内科医の教養として概要を知っておくのにもちょうどよい。
 以上のように、数年に一回、執筆された先生方の熱い思い入れとともに新しく出版される本書を用い、みずからの診療内容や知識を確認してupdateするのは、呼吸器内科医でない内科医として、よい生涯学習の方法ではないかと考える。

臨床雑誌内科118巻4号(2016年10月号)より転載
評者●順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学/総合診療科准教授 上原由紀

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